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平成28年版
地方財政白書
(平成26年度決算)

8 東日本大震災の影響

(1)普通会計

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、死者19,335人、行方不明者2,600人(平成27年9月9日、総務省消防庁発表)、被害総額(推計)約16兆9千億円(平成23年6月24日、内閣府(防災担当)発表)にのぼる被害をもたらすとともに、全国的にも生産、消費、物流等の経済活動に大きな影響を与えた。

政府は、東日本大震災発生直後から、被災者の生活の支援や被災地の復旧・復興対策に当たってきており、平成26年度においても前年度に引き続き、被災地の地方公共団体を中心に復旧・復興事業に係る経費が支出されるとともに、被災地以外の地方公共団体において被災地の地方公共団体への支援事業や東日本大震災からの復興の基本理念に基づき全国的に緊急に実施する全国防災事業等に係る経費が支出されるなど多額の東日本大震災関連経費が支出されたところであり、その状況は次のとおりである。

ア 東日本大震災分の歳入及び歳出の状況[資料編:第136表第138表

(ア)歳入

東日本大震災分の歳入は4兆5,931億円で、国庫支出金、地方債の減少等により、前年度と比べると5.7%減となっている。これを団体種類別に見ると、都道府県においては、地方債、繰越金の減少等により前年度と比べると14.1%減となっており、市町村においては、国庫支出金、地方債の減少等により前年度と比べると2.6%減となっている。

歳入の構成比は、国庫支出金が37.1%(前年度39.7%)、繰入金が26.0%(同22.1%)、一般財源が13.0%(同12.8%)、地方債が6.2%(同8.4%)などとなっている。

国庫支出金は1兆7,039億円で、災害復旧事業費支出金の減少等により、前年度と比べると11.9%減となっている。

繰入金は1兆1,952億円で、東日本大震災復興関連基金からの取崩し額の増加等により、前年度と比べると10.9%増となっている。

一般財源は5,954億円で、過年度交付の精算等により、前年度と比べると4.4%減となっている。

地方債は2,855億円で、旧緊急防災・減災事業債の減少等により、前年度と比べると30.3%減となっている。

(イ)歳出

東日本大震災分の歳出は、4兆116億円で、民生費の減少等により、前年度と比べると5.5%減となっている。これを団体種類別に見ると、都道府県においては2兆2,310億円で、民生費の減少等により、前年度と比べると14.1%減となっており、市町村においては2兆2,720億円で、土木費等が増加したものの、民生費等の減少等により、前年度と比べると3.2%減となっている。

a 目的別歳出

目的別歳出の構成比は、総務費が25.1%(同14.8%)、土木費21.3%(同15.7%)、民生費が14.1%(前年度23.9%)、災害復旧費が10.5%(同13.9%)、商工費が9.3%(同10.3%)、教育費が8.7%(同10.0%)などとなっている。

総務費は1兆78億円で、東日本大震災復興関連基金への積立の増加等により、前年度と比べると60.1%増となっている。

土木費は8,534億円で、防災集団移転促進事業、災害公営住宅整備事業等の復旧・復興事業関係費の増加等により、前年度と比べると28.2%増となっている。

民生費は5,660億円で、被災民家等に係る災害等廃棄物処理事業費の減少等により、前年度と比べると44.3%減となっている。

災害復旧費は4,197億円で、公共施設等に係る災害廃棄物緊急処理基金積立金の減少等により、前年度と比べると28.8%減となっている。

b 性質別歳出

性質別歳出の構成比は、普通建設事業費が36.9%(前年度31.5%)、積立金が27.9%(同22.4%)、物件費が11.4%(同17.7%)、災害復旧事業費が10.4%(同13.9%)などとなっている。

普通建設事業費は1兆4,793億円で、災害公営住宅整備事業、防災集団移転促進事業、企業立地支援事業等の復旧・復興事業関係費の増加等により、前年度と比べると10.5%増となっている。

積立金は1兆1,199億円で、中間貯蔵施設整備等関連基金への積立の増加等により、前年度と比べると17.6%増となっている。

物件費は4,587億円で、災害廃棄物処理事業関係費の減少等により、前年度と比べると39.0%減となっている。

災害復旧事業費は4,180億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると29.0%減となっている。

イ 特定被災地方公共団体等における決算の状況[資料編:第139表

(ア)特定被災県

a 歳入

特定被災県(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号。以下「東日本大震災財特法」という。))第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である県をいう。)である9県の歳入総額は11兆1,155億円で、前年度と比べると0.4%増(全国では0.2%増)となっている。

このうち、通常収支分は8兆6,457億円で、前年度と比べると4.0%増(全国では1.1%増)、東日本大震災分は2兆4,697億円で、前年度と比べると10.4%減(同14.1%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が6.0%増(全国では5.9%増)、地方交付税が0.2%減(同0.3%増)、国庫支出金が9.2%減(同12.9%減)などとなっている。

b 歳出

特定被災県の歳出総額は10兆5,772億円で、前年度と比べると0.7%増(全国では0.3%増)となっている。

このうち、通常収支分は8兆4,353億円で、前年度と比べると3.9%増(全国では1.1%増)、東日本大震災分は2兆1,419億円で、前年度と比べると10.2%減(同14.1%減)となっている。

なお、特定被災県の東日本大震災分の歳出は、全国のそれの96%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が積立金の増加等により13.9%増(全国では1.3%増)、民生費が災害等廃棄物処理事業費の減少等により11.3%減(同1.1%増)、衛生費が積立金の減少等により6.5%減(同3.6%減)、災害復旧費が25.7%減(同16.8%減)などとなっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が企業立地支援事業等の復旧・復興事業関係費の増加等により10.1%増(全国では0.2%減)、災害復旧事業費が25.7%減(同16.8%減)、補助費等が除染に係る市町村への交付金の増加等により1.4%増(同3.4%増)、積立金が14.0%減(14.5%減)などとなっている。

c 決算収支

特定被災県の実質収支は1,115億円の黒字で、前年度と比べると72億円増加(全国では79億円減少)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災県の地方債現在高は16兆1,432億円で、前年度末と比べると1.6%減(全国では0.2%減)となっている。債務負担行為額は1兆8,107億円で、前年度末と比べると23.8%増(同7.4%増)となっている。積立金現在高は2兆2,443億円で、前年度末と比べると8.2%減(同1.4%減)となっている。

(イ)特定被災市町村等

a 歳入

特定被災市町村等(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)の別表第1に定める特定被災地方公共団体である市町村並びに同令の別表第2及び別表第3に定める市町村のうち特定被災地方公共団体以外のものをいう。)である227市町村の歳入総額は8兆3,886億円で、前年度と比べると2.9%増(全国では1.9%増)となっている。

このうち、通常収支分は6兆1,632億円で、前年度と比べると2.9%増(全国では2.1%増)、東日本大震災分は2兆2,254億円で、前年度と比べると2.8%増(同2.6%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が2.7%増(全国では2.3%増)、地方交付税が1.9%減(同2.2%減)、国庫支出金が7.4%減(同0.4%減)などとなっている。

b 歳出

特定被災市町村等の歳出総額は7兆8,553億円で、前年度と比べると3.1%増(全国では2.2%増)となっている。

このうち、通常収支分は5兆8,725億円で、前年度と比べると3.2%増(全国では2.4%増)、東日本大震災分は1兆9,828億円で、前年度と比べると2.6%増(同3.2%減)となっている。

なお、特定被災市町村等の東日本大震災分の歳出は、全国のそれの87%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が積立金の増加等により10.6%増(全国では3.1%減)、民生費が災害廃棄物処理事業関係費の減少等により4.9%減(同5.2%増)、土木費が防災集団移転促進事業や災害公営住宅整備事業の増加等により15.1%増(同0.3%増)、災害復旧費が32.2%減(同19.2%減)などとなっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が災害公営住宅整備事業や防災集団移転促進事業の増加等により21.8%増(同7.8%増)、災害復旧事業費が32.9%減(同19.7%減)、物件費が災害廃棄物処理事業関係費の減少等により5.2%減(同3.7%増)、補助費等が12.0%減(同8.0%減)、積立金が19.2%増(同4.1%減)などとなっている。

c 決算収支

特定被災市町村等の実質収支は2,432億円の黒字で、前年度と比べると48億円減少(全国では1,116億円減少)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災市町村等の地方債現在高は6兆3,145億円で、前年度末と比べると0.9%増(全国では0.4%増)、債務負担行為額は1兆8,003億円で、前年度末と比べると0.9%増(同2.3%増)、積立金現在高は3兆316億円で、前年度末と比べると4.6%増(同2.4%増)となっている。

(2)公営企業会計

地方公営企業については、「東日本大震災財特法」第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である9県及び「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」の別表第1に定める特定被災地方公共団体である178市町村(以下、特定被災地方公共団体である県及び市町村(当該団体が加入する一部事務組合等を含む。)を「特定被災地方公共団体」という。)を対象として、東日本大震災の災害復旧事業に係る一般会計からの繰出基準の特例等を講じている。

特定被災地方公共団体における地方公営企業の決算状況は次のとおりである。

ア 特定被災地方公共団体における公営企業の経営状況[資料編:第140表

(ア)総収支

特定被災地方公共団体における法適用企業と法非適用企業を合わせた収支の状況(建設中のものを除く。)は、黒字事業が826事業(事業数全体の88.5%)で、前年度(844事業)に比べ18事業、2.1%減少しており、黒字額は906億円で、前年度(999億円)に比べ93億円、9.3%減少している。また、赤字事業は107事業(事業数全体の11.5%)で、前年度(94事業)に比べ13事業、13.8%増加しており、赤字額は1,498億円で、前年度(409億円)に比べ1,089億円、266.1%増加している。

特定被災地方公共団体における公営企業の総収支は592億円の赤字で、前年度(590億円の黒字)に比べ1,182億円、200.3%減少している。

前年度に比べ収支が改善した事業は7事業あり、ガス事業で25億円(対前年度比365.0%増)の改善と最も大きく、次いでその他事業で8億円(同137.2%増)、港湾整備事業で3億円(同24.5%増)の改善となっている。一方、前年度に比べ収支が悪化した事業は8事業あり、病院事業で658億円(対前年度比6,027.0%減)の悪化と最も大きく、次いで宅地造成事業で502億円(同304.8%減)、水道事業で44億円(同11.3%減)の悪化となっている。

また、前年度に比べ黒字事業数が増加し、赤字事業数が減少した事業は3事業あり、下水道事業においては、黒字事業が3事業増加、赤字事業が2事業減少している。

(イ)法適用企業の状況[資料編:第141表第143表

特定被災地方公共団体における法適用企業の純損益の状況をみると、黒字事業は225事業(対前年度比13事業、5.5%減)で、建設中のものを除いた328事業の68.6%となっており、赤字事業は103事業(同14事業、15.7%増)で、同31.4%となっている。

総収益(経常収益+特別利益)は1兆2,725億円で、前年度(1兆1,720億円)に比べ1,005億円、8.6%の増加、総費用(経常費用+特別損失)は1兆3,553億円で、前年度(1兆1,328億円)に比べ2,224億円、19.6%の増加であり、この結果、純損益は828億円の赤字となっており、前年度黒字額(392億円)に比べ1,219億円、311.4%減少している。また、総収支比率は93.9%と前年度より9.6ポイント低下している。

なお、総収益に占める料金収入の割合は74.8%(前年度81.2%)と前年度に比べ6.4ポイント低下している。

経常損益(純損益−特別損益)の状況をみると、経常利益を生じた事業数は248事業(対前年度比13事業、5.5%増)で、経常損失を生じた事業数は80事業(同12事業、13.0%減)となっている。経常損失を生じた事業数の全体事業数(建設中のものを除く。)に占める割合は24.4%と前年度より3.7ポイント低下しており、事業別にみると、ガス事業、下水道事業、工業用水道事業等において低下している。

経常収益(営業収益+営業外収益)は1兆2,435億円で、前年度(1兆1,631億円)に比べ804億円、6.9%の増加となっており、経常費用(営業費用+営業外費用)は1兆1,749億円で、前年度(1兆1,155億円)に比べ594億円、5.3%の増加となっている。なお、経常損益は685億円の黒字で、前年度(475億円の黒字)に比べ210億円、44.2%増加している。また、経常収支比率は105.8%と前年度より1.6ポイント上昇している。

(ウ)法非適用企業の状況[資料編:第142表

特定被災地方公共団体における法非適用企業全体の形式収支(歳入歳出差引額)は585億円の黒字であり、前年度(560億円の黒字)に比べ25億円、4.5%増加している。また、この額から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は236億円の黒字であり、前年度(198億円の黒字)に比べ38億円、19.0%の増加となっている。

実質収支で黒字を生じた事業は601事業で、全事業数(建設中のものを除く。)の99.3%、赤字を生じた事業は4事業で全事業数の0.7%となっている。黒字事業の実質黒字額は237億円で、前年度(214億円)に比べ23億円、10.7%増加している。また、赤字事業の実質赤字額は0.4億円で、前年度(15億円)に比べ15億円、97.3%減少しており、営業収益(受託工事収益を除く。)に対する実質赤字額(赤字比率)は0.0%(前年度0.8%)となっている。

イ 特定被災地方公共団体における公営企業の料金収入[資料編:第143表

料金収入は1兆850億円で、前年度(1兆771億円)に比べ79億円、0.7%増加している。

前年度に比べ料金収入が増加した事業は9事業あり、下水道事業で29億円(対前年度比2.3%増)の増加と最も大きく、次いで宅地造成事業で27億円(同5.0%増)、病院事業で16億円(同0.4%増)の増加となっている。一方、前年度に比べ料金収入が減少した事業は6事業あり、最も大きいのは水道事業で23億円(対前年度比0.7%減)の減少となっている。

ウ 特定被災地方公共団体における公営企業の他会計繰入金[資料編:第144表

他会計からの繰入金は4,454億円で、前年度(4,191億円)に比べ263億円、6.3%増加している。

この内訳をみると、収益的収入として2,369億円、繰入率(収益的収入に対する繰入金の割合)15.0%、資本的収入として2,086億円、繰入率(資本的収入に対する繰入金の割合)31.7%となっており、前年度に比べ収益的収入への繰入れは38億円、1.6%減少しており、資本的収入への繰入れは301億円、16.9%増加している。

前年度に比べ他会計繰入金が減少した事業は8事業あり、水道事業で39億円(対前年度比12.5%減)の減少と最も大きく、次いで観光施設事業で13億円(同59.9%減)、港湾整備事業で11億円(同7.3%減)の減少となっている。一方、前年度に比べ他会計繰入金が増加した事業は7事業あり、最も大きいのは宅地造成事業で257億円(対前年度比83.5%増)の増加となっている。

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