平成18年版 情報通信白書(資料編)

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付注7 携帯型情報通信端末に関する分析


1 分析の枠組み
 携帯情報端末の性質・特性を、
[1] 通信機能などコンテンツ入手手段やサービス利用手段等
[2] 直接的なネットワーク効果に関する属性(例:利用ユーザ数等)
[3] 間接的なネットワーク効果に関する属性(例:利用コンテンツ数や利用サービス数等)
[4] その他の基本的な属性(機能、価格、信頼性)
に属性を分類した後、各属性に対する利用者の選好度について、ACA(Adoptive Conjoint Analysis)とCBC(Choice-Based Conjoint)により分析を実施した。

2 ACA (Adoptive Conjoint Analysis)の特徴と結果
 ACAでは、多数の属性を持つ仮想商品の各属性の効用値を分析可能である。質問に段階をもうけ、一つの質問を終了するごとに次の質問内容を調整してゆくことで、効用値の相対的な差異を効率よく分析することが可能となる
 ただし、ACAは属性の主効果のみを測定するソフトウェアであり交互作用については取り扱うことができないこと、各属性への限界支払意思の算出ができないなどの限界が存在する点に留意が必要である。
 効用への「寄与度」に着目すると、全体としては、コスト(端末価格10.0、月額料金9.8)、端末のサイズ(7.0)、記録容量(6.9)、通信機能(電子メール8.3、通話機能6.5、ウェブ閲覧5.8)、端末普及率(6.2)が上位を占めた。また、全体の第3位が電子メール (8.3)となったが、これは通信機能の中では最も高い寄与度であった。
 その他の付加的な機能の寄与度に関しては、音楽コンテンツ数(5.6)が最上位であり、電子マネー機能(4.8)、映像番組数(4.8)が続き、ウィンドウズアプリやスケジュール管理等のPDA的な機能の寄与度が相対的に低かった。
 また、箱髭図分析からは、通信機能に関する属性は「有り」と「無し」の箱間の距離が大きく、回答者は「有り」「無し」を明確に区分して「有り」に高い効用を示していると解釈できる。一方、GPS/ナビ、ウィンドウズアプリ利用、スケジュール管理については、箱間の距離が小さいため嗜好の分散という要素が相対的に大きくなった。

※ 具体的には、まず属性水準毎の効用値の大きさを質問し、k種類の属性水準に関する効用値の初期値ベクトルU0(k次元)を得る。次に、ある仮想商品ベクトルX1に対する選好度の質問の結果として得られた回答ベクトルR1をデータとして加えてUに関する最小自乗推定を行いパラメータU1を得る。さらに、X1の次の仮想商品X2からXnまで仮想商品を追加し、それぞれに対する選好度の質問結果R2・・・Rnから、各々の属性水準に対して与えられるk次元のパラメータU2・・・Unを質問ごとに最小自乗法によって推定し、修正を続ける。その結果が、n個の商品に対するn個の回答データを利用して算出した各回答者の属性水準の効用値となる

図表1 全回答者平均効用値と寄与度
図表1 全回答者平均効用値と寄与度
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3 CBC(Choice-Based Conjoint)モデルの特徴と結果
 全属性法(Full Profile Method)による回答結果を基に、ランダム効用理論に基づく選択確率モデルを用いて、選好関係についての分析を行った。具体的な効用モデルとしては
 とし、基本形の多項ロジットモデル(MNL : Multinomial Logit Model)により推計を行い、パラメータから限界支払意思額(WTP)の推計を行った。
 各属性に対する限界支払意思額の算出結果は図表2のとおりとなっている。コンテンツコピー機能の限界支払意思額が、月額料金、初期費用のいずれのベースでも高い値を示した。また、コンテンツのオンデマンド機能が可能である機器、他機器への一定回数コピーが可能である機器に対する限界支払意思額が高い結果となった。

図表2 各機能に対する支払意思額(WTP)
図表2 各機能に対する支払意思額(WTP)
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4 クラスター分析結果
 ウォード法(Ward Method)によるクラスター分析を実施することで、回答者のセグメンテーションの状況を確認した。結果、回答者は経済性重視派からコンテンツ重視まで七つのグループに分類することが可能であるものの、各クラスターについては、どのクラスターが明確に大きいといったことはなく、効用値の特徴が異なる小グループに均等に分かれる結果となった。

※ 各段階でクラスターの融合による重心からの距離の平方和の増分が,もっとも小さい二つのクラスターを融合しようとするものであり、最も分類感度が高い実用的な方法である。ここでは、原データについてはACAから得た全回答者の効用値、距離については原データ間のユークリッド距離を用いた

図表3 クラスター分析による回答者分類
図表3 クラスター分析による回答者分類

 詳細は、高地他(2006)「ユビキタスネット社会における利用者の選好についての分析−次世代の携帯端末を例として−」情報通信政策研究所を参照。


 

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