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高松市で「スマートメーターに関する技術セミナー」を開催

 四国総合通信局は、四国情報通信懇談会との共催で、9月30日(水)に高松市の香川大学幸町キャンパスにおいて、「スマートメーターに関する技術セミナー」を開催しました。

 本技術セミナーは、東日本大震災以降、環境問題や再生可能エネルギーへの関心が高まる中、低炭素社会の実現やエネルギーの最適管理を図るため、ICTを活用したスマートグリッドの早期導入が期待されているところ、スマートグリッドの核となるスマートメーターに関する最新の技術動向等について紹介することで、今後のスマートグリッドの普及に資することを目的に開催したものです。

 技術セミナーでは、まず、株式会社四国総合研究所 電子技術部 主席研究員の阿部素久(あべ もとひさ)氏が、「スマートメーターへの無線マルチホップ通信等の適用研究について」と題して講演しました。
 阿部(あべ)氏からは、スマートメーターの各種無線通信方式の伝送特性の研究成果として、建物角での回折、電子レンジや樹木の影響等について検証結果が報告されました。
 また、3次元モデルを使ったシミュレーションや簡易シミュレーションによる置局設計ツール、通信接続率の予測手法についても紹介されました。今後の研究課題としては、新サービスに対応するためにはより広帯域の通信方式を検討する必要があること、山間地や地下などの不感地帯をどういった通信手段でカバーしていくか等話されました。
 参加者からは、各種無線通信方式の中から950MHz帯特定小電力が最もスマートメーターに適していると判断する理由について質問され、遠くまで届く429MHz帯のものより、通信速度を優先し、2.4GHz帯より使い勝手のいい950MHzにした旨の回答がなされました。

阿部(あべ)氏の講演の様子

 

 次に、三菱電機株式会社 系統変電システム製作所 電力流通システム部 スマートメーターシステム課 副課長の井上 俊宏(いのうえ としひろ)氏が「スマートメーターの通信方式の技術動向について」と題して講演しました。
 井上(いのうえ)氏からはスマートメーターの通信に求められる各種要件やそれらに対応する通信システムが紹介され、電力会社からスマートメーターまでのいわゆるAルートのほか、スマートメーターと宅内のHEMS機器等をつないでいるBルートの通信システムの規格であるECHONETの現状についてお話がありました。
 また、無線マルチホップ方式の技術的特徴やスマートメーターシステムへの適用のための開発状況や技術動向についても触れられ、アドホックネットワークの研究課題としては、特にルーティング制御プロトコルに関する研究が中核となるとのことで、各種ルーティングプロトコルの特徴等について発表されました。
 なお、無線マルチホップ通信が構成できない、山間地や島しょ部等の疎密度地域では通信キャリアによるデータ通信サービス(1:N通信)が、大規模高層マンション等では有線方式として電源ラインに微弱な高周波変調信号を重畳して通信を行う電力線通信(PLC)が適しているとのことでした。
 このほか、兵庫県尼崎市で実施されているスマートグリッドや、神奈川県鎌倉市で実施されているスマートハウスの実証実験の模様についても紹介されました。
 最後に、スマートメーターネットワークを構成する通信方式は、複数の通信方式をそれぞれの特性に応じて適材適所で利用していくことが必須であり、長期的に運用されることから、将来の技術進歩にも柔軟に対応可能なシステムとしていくことが必要とまとめられました。
 参加者からは、無線マルチホップの実証実験の結果について、実際にコンフィグレーションレスで1コンセントレーターあたり何台収容していて何ホップくらい実現できているのかと質問があり、1台あたり1000台程度、20ホップで実現できていると回答されました。

井上(いのうえ)氏の講演の様子

 

 続いて、株式会社東芝 社会インフラシステム社 電力流通システム事業部 グリッドソリューション推進部 スマートメーターシステム技術部 参事の神田 充(かんだ みつる)氏が「スマートメーター通信システムについて」と題して講演されました。
 始めにスマートメーターの導入計画について、携帯電話の契約数との比較により極めて早いスピードで設置が進んでいるとし、日本全体では平成36年度末までには導入を完了する計画であるとのことでした。
 スマートメーターのそれぞれの通信方式の特性と適材適所の考え方について、長所や短所、通信コスト等を踏まえたうえで適用エリアが決定され、いずれもIPv6のネットワークにより統合されており、スマートメーターのネットワークシステムはIPv6を使った巨大なIoTのひとつといえるのではないかとのことでした。
 また、スマートメーターのような大規模なワイヤレスセンサネットワークでは、隣接するコンセントレーターや他システムとの電波干渉や混信といった問題が生じる可能性があるため、適切なチャンネル設計が必要となるが、TSCH(Time Slotted Channel Hopping)という方式を採用すればチャンネルホッピングによりそのような設計は不要となるとの解説がありました。
 最後にセキュリティの面からも、スマートメーターは利用料金のデータ等を扱うことから改ざんやサイバー攻撃への対処が重要になると述べられ、そのためには単にセキュリティ技術を適用するだけではなく、運用なども含めたセキュリティ対策への考慮が必要とのことでした。
 参加者からは、コンセントレーターのスペックについての質問があり、スペック値としては、約1000台まで収容可能だが、実利用環境では電波環境やコンセントレーター停止時のメーター収容(フェイルオーバー)などを考慮し数百台程度に抑えているとの回答がありました。

神田(かんだ)氏の講演の様子

 

 続いて、富士通株式会社 スマートシティ・ソリューション統括部 シニアエキスパートの多田 尚人(ただ なおと)氏が「スマートシティの取組」と題して講演されました。
 始めに2016年度から電力小売の全面自由化が始まることに伴い、電力事業へ新規参入する企業が増加しており、特に顧客基盤や顧客との決済システムを既に持っているe-コマースの事業者や通信事業者等はその基盤を新しいエネルギービジネスに有効活用できることから、既存の電力事業者と提携してセット販売を計画している状況等について説明されました。
 また、電力供給の逼迫時に発電量を増やさずに、需要家に対して節電を要請し、電力の需給バランスを維持するデマンドレスポンスの仕組みが今後の電力システムで重要になってくるとのことで、その実現のためにはリアルタイムで需要家の電力使用量を計測する必要があることからスマートメーターの導入が必須となるとの説明がありました。
 その後、福島県会津若松市において取り組まれているスマートコミュニティ導入促進事業等の状況を動画の再生により紹介されました。この取組では工場の駐車場にメガソーラー発電所を構築し、効率的に蓄電できるようにし、2023年までに再生可能エネルギー比率60%を目指しており、福島県では2040年までに再生可能エネルギー比率100%を目標にしていると紹介されました。
 また、福島県伊達市で取り組まれている総務省の補助事業「被災地域情報化推進事業」による省・創エネ事業についても紹介され、コスト削減のためのピークカット制御やLED照明の自律制御、市民へのデジタルサイネージを利用した電力使用状況等の情報公開について説明がありました。
 最後に今後の展開として、地域住民向けサービスへの取組として、鹿児島県薩摩川内市でおこなっている人感センサーを活用した高齢者の見守り支援をおこなっており、今後は見守り支援に閉じず、安心・安全やコミュニティ、健康増進へ発展させて行く予定との説明がありました。

多田(ただ)氏の講演の様子

 

 最後に、elDesign株式会社 代表取締役(一般社団法人 エネルギー情報センター 代表理事) 坂越 健一(さかごし けんいち)氏が「新電力事業の現状と運営のポイント」と題して講演されました。
 坂越(さかごし)氏は、電力小売事業の現状について、来年度に電力小売が全面自由化されるものの、実際の競争が始まるのは2020年度以降に予定されている料金規制が撤廃されてからであり、それまでの4年間で新たに参入した新電力会社がどれだけ差別化を図れるかが一つのポイントになるだろうとのことでした。
 また、新電力事業者としての届出数は700社を超えているものの、実際に電力を供給している会社は70社程度であり、本格的に事業を始めようとしているところは少ないのではないか、高圧の新電力の販売シェアは認知度が上がったこともあり順調に伸びてきているものの、電力小売の市場規模はほぼ横ばいの状況であり、既存の電力会社とのゼロサムの競争環境であるとのことで、新電力の事業運営には収益性の確保などの面で多くの課題があると説明されました。
 そして、電力小売事業のポイントとして損益分岐の面から参入コストの抑制や、基礎収益性の確保、スケールメリットについて触れ、アウトソーシングやクラウドサービスをうまく取り入れることで事業リスクを大きく低減させることができると解説されました。
 また、各地域における独自のサービスの拡充を図るためにも、原資として一定の収益を確保することが重要であり、新電力事業への参入は容易なもののオペレーションにはある程度の専門知識が必要なこと、損益分岐点を超えるにはそれなりの事業規模が必要であり、BPO(Business Process Outsourcing)を活用することにより一定の収益改善が期待できるとまとめられました。
 参加者からは、新電力事業者はスマートメーターを自ら設置するのかとの質問があり、既存の電力事業者のものを活用するかと思うが、時間間隔が30分と大きいので別で確認することも考えられるとの回答がありました。

坂越(さかごし)氏の講演の様子

 

 本技術セミナーには、高松市内はもとより全国からもスマートメーターに関心のある約80名の方々が参加され、スマートメーターや電力小売事業の最新の技術動向や研究成果について理解を深めていただくことができました。

 四国総合通信局では、今後もICTの研究開発推進のため情報通信に係る最新の技術動向を紹介して参ります。

 
表:スマートメーターに関する技術セミナー 講演資料
演題 講師 資料ダウンロードURL
スマートメーターへの無線マルチホップ通信等の適用研究について 株式会社四国総合研究所 電子技術部 情報通信グループ
 主席研究員
 阿部 素久(あべ もとひさ)氏
資料(PDF 2.6MB)PDF
スマートメーターの通信方式の技術動向について 三菱電機株式会社 系統変電システム製作所 電力流通システム部 スマートメーターシステム課
 副課長
 井上 俊宏(いのうえ としひろ)氏
資料(PDF 9.0MB)PDF
スマートメーター通信システムについて 株式会社東芝 社会インフラシステム社 電力流通システム事業部 グリッドソリューション推進部 スマートメーターシステム技術部
 参事
 神田 充(かんだ みつる)氏
資料(PDF 4.7MB)PDF
スマートシティの取組 富士通株式会社 スマートシティ・ソリューション統括部
 シニアエキスパート
 多田 尚人(ただ なおと)氏
資料 一括版
(PDF 19.2MB)PDF
資料 分割版
1(PDF 10.0MB)PDF
2(PDF 7.2MB)PDF
新電力事業の現状と運営のポイント elDesign株式会社
 代表取締役社長
一般社団法人 エネルギー情報センター
 代表理事
 坂越 健一(さかごし けんいち)氏
資料(PDF 1.2MB)PDF

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