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テレビ用受信ブースターの異常発振等による無線局妨害

テレビ用受信ブースターの発振・電波漏えい(でんぱろうえい)にご注意を

1 概要

 最近、テレビ用受信ブースターの発振・電波漏えいによる、無線局や携帯電話への妨害が多発しています。ブースターの発振・電波漏えいとはなにかを理解し、妨害電波が発生しないように注意しましょう。

図1:テレビ用受信ブースターの異常発振等による無線局妨害のイメージ

2 受信ブースターとは

 受信ブースターは、テレビの電波を強める増幅器のことです。電波の弱い地域や、マンションなど多くのテレビに電波を分配する場合に使用されます。テレビブースター、受信用ブースターなど、また、単にブースターと呼ぶ場合もあります。

 テレビアンテナの直下に箱が付いているものを見かけることがあるかと思いますが、これが受信ブースターです。(卓上型のものもあります。)

図2:テレビの受信アンテナとテレビ用受信ブースターのイメージ

3 ブースター発振とは? 電波漏えいとは?

図3:ブースター発振と電波漏えいのイメージ

ブースター発振のメカニズム

 受信ブースターの利得調整を過大に設定したり、余分なケーブルの引き回し等により、ブースターで増幅された出力電波が、同じ受信ブースターの入力側に回り込んで異常発振を起こします。これをブースター発振と言います。
これによく似た例として、スピーカーにマイクを近づけるとキーンという音(ハウリング)がします。これはマイクでひろった音をアンプで増幅してスピーカーから出されるのですが、その音を再度マイクでひろいアンプで増幅しスピーカーから出力するという終わりのない繰り返し状態となり動作し続ける現象で、この状態も発振の一種になります。ブースター発振が生じると、ブースターが動作し続け、この発振により増大した電波が妨害電波として受信ブースター本体又は、(逆流して)テレビアンテナ等から放射され広範囲に障害を与えます。この状態をブースター障害と呼びます。

電波漏えいのメカニズム

 パラボラアンテナで受けたBS・CS放送の12GHz(ギガヘルツ:電波の周波数の単位の一つ)帯の電波は、(パラボラアンテナ付属の)コンバータで1〜2GHz帯の中間周波数に変換され引込線により宅内へ送られています。
引込線の同軸ケーブルに手ひねりによる芯線接続や、接続箇所に芯線が剥き出している部分がありますと、そこから中間周波数の電波が漏えいします。この漏えい電波が妨害電波として他の無線局などに障害を与えます。引込線の途中にBS・CS用受信ブースターがある場合、ブースターで増幅された中間周波数の電波が漏えいする場合があり、ブースター発振が起きている場合にはさらに広範囲に障害を与える恐れがあります。

4 症状

  ブースター発振や電波漏洩は、テレビに受信障害を与えることが多いのですが、テレビに受信障害の症状がなくても重要な無線局に妨害を与えていることもあります。

1 テレビの場合には・・・

 画面の一部がモザイク状(ブロックノイズ)になったり、静止(フリーズ)画面になることがあります。
特徴としては、特定のチャンネルに障害が発生することです。

図4:電波漏えいによるテレビへの影響の事例

テレビ画面のイメージ

2 無線局の場合には・・・

 ブーンザラザラ・・・といった感じの音や、音が無く無変調状態になることがあります。
漏えいしている電波は不安定に変動するため、同じ周波数に重なった場合にはノイズとして入感します。
携帯電話は、通話が途切れたり、つながりにくい等の状況が発生する場合があります。

3 テレビ、無線局共通して言えることは・・・

  • 長時間、長期的に連続して障害が発生
  • 強風でアンテナが揺さぶられると、間欠的な発生となる
  • 台風通過後、積雪後等には特に多発しやすい

5 原因

 ブースターの異常発振・電波漏えいが生じる原因は、次のようなものがあります。

1 取り付けの不良

 不確実な接続や、不適切なコネクターの接続の場合、風などの力が加わったときにケーブルが外れかかることがあります。また、ステー(支線)が緩むことによりアンテナが傾いたり倒れて接続されているケーブルがひっぱられ、接続箇所の接触が不良になり、そこから電波漏えい等が生じます。

2 老朽化等

 屋根などに設置されたアンテナ等は、何年も風雨にさらされるため、雨水で腐食したり太陽からの紫外線で劣化することにより老朽化します。特にケーブルとの接続部分は腐食により接続不良になります。また、老朽化により、ブースター機器の故障の発生する可能性が高くなります。

3 利得調整の不適正

 受信した電波を強くしようと、利得調整を最大にしがちですが、これが原因の一つになることがあります。テレビ画面を見ながら利得を必要最小限に調整する必要があります。

4 フィーダ線の交差、束ね、接触など

 ケーブルを長く購入したため、余りをループ状に束ねたり、無造作に絡めた状態にするとブースター発振の原因となることがあります。余分は思い切って切断し、適正な長さにしておきましょう。

5 接続するケーブルの不適正

 インピーダンスが75オームの同軸ケーブルで接続すべきものを、50オームの同軸ケーブルや300オームのフィーダー線で接続するとミスマッチング(インピーダンスの不整合)を起しブースター発振の原因となります。

6 確認された事例

 申告による原因調査を行った結果、以下の原因事例が確認されています。

いずれも携帯電話に障害があったものです。

原因事例

事例1:ケーブル接続がねじり接続(手ひねり・イモ繋ぎ)
同軸ケーブルの不適切な接続、いわゆる手ひねりイモ繋ぎによるCS−IF周波数の電波漏えいであることが判明。(CS−IF周波数:CS受信機の中間周波数(携帯電話で使用されている周波数帯と同じ周波数帯です。))
 写真1:ケーブルの不適切な接続
事例2:直付け(じかづけ)型の受信ブースターや分配器
同軸ケーブル直付け型のブースターや分配器の接続部分からのCS−IF周波数の電波漏えいであることが判明。(直付けとは、ケーブル線を剥いて芯線を直接金具に接続することをいいます。)
 写真2:CS−IF周波数の漏えい
事例3:受信ブースターの出力レベル過大調整
受信ブースターの出力レベルを過大に調整したことによるCS−IF周波数の電波漏えいであることが判明。
 写真3:受信ブースター
事例4:ケーブルコネクタ端子の施工不良
F型コネクタ端子と同軸ケーブルの不適切な接続加工により、その接続箇所からのCS−IF周波数の電波漏えいであることが判明。
 写真4:不適切な接続加工
事例5:受信ブースター内部からの異常発振
老朽化したVHF/UHF地上波放送用受信ブースター内部からの異常発振であることが判明。
 写真5:ブースター

7 対策

1 アンテナ等の設置不良による場合

 不適切なケーブルを用いたり、余分な長いケーブルの引き回しがないか点検をしてください。あれば、規格にあった適切なケーブルに交換し、長いケーブルは引き回しに不要な部分をカットしてください。また、ケーブルの継ぎ足しのための接続などに、手ひねりイモ繋ぎ加工されているところがないか点検してください。あれば、必要な長さのケーブルに交換するか、専用コネクタによる中継接続の加工をしてください。

 各コネクタ部分は緩みや外れがないよう、確実に接続されていることを確認してください。フィーダーをマストに巻き付けるなどして配線すると、発振する場合があるので、インシュレーター(専用取り付け金具)を使用して正しく固定し配線してください。ケーブルやフィーダの引き回しについて、複雑に交差しないよう整理して受信ブースターの入出力が結合しないよう注意してください。

  • ケーブルを接続する場合は、専用のコネクターを使用すること。
  • 受信ブースターや分配器などはシールドされたコネクター型を使用すること。
  • 受信ブースターの出力レベル調整を過大に設定しない。

2 老朽化による場合

 アンテナを設置したまま長期間にわたり点検・取り替えを行っていない場合には、錆や経年変化による老朽化が考えられます。新品に交換するなどしましょう。

3 その他注意事項

 コネクターや配線部分は、風や振動で緩むことがあります。また、雪でケーブルが引きちぎられたり、風でアンテナ等が倒れたりすることがありますので、正しく配線し堅固に止めておきましょう。新しくアンテナ、ブースター等を設置する場合は、付属の取扱説明書を良く読んで、正しく設置しましょう。

4 テレビに障害が発生している場合

 障害が自宅のみか、ご近所にも発生しているか確認してみましょう。自宅のみに障害が発生している場合は、受信ブースター以外の原因が濃厚です。家庭内にある電化製品などが原因していることも考えられます。

 ブースター発振が疑われる場合、どこから不要電波が発射されているのかを特定するには、電波障害の対策に従事している者でも、かなりの困難を伴う場合があります。一個人または電波と全く関係のない会社等がブースター発振を推測し特定するのはかなり難しいため、まず電波障害対策に関係する機関・電器工事事業者等へ相談されることをお勧めします。原因となるブースターをそのままにしておくと、ご近所や無線局に迷惑を与え続けてしまいます。

早い対応を心がけましょう。

不明な点は、こちらへお気軽に相談下さい。
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参考文献:電気雑音対策ハンドブック(受信環境クリーン中央協議会)

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