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平成28年版
地方財政白書
(平成26年度決算)

7 地方公営企業等の状況

(1)地方公営企業

ア 概況

(ア)事業数[資料編:第114表

平成26年度末において、地方公営企業を経営している団体数は1,785団体(企業団・一部事務組合等でのみ地方公営企業を経営している5団体及び特別区を含む。)であり、その内訳は47都道府県、20政令指定都市、1,718市区町村となっている(地方公営企業を経営していない団体は3団体)。

これらの団体が経営している地方公営企業の事業数は8,662事業で、前年度末と比べると41事業減少している。これを事業別にみると、第79図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業(簡易水道事業を含む。以下同じ。)、病院事業の順となっている。

(イ)業務の状況

地方公営企業は、住民の生活水準の向上を図る上で大きな役割を果たしている。各事業全体の中で地方公営企業が占める割合は、第20表のとおりである。

平成26年度における主要な事業の業務の状況についてみると、次のとおりとなっている。

a 水道事業

水道事業(用水供給事業を除く。)においては、配水能力6,948万4千m3/日、導送配水管74万5,366kmを有し、年間152億m3(対前年度比1.3%減)の配水を行っている。また、給水人口は平成26年度末で1億2,443万3千人で、全国人口に対する割合は97.0%に達している。

b 工業用水道事業

工業用水道事業においては、配水能力2,163万4千m3/日、導送配水管8,728kmを有し、年間43億51百万m3(対前年度比1.4%減)の配水を行っている。また、契約水量は1,666万3千m3/日(同0.9%減)となっている。

c 都市高速鉄道事業

都市高速鉄道事業においては、車両4,564両、営業路線540kmを有している。また、年間輸送人員は30億93百万人(対前年度比1.4%増)となっている。

d バス事業

バス事業においては、車両7,838両、営業路線7,620kmを有している。また、年間輸送人員は9億31百万人(対前年度比0.2%増)となっている。

e 病院事業

病院事業においては、816病院、病床18万7,947床を有している。また、年延患者数は1億3,217万人(対前年度比3.9%減)であり、13年連続の減少となっている。

f 下水道事業

下水道事業においては、現在晴天時処理能力6,193万m3/日、下水管布設延長51万2,927kmを有している。また、年間有収水量(流域下水道分は除く。)は110億m3(対前年度比0.5%減)となっている。

(ウ)職員数[資料編:第115表

平成26年度末における地方公営企業に従事する職員の数は34万2,782人で、前年度末と比べると0.9%減となっている。

これを事業別にみると、第80図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっており、これら4事業で職員数全体の94.0%を占めている。また、行政改革の推進による定員管理の適正化等により、水道事業、下水道事業等において職員数が減少している。

(エ)決算規模等[資料編:第116表

決算規模は18兆7,789億円で、地方公営企業会計基準の見直しに伴う総費用の増加等により、前年度と比べると1兆9,073億円増加(11.3%増)となっており、普通会計歳出決算額の19.1%(前年度17.3%)に相当する規模となっている。

これを事業別にみると、第81図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、病院事業、水道事業、宅地造成事業の順となっている。

また、建設投資額の推移は、第82図のとおりであり、平成26年度の額は3兆7,419億円で、前年度と比べると1,269億円増加(3.5%増)となっており、3年連続で増加している。これは、普通会計の普通建設事業費の25.3%(前年度25.5%)に相当する規模となっている。

これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、病院事業、交通事業の順となっている。建設投資額が前年度より増加した主な事業は、水道事業(対前年度比854億円増加、7.9%増)、下水道事業(同273億円増加、1.8%増)、病院事業(同218億円増加、4.9%増)、交通事業(同111億円増加、7.3%増)となっている。

(オ)全体の経営状況

法適用企業と法非適用企業を合わせた全体の経営状況をみると、第21表のとおりであり、黒字事業数は全体の85.5%、赤字事業数は14.5%で、全体としては5,252億円の赤字となっている(前年度5,081億円の黒字)。また、赤字額が前年度に比べて増加した主な理由については、地方公営企業会計基準の見直しに伴い、特別損失(退職給付引当金不足額等)の計上等に伴う総費用の増加等が挙げられる。

(カ)料金収入

料金収入は8兆9,029億円で、前年度と比べると385億円減少(0.4%減)となっている。これを事業別にみると、第83図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっている。

(キ)企業債の状況

資本的支出に充当された企業債の発行額の状況は、第84図のとおりであり、発行額は2兆3,889億円で、前年度と比べると1,191億円増加(5.2%増)となっている。

これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、病院事業、宅地造成事業の順となっている。

企業債借入先別現在高の推移は、第85図のとおりであり、平成26年度末の額は46兆8,296億円で、前年度末と比べると1兆5,589億円減少(3.2%減)となっている。これを借入先別にみると、政府資金が最も大きな割合を占め、以下、地方公共団体金融機構、市場公募の順となっている。

(ク)他会計繰入金の状況

他会計からの繰入金は3兆1,154億円で、前年度と比べると105億円減少(0.3%減)となっている。

この内訳をみると、収益的収入として2兆359億円(収益的収入に対する割合15.6%)、資本的収入として1兆795億円(資本的収入に対する割合23.4%)となっている。

これを事業別にみると、下水道事業への繰入額が最も大きな割合(繰入額全体の57.4%)を占め、以下、病院事業(同23.4%)、水道事業(同6.7%)、交通事業(同3.5%)の順となっている。

(ケ)法適用企業の経営状況[資料編:第117表

a 損益収支

法適用企業の経営状況を表すものには、純損益、経常損益、総収支比率、経常収支比率等がある。純損益とは、当該年度の総合的な収支状況を表し、総収益が総費用を上回る場合の差額が純利益であり、逆に総費用が総収益を上回る場合の差額が純損失である。

経常損益とは、純損益から固定資産売却益等の臨時的な収益(特別利益)や、過年度の職員給与費等の費用(特別損失)を除いたものをいい、当該年度の経営活動の結果を表し、経常収益が経常費用を上回る場合の差額が経常利益であり、逆に経常費用が経常収益を上回る場合の差額が経常損失である。

総収支比率とは総費用に対する総収益の割合、ここでいう経常収支比率とは経常費用に対する経常収益の割合であり、それぞれ100%を下回ると費用が収益を上回っている状態を意味することになる。

法適用企業の総収益(経常収益+特別利益)は11兆2,097億円、総費用(経常費用+特別損失)は11兆8,320億円となっている。この結果、純損益は6,223億円の赤字となっており、総収支比率は94.7%と前年度より9.6ポイント低下している。また、経常収益(営業収益+営業外収益)は10兆8,620億円、経常費用(営業費用+営業外費用)は10兆2,237億円となっている。この結果、経常損益は6,384億円の黒字となっており、経常収支比率は106.2%と前年度より1.7ポイント上昇している。

経常収支比率の推移をみると、平成3年度以降100%を下回る状況が続いていたが、平成15年度からは12年連続で100%を上回っている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第22表のとおりである。

b 累積欠損金

過去の年度から通算した純損益における損失の累積額である累積欠損金は4兆5,593億円で、前年度と比べると2,409億円減少(5.0%減)となっている。また、累積欠損金合計額に占める割合が大きい事業は、交通事業(累積欠損金合計額の42.4%)、病院事業(同39.3%)である。

c 不良債務

貸借対照表日現在において、流動負債の額(建設改良費等の財源に充てるための企業債等を除く。)が流動資産の額(翌年度へ繰り越される支出の財源充当額を除く。)を上回る場合の当該超過額である不良債務は1,923億円で、前年度と比べると110億円増加(6.1%増)となっている。不良債務の大きい事業は、交通事業(不良債務額全体の73.7%)、下水道事業(同10.5%)、病院事業(同9.8%)である。

d 資本収支

建設投資や企業債の償還金等の支出である資本的支出は5兆7,841億円で、前年度と比べると2,930億円増加(5.3%増)となっている。これに対する財源は、企業債等の外部資金が2兆9,296億円、損益勘定留保資金等の内部資金が2兆7,988億円、財源不足額は558億円となっている。

資本的支出のうち建設改良費は2兆7,873億円で、前年度と比べると1,369億円増加(5.2%増)となっている。建設改良費が大きい事業は、水道事業(建設改良費全体の38.3%)、下水道事業(同31.5%)、病院事業(同16.7%)である。

(コ)法非適用企業の経営状況[資料編:第119表

法非適用企業の実質収支をみると、黒字事業数は法非適用企業全体の98.2%、赤字事業数は1.8%を占めており、全体では971億円の黒字(前年度923億円の黒字)となっている。

(サ)地方公営企業会計基準の見直し(法適用企業)

地方公営企業会計基準は、昭和41年以来大きな改正がされていない地方公営企業会計制度と、国際基準を踏まえ見直されている民間の企業会計基準との間に生じた違いの整合性を図る必要が生じたことから、地方公営企業法施行令等の一部を改正する政令(平成24年政令第20号)により地方公営企業法施行令等を改正し、平成26年度予決算から適用となった。改正の主なものは(1)従来は、減価償却を行わないことができた補助金等を充当した部分の固定資産について、すべて減価償却の対象とし、補助金等は「資本」から「負債」に計上すること(2)時価が帳簿価額より下落しているたな卸資産(造成した土地等)に時価評価を義務付けすること(3)帳簿価額が収益性に比べ過大になっている固定資産を減額する仕組(減損会計)を導入すること(4)従来は、資本に計上されていた企業債等(建設改良費等の財源に充てるための企業債や借入金)を負債に計上すること(5)従来は、計上が任意とされていた引当金(退職給付引当金、貸倒引当金等)の計上を義務化することである。

今回の地方公営企業会計基準の見直しを通じて、本来認識することが適当な収益、費用を、発生時点ですべて計上することにより、損益構造をより明らかにするとともに、固定資産の減価償却制度の改正等により現在の資産の状況等がより明らかになったものである。

平成26年度の決算における、地方公営企業会計基準の見直しの主な影響は次のとおりとなっている(第86図第87図)。

a 貸借対照表への影響

(a) 資産

これまで減価償却を行っていなかった固定資産(補助金等充当部分)について、すでに償却した部分に相当する額を減額したことや、収益性が低下した固定資産を減額(減損会計)したこと等により、資産(固定資産)は6兆6,858億円減少している。

また、時価評価によるたな卸資産の減額等により、資産(土地造成)は7,906億円減少している。

これらの影響等により、総資産は87兆498億円となり、前年度に比べ7兆5,206億円減少している。

(b) 負債・資本

これまで減価償却を行っていなかった固定資産(補助金等充当部分)に充当された補助金等(これまで資本剰余金に計上)について、すでに償却した部分に相当する額を減額(資本剰余金の減)するとともに、未償却相当額を資本(資本剰余金)から負債(長期前受金)に計上した(21兆1,716億円)。

また、これまで資本(借入資本金)に計上していた企業債等を、負債(固定負債又は流動負債)に計上した(31兆3,882億円)。

さらに、退職給付引当金等の計上義務付けに伴い、負債に計上する引当金は前年度に比べ7,974億円増加している。

これらの影響等により、資本と負債の比率は前年度の9:1から3:7に大きく変化している。ただし、返済義務のない負債である長期前受金が含まれていることに留意が必要である(長期前受金を資本に含めた場合の資本と負債の比率は6:4となる。)。

(c) 資本不足

個別の地方公営企業を見た場合、法適用企業(3,063事業)のうち2,848事業(93.0%)は資産超過で、資本の減少等により、215事業(7.0%)が資本不足となっている(返済義務のない長期前受金を資本に含めた場合、2,954事業(96.4%)は資産超過で、109事業(3.6%)が資本不足となる。)。

(d) 累積欠損金

補助金等の計上方法の変更に伴い、資本剰余金の一部を利益剰余金へ振り替えたことにより資本剰余金が減少する一方、利益剰余金は前年度に比べ4兆5,390億円増加していること等から、地方公営企業全体の累積欠損金は前年度に比べ2,409億円減少している。

b 損益計算書への影響

(a) 総費用

これまで減価償却を行っていなかった固定資産(補助金等充当部分)について、減価償却を行うことにより、費用(減価償却費)は前年度に比べ6,206億円増加している。

また、退職給付引当金の一括計上等により費用(特別損失)は前年度に比べ7,406億円増加している。

これらの影響により、総費用は11兆8,320億となり、前年度に比べ2兆1,927億円増加している。

(b) 総収益

補助金等の減価償却見合い分について、収益(長期前受金戻入)に8,895億円を計上したこと等から、総収益は11兆2,097億円となり、前年度に比べ1兆1,545億円増加している。

(c) 総収支

上記(a)、(b)等により、総収支(純損益)は平成25年度の4,159億円の黒字から平成26年度は6,223億円の赤字となっている。これは、退職給付引当金の一括計上等により費用(特別損失)が増加したことが大きな要因であるが、平成27年度以降は、一括計上は行われないため、特別損失は減少する見込みである。

退職給付引当金は全企業職員が退職した場合に支給すべき退職手当の支払いに備えて設けられるものであり、直ちに現金化されるものではないことに留意が必要である(退職給付引当金の一括計上等(7,406億円)を控除した場合には、1,183億円の黒字となる。)。

(シ)経営健全化・公営企業会計の適用推進等の状況

各地方公共団体が公営企業の経営健全化等に取り組むに当たっては、その前提として、事業そのものの意義や提供しているサービスの必要性について検証し、事業に意義、必要性がないと判断された場合には、速やかに、廃止等を行うことが求められる。

また、事業の継続、サービスの提供自体は必要と判断された場合であっても、採算性の判断を行い、完全民営化、指定管理者制度の導入等について検討を行うことが必要となる。

経営のあり方について検討を行った結果、引き続き公営企業として事業を行う場合には、施設等の老朽化による更新投資の増やサービス需要の変化、人口減少に伴う料金収入の減少等、経営環境が厳しさを増す中にあっても、事業、サービスの提供を安定的に継続できるよう、中長期的な視野に基づく計画的な経営に取り組み、徹底した効率化・経営健全化を行うことが求められる。

このため、総務省においては、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付け総務省自治財政局公営企業課長等通知)を発出し、中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」の策定、効率化・経営健全化の取組等について、手順・留意点等を示している。

各公営企業においては、「経営戦略」を策定し、それに基づく計画的かつ合理的な経営を行うことにより、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を実現していくことが強く求められる。

また、各公営企業が経営基盤の強化等により的確に取り組むためには、自らの損益・資産等を正確に把握することが必要であり、「地方公営企業法」を適用していない公営企業においては、同法の全部又は一部を積極的に適用し公営企業会計を導入することが必要である(詳細は第3部1(3)参照)。

イ 事業別状況[資料編:第114表第119表

(ア)水道事業

a 事業数

(a) 上水道事業

地方公共団体が経営する上水道事業で、平成26年度決算対象となるものは、1,348事業であり、このうち、末端給水事業は1,276事業、用水供給事業は72事業(うち建設中3事業)である。これを経営主体別にみると、末端給水事業は、都県営が4事業、政令指定都市営が19事業、市営が687事業、町村営が517事業、企業団営等が49事業であり、用水供給事業は、府県営が22事業、政令指定都市営が1事業、市営が1事業、企業団営等が48事業となっている。

(b) 簡易水道事業

地方公共団体が経営する簡易水道事業で、平成26年度決算対象となるものは、749事業(うち法適用26事業)である。これを経営主体別にみると、町村営が491事業(うち建設中1事業)で全体の65.6%を占め、以下、市営が250事業(うち建設中1事業)、政令指定都市営が4事業、一部事務組合等営が3事業、県営が1事業となっている。

b 業務の状況

水道事業の給水人口(用水供給事業を除く。)は、平成26年度末で1億24百万人(上水道事業1億21百万人、簡易水道事業3百万人)であり、前年度と比べると微減となっている。また、平成26年度の年間総有収水量(用水供給事業を含む。)は181億6百万m3(前年度184億28百万m3)、給水人口1人当たり1日平均有収水量(用水供給事業を除く。)は298l(同303l)となっている。

c 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

上水道事業及び法適用の簡易水道事業の総収益は3兆2,328億円、総費用は3兆566億円となっており、この結果、純損益は1,762億円の黒字(前年度2,467億円の黒字)、総収支比率は105.8%となっている。また、経常収益は3兆1,592億円、経常費用は2兆7,940億円となっており、この結果、経常損益は3,652億円の黒字、経常収支比率は113.1%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第23表のとおりである。

累積欠損金は864億円で、前年度と比べると42.8%減となっている。なお、不良債務は0.05億円(前年度0.4億円)である。

(ii) 資本収支

資本的支出は、第88図のとおりであり、平成26年度の額は1兆7,156億円で、前年度と比べると1.3%増となっている。これに対する財源は、外部資金が5,477億円、内部資金が1兆1,645億円で、財源不足額は34億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆676億円で、前年度と比べると7.7%増、企業債償還金は5,743億円で、前年度と比べると8.8%減となっている。

(iii) 給水原価と料金

有収水量1m3当たりの給水原価(用水供給事業を除く。)は164.35円で、前年度と比べると5.2%減となっている。給水原価の内訳をみると、資本費が56.33円、職員給与費が21.70円、受水費が29.75円、その他の経費が56.58円となっている。これに対して1m3当たりの供給単価は171.79円であり、給水原価が供給単価を7.44円下回る状態となっている。

また、平成26年度中に料金改定(消費税率及び地方消費税率の改定に伴う料金改定を含む。)を実施した水道事業(用水供給事業を含む。)は1,130事業(前年度82事業)で、営業中の事業の82.5%となっている。

(b) 法非適用企業

簡易水道事業における法非適用企業は723事業(うち建設中2事業)で、実質収支をみると、黒字事業が718事業で52億円の黒字、赤字事業が3事業で0.3億円の赤字となっており、差引51億円の黒字となっている。

(イ)工業用水道事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する工業用水道事業で、平成26年度決算対象となるものは、154事業(うち建設中4事業)である。これを経営主体別にみると、都道府県営が40事業、政令指定都市営が9事業、市営が81事業、町村営が15事業、企業団営が9事業となっている。

施設数は257施設、給水先事業所数は6,002箇所、年間総配水量は43億51百万m3となっている。また、施設利用率(1日平均配水量を現在配水能力で除したもの。)の平均は55.0%(前年度55.9%)となっている。

b 経営状況

(a) 損益収支

工業用水道事業の総収益は1,908億円、総費用は2,162億円となっており、この結果、純損益は254億円の赤字(前年度274億円の黒字)、総収支比率は88.2%となっている。また、経常収益は1,534億円、経常費用は1,268億円となっており、この結果、経常損益は266億円の黒字、経常収支比率は121.0%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第24表のとおりである。

累積欠損金は690億円で、前年度と比べると34.5%増となっている。なお、不良債務を有する事業は2事業で、前年度と比べると皆増となっており、その額は2億円となっている。

(b) 資本収支

資本的支出は1,103億円で、前年度と比べると6.7%減となっている。これに対する財源は、外部資金が415億円、内部資金が688億円で、財源不足額は生じていない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は455億円で、前年度と比べると8.8%増、企業債償還金は453億円で、前年度と比べると7.0%減となっている。

(c) 給水原価と供給単価

有収水量1m3当たりの給水原価は26.21円(資本費12.04円、職員給与費3.28円、その他の経費10.89円)となっており、これに対して1m3当たりの供給単価は30.16円となっている。

これを補助事業と単独事業に分けてみると、単独事業では供給単価(15.08円)が給水原価(12.45円)を2.63円上回っており、補助事業では供給単価(34.05円)が給水原価(29.76円)を4.29円上回っている。

c 経営健全化措置

工業用水道事業の経営健全化措置については、平成14年度から水利権の転用等を伴う未稼動資産等の整理により抜本的な経営健全化策に取り組む地方公共団体を対象として未稼動資産等整理経営健全化対策を講じたところであり、1団体2施設が取組を行っている(経営健全化団体の指定は平成18年度をもって終了している。)。

(ウ)交通事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する交通事業で、平成26年度決算対象となるものは、91事業である。これを事業別にみると、バスが30事業、都市高速鉄道が9事業、路面電車が5事業、モノレール等が2事業、船舶が45事業となっている。

これらによる年間輸送人員は41億4,098万人、1日平均1,135万人(対前年度比1.1%増)である。1日平均輸送人員を事業別にみると、バスが255万人(同0.2%増)、都市高速鉄道が847万人(同1.4%増)、路面電車が14万人で前年度とほぼ同数、その他が18万人(同1.7%増)となっている。

公営交通が国内の旅客輸送機関に占める割合を輸送人員からみると、第89図のとおりであり、バスについては20.7%、鉄道については13.6%となっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

法適用の交通事業の総収益は8,116億円、総費用は9,246億円となっており、この結果、純損益は1,130億円の赤字(前年度769億円の黒字)、総収支比率は87.8%となっている。また、経常収益は7,969億円、経常費用は7,163億円となっており、この結果、経常損益は806億円の黒字、経常収支比率は111.3%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第25表のとおりである。

累積欠損金は1兆9,314億円で、前年度と比べると8.7%減となっている。また、不良債務は1,417億円で、前年度と比べると15.1%増となっている。

これを事業別にみると、バス事業においては、経常損益は47億円の黒字となっており、純損益は558億円の赤字となっている。また、累積欠損金は1,596億円で、前年度と比べると32.8%増となっており、不良債務は275億円で、前年度と比べると179.8%増となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第26表のとおりである。

都市高速鉄道事業においては、経常損益は759億円の黒字となっており、純損益は516億円の赤字となっている。また、累積欠損金は1兆7,055億円で、前年度と比べると11.6%減となっており、不良債務は756億円で、前年度と比べると3.7%増となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第27表のとおりである。

(ii) 資本収支

資本的支出は4,761億円(うち都市高速鉄道事業4,348億円、バス事業287億円)で、前年度と比べると8.6%増となっている。これに対する財源は、外部資金が2,380億円、内部資金が2,111億円で、財源不足額は270億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1,603億円(うち都市高速鉄道事業1,372億円、バス事業125億円)で、前年度と比べると6.7%増、企業債償還金は2,762億円(うち都市高速鉄道事業2,595億円、バス事業148億円)で、前年度と比べると10.0%増となっている。

(b) 法非適用企業

交通事業における法非適用企業は船舶運航事業の38事業で、実質収支をみると、黒字事業が37事業で4億円の黒字、赤字事業は1事業で0.3億円の赤字となっている。

c 地下鉄事業の経営健全化措置

地下鉄事業の経営健全化措置については、不良債務の計画的な解消及びその発生の抑制を図ること等を目的に、資金不足額について一般会計からの繰出し(一般会計出資)分を起債できることとする地下鉄事業経営健全化対策を講じており、平成26年度末現在において1団体が取組を行っている。

(エ)電気事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する電気事業で、平成26年度決算対象となるものは、86事業(うち建設中2事業)であり、法適用企業が28事業、法非適用企業が58事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が27事業、政令指定都市営が4事業、市営が30事業、町村営が22事業、一部事務組合等営が3事業となっている。施設数は443施設で、最大出力の合計は275万kW(建設中を含む。)、年間発電電力量は90億12百万kWh、年間売電電力量は85億73百万kWhとなっている。

上記のうち、各発電型式における稼働中の施設数、最大出力、年間発電電力量、年間売電電力量は第28表のとおりである。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

法適用の電気事業の総収益は882億円、総費用は747億円となっており、この結果、純損益は135億円の黒字(前年度119億円の黒字)、総収支比率は118.1%となっている。また、経常収益は799億円、経常費用は636億円となっており、この結果、経常損益は163億円の黒字、経常収支比率は125.7%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第29表のとおりである。

累積欠損金は27億円で、前年度と比較すると9.4%増となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(ii) 資本収支

資本的支出は553億円で、前年度と比べると15.5%増となっている。これに対する財源は、外部資金が258億円、内部資金が296億円で、財源不足額はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は315億円で前年度に比べると17.8%増、企業債償還金は109億円で、前年度と比べると4.9%減となっている。

(b) 法非適用企業

電気事業における法非適用企業は、水力発電事業、ごみ発電事業、スーパーごみ発電事業、風力発電事業及び太陽光発電事業の58事業(うち建設中2事業)で、実質収支をみると55事業において黒字であり、黒字額は35億円となっている。一方、赤字を生じた事業は1事業である。

(オ)ガス事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営するガス事業で、平成26年度決算対象となるものは、28事業である。これを経営主体別にみると、政令指定都市営が1事業、市営が21事業、町村営が6事業となっている。公営ガス事業の供給戸数(契約数)は83万戸(対前年度比2.4%減)で、供給区域内戸数に対する普及率は67.2%となっている。また、販売量は350億39百万MJで、前年度と比べると2.7%減となっている。

ガス事業全体に占める公営ガス事業の割合をみると、事業数で12.6%、供給戸数で2.8%、販売量で2.3%となっている。なお、民間大手4社を除いた割合では、供給戸数で10.2%、販売量で8.5%となっている。

b 経営状況

(a) 損益収支

ガス事業の総収益は1,137億円、総費用は1,071億円となっており、この結果、純損益は66億円の黒字(前年度20億円の黒字)、総収支比率は106.2%となっている。また、経常収益は1,078億円、経常費用は1,041億円となっており、この結果、経常損益は36億円の黒字、経常収支比率は103.5%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第30表のとおりである。

累積欠損金は378億円で、前年度と比べると20.6%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(b) 資本収支

資本的支出は273億円で、前年度と比べると8.4%増となっている。これに対する財源は、外部資金が77億円、内部資金が196億円で、財源不足額はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は116億円で、前年度と比べると4.1%増、企業債償還金は110億円で、前年度と比べると14.7%減となっている。

(カ)病院事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する病院事業(「地方公営企業法」を適用する病院事業)で、平成26年度決算対象となるものは、639事業(うち建設中1事業)であり、これらの事業が有する病院(以下「自治体病院」という。)数は816病院である。これを経営主体別にみると、都道府県立が153病院(37都道府県)、政令指定都市立が30病院(15政令指定都市)、市立が357病院(302市)、町村立が171病院(165町村)及び一部事務組合等立が105病院(77組合)となっている。

一般病院784病院のうち病床数300床以上の病院は、31.9%に当たる250病院となっており、地域における基幹病院、中核病院として地域医療を支えている。

一方、病床数が150床未満であり、直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上となる位置に所在している等の条件下にある「不採算地区病院」は、一般病院の38.0%に当たる298病院となっており、民間医療機関による診療が期待できない離島、山間地等のへき地における医療の確保のため、重要な役割を果たしている。

さらに、自治体病院全体の85.0%に当たる694病院が救急病院として告示を受けており、地域の救急医療を担っている。

平成26年度末における病床数は18万8千床で、前年度と比べると3.3%減となり、入院、外来延患者数は1億3千万人で、3.9%減となっている。

また、病床利用率は72.8%(前年度73.4%)、外来入院患者比率(年延外来患者数を年延入院患者数で除したもの)は167.0%(前年度167.1%)となっている。なお、全国の病院に占める自治体病院の数及び病床数の推移は、第90図のとおりである。

b 経営状況

(a) 損益収支

病院事業の総収益は4兆468億円、総費用は4兆5,320億円となっており、この結果、純損益は4,852億円の赤字(前年度429億円の赤字)、総収支比率は89.3%となっている。これは会計基準の見直しにより、退職給付引当金の計上不足額を原則一括で特別損失に計上したことや、消費税率引上げに伴う控除対象外消費税の増加等によるものである。また、経常収益は3兆9,361億円、経常費用は3兆9,736億円となっており、この結果、経常損益は375億円の赤字、経常収支比率は99.1%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第31表のとおりである。

累積欠損金は1兆7,904億円で、前年度と比べると9.1%減となっている。また、不良債務は189億円で、前年度と比べると102.5%増となっている。

また、医業費用に対する医業収益の割合である医業収支比率は89.9%(前年度91.9%)となっており、これを病院の種別にみると、一般病院が90.4%(同92.4%)、精神科病院が67.4%(同69.0%)となっている。

(b) 資本収支

資本的支出は8,006億円で、前年度と比べると1.1%増となっている。これに対する財源は、外部資金が5,616億円、内部資金が2,303億円で、財源不足額は88億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は4,667億円で、前年度と比べると4.9%増、企業債償還金は3,068億円で、前年度と比べると1.0%増となっている。

(キ)下水道事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する下水道事業で、平成26年度決算対象となるものは、3,639事業(うち建設中17事業)であり、法適用企業が591事業、法非適用企業が3,048事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が81事業、政令指定都市営が50事業、市営が1,894事業、町村営が1,588事業、一部事務組合等営が26事業となっている。

下水道事業の平成26年度末における現在処理区域内人口は1億299万人、現在処理区域面積は498万haとなっている。また、年間総処理水量(雨水処理水量と汚水処理水量の合計。ただし、流域下水道分は流域関連公共下水道として水量を計上しているため除く。)は150億m3で、前年度と比べると0.3%増となっており、年間有収水量は110億m3で、前年度と比べると0.5%減となっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

法適用企業の下水道事業の総収益は2兆2,892億円で、前年度と比べると29.9%増となっている。その内訳をみると、料金収入が9,674億円(総収益に占める割合42.3%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が7,260億円(同31.7%)等となっている。一方、総費用は2兆1,503億円で、前年度と比べると28.0%増となっており、うち地方債利息が3,178億円(総費用に占める割合14.8%)となっている。この結果、純損益は1,389億円の黒字(前年度829億円の黒字)、総収支比率は106.5%となっている。また、経常収益は2兆2,344億円、経常費用は2兆884億円となっており、この結果、経常損益は1,460億円の黒字、経常収支比率は107.0%となっている。純損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第32表のとおりである。

累積欠損金は1,143億円で、前年度と比べると42.0%減となっている。また、不良債務は202億円で、37.7%増となっている。

(ii) 資本収支

資本的支出は2兆725億円で、前年度と比べると4.6%増となっている。これに対する財源は、外部資金が1兆1,175億円、内部資金が8,822億円で、財源不足額は156億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は8,782億円で、前年度と比べると3.9%増、企業債償還金は1兆1,368億円で、前年度と比べると1.0%増となっている。

(b) 法非適用企業

下水道事業における法非適用企業の総収益は1兆3,295億円で、前年度と比べると1.9%減となっている。その内訳をみると、料金収入が5,500億円(総収益に占める割合41.4%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が5,786億円(同43.5%)等となっている。一方、総費用は9,012億円で、前年度と比べると1.9%減となっており、うち地方債利息が2,748億円(総費用に占める割合30.5%)となっている。

資本的支出は1兆5,390億円で、前年度と比べると3.8%減となっている。その内訳をみると、建設改良費は6,988億円で、前年度と比べると0.9%減、地方債償還金は8,272億円で、前年度と比べると6.8%減となっている。

実質収支をみると、黒字事業が3,007事業で714億円の黒字、赤字事業が29事業で124億円の赤字となっており、差引590億円の黒字となっている(第32表)。

(c) 全体の経営状況

法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の黒字額は2,306億円、赤字額は326億円となっており、この結果、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)は1,979億円の黒字となっている。

汚水処理原価(汚水処理費を年間有収水量で除したもの)は、150.61円/m3(維持管理費75.93円/m3、資本費74.68円/m3)で、前年度と比べると1.9%減となっており、使用料単価(使用料収入を年間有収水量で除したもの)は、138.64円/m3で、前年度と比べると1.1%増となっている。

その結果、経費回収率(使用料単価を汚水処理原価で除したもの)は92.1%となっており、前年度と比べると2.7ポイント上昇している。回収率が増加した要因としては、企業債利子の減少や料金収入の増加等があるが、適正な回収率に達していない事業は依然として多いことから、引き続き経営の健全化に向けた取組を進めていく必要がある。

法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の建設改良費は1兆5,770億円で、前年度と比べると1.8%増となっている。建設改良費は、平成11年度以来、年々減少していたが、26年度においては更新費用の増加等により微増となっている。

(ク)その他の地方公営企業

a 事業数

地方公共団体は、以上の事業のほかにも各種の事業を経営している。これを事業別にみると、平成26年度決算対象となるものは、港湾整備事業が97事業、市場事業が164事業、と畜場事業が62事業、観光施設事業が316事業、宅地造成事業が443事業、有料道路事業が2事業、駐車場整備事業が226事業、介護サービス事業が577事業及びその他事業が44事業(廃棄物等処理施設、診療所等)となっている。

b 経営状況

その他の地方公営企業の純損益、経常損益、実質収支における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第33表のとおりである。なお、このうち、観光施設事業については、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)が23億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると8.0%減の271億円と改善されているものの、経営状況が悪化している事業については、施設そのものの必要性及び公営企業で運営することの適否について十分検討する必要がある。また、宅地造成事業については、全体の収支は3,080億円の赤字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると155.8%増の4,272億円と増加しており、販売用土地の時価評価額が当該土地の地方債残高を下回っている会計が全体(地方債償還が終了した会計を除く)の約6割を占めている。厳しい経営状況にある事業については、対応を先延ばしにすることなく、早期かつ計画的に経営の健全化を図る必要がある。

(2)国民健康保険事業[資料編:第120表

平成26年度末において国民健康保険事業会計を有する市町村は、1,744団体(20政令指定都市、43中核市、40特例市、687都市、927町村、4一部事務組合等、23特別区)で、前年度末と比べると2団体減少している。また、直営診療所を設置している団体は362団体(2政令指定都市、8中核市、12特例市、148都市、190町村、2一部事務組合)で、前年度末と比べると4団体減少している。

被保険者数は3,304万人であり、加入世帯数は1,982万世帯となっている。これらを前年度末と比べると、被保険者数は93万人減、加入世帯数は29万世帯減となっている。

なお、退職者医療制度の被保険者数及び被扶養者数は140万人で、前年度末と比べると29万人減少(17.3%減)している。

ア 事業勘定

(ア)歳入

事業勘定の歳入決算額は14兆4,110億円で、前年度と比べると352億円増加(0.2%増)している。

歳入の内訳をみると、第91図のとおりであり、国民健康保険税(料)及び国庫支出金の合計で歳入総額の44.2%を占め、前年度(44.3%)と比べると0.1ポイント低下となっている。

それぞれの決算額をみると、国民健康保険税(料)は3兆602億円で、前年度と比べると507億円減少(1.6%減)、国庫支出金は3兆3,089億円で、前年度と比べると506億円増加(1.6%増)している。国庫支出金の主な内訳としては、療養給付費等負担金が2兆4,613億円、財政調整交付金等が8,476億円で、前年度と比べるとそれぞれ348億円増加(1.4%増)、159億円増加(1.9%増)している。

また、都道府県支出金は7,786億円で、前年度と比べると147億円増加(1.9%増)している。

さらに、他会計繰入金は1兆2,497億円で、前年度と比べると690億円増加(5.8%増)している。この内訳をみると、財源補填的な繰入金が3,444億円(対前年度比3.8%増)、国民健康保険の財政基盤の安定を図るための保険基盤安定制度による繰入金が5,184億円(同14.7%増)等となっている。

なお、前期高齢者交付金は、3兆3,539億円で、前年度と比べると77億円増加(0.2%増)している。

(イ)歳出

歳出決算額は14兆1,705億円で、前年度と比べると616億円増加(0.4%増)している。

歳出の内訳をみると、第92図のとおりであり、保険給付費は9兆3,590億円で、前年度と比べると565億円増加(0.6%増)している。

保険給付費の主な内訳をみると、療養諸費等が9兆1,868億円で、前年度と比べると661億円増加(0.7%増)、その他の給付費が1,494億円で、前年度と比べると73億円減少(4.7%減)している。

また、後期高齢者支援金等は1兆8,098億円で、前年度と比べると84億円減少(0.5%減)している。

(ウ)収支

実質収支は2,390億円の黒字(前年度2,645億円の黒字)であり、昭和40年度以降黒字傾向が続いている。

しかし、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、2,040億円の赤字(前年度1,665億円の赤字)となっており、21年連続して赤字となっている。

再差引収支を団体規模別にみると、政令指定都市が1,024億円の赤字(前年度1,035億円の赤字)、中核市が288億円の赤字(同193億円の赤字)、特例市が272億円の赤字(同245億円の赤字)、都市が671億円の赤字(同486億円の赤字)となる一方、町村が71億円の黒字(同131億円の黒字)、一部事務組合等が7億円の黒字(同9億円の黒字)、特別区が137億円の黒字(同154億円の黒字)となっている。

再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は前年度と比べると63団体減少の976団体で、その黒字額は173億円減少の1,638億円となっている。

一方、赤字の団体数は前年度と比べると61団体増加の768団体で、その赤字額は202億円増加の3,678億円となっている。

赤字の団体が占める割合を団体規模別にみると、政令指定都市が85.0%、中核市が62.8%、特例市が75.0%、都市が49.6%、町村が37.9%、特別区が4.3%となっており、特に政令指定都市、中核市及び特例市においては、厳しい財政運営が続いている。

イ 直診勘定

直診勘定の歳入決算額は628億円で、前年度と比べると5億円減少(0.8%減)している。

このうち、診療収入は366億円で、前年度と比べると21億円減少(5.5%減)しており、歳入総額に占める割合は58.4%(前年度61.3%)となっている。他会計繰入金は138億円で、前年度と比べると10億円減少(6.9%減)しており、歳入総額に占める割合は22.0%(前年度23.4%)となっている。

直診勘定の歳出決算額は601億円で、前年度と比べると8億円減少(1.3%減)している。

このうち、総務費は353億円で、前年度と比べると2億円増加(0.6%増)している。また、医業費は183億円で、前年度と比べると16億円減少(8.0%減)しており、歳出総額に占める割合は30.4%(前年度32.6%)となっている。なお、医業費の診療収入に対する割合は49.9%で、前年度と比べて1.3ポイント低下している。

実質収支は26億円の黒字(前年度23億円の黒字)となっているが、この実質収支から他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は、109億円の赤字(同122億円の赤字)となっている。

(3)後期高齢者医療事業[資料編:第121表

後期高齢者医療事業では、保険料の徴収や後期高齢者医療広域連合へ保険料等の納付を行う市町村(1,739団体(20政令指定都市、43中核市、40特例市、687都市、925町村、1広域連合、23特別区))及び後期高齢者医療事業を実施する都道府県区域ごとの後期高齢者医療広域連合(47団体)に特別会計が設けられている。

ア 市町村

市町村の特別会計の歳入決算額は1兆4,839億円で、前年度と比べると696億円増加(4.9%増)している。このうち、被保険者が支払う後期高齢者医療保険料は1兆657億円で、前年度と比べると444億円増加(4.3%増)しており、歳入総額に占める割合は71.8%(前年度72.2%)となっている。

歳出決算額は1兆4,580億円で、前年度と比べると682億円増加(4.9%増)している。このうち、後期高齢者医療広域連合への納付金が、1兆3,783億円で、前年度と比べると630億円増加(4.8%増)しており、歳出総額に占める割合は94.5%(前年度94.6%)となっている。

イ 後期高齢者医療広域連合

(ア)歳入

後期高齢者医療広域連合の歳入決算額は14兆4,820億円で、前年度と比べると5,934億円増加(4.3%増)している。

歳入の内訳をみると、第93図のとおりであり、支払基金交付金が5兆6,452億円(歳入に占める割合39.0%)、国庫支出金が4兆6,375億円(同32.0%)、市町村支出金が2兆4,368億円(同16.8%)、都道府県支出金が1兆1,258億円(同7.8%)で、それぞれ前年度と比べると支払基金交付金が862億円増加(1.6%増)、国庫支出金が2,110億円増加(4.8%増)、市町村支出金が988億円増加(4.2%増)、都道府県支出金が115億円増加(1.0%増)している。

(イ)歳出

後期高齢者医療広域連合の歳出決算額は13兆9,458億円で、前年度と比べると4,835億円増加(3.6%増)している。

歳出の内訳をみると、第94図のとおりであり、保険給付費は13兆4,290億円で、前年度と比べると2,904億円増加(2.2%増)しており、歳出総額の96.3%(前年度97.6%)を占めている。

(ウ)収支

実質収支は47団体全て黒字となっており、その黒字額は5,362億円(前年度4,263億円の黒字)となっている。

(4)介護保険事業[資料編:第122表

介護保険制度を実施する保険者である市町村が設ける介護保険事業会計は、第1号被保険者(65歳以上の者)からの保険料や、第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)の介護納付金分に係る支払基金からの交付金である支払基金交付金等を財源として保険給付等を行う保険事業勘定と、介護給付の対象となる居宅サービス及び施設サービス等を実施する介護サービス事業勘定とに区分される。

なお、市町村が実施する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター、指定訪問看護ステーションの5施設により介護サービスを提供する事業は介護サービス事業として公営企業会計の対象とされている。

平成26年度末の介護保険事業の保険者は、1,579団体(20政令指定都市、43中核市、38特例市、634都市、782町村、39一部事務組合等、23特別区)で、前年度と比べると1団体減少している。また、介護サービス事業勘定を設置している団体は725団体(9政令指定都市、14中核市、16特例市、303都市、363町村、7一部事務組合等、13特別区)で、前年度と比べると11団体減少している。

ア 保険事業勘定

(ア)歳入

保険事業勘定の歳入決算額は9兆6,365億円で、前年度と比べると4,508億円増加(4.9%増)している。

歳入の内訳をみると、第95図のとおりであり、第1号被保険者が支払う保険料が1兆8,934億円(歳入総額に占める割合19.6%)、介護給付費負担金(介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下「介護・予防給付額」という。)の100分の20(施設等給付費にあたっては100分の15)に相当する額)、調整交付金(介護・予防給付額の100分の5に相当する額)等の国庫支出金が2兆1,591億円(同22.4%)、支払基金交付金(第2号被保険者の介護給付金分に係る社会保険診療報酬支払基金からの交付金)が2兆6,040億円(同27.0%)、都道府県の法定負担(介護・予防給付額の100分の12.5(施設等給付費にあたっては100分の17.5)に相当する額)を含む都道府県支出金が1兆3,436億円(同13.9%)、市町村の法定負担分(介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額)を含む他会計繰入金が1兆3,984億円(同14.5%)、介護保険制度の円滑な導入のために設置された基金等の取崩し額である基金繰入金が788億円(同0.8%)等となっている。

また、それぞれ前年度と比べると保険料が693億円増加(3.8%増)、国庫支出金が1,033億円増加(5.0%増)、支払基金交付金が1,148億円増加(4.6%増)、都道府県支出金が597億円増加(4.6%増)、他会計繰入金が670億円増加(5.0%増)、基金繰入金が175億円増加(28.5%増)している。

(イ)歳出

保険事業勘定の歳出決算額は9兆4,664億円で、前年度と比べると4,547億円増加(5.0%増)している。

歳出の内訳をみると、第96図のとおりであり、保険給付費は8兆9,114億円で、前年度と比べると4,135億円増加(4.9%増)しており、歳出総額の94.1%(前年度94.3%)を占めている。

(ウ)収支

実質収支は1,660億円の黒字(前年度1,722億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支についても、1,631億円の黒字(同1,703億円の黒字)となっている。

再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は前年度と同数の1,555団体で、全団体に占める割合は98.5%(前年度98.4%)となっており、その黒字額は70億円減少の1,656億円となっている。

一方、赤字の団体数は前年度と比べると1団体減少の24団体で、全団体に占める割合は1.5%(前年度1.6%)となっており、その赤字額は1億円増加の25億円となっている。

イ 介護サービス事業勘定

介護サービス事業勘定の歳入決算額は292億円で、前年度と比べると3億円減少(1.1%減)している。このうち、利用者の支払う自己負担金を含むサービス収入は115億円(前年度比1.6%増)で、歳入総額に占める割合は39.2%(前年度38.2%)となっている。

普通会計等からの繰入金は152億円で、前年度と比べると1億円増加(0.9%増)しており、歳入総額に占める割合は52.0%(前年度51.0%)となっており、このうち、普通会計からのものが138億円で前年度と比べると1億円増加(0.5%増)している。

歳出決算額は277億円で、前年度と比べると3億円減少(0.9%減)している。このうち、サービス事業費が104億円で、前年度と比べると6億円増加(6.4%増)しており、歳出総額に占める割合は37.4%(前年度34.8%)となっている。

また、公債費の元利償還金は、86億円で、前年度と比べると3億円減少(3.8%減)しており、歳出総額に占める割合は31.1%(前年度32.1%)となっている。

なお、実質収支は13億円の黒字(前年度14億円の黒字)となっており、再差引収支は134億円の赤字(同132億円の赤字)となっている。

(5)その他の事業

ア 収益事業[資料編:第123表

収益事業を実施した地方公共団体の数は延べ289団体で、前年度と同数となっている。

これを事業別にみると、公営競技についてはモーターボート競走事業を施行した団体が105団体と最も多く、以下、自転車競走事業60団体、競馬事業50団体、小型自動車競走事業7団体の順となっている。

また、宝くじは、47都道府県及び20政令指定都市の67団体で発売されている。

これらを団体種類別にみると、都道府県においては延べ67団体、市町村においては延べ222団体が収益事業を実施している。

(ア)経営状況

収益事業の決算額は、歳入3兆461億円、歳出3兆141億円で、前年度と比べると歳入は164億円減少(0.5%減)、歳出は239億円減少(0.8%減)している。

実質上の収支(歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源、他会計からの繰入金、過去の収益を積み立てた基金からの繰入金及び未払金を控除し、他会計への繰出金及び未収金を加えた額)は3,965億円の黒字(前年度4,135億円の黒字)となっている。

普通会計等への収益金の繰出しについて、事業別にみると、競馬事業が10億円(前年度6億円)、自転車競走事業が48億円(同40億円)、小型自動車競走事業が4億円(同4億円)、モーターボート競走事業が100億円(同123億円)、宝くじ事業が3,763億円(同3,971億円)となっている。

(イ)収益金の使途状況

収益金の大部分は普通会計等に繰り入れられ、道路、教育施設、社会福祉施設等の整備事業などの財源として活用されている。その繰入額は3,925億円で、前年度と比べると221億円減少(5.3%減)している。

収益金繰入額の使途状況を目的別にみると、土木費が1,136億円で最も大きな割合(収益金繰入額に占める割合28.9%)を占め、次いで、民生費の766億円(同19.5%)となっており、これらの費目で繰入総額の48.5%を占めている。このほか、教育費が634億円(同16.2%)、衛生費が171億円(同4.4%)、商工費が148億円(同3.8%)等となっている。

イ 共済事業

(ア)農業共済事業[資料編:第125表

農業共済事業を実施した市町村の数は54団体で、前年度と比べると2団体減少している。

農業共済事業会計の決算額は歳入127億円、歳出122億円で、前年度と比べると歳入は2億円減少(1.6%減)、歳出は3億円減少(2.1%減)している。

なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から支払準備金積立額、責任準備金積立額、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、29億円の赤字(前年度32億円の赤字)となっている。

(イ)交通災害共済事業[資料編:第126表

直営方式により交通災害共済事業を実施した地方公共団体は69団体(32市町村、37一部事務組合等)で、前年度と比べると6団体減少している。

また、加入者は平成26年度末で821万人(前年度末839万人)となっている。

交通災害共済事業会計の決算額は歳入60億円、歳出49億円で、前年度と比べると歳入は減少(5.6%減)、歳出は減少(7.0%減)している。

なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から未経過共済掛金、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は12億円の黒字(前年度12億円の黒字)となっている。

ウ 公立大学附属病院事業[資料編:第124表

公立大学附属病院事業を実施した地方公共団体は1団体である。

公立大学附属病院事業会計の決算額は、収益的収支では総収益20億円、総費用20億円となり、前年度と比べると総収益は1億円増加(3.5%増)し、総費用は1億円増加(4.7%増)となっている。

また、資本的収支では資本的収入3億円、資本的支出3億円となり、前年度と比べると、資本的収入は0億円減少(1.5%減)し、資本的支出は0億円減少(1.2%減)となっている。

実質収支は1億円の黒字(前年度1億円の黒字)となっている。

(6)第三セクター等

第三セクター等の状況については、平成27年度の「第三セクター等の状況に関する調査」(平成27年3月31日現在)によると次のとおりである。

ア 第三セクター等の定義

第三セクター等とは、次の法人をいう。

(ア)第三セクター

a 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)等の規定に基づいて設立されている社団法人、財団法人及び特例民法法人(以下「社団法人・財団法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

b 「会社法」(平成17年法律第86号)の規定に基づいて設立されている株式会社、合名会社、合資会社、合同会社及び特例有限会社(以下「会社法法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

(イ)地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社(以下「地方三公社」という。)

(ウ)地方独立行政法人

イ 第三セクター等の数

第三セクター等の数は第34表のとおりであり、法人数の総計は7,604法人で、前年度末(7,745法人)に比べ141法人減少している。

ウ 第三セクター等の経常損益の状況

第三セクター等のうち、(1)地方公共団体等の出資割合が25%以上の社団法人・財団法人及び会社法法人(2)出資割合が25%未満であるものの財政的支援(注1)を受けている社団法人・財団法人及び会社法法人(3)地方三公社(4)地方独立行政法人の6,362法人から30法人(注2)を除いた6,332法人(以下「経営状況等調査対象法人」という。)の経常損益の状況については第35表のとおりであり、3,808法人(60.1%)が黒字、2,524法人(39.9%)が赤字となっている。

(注1)ここで「財政的支援」とは、補助金、貸付金及び損失補償のことをいう。

(注2)第三セクター等のうち、清算手続中、休眠中、設立後間もない等の理由により財務諸表(損益計算書、収支計算書)が作成されていない法人。

エ 第三セクター等の純資産又は正味財産の状況

経営状況等調査対象法人の純資産又は正味財産の状況は、第36表のとおりである。

負債が資産を上回っている法人は266法人(4.2%)であり、当該法人の負債が資産を上回っている額の合計は2,105億円となっている。

オ 地方公共団体からの補助金交付額の状況

経営状況等調査対象法人の地方公共団体からの補助金交付額の状況は、第37表のとおりである。

地方公共団体から補助金を交付されている法人は、2,758法人(43.6%)であり、交付総額は5,580億円となっている。

カ 地方公共団体からの借入残高の状況

経営状況等調査対象法人の地方公共団体からの借入残高の状況は、第38表のとおりである。

地方公共団体からの借入残高を有する法人は819法人(12.9%)であり、借入残高は4兆7,463億円となっている。

キ 損失補償・債務保証の状況

経営状況等調査対象法人の損失補償・債務保証の状況は、第39表のとおりである。

地方公共団体以外からの借入残高を有する法人は1,713法人であり、借入残高は6兆1,896億円となっている。また、地方公共団体による損失補償・債務保証が付されている債務残高を有する法人は677法人であり、債務残高は3兆7,420億円となっている。

ク 統廃合等・法的整理の状況

平成26年度中の第三セクター等の統廃合等・法的整理の状況については、第40表のとおりである。

第三セクター等の廃止は157件、統合は9件、出資引き揚げは28件となっており、統廃合等により197法人減少している。法的整理を申し立てた第三セクター等は8法人となっており、社団法人・財団法人が1法人、会社法法人が7法人となっている。

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