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平成28年版
地方財政白書
(平成26年度決算)

2 地方財政の概況

地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

以下、平成26年度の地方財政について、2から6までと10において普通会計の状況を、7において地方公営事業会計等の状況を、8において東日本大震災の影響を、9において健全化判断比率等の状況を示すとともに、11において公共施設の状況を示す。なお、普通会計決算については、平成23年度から通常収支分(全体の決算額から東日本大震災分を除いたもの)と東日本大震災分(東日本大震災に係る復旧・復興事業及び全国防災事業に係るもの)を区分して整理している。

(1)決算規模[資料編:第1表第5表第10表第73表

地方公共団体(47都道府県、1,718市町村、23特別区、1,227一部事務組合及び113広域連合(以下一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入102兆835億円(前年度101兆998億円)、歳出98兆5,228億円(同97兆4,120億円)で、歳入、歳出いずれも増加している。対前年度比は歳入1.0%増(前年度1.3%増)、歳出1.1%増(同1.0%増)となっている。

このうち通常収支分は、歳入97兆4,904億円(前年度96兆2,289億円)、歳出94兆5,112億円(同93兆1,665億円)で、東日本大震災分は、歳入4兆5,931億円(同4兆8,709億円)、歳出4兆116億円(同4兆2,455億円)となっている。

平成26年度の決算規模が前年度を上回ったのは、歳入においては、東日本大震災分について、災害復旧事業費支出金の減少等による国庫支出金の減少等により前年度と比べると5.7%減となった一方で、通常収支分について、前年度の国の経済対策の影響、普通建設事業費支出金の減等により国庫支出金が減少したものの、法人関係二税、地方消費税の増等による地方税の増加、地方法人特別譲与税の増等による一般財源の増加等により1.3%増となったことによるものである。また、歳出においては、東日本大震災分について、物件費の減少等により前年度と比べると5.5%減となった一方で、通常収支分について、扶助費、普通建設事業費の増加等により1.4%増となったことによるものである。

さらに、歳出から公債費及び公営企業繰出金のうち企業債の元利償還に係るものを除いた一般歳出は、74兆4,861億円(前年度72兆6,878億円)となっており、前年度と比べると2.5%増となっている。

決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりである。都道府県の歳入及び歳出は、通常収支分において増加した一方で東日本大震災分において減少し、全体として前年度を上回っている。市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)の歳入及び歳出は、通常収支分において増加した一方で東日本大震災分において減少し、全体として前年度を上回っている。

また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

(2)決算収支

ア 実質収支[資料編:第7表

実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

平成26年度の実質収支は、1兆8,383億円の黒字(前年度1兆9,578億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては4,206億円の黒字(前年度4,285億円の黒字)であり、平成12年度以降黒字となっている。

また、市町村においては1兆4,177億円の黒字(前年度1兆5,293億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支が赤字である団体数をみると、平成25年度に赤字であった4団体(2市町2一部事務組合)はいずれも黒字となったが、2団体(2一部事務組合)が新たに赤字となった結果、赤字団体数は2団体(2一部事務組合)であり、前年度と比べると2団体減少している。

なお、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成26年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は0.2ポイント減少の2.9%となっている。

実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は0.1ポイント減少の1.5%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は0.4ポイント減少の4.3%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[資料編:第7表

平成26年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、1,198億円の赤字(前年度1,909億円の黒字)となっている。

単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては80億円の赤字(前年度648億円の黒字)、市町村においては1,118億円の赤字(同1,261億円の黒字)となっている。

また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、2,319億円の黒字(前年度7,637億円の黒字)となっている。

実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては2,704億円の黒字(前年度2,896億円の黒字)、市町村においては386億円の赤字(同4,741億円の黒字)となっている。

なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

(3)歳入[資料編:第10表

歳入純計決算額は102兆835億円で、前年度と比べると9,836億円増加(1.0%増)している。このうち通常収支分は、97兆4,904億円で、前年度と比べると1兆2,615億円増加(1.3%増)しており、東日本大震災分は4兆5,931億円で、前年度と比べると2,778億円減少(5.7%減)している。

歳入総額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

地方税は、法人関係二税(住民税の法人分及び法人事業税)の増加、地方消費税の増加等により、前年度と比べると1兆4,112億円増加(4.0%増)している。

地方譲与税は、地方法人特別譲与税の増加等により、前年度と比べると3,780億円増加(14.8%増)している。

地方特例交付金は、前年度と比べると63億円減少(5.0%減)している。

地方交付税は、前年度と比べると1,640億円減少(0.9%減)している。また、地方交付税に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると7,372億円減少(3.1%減)している。

一般財源は、地方税、地方譲与税の増加等により、前年度と比べると1兆6,188億円増加(2.9%増)している。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると1兆457億円増加(1.7%増)している。

国庫支出金は、前年度の国の経済対策の影響、普通建設事業費支出金並びに災害復旧事業費支出金の減少等により、前年度と比べると9,929億円減少(6.0%減)している。

地方債は、臨時財政対策債、旧緊急防災・減災事業債の減少等により、前年度と比べると7,664億円減少(6.2%減)している。

歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

地方税の構成比は、税源移譲等により、平成19年度には歳入総額の44.2%を占めるまで上昇し、その後、景気の悪化や地方法人特別税の創設等に伴って低下していたが、24年度に上昇に転じ、26年度においては、前年度と比べると1.0ポイント上昇の36.0%となり、3年連続で上昇している。

地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇し、13年度以降は、地方財政対策に当たり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたことや三位一体の改革に伴う地方交付税の改革等から総じて低下の傾向にあったが、22年度は上昇に転じた。平成26年度においては、前年度と比べると0.3ポイント低下の17.1%と、3年連続で低下している。

国庫支出金の構成比は、平成15年度以降、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化、普通建設事業費支出金の減少等により低下していたが、20年度以降、国の経済対策の実施、東日本大震災への対応の影響等で総じて上昇の傾向にある。平成26年度においては、前年度と比べると1.1ポイント低下の15.2%となっている。

地方債の構成比は、平成20年度以降、臨時財政対策債の増加等により総じて上昇の傾向にあったが、26年度においては、前年度と比べると0.9ポイント低下の11.3%となっている。なお、臨時財政対策債を除いた構成比は、前年度と比べると0.3ポイント低下の5.9%となっている。

一般財源の構成比は、平成18年度には62.3%であったが、19年度以降国庫支出金、地方債等の増加に加え、地方税及び地方特例交付金等の減少などにより低下していた。平成22年度に上昇に転じたが、24年度に再び低下し、26年度においては、前年度と比べると1.1ポイント上昇の56.1%となっている。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額の構成比は、前年度と比べると0.5ポイント上昇の61.5%となっている。

歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

都道府県においては地方税が最も大きな割合(34.4%)を占め、以下、地方交付税(17.2%)、国庫支出金(12.4%)の順となっている。

市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(32.7%)を占め、以下、国庫支出金(15.6%)、地方交付税(14.7%)の順となっている。

(4)歳出

歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア)目的別歳出[資料編:第34表

地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

歳出純計決算額は98兆5,228億円で、前年度と比べると1兆1,108億円増加(1.1%増)している。このうち、通常収支分は94兆5,112億円で、前年度と比べると1兆3,447億円増加(1.4%増)しており、東日本大震災分は4兆116億円で、前年度と比べると2,339億円減少(5.5%減)している。

歳出総額の目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、民生費(24.8%)、教育費(16.9%)、公債費(13.6%)、土木費(12.2%)、総務費(10.0%)の順となっている。

民生費は、消費税率の引き上げに際した給付措置である臨時福祉給付金、子育て世帯臨時特例給付金が増加したこと等により、前年度と比べると9,876億円増加(4.2%増)している。

教育費は、義務教育施設整備事業等の増のため普通建設事業費が増加したこと等により、前年度と比べると5,704億円増加(3.5%増)している。

公債費は、前年度と比べると2,384億円増加(1.8%増)している。

土木費は、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると747億円減少(0.6%減)している。

総務費は、第三セクター等の経営健全化の取組が推進されたことに伴い代位弁済等のための補助費等が減少したこと等により、前年度と比べると1,306億円減少(1.3%減)している。

目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。民生費の構成比は、社会保障関係費の増加を背景に上昇しており、平成19年度以降最も大きな割合を占めている一方で、農林水産業費、土木費及び教育費の構成比は低下の傾向にある。

目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(21.7%)を占め、以下、民生費(15.1%)、公債費(14.9%)、土木費(11.0%)、商工費(7.4%)の順となっている。

また、市町村においては、児童福祉、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(35.3%)を占め、以下、総務費(12.4%)、土木費(12.0%)、公債費(10.6%)、教育費(10.4%)の順となっている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第36表

一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

一般財源総額(57兆2,729億円)に占める目的別歳出の割合をみると、民生費が最も大きな割合(22.2%)を占め、以下、公債費(18.2%)、教育費(17.9%)、総務費(11.4%)、土木費(7.9%)の順となっている。

一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、民生費充当分が上昇の傾向にある一方で、教育費充当分が低下の傾向にある。

イ 性質別歳出

(ア)性質別歳出[資料編:第73表

地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が46.2%を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が95.3%を占めている。

歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

義務的経費は、前年度と比べると1兆3,064億円増加(2.8%増)している。これは、扶助費が、消費税率引き上げに際した給付措置である臨時福祉給付金、子育て世帯臨時特例給付金が増加したこと等により7,218億円増加(5.9%増)したほか、人件費が、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成25年1月24日閣議決定)に基づく各地方公共団体における国家公務員の給与減額支給措置に準じた取組の終了等によって職員給が増加したこと等により、3,464億円増加(1.6%増)したこと等によるものである。なお、公債費は、前年度と比べると2,382億円増加(1.8%増)している。

投資的経費は、前年度と比べると4,384億円増加(2.9%増)している。これは、災害復旧事業費が1,487億円減少(16.9%減)した一方で、普通建設事業費が5,872億円増加(4.1%増)したこと等によるものである。

また、その他の経費は、前年度と比べると6,340億円減少(1.8%減)している。これは、社会保障・税番号制度(以下「マイナンバー制度」という。)関連等のシステム開発費の増加等により物件費が1,364億円増加(1.5%増)した一方で、貸付金が4,934億円減少(9.1%減)、積立金が4,204億円減少(9.5%減)したこと等によるものである。

平成16年度以降のこれらの経費の増減額の推移は、第14図のとおりである。

次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

義務的経費の構成比は、平成7年度以降上昇の傾向にあり19年度には52.1%となったが、20年度に低下に転じた。平成22年度においては子ども手当の創設に伴う扶助費の増加等により上昇したが、23年度においてはその他の経費の増加等の影響により低下し、26年度においては前年度と比べると0.8ポイント上昇の49.5%となっている。義務的経費の構成比の内訳を見ると、人件費は、平成19年度以降総じて減少の傾向にあり、26年度においては前年度と比べると0.1ポイント上昇の22.9%となっている。扶助費は、社会保障関係費の増加を背景に総じて増加の傾向にあり、平成26年度においては前年度と比べると0.6ポイント上昇の13.1%となっている。公債費は、平成17年度以降総じて減少の傾向にあるが、26年度においては前年度と比べると0.1ポイント上昇の13.5%となっている。

投資的経費の構成比は、平成23年度まで総じて低下の傾向にあったが、平成24年度上昇に転じ、26年度においては普通建設事業費の増加等により前年度と比べると0.2ポイント上昇の15.7%となっている。

その他の経費の構成比は、補助費等、繰出金の増加等により平成23年度まで総じて上昇の傾向にあったが、平成24年度低下に転じ、26年度においては前年度と比べると1.0ポイント低下の34.8%となっている。

性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等から、都道府県(27.2%)が、市町村(15.8%)を上回っている。また、扶助費の構成比は、市町村において、児童手当の支給、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉関係事務が行われていること等から、市町村(21.2%)が、都道府県(2.1%)を上回っている。

普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(8.2%)が市町村(7.0%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(7.4%)が都道府県(4.8%)を上回っている。

その他の経費のうち、補助費等の構成比は、都道府県(24.8%)が市町村(6.8%)を上回る一方、繰出金の構成比は、市町村(9.2%)が都道府県(0.4%)を上回っている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第75表

一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

一般財源総額(57兆2,729億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が最も大きな割合(55.0%)を占め、以下、その他の経費(35.0%)、投資的経費(5.5%)の順となっている。なお、その他の経費の中では、補助費等が最も大きな割合(11.6%)を占めている。

一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

義務的経費充当分は、平成18年度までは、人件費充当分が低下の傾向にある一方で、扶助費充当分及び公債費充当分が上昇の傾向にあったことから、総じて上昇の傾向にあったが、19年度以降は、公債費充当分が低下の傾向に転じたことから、総じて低下の傾向にあり、26年度は、前年度と比べると0.2ポイント低下の55.0%となっている。

投資的経費に充当された一般財源の構成比は、総じて低下の傾向にあり、26年度においては前年度と比べると0.1ポイント低下の5.5%となっている。

その他の経費充当分は、総じて上昇の傾向にあり、平成26年度においては前年度と比べると0.5ポイント上昇の35.0%となっている。

(5)財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[資料編:第8表

地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費等のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

平成26年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると0.5ポイント上昇の92.1%となった。経常収支比率の推移は第11表のとおりであるが、平成16年度以降、11年連続で90%を上回っている。主な内訳をみると、人件費充当分が31.3%(前年度31.1%)、公債費充当分が20.8%(同21.1%)となっている。なお、減収補填債特例分及び臨時財政対策債を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率は、101.7%(前年度102.4%)となっている。

また、経常収支比率を構成する分子及び分母の状況は次のとおりである。分子である経常経費充当一般財源は、扶助費、物件費が増加したことにより、前年度と比べると2.1%増となっている。分母である経常一般財源等は、地方税、地方譲与税の増加等により、前年度と比べると1.5%増となっている。

分子及び分母の推移は第18図のとおりである。分子である経常経費充当一般財源については、人件費が「公務員の給与改定に関する取扱いについて」に基づく各地方公共団体における国家公務員の給与減額支給措置に準じた取組の終了等によって職員給が増加したこと等により増加し、扶助費、補助費等が増加の傾向にあることから、分子全体としては増加の傾向にある。分母である経常一般財源等については、地方交付税や地方特例交付金が減少した一方で、平成20年度以降、総じて減少の傾向にあった地方税が24年度において増加に転じ、また地方譲与税が増加の傾向にあること等により、分母全体としては増加の傾向にある。なお、分子及び分母を10年前(平成16年度)と比べるとそれぞれ9.4%増、8.6%増となっており、分子の増加率が分母の増加率を上回っている。

経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度と比べると増減なしの93.0%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下この項において同じ。)は前年度と比べると1.1ポイント上昇の91.3%となっている。

経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては47団体の全ての団体(前年度同数)、市町村においては全体の90.0%を占める1,547団体(同1,476団体)となっている。

イ 実質公債費比率及び公債費負担比率[資料編:第8表

地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された特定財源及び一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。なお、実質公債費比率は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年法律第94号。以下「地方公共団体財政健全化法」という。)において、健全化判断比率の一つとして位置付けられている。

平成26年度の実質公債費比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.5ポイント低下の10.4%となっている。

公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

平成26年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.3ポイント低下の18.2%となっている。

近年の実質公債費比率及び公債費負担比率の推移は、第19図のとおりである。

実質公債費比率は、初めて算定された平成17年度以降低下している。

公債費負担比率は、平成3年度以降上昇し、15年度に19.4%に達した後、おおむね横ばいの傾向にあり、21年度に低下に転じた後、再び横ばいの傾向にある。

(6)将来の財政負担

地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[資料編:第100表

平成26年度末における地方債現在高は145兆9,841億円で、前年度末と比べると0.0%増(前年度末0.8%増)となっている。また、平成26年度末における臨時財政対策債を除いた地方債現在高は97兆5,001億円で、前年度末と比べると3.4%減(前年度末3.0%減)となっている。

地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補填、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、それぞれの割合は平成4年度末以降急増し、また、13年度からの臨時財政対策債の発行等があったことにより、依然として高い水準で推移している。平成26年度末では歳入総額の1.43倍、一般財源総額の2.55倍となっている。

近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。地方債現在高の目的別構成比は、臨時財政対策債(33.2%)、一般単独事業債(26.4%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、一般単独事業債が1.0ポイント低下する一方、臨時財政対策債が2.4ポイント上昇しており、平成13年度以降、臨時財政対策債の構成比が上昇の傾向にある。地方債現在高の借入先別の構成比は、市場公募債(31.3%)、市中銀行資金(25.2%)、政府資金(23.4%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減及び市場における地方債資金の調達の推進等に伴い、政府資金が0.5ポイント低下する一方、市場公募債は0.4ポイント上昇している。

地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては89兆5,849億円、市町村においては56兆3,992億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.2%減(前年度末1.0%増)、0.4%増(同0.5%増)となっている。また、臨時財政対策債を除いた地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては59兆8,431億円、市町村においては37兆6,570億円で、前年度末と比べるとそれぞれ4.0%減(前年度末3.2%減)、2.5%減(同2.8%減)となっている。

なお、地方財政状況調査においては、満期一括償還地方債の元金償還に充てるための減債基金への積立額は歳出の公債費に計上するとともに、地方債現在高から当該積立額相当分を控除する扱いとしているが、控除しない場合における地方債現在高は154兆7,904億円となっている。

イ 債務負担行為額[資料編:第101表

地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成26年度末では15兆1,461億円で、前年度末と比べると4.2%増(前年度末8.3%増)となっている。

翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第22図のとおりである。

翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆8,903億円、市町村においては9兆2,558億円で、前年度末と比べるとそれぞれ7.4%増(前年度末2.3%増)、2.3%増(同12.3%増)となっている。

ウ 積立金現在高[資料編:第102表

地方公共団体の積立金現在高の状況は、第13表のとおりである。

平成26年度末における積立金現在高は22兆6,058億円で、前年度末と比べると1.1%増(前年度末6.4%増)となっている。

積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると6.4%増(前年度末9.8%増)となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金(満期一括償還地方債に係るものを除く。)は前年度末と比べると5.6%増(同4.4%増)となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は前年度末と比べると2.5%減(同5.0%増)となっている。

積立金現在高を団体種類別にみると、都道府県においては7兆7,260億円、市町村においては14兆8,798億円で、前年度末と比べるとそれぞれ1.4%減(前年度末5.5%増)、2.4%増(同6.8%増)となっている。

エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担[資料編:第100表第102表

地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第23図のとおりである。

平成26年度末における地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は138兆5,244億円で、前年度末と比べると0.3%増(前年度末0.7%増)となっている。

団体種類別にみると、都道府県においては87兆7,492億円、市町村においては50兆7,752億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.4%増(前年度末0.6%増)、0.1%増(同1.2%増)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高[資料編:第100表

普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、交付税特別会計借入金及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

この観点から、交付税特別会計借入金残高と企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第24図のとおりである。

これをみると、平成26年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は200兆5,259億円で、前年度末と比べると0.4%減(前年度末0.2%増)となっている。

また、その内訳は、地方債現在高が145兆9,841億円、交付税特別会計借入金残高が33兆1,173億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが21兆4,245億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.0%増(前年度末0.8%増)、0.6%減(同0.3%減)、3.2%減(同3.5%減)となっている。

(7)決算の背景

ア 平成26年度の経済見通しと国の予算

(ア)経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成26年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成25年12月21日に閣議了解、26年1月24日に閣議決定された。その主な内容は、以下のとおりである。

a 平成25年度の経済動向

平成25年度の我が国経済をみると、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」による一体的な取組の政策効果から、家計や企業のマインドが改善し、消費等の内需を中心として景気回復の動きが広がっている。また、企業収益の増加から設備投資が持ち直しつつあり、雇用・所得環境が改善していく下で、景気回復の動きが確かなものとなることが見込まれる。

こうした中で、消費者物価(総合)は、日本銀行の「量的・質的金融緩和」の効果等により5年ぶりに0.7%程度の上昇に転じると見込まれる。

この結果、平成25年度の国内総生産の実質成長率は2.6%程度、名目成長率は2.5%程度と見込まれる。

b 平成26年度の経済見通し

平成26年度の我が国経済は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減には留意が必要であるが、「好循環実現のための経済対策」(平成25年12月5日閣議決定。以下「経済対策」という。)など、「平成26年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に示された施策の推進等により、年度を通してみれば前年度に続き堅調な内需に支えられた景気回復が見込まれ、好循環が徐々に実現していくと考えられる。

物価については、前年度より上昇率が高まり、消費者物価は3.2%程度(このうち、消費税率引上げによる影響は2.1%程度と見込んでいる。)、GDPデフレーター上昇率はプラスになると見込まれるなど、労働市場の引き続く改善を伴いながらデフレ脱却に向け着実な進展が見込まれる。

この結果、平成26年度の国内総生産の実質成長率は1.4%程度、名目成長率は3.3%程度と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、金融資本市場の動向、アジアの新興国等の経済動向、電力供給の制約等に留意する必要がある。

c 平成26年度の経済財政運営の基本的態度

最近の景気回復に向けた動きを持続的な経済成長につなげていくため、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)の実行を加速・強化する。「産業競争力強化法」(平成25年法律第98号)、「国家戦略特別区域法」(平成25年法律第107号)の積極的活用や政策資源の重点配分などにより、同戦略に盛り込まれた3つのアクションプランを強力に推進することで、日本経済の成長力を強化する。

同時に、政府、経営者、労働者がそれぞれの役割を果たしつつ、互いに連携することにより、企業収益の拡大を賃金上昇、雇用・投資の拡大につなげ、消費や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大を促す好循環を実現する。さらに、平成26年4月に実施する消費税率の引上げに際しては、駆け込み需要とその反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図り持続的な経済成長につなげていくため、経済対策を含む「経済政策パッケージ」(「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」(平成25年10月1日閣議決定))を着実に実行する。

国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリー・バランス。以下「PB」という。)について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比半減、2020年度までに黒字化を目指し、「当面の財政健全化に向けた取組等についてー中期財政計画ー」(平成25年8月8日閣議了解。以下「中期財政計画」という。)に基づき、改善を図る。このため、平成26年度予算については、社会保障をはじめとする義務的経費等を含め、聖域なく予算を抜本的に見直した上で、経済成長に資する施策に重点化を図る。

以上の取組により、デフレ脱却・経済再生と財政健全化の両立の実現を目指す。

日本銀行には、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを期待する。

(イ)国の予算

政府は、「平成26年度予算編成の基本方針」(平成25年12月12日閣議決定)及び「平成26年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成25年12月24日、平成26年度予算政府案を閣議決定した。

平成26年度予算は、以下のような基本的な考え方により編成された。

a 平成26年度予算編成の基本的な考え方

平成26年度予算編成に当たっては、社会保障を始めとする義務的経費等を含め、聖域なく予算を抜本的に見直した上で、経済成長に資する施策に重点化を図る。

税制については、デフレ脱却・経済再生と財政健全化の両立を旨としつつ、経済社会構造の変化を踏まえながら、あるべき税制の在り方を検討するなど、必要な取組を進める。

今後、財政健全化目標を着実に達成していくためには、引き続き税収を拡大させるとともに、各年度継続して歳出を効率化していく必要がある。

「中期財政計画」に基づきながら、これらの取組により、国の一般会計の基礎的財政収支について、平成26年度予算において少なくとも▲19兆円程度とすることを目指し、一般会計の当初予算において4兆円を上回る収支改善を図る。新規国債発行額についても、平成25年度を下回るよう最大限努力する。

b 予算の重点化・効率化の推進

高齢化等により社会保障関係費が増大する中で、「中期財政計画」に基づく国の一般会計の基礎的財政収支の改善を行うため、裁量的経費、義務的経費を通じて聖域なき見直しを行っていく必要がある。次に掲げる社会保障、社会資本整備、地方財政に限らず、他の各分野においても、人口減少や少子高齢化など経済社会の構造変化に対応しつつ、重点化・効率化を進め、歳出を抑制する。とりわけ消費税率引上げが予定される平成26年度予算については、国民に負担増を求める際に、各経費が安易に膨張したり、無駄な経費があるといった批判を招くことがないよう、徹底して取り組む。

主な分野における歳出改革は以下のとおりである。

(a) 社会保障

高齢化等を背景に、社会保障の給付の伸びは名目成長率を大きく上回っており、公費負担が増大し財政赤字が拡大して、後世代に負担を先送りすることとなっている。国民の安心を支える社会保障制度を持続可能なものとするため、様々なニーズに対応しつつ新たな国民負担の発生を厳に抑制し、効率的に社会保障サービスが提供される体制を目指すことが必要である。

(b) 社会資本整備

今後の社会資本整備については、厳しい財政状況の下、国民生活の将来を見据えて、既設施設の機能が効果的に発揮されるよう計画的な整備を推進していく必要がある。

平成26年度予算においては、デフレからの早期脱却と経済再生や財政健全化との両立を目指す中で、アジアの都市に負けない国際競争力の強化、地域の活性化、国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)、防災・減災対策、老朽化対策等の諸課題に対し、選択と集中、優先順位の明確化、民間能力の活用の3つの大原則の下で、ソフト施策と連携しつつ、効果的・効率的に推進していく。

(c) 地方行財政制度

地方財政については、経済再生に合わせ、リーマンショック後の危機対応モードから平時モードへの切替えを進めていく必要がある。このため、歳出特別枠や地方交付税の別枠加算を見直すなど歳入面・歳出面における改革を進めていく。

国の歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源の総額については、平成25年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。

頑張る地方を息長く支援するため、地方交付税において、地域経済の活性化に資する算定を導入する。

地方法人課税の在り方を見直し、地方公共団体の財政運営に配慮しつつ、地域間の税源偏在の是正の方策を講じる。

人口構造の変化等に適合した地方制度の構築に向けて、関係府省が連携して、「定住自立圏構想」を強力に進めるとともに、「地方中枢拠点都市」を中心とする新たな広域連携や広域での効果的・効率的な機能分担等が進むよう、自治体間の柔軟な連携を可能とする新たな仕組みを導入する。

地方公会計の整備を促進することにより、地方における財政運営の透明化・効率化を図るとともに、地方公共団体が保有する公共施設等の適正な管理を推進し、老朽化施設の解体撤去のための財政措置を含めた支援を検討する。

平成26年度予算は、以上のような方針により編成され、平成26年1月24日に国会に提出され、3月20日に成立した。

これによると、平成26年度の一般会計予算の規模は95兆8,823億円で、前年度当初予算と比べると3兆2,708億円増加(3.5%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は72兆6,121億円で、前年度当初予算と比べると2兆2,421億円増加(3.2%増)となった。なお、公債の発行予定額は41兆2,500億円で、前年度当初発行予定額と比べると1兆6,010億円減少(3.7%減)となっており、公債依存度は43.0%となった。

また、東日本大震災復興特別会計予算の規模は3兆6,464億円となった。歳入については、復興特別税7,381億円、一般会計からの繰入7,030億円、復興債2兆1,393億円等となっている。歳出については、復興関係公共事業等9,163億円、原子力災害復興関係経費6,523億円、復興加速化・福島再生予備費6,000億円等となっている。

なお、財政投融資計画の規模は16兆1,800億円で、前年度計画額と比べると2兆2,096億円減少(12.0%減)となった。

イ 地方財政計画

平成26年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、国の取組と歩調を合わせて歳出抑制を図る一方、社会保障の充実分等を含め、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うとともに、防災・減災事業や地域経済活性化等の緊急課題に対応するために必要な経費を計上することとし、歳入面においては、「経済財政運営と改革の基本方針」(平成25年6月14日閣議決定)及び「中期財政計画」に沿って、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成25年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

なお、地方財政審議会からは、平成25年6月5日に「地域再生に向けた地方財政改革についての意見」及び平成25年12月16日に地方一般財源総額の確保や地方交付税の別枠加算の継続などを含む「今後目指すべき地方財政の姿と平成26年度の地方財政への対応についての意見」(附属資料参照)が述べられた。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成26年度地方公共団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

(ア)通常収支分

a 地方税制については、平成26年度税制改正では、税制抜本改革を着実に実施する観点から、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、法人住民税法人税割の税率を引き下げるとともに、地方法人税を創設し、その税収全額を地方交付税原資とする。併せて、地方法人特別税・譲与税の規模を縮小し、法人事業税に復元する。また、消費税率(国・地方)8%への引上げ時において自動車取得税の税率を引き下げる一方、軽自動車税の税率を引き上げる等の車体課税の見直しを行う。

さらに、現下の経済情勢等を踏まえ、デフレ脱却・日本経済再生に向けた税制措置を講じるほか、東日本大震災からの復興を支援するための税制措置等を講じる。

b 地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

(a) 平成26年度から平成28年度までの間は、平成25年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

(b) これに基づき、平成26年度の財源不足見込額10兆5,938億円については、次により補填する。

<1> 地方交付税については、国の一般会計加算により4兆1,186億円(うち「地方交付税法」附則第4条の2第2項の加算額6,648億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成25年12月21日付け総務・財務両大臣覚書第5項に定める平成26年度における「乖離是正分加算額」2,000億円、地方税収の状況を踏まえた別枠の加算額6,100億円並びに臨時財政対策特例加算額2兆6,438億円)増額する。

また、交付税特別会計剰余金1,000億円を活用する。

<2> 「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を5兆5,952億円発行する。

<3> 建設地方債(財源対策債)を7,800億円増発する。

(c) 上記の結果、平成26年度の地方交付税については、16兆8,855億円(前年度比1,769億円、1.0%減)を確保する。

(d) 交付税特別会計の借入金については、「特別会計に関する法律」附則第4条第1項に基づき、2,000億円の償還を実施する。

(e) なお、平成4年度までの国庫補助負担率の引下げ措置(投資的経費)に伴い一般会計から交付税特別会計に繰入れを予定していた額等61億円については、法律の定めるところにより平成32年度以降の地方交付税の総額に加算する。

c 地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方公共団体が防災・減災対策の強化や地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

d 地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(a) 投資的経費に係る地方単独事業費については、平成25年度において給与の臨時特例対応分として計上していた「緊急防災・減災事業費」を、地方公共団体が引き続き喫緊の課題である防災・減災対策に取り組んでいけるよう5,000億円計上することにより、全体で前年度に比し4.5%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(b) 平成25年度において給与の臨時特例対応分として計上していた「地域の元気づくり事業費」については、地方公共団体の取組を息長く支援する観点から、当分の間の措置として一般行政経費に「地域の元気創造事業費」として改めて計上することとし、平成26年度の事業費については3,500億円としている。

(c) 消費税・地方消費税の引上げによる増収分を活用した社会保障の充実として、少子化対策、医療・介護サービスの提供体制改革、医療保険制度改革及び難病等に係る公平かつ安定的な制度の確立に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

(d) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体における行政改革の状況等を踏まえ行政経費の縮減を行う一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(e) 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(f) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

e 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

f 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

(イ)東日本大震災分

a 復旧・復興事業

(a) 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、以下に掲げる地方負担分等の全額を措置するため、5,723億円を確保する。

  • 直轄・補助事業に係る地方負担分3,719億円
  • 地方単独事業分1,085億円
  • 税制上の臨時的特例措置等に伴う減収分919億円

(b) 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

(c) 直轄事業負担金及び補助事業費、「地方自治法」に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費及び「地方税法」等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費を計上する。

b 全国防災事業

(a) 地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜平成35年度)による地方税の収入見込額として679億円を計上するとともに、一般財源充当分として113億円を計上する。

(b) 地方債については、全国防災事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

(c) 国の全国防災対策費に係る直轄事業負担金及び補助事業費等について、所要の事業費を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成26年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は83兆3,607億円で、前年度と比べると1兆4,453億円増加(1.8%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が1兆9,617億円で、前年度と比べると3,730億円減少(16.0%減)、全国防災事業が2,521億円で、前年度と比べると490億円増加(24.1%増)となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は35兆127億円で、前年度と比べると9,952億円増加(2.9%増)(道府県税5.3%増、市町村税1.3%増)、地方譲与税は2兆7,564億円で、前年度と比べると4,094億円増加(17.4%増)、地方特例交付金は1,192億円で、前年度と比べると63億円減少(5.0%減)、地方交付税は16兆8,855億円で、前年度と比べると1,769億円減少(1.0%減)、国庫支出金は12兆4,491億円で、前年度と比べると5,988億円増加(5.1%増)、地方債(普通会計分)は10兆5,570億円で、前年度と比べると5,947億円減少(5.3%減)となった。

歳出では、給与関係経費は20兆3,414億円で、前年度と比べると5,935億円増加(3.0%増)となった。なお、地方財政計画における職員数については、12,962人の純減としている。一般行政経費は33兆2,194億円で、前年度と比べると1兆3,937億円増加(4.4%増)となり、このうち一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆9,536億円で、前年度と比べると457億円減少(0.3%減)となった。公債費は13兆745億円で、前年度と比べると333億円減少(0.3%減)、投資的経費は11兆35億円で、前年度と比べると3,337億円増加(3.1%増)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆2,279億円で、前年度と比べると2,249億円増加(4.5%増)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は5,723億円で、前年度と比べると475億円減少(7.7%減)、国庫支出金は1兆3,353億円で、前年度と比べると3,542億円減少(21.0%減)などとなった。歳出では、一般行政経費は5,350億円で、前年度と比べると1,479億円減少(21.7%減)、投資的経費は1兆3,905億円で、前年度と比べると2,350億円減少(14.5%減)などとなった。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では国庫支出金は736億円で、前年度と比べると64億円減少(8.0%減)、地方債は983億円で、前年度と比べると10億円増加(1.0%増)などとなった。歳出では公債費は802億円で、前年度と比べると544億円増加(210.9%増)、投資的経費は1,719億円で、前年度と比べると54億円減少(3.0%減)となった。

また、平成26年度の地方債計画の規模は、通常収支分が12兆8,301億円(普通会計分10兆5,570億円、公営企業会計等分2兆2,731億円)で、前年度と比べると5,407億円減少(4.0%減)となった。東日本大震災分は、復旧・復興事業が543億円(普通会計分455億円、公営企業会計等分88億円)で、前年度と比べると1,654億円減少(75.3%減)となり、全国防災事業が983億円(普通会計分)で、前年度と比べると10億円増加(1.0%増)となった。

ウ 財政運営の経過

(ア)平成26年度補正予算(第1号)

平成26年度補正予算(第1号)は、平成27年1月9日に閣議決定、1月26日に第189回国会に提出され、2月3日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」(平成26年12月27日閣議決定。以下「緊急経済対策」という。)に沿って、現下の経済情勢等を踏まえた生活者・事業者への支援関連経費1兆1,854億円、地方が直面する構造的課題等への実効ある取組を通じた地方の活性化関連経費5,783億円、災害復旧・復興加速化など災害・危機等への対応関連経費7,578億円等を追加計上するほか、既定経費の減額1兆6,880億円等の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税収1兆7,250億円、税外収入1,148億円、前年度剰余金受入2兆353億円等が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成26年度当初予算に対し、3兆1,180億円増加し、99兆3億円となった。

(イ)平成26年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

a 通常収支分

この補正予算においては、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じること等から、以下のとおり財政措置を講じることとした。

(a) 地方交付税

この補正予算において、「地方交付税法」第6条第2項の規定に基づき増額される平成26年度分の地方交付税の額9,538億円(平成25年度精算分4,569億円、平成26年度国税の自然増に伴うもの4,969億円)については、平成26年度において普通交付税の調整額の復活に要する額315億円を交付することとしたうえで、残余の額9,224億円について平成27年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講じる。

(b) 追加の財政需要

<1> この補正予算により平成26年度に追加される投資的経費に係る地方負担額については、原則として、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%(当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては当初の算入率)を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、原則として、単位費用により措置する。

<2> 地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

b 東日本大震災分

東日本大震災に係る復旧・復興事業に係る地方負担額については、震災復興特別交付税により全額を措置する。

以上に掲げる措置を講じる等のための「地方交付税法の一部を改正する法律」が平成27年2月12日に成立した(平成27年法律第1号)。

(ウ)地方公務員の給与改定

平成26年の国家公務員の給与改定については、平成26年11月19日の国の給与関係法の公布、施行に伴い、その取扱いが決定されたが、地方公務員の給与改定については、「地方公務員法」の趣旨に沿って適切に対応されるよう、「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて」(平成26年10月7日付け総務副大臣通知)で通知した。

なお、地方財政計画ベースの所要額は、2,200億円程度、一般財源ベースで1,930億円程度と見込まれたが、当該一般財源所要額については、地方財政計画上の追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応することとし、新たな財源措置は行わないこととした。

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