画像:住民参画システム利用の手引き 〜地域SNS、公的認証対応アンケートシステム〜
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目次
座長あいさつ
総論
導入検討編

1. ICTを活用した住民参画の方法
2. 主なICT住民参画手段
3.地域SNSとは
4.SNSと地域SNSの違い
5.地域SNSの費用
6.電子アンケートとは
7.電子アンケートの費用
8.高齢者などの参加
9.住民ニーズの把握
10.施策への反映
11.運営体制
12.議会との関係
参考1 実証実験地域の概要
参考2 実証実験関係者座談会


実践編 地域SNS

実践編 電子アンケートシステム
資料編
参考2 実証実験関係者座談会

■日時:2006年2月23日(木)17:30〜18:30
■場所:LASDEC 財団法人地方自治情報センター 7階会議室
■参加者:
長岡市    ながおか生活情報交流ネット 桑原委員、高井氏
長岡市情報政策課 倉部主事
千代田区   まちみらい千代田 三浦氏
       千代田区政策経営部 印出井主査
理論WG   東京大学大学院情報学環 助教授 田中主査
        藤沢市市民自治部市民自治推進課 金子委員
 システムWG 防災科学技術研究所主任研究員 長坂主査
株式会社NTTデータ システム科学研究所 高木委員
東京海上研究所 直井委員
事務局    総務省自治行政局自治政策課 牧企画官
        財団法人地方自治情報センター 田幡氏
        株式会社三菱総合研究所 村上、森崎(記録者)

村上:今日は、長岡市、千代田区それぞれの実証実験関係者にお集まり頂きました。お忙しいところありがとうございます。実証実験を通しての感想や、苦労したところ、良かったところなどを、ざっくばらんにお話頂ければと思います。
まず、長岡市からお願いします。

画像:倉部氏
倉部:長岡市の倉部です。1月の市町村合併で異動になり、担当となりました。地域SNSといったものには初めて参加しましたが、個人的には非常に楽しかったです。毎日見て、地域に触れる機会が増えたことが面白かったです。苦労した点は、行政からのお知らせの発信なども、最初は慣れず苦労しましたが、やはり一番はモニターの募集、登録ですね。特定モニターで、リーダー・ライターは送られてきたが、登録を行わない人もいました。パソコンやリーダー・ライターの設定トラブルも起こりました。結局、目標のモニター数に到達したのが実証実験期間のぎりぎりになってしまいました。

村上:高井さんは如何でしょうか。

画像:高井氏
高井:これまではもっぱらシステムを作る側でしたが、今回は初めて管理に携わりました。やはり慣れないことを行う苦労がありました。活発な議論などもあり、どう言えば分かってもらえるか、かなり悩みました。途中、発言の仕方も厳しい口調になり、良くなかったかなと思っています。日記に比べて、コミュニティの書き込みが少なかったので、コミュニティへの参加を誘導する試みがもっとできれば良かったと思います。実証実験の終了間際にコミュニティを広報するためのコミュニティを作りましたが、もっと早く思いついていれば良かったと思います。コミュニティのアクセス数のランキング表示やアクセスカウンターなどは面白いかもしれない。

村上:コミュニティの広報という点では、藤沢の電子会議室ではどのように行っていますでしょうか。

金子:立ち上げた人が宣伝を行っていますね。チラシを作ったりもしています。

高井:チラシなど紙媒体のものは重要ですね。

村上:それでは桑原さん、如何でしょうか。

画像:桑原氏
桑原:率直に、かなり可能性のあるシステムだと感じました。しかし、ユーザーインタフェースなど使いやすさの部分で、ユニバーサルデザインといった考え方が足りなかったと思います。これから公開されるにあたって、変えていきたいと思っていますが、その部分が今後どのような展開になるか、今の段階では見えておらず、動きにくい点があります。また、運営に関しても、行政と財団やNPO等の組織の位置づけや、特に運営資金をどうするかといった点が、まだまだ検討が必要だと思います。そのような情報がないと、今後導入を考えている地域も、なかなか行いづらいでしょう。

村上:システム面の改善は、来年度の事業でも検討されています。ユーザー会などを作りバージョンアップの費用を出し合い、ソフトウェアは共同アウトソーシングや、LASDECのライブラリによって共有する形です。民間企業やNPOも、ユーザーコミュニティに参加して、そこで情報を共有する仕組みです。

村上:次に千代田区の印出井さん、お願いします。

画像:印出井氏
印出井:たまたま偶然、関わることになりました(笑)。担当している1つ1つの仕事と地域SNSの考え方と結びつけて面白かったものがあります。それが内部通報ですね。内部通報では、「和を以て尊し」だけでは組織が駄目になる、という考え方ですが、地域SNSに参加してみて、「和を以て尊し」は良いのではないかと感じました。お互い忙しい中でこそ、隙間の時間を活用した日常的な信頼関係は重要になるのではないかと思いました。
また観光の面では、在住者と在勤者が接点を持てたことが、やはり大きいです。実際に、モノを作るところまで進んでいます。私も区の職員という立場ではなく、同じレベルで、アイデアベースから話が出来ます。それを施策に繋げていけば良い。例えば今、桜を使ったシティプロモーションを考えているのですが、地域SNSでも議論されていて、「常に様子が見られるウェブカメラが欲しいよね。」「ウェブカメラって意外と安いよ。」「○○会社に勤めている○○さんに言えば、もっと安くなるんじゃない?」といった会話が進んでいます。そのような会話の発展、プロセスが非常に面白かったですね。

村上:内部通報そのものに地域SNSが使えるんじゃないでしょうか(笑)。
では、三浦さんお願いします。

画像:三浦氏
三浦:印出井さんが殆ど全部、話してくれました(笑)。一番の成果は、今回の実証実験で、財団や行政自体が変わってきたことだと思います。行政の職員でありながら、昼間区民として色々な意見を言ってくれました。そこから動きが生じ、地域の人が反応する。財団の職員の意識も変わった。地域をプロデュースする立場として、地域SNSを通じて、もっと住民と行政を繋いでいきたいと思います。とても有り難いことに参加させて頂いたと思っています。苦労した点としては、最初の頃、環境が整っておらず、最初の取組みということもあって、色々な事例などを見せて話をすることができなかったことがあります。

村上:行政と財団が結びついた具体的な事例はありますか。

印出井:本来の目的であった防災や災害対策の面では、残念ながら行政も既存の問題を処理するだけで手一杯で、協力が得られない部分が大きかったです。しかし一方、産業振興や地域振興は、職員としても面白いテーマで、様々なアイデアを出すなど、取組みやすい。「まちの記憶プレート」の取組みも、ちょっとしたアイデアから始まり、地域SNSでデザインのアンケートなどを行いました。

三浦:子供の安心・安全の関係では、教育委員会と連携しました。

印出井:地域SNSはどこにターゲットを絞るかが重要だと感じます。総合的に全て行うことは難しいのではないでしょうか。例えば年齢が低い層は、本当に実態を把握している人が別の地域SNSを運営し、その地域SNSとリンクするといったことも考えられます。また、ITリテラシーが比較的低い人をどう巻き込むかも重要ですね。千代田区では財団で、地域サイトと地域SNSの連携で実現を図っています。

三浦:地域サイトは、外に向けてのプロモーションが特に重要であると考えております。自分たちが行っていることを、外に伝えていくサイトとして、ITがあまり使えない人にも取材をして、コンテンツを作成していきます。来月からは、町会の連合町会長を取材し、地域の魅力を紹介するシリーズを始めます。

村上:それでは、千代田地域SNSでコミュニティを運営された田中さん、感想などを頂けますでしょうか。

画像:田中氏
田中:「ICT住民参画/千代田」というコミュニティを開設・運営しました。参加いただいた方の人数は多かったのですが、書き込みをするアクティブな人は限られていたように思います。もしかすると、千代田区の住民参画がテーマと誤解された面があるのかもしれません。管理者として話題提供などのフォローがもっとできれば良かったと思っています。また公開範囲の設定など、管理者として完全に分かっていなかった部分もありました。それでも運営は何とかなりました。コミュニティの開設・運営は気軽にできると実感しました。

村上:書き込みが減ったことは、似たようなコミュニティが他にも沢山出来、どこに書き込むべきか分からなくなったこともあるのではないでしょうか。とてもしっかりと管理されていたと思います。

村上:長岡地域SNSでコミュニティを運営されたほか、まちみらい千代田のアドバイザーもされている長坂さんはいかがでしょうか。

画像:長坂氏
長坂:行政や財団が地域のことを、今までも色々な視点で見てきましたが、そこに新たな視点が加わり、広がったのではないでしょうか。行政のHPやコミュニティサイト以外に、インタラクションを持つ場として地域SNSが出てきた。地域SNSについては、短期間で評価するものではないと思います。そのためにも、コストの面で無理せずに運用していけることが重要になります。
また、書き込みに関してですが、見ているだけのROMも重要な役割を担っているのではないでしょうか。例えば行政職員が、余り口出さない距離感も必要かもしれません。そして今後は紙媒体など他のメディアとどのように連携してコンテンツを広めていくかも重要になると思います。例えば、コミュニティのRSS情報を紹介するサイトの作成や、新しくできたコミュニティの管理者へ取材したことを紙媒体で広めるといったことが考えられます。そのことが、地域の問題解決力に繋がっていくのではないでしょうか。

村上:ごろっとやっちろ(八代市の地域SNS)の参加者に先日お話をお聞きした際も、市の広報誌にコミュニティを紹介して欲しいとおっしゃっていました。
地域間交流としては、どういうことができたでしょうか?

桑原:千代田、長岡の所謂「裏方」となるコアな人が集まり、地域SNS上で企画を考えるなどしています。トラックバックで、お互いの地域SNSのコミュニティを繋ぐ試みも行っています。

三浦:先程、話に出ました桜のイベントや、グリーンツーリズムなどで、トラックバックを利用しています。掛川や札幌市など、外部の地域の方も、参加されています。地域間交流では、各地域の祭りは良いテーマになると思います。

印出井:千代田区は東京の他の地域と比べても、観光スポットとしてのアドバンテージはあまり無い。しかし、日本の中の千代田の位置づけを考えた場合、日本の中心は東京であり、では東京の中心はどこかとなると、千代田区が連想されます。中心性のアドバンテージを活用できないかと考えています。例えば、全国各地の美味しい料理を集めたり、「お酒ウィーク」としてお酒を全国から集めたりといったイベントも考えられるのではないでしょうか。

三浦:実際にコミュニティでそういったアイデアが出てきた際に、すぐ現実の活動に結びついていくことが凄いと感じました。例えば「千代田で迎車ができるタクシー会社の一覧が欲しい」という意見が出ると、そのための携帯電話用サイトを誰かがすぐに作ったことや「千代田から終電でどこまで行けるのだろう」といった話題が出た際に、全国の行ける範囲を実際に誰かが調べたといったことがありました。そこからまた話題が繋がっていきます。

村上:限られた人だけでなく、色々な人が話せるということも大きいですね。

桑原:地域SNSを眺めると、どのような団体がどのような活動をしているかが分かります。そして地域間でお互い見えるようになると、自然と交流が進みます。全国的に広がりを見せると、非常に画期的なことになりますね。

長坂:姉妹都市や観光協会の単位ではなく、もっと狭い単位で交流ができることが大きな特徴でしょう。役所を通さずに、地域の異なる農家同士が繋がることや、生産者と消費者が直接繋がることが実現できるのではないでしょうか。

村上:広域での連携と関連しますが、長岡では実証実験期間中に合併を経験されましたが、いかがでしたでしょうか。

桑原:「長岡検定」というコミュニティを立ち上げ、色々な人が合併地域も含め、地域に関心を持ち、問題を作りました。他の地域では、何百万といったお金や、半年、1年といった単位の時間をかけて同様のことを行おうとしていましたが、地域SNSでは直ぐに出来てしまった。合併した地域で色々とこだわりを持っている人は居ますが、そのこだわりも地域SNSのひとつの話題として、話し合ったり、情報を共有したりできると思います。

村上:高木さんはWG委員として参加されていて、いかがでしたでしょうか。

画像:高木氏
高木:一人の利用者として地域SNSに参加し、千代田地域SNSで2つのコミュニティを作成しました。ひとつは地域で絞った「神保町が好き」というコミュニティ、もうひとつはテーマで絞った「ウィンタースポーツ」というコミュニティです。地域で絞る場合と、テーマで絞る場合でどう違うかを見てみました。「神保町が好き」コミュニティでは、神保町には色々な面があるので、話題を作ることが難しかったですね。間口が広い分だけ、比較的多くの方に参加していただいたのですが、書き込みが多いわけではなかったです。必ずしも情報交換をすることだけが目的ではなく、コミュニティに所属することで思いを共有するという使い方もあるのではないか、と感じました。「ウィンタースポーツ」コミュニティでは、比較的活発な情報交換がなされました。こちらはテーマ別のコミュニティですが、「千代田の地域SNSに参加している」ということを共通認識として持っていることが重要だったと思います。オフ会なども行いましたが、ウィンタースポーツという枠を通じて、千代田区で活動している人たちと出会えたことは、嬉しいことでした。このような新しい繋がりが出来たことは大きな成果だったと思います。

村上:次に金子さん、お願いします。藤沢と違った点など、なかったでしょうか。

画像:金子氏
金子:ツールとしては、徐々に良い物になってきたと思います。運営の部分、費用の部分でどのように仕組みを作っていくかが重要だと思います。例えば、積極的に地域SNSで仕事を生み出して行こう、といった発想があっても良いと思います。コミュニティの管理については、皆が気軽にコミュニティを立て、必要な場がすぐに作れているのが良いことだと思います。今後はコミュニティの管理者同士の情報共有や、ノウハウを交換する場が出来ると良いかな、と感じます。

村上:藤沢の市民電子会議室で、新しい会議室を作ることは気楽ではないのでしょうか。

金子:確認を含めて3日間程度かかる場合もあります。電縁マップでは、システムの面も含めて2週間程度かかることもあります。その間に話し合いたい熱が冷めてしまうことも起こってしまいますね。
「地域SNSはこうでなければならない」「地域SNSを使わなければならない」といった考え方ではなく、たとえ違うシステムに発展していっても、「地域のニーズが、そういうモノだったのだ」と考えていくことが必要だと思います。

村上:ツールの使い分けという点では、直井さん、感想など頂けますでしょうか。

画像:直井氏
直井:その地域SNSに誰が居るかは大事ですね。色々な人を誘いましたが、そのSNSに知っている人が居ないことは、やはり大きな障壁になっているようです。私自身は、地域SNSでは実際に会ったことのない人からのリクエストが多くありました。mixiでは会ったことのない人からのリクエストには答えていませんでしたが、地域SNSでは、地域への共通の興味や、同じ地域で働いていたりなど、地域の持つ連帯感のようなものを感じて答えました。ユニークな地域の繋がりを重視する地域SNSだからこそ参加したいという人は居ると思います。その強みを活かしたいですね。個人的にはコミュニティにメールから写真を投稿できる機能は、非常に活用できると思います。

村上:牧さん、いかがでしたでしょうか。

画像:牧氏
牧:全国いくつかの地域で講演をしたのですが、非常に熱意を持って聞いて頂けました。ICTを活用した住民参画というテーマについては、やはり全国の各地域に興味や熱意を持った人がおられました。千代田の地域SNSには、やはり仕事などで千代田に縁がある人も多く、講演を聴いた人にも沢山入っていただいたようです。
地域SNSには会社など組織の壁を越える可能性がありますね。会社内外のコミュニケーションに有効だと思います。また、友達を介しての信頼性も大きな特徴でしょう。「○○さんの友達だから」ということで、私の友達同士が、それまで会ったことが無かったのに、いつの間にか友達になっていたということがありました。人間と人間のネットワークの基本として、やはりこの人の友人ならという信頼感が重要だということでしょう。金子郁容先生からいただいたお話ですが、人と人とのコミュニケーションは、範囲を狭く絞ると深くなります。単に人数を増やすだけでなく、どれだけコミュニケーションを深めていけるかが今後は重要でしょう。情報としても、どこにでも公開されているような情報より、知る人ぞ知る深い情報の方が、ずっと価値があります。広く皆さんに見てもらいたい情報発信と、コミュニティに限定した密度の濃い深いコミュニケーションを、ひとつのサイトで実現できることが地域SNSの長所のひとつなのではないでしょうか。
日記などにちょっとでも良いので、コメントがあると嬉しいですね。「ごろっとやっちろ」では、皆さんの日記にちょっとしたコメントをつけて盛り上げに貢献している人がいます。そうしたうまい場作りができる人が複数いると良いと思います。
今回の実験では、こうした素晴らしい参加者に恵まれたことが、成功のカギだったと思っています。皆様、ありがとうございました。

長坂:島田市でも、ちょっとでも声をかけるという動きが重要視されていますね。

牧:八代市の小林さんに伺った話ですが、個人個人が一番関心を持っていることは「自分の発言に対する人の反応」です。地域SNSでは新着情報の表示や足跡などで、「自分の発言に対する人の反応」を見ることができます。それがついつい気になって、アクティブユーザーが増えていく面があると思います。ログインすれば自分の関心事項がマイページで一覧できる、そんな地域SNSは個人のポータルサイトに育っていく可能性があると思っています。

村上:お伺いしたいことは、まだまだありますが、時間となってしまいました。本日はどうもありがとうございました。

全員:ありがとうございました。

総務省 | 財団法人地方自治情報センター