行政手続法のQ&Aを掲載しています。
以下のQ&Aの内容は、基本的に行政手続法が適用される場合を前提としておりますため、同法の適用対象外となる法律や条例に関する御質問は、当該法令を所管する機関にお問い合わせください。
行政手続法の適用対象となる行政分野については、Q2のAを御確認ください。
行政手続法は、行政が一定の活動をするに当たって守るべき共通のルールを定めることにより、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に資することを目的とした法律です。
具体的には、行政手続法は、Q1のAのように、一般的なルールとなるべきものを定めた法律ですが、極めて広い範囲にわたる行政の全てに一律に適用することが適当でないこともあります。
このため、その行政分野の特殊性などから行政手続法に定める手続を適用することになじまないと考えられる特定の行政分野については、行政手続法の適用を除外することとしています。
(第1条、第3条、第4条、第13条第2項、第46条)
また、地方公共団体の機関がする処分のうち、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているもの、地方公共団体のする行政指導、地方公共団体の機関に対する届出のうち、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているもの、地方公共団体の機関が命令等を定める行為に関する手続について、行政手続法の適用が除外されています。
ただし、地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めることになっており、ほとんどの地方公共団体は、それぞれ「行政手続条例」のような条例を定めています。詳しくは、各地方公共団体にお問い合わせください。
区分 | 地方公共団体の処分等を規定する法令 | 処分(注1) | 行政指導 |
---|---|---|---|
処分等の根拠を条例又は規則等に置くもの | 法律(命令を含む。)の委任規定に基づく条例(注2) | 行政手続法は直接適用されない | |
(単独の)条例 | |||
(単独の)条例に基づく規則等 | |||
(単独の)規則等 | |||
上記以外のもの | 法律 | 行政手続法が適用される | 行政手続法は直接適用されない |
法律に基づく命令(告示を含む。) | |||
法律(命令を含む。)に基づく規則等(注3) |
そのほか、行政手続法以外の個別の法律に行政手続法を適用しない旨の定めがある場合も、行政手続法が適用除外となります。
処分とは、役所の行為によって、国民に義務を課したり権利を付与したりするような、国民の権利や義務に直接具体的に影響を及ぼすことが法律的に認められているものをいいます。
役所の行為が処分に当たるか当たらないかは、その行為の根拠となる法令の解釈によりますので、まずは、その法令を所管する各役所にお問い合わせください。
(第2条第2号)
役所は、申請を認めるべきかどうか役所側が判断するときの具体的な基準(審査基準)をできる限り具体的に定め、原則として、誰でも見ることができるようにしておかなければならないことになっています。
審査基準は、申請の提出先の窓口に備え付ける、ホームページに掲載するなどの方法で公にされていますので、各役所にお問い合わせください。
なお、e-Gov(https://www.e-gov.go.jp/)で検索できるものもあります。
また、役所は、申請者からの求めに応じて、できる限り、申請に必要な書類やその具体的な手続について、情報提供するよう努めることになっています。
(第5条、第9条第2項)
役所は、申請が届いてから結論を出す(例えば、許可をする/しない)までに通常の場合必要とする標準的な期間(標準処理期間)を定めるように努め、定めたときは誰でもそれを見ることができるようにしておくことになっています。
標準処理期間は、定められていれば審査基準と同じく、申請の提出先の窓口に備え付ける、ホームページに掲載するなどの方法で公にされていますので、各役所にお問い合わせください。
なお、標準処理期間は、あくまで申請の処理にかかる期間の「目安」を定めたものなので、必ず標準処理期間内に申請に対する応答があるとは限りません。また、その期間を経過したからといって直ちに役所が違法を問われるものでもありません。
また、記載漏れがあるような不備のある申請を補正するための期間は、標準処理期間に含まれません。
(第6条)
申請書が役所に届いたら、役所は遅滞なく審査を開始することになっています。つまり、申請を受け取らない、受け取っても放置しておく、申請書を返却するなどの取扱いをしてはいけないことになっていますので、その旨を役所にはっきりと説明してください。 なお、申請書に記載漏れがあるなど形式的な不備がある場合、不備を正すよう求める補正として申請書が返却されるときもありますが、この場合であっても、申請そのものがなかったことにはなりません。
(第7条)
Q6のAのように、申請書が役所に届いたら、その役所は遅滞なく審査を開始することになっており、申請を受け取らない、受け取っても放置しておくなどの取扱いは許されないことになっていますので、まず、申請がどのような状況にあるのか、各役所に問い合わせてみましょう。
また、役所は、申請者から問い合わせがあった場合、結論の出る時期の見通しについて、情報を提供するよう努めることになっています。
なお、申請者は、役所の不作為(申請をしたのに相当の期間内に何らの処分(例えば、許可をする/しない)をすべきにもかかわらず、これをしないこと。)に対して、行政不服審査法に基づく「不作為についての審査請求」をすることも可能です。
(第7条、第9条第1項)
役所は、申請に対して許可を与えることができない、免許を与えることができないという処分を行う場合には、原則として、処分と同時にその理由を示すことになっています。また、処分が書面で行われるときには、理由も書面で示されなければなりません。
これにより、もう一度申請して許可や免許を取ろうというときには、どこを直せばよいかわかるようになりますし、示された理由が不当だと思うときは、行政不服審査法に基づく不服申立てや行政事件訴訟法に基づく訴訟などを起こす場合に、その争点がわかりやすくなります。
(第8条)
役所は、許可の取消しや営業停止といった処分(不利益処分)をするかどうか、どういう状況になればどういう内容・程度の不利益処分をするかについての基準(処分基準)をできる限り具体的に定め、誰でも見ることができるようにしておくよう努めることになっています。
処分基準は、役所の窓口に備え付ける、ホームページに掲載するなどの方法で公にされていますので、各役所にお問い合わせください。
なお、e-Gov(https://www.e-gov.go.jp/)で検索できるものもあります。
(第12条)
役所は、許可取消しのような不利益処分をしようとするときは、原則として、一定の方式で相手方の反論を聴くことになっています。この手続は、予定されている不利益処分の内容によって2通りに分かれます。
(第13条、第15条〜第31条)
役所は、許可取消しのような不利益処分をする場合には、原則として、同時にその理由を示さなければなりません。不利益処分が書面で行われるときには、理由も書面で示されなければなりません。
これにより、示された理由が不当だと思うときは、行政不服審査法に基づく不服申立てや行政事件訴訟法に基づく訴訟などを起こす場合に、その争点がわかりやすくなります。
ただし、緊急に不利益処分をしなければならない場合は、不利益処分に際しての理由の提示が省略され、不利益処分後に示されることもあります。
(第14条)
行政指導とは、役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように(又は行わないように)具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)をいいます。
行政指導は処分ではないので、特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすことはありません。
行政指導とは、役所から相手方に「求める」行為なので、役所の調査結果に基づいて一定の事実を不特定多数の方に示すことや相手方の求めに応じて法令の解釈や制度の仕組みを説明するなどの情報提供をするような行為は、通常は「求める」行為に当たらず、行政指導に含まれません。
なお、Q2のAのように、地方公共団体が行う行政指導については、行政手続法が適用されません。
(第2条第6号)
役所の行為が処分に当たるか、行政指導に当たるかは、法令で使われている用語からは明確に判別できないものもありますが、行政指導であれば、行政指導をする者は、行政指導をしようとする相手方に対して、その行政指導の「趣旨及び内容」(その行政指導はどのような目的でどのようなことを求めているのか。)と「責任者」(その行政指導をすることは役所のどのレベルの判断によって行われているか。)を明確に示さなければならないことになっています。まずは、その行為を行っている各役所にお問い合わせください。
(第35条第1項)
行政指導は、処分のように、相手方に義務を課したり権利を制限したりするような法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を前提としています。したがって、行政指導を受けた者に、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。
また、行政指導は、行政指導を行う役所の任務や所掌する事務の範囲内で行われなくてはなりません。
(第35条第1項)
行政指導の相手方がその指導に従わないからといって、役所が、そのことを理由に、例えば、今まで平等に提供していた情報をその相手方にだけ提供しない、別の許可申請のときに意図的に嫌がらせをするなどの差別的、制裁的な取扱いをすることは禁止されています。
(第32条第2項)
役所は、自主的に申請を取り下げるよう、また、申請の内容を変更するよう行政指導することもありますが、申請者がその行政指導に従わないことを明らかにしたときは、役所は、これに反して、行政指導を続け、その行政指導に従うまでは申請の審査を保留するなど、行政指導に従わざるを得ないようにさせることによって、申請者の権利の行使を妨げてはならないことになっています。
このような場合、申請者は、この行政指導を拒否して申請書を提出すれば、役所には審査を開始する義務が生じることになりますので、行政指導に従う意思がない場合には、それを役所に対して明確に示しましょう。
(第33条)
許可を受けて行っている営業の停止を命ずる処分を行うような権限がある役所が、その権限を行使できない場合や行使する意思がないにもかかわらず、営業の内容の変更を求めるような行政指導をする場合、殊更に営業停止命令という処分もできると示して行政指導に従わざるを得ないようなことをしてはならないことになっています。まずは、役所に対して、どうしてこのような行政指導をするのかの説明を求めましょう。また、Q18のAのように、口頭で行政指導に従わないと営業停止処分もあり得ると示された場合には、その権限の根拠条項等を書面で示すことを求めることができます。
(第34条、第35条第3項)
行政手続法が適用される場合、請求することによって、書面が交付されます。
行政指導を行う者は、口頭で行政指導をした場合に、相手方から書面で欲しいと求められたときは、原則として、その行政指導の「趣旨」「内容」「責任者」を書いた書面を渡すことになっています。さらに、行政指導の際に、許認可等に関する権限を行使可能であることが示された場合(例えば、行政指導に従わない場合には許可の取消しもあり得ると示された場合)に、その権限の根拠条項等に関しても書面で示すように求めることができるようになりました。
ただし、行政上特別の支障がある場合や、その場で完了する行為を求める場合などは対象外となります。
(第35条第2項、第3項)
「処分等の求め」は、求める処分や行政指導を行う権限を有する役所に対して行うことができます。「行政指導の中止等の求め」は、当該行政指導をした国の行政機関に対して行うことができます。
(第36条の2第1項、第36条の3第1項)
具体的な法令違反の事実を発見し、その法令違反を是正するために必要な処分や行政指導がされていないと考える場合に、その権限を有する役所に対して、その処分や行政指導を行うことを求めることができます。なお、求めることのできる行政指導は、国の行政機関が法律に基づき行うもの(つまり、行政指導を行う権限や要件が法律に規定されていれるもの)に限ります。
(第36条の3第1項)
制限はありません。誰からでも申出できます。
また、申出に当たっては、次の事項を記載した申出書を、その求める処分等を行う権限を有する役所に、提出する必要があります。
なお、申出書の書式(様式)は問いませんが、申出書の記載事項は役所による必要な調査の前提となるものですので、なぜその処分や行政指導がなされる必要があるかを合理的な根拠(例えば、法令に違反する事実が確認できた根拠、この違法状態を是正するための処分を行う根拠法令の条項に照らして、その処分を行うための要件に適合している根拠など)をもって、具体的に申出書に記載することが大切です。
(第36条の3第1項)
「処分等の求め」は、法令に違反する事実などの申出をきっかけに、役所が適正に違法状態を是正する権限を行使できるようにし、広く公益を実現するため制度です。したがって、行政手続法上は、「処分等の求め」の申出書を受けた役所に、必要な調査を行った結果を通知することを義務付けていません。
「行政指導の中止等の求め」や「処分等の求め」は、申出書を受けた役所が、必要な調査を行った結果、その求める処分等の根拠となる法令の定めに従い必要があると判断した場合に、処分等の措置をとるものです。したがって、必ず申出どおりの行政指導の中止や処分等が行われるものではありません。
(第36条の2、第36条の3)
届出とは、役所に対して一定の事項を通知する行為であって、そのことが法令で義務付けられているものです(そのため、役所からの処分(例えば、許可をする/許可しない)を前提としている「申請」は除かれます。)。
届出に必要な書類がそろっている、定められた様式で届出が記入されているなど、法令が定める形式上の要件を満たす届出が提出先とされている役所に届いたときは、「届出をする」という手続上の義務は完了したことになります。
したがって、役所は、形式上の要件を満たす届出が正しい提出先に到達したら、その届出がなかったものとして取り扱うこと(例えば、届出を受け取らない、返却するなど)はできませんので、その旨を役所に説明してください。
ただし、形式上の要件を満たす届出が正しい提出先に到達しても、その届出の内容に誤りがある場合など、その届出の根拠となる法令の要件を満たしていないものは、届出としての法律的な効果は発生しません。
(第37条)
意見公募手続とは、「命令等を定める機関が命令等(政令や省令など)を定めようとする場合に、この命令等の案を公示し、広く一般から意見を公募する手続」のことをいいます。通称パブリックコメントとも呼ばれます。
この手続は、命令等の制定についての意思決定の内容や過程を国民に対して明らかにし、国民の多様な意見・情報を命令等を定める機関が把握し、その内容が適切であればいかしていく制度です。
したがって、提出意見の数が多いかどうかに着目するものではなく、命令等の制定に際して多数決を導入するものではありません。
※意見公募手続(いわゆるパブコメ(パブリック・コメント))の概要についてはこちらをご覧ください。
(第39条第1項)
「命令等」とは、内閣又は行政機関(命令等を定める機関)が定める
のことをいいます。
(第2条第8号)
全ての命令等について意見公募手続が義務付けられるわけではありません。Q2のAにもあるように、行政手続法第6章(意見公募手続等)が適用されないものがあります。また、行政手続法第39条第4項 に規定されている特殊な事情に当たる場合(例えば、公益上、緊急に命令等を定める必要がある場合や、 意見公募手続を実施するに値しないほどに軽微な変更を定める場合など)には、意見公募手続を実施する必要はありません。
ただし、行政手続法第 39 条第4項に該当し意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、その命令等の公布と同時期に意見公募手続を実施しなかった旨やその理由などを公示することになっています。
なお、Q2のAのように、地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、行政手続法第6章(意見公募手続等)が適用されません。
(第39条第4項、第43条第5項)
匿名で意見を提出することも可能です。ただし、その意見が命令等の案に対する内容であり、意見提出期間内に提出先となる役所に提出している必要があります。
命令等を定める機関は、命令等の案について提出された意見を十分に考慮しなければなりません。そして、提出された意見や、それがどう考慮され命令等に反映されたか(されなかったか)、なぜ反映されたか(されなかったか)について、命令等の公布と同時期(原則として、命令等の公布と同日又はそれ以前)に公示することになっています。
ただし、Q24のAのように、例えば、命令等の案に賛成又は反対する意見が多い場合であっても、必ずその意見が反映されるものではありません。
(第42条、第43条第1項)
どのような命令等の案について意見を募集しているか、また意見募集を行った結果、提出された意見やその意見がどう考慮され命令等に反映されたか(されなかったか)などについては、e-Gov(https://www.e-gov.go.jp/)で確認できます。また、各府省のホームページで閲覧できるものもあります。
(第45条)
なお、申請や届出の方法のような具体的な役所の手続などにお困りの場合、行政に関する一般的な相談制度として、行政相談制度(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/soudan_n/index.html)があります。
また、国の行政機関の具体的な手続については、e-Govの「手続検索」(https://shinsei.e-gov.go.jp/recept/procedure-search/)からも確認できます。