地方税の仕組み

 地方税は、都道府県や市町村が住民である皆さんに課税するものです。

 この章では、地方税制全体の体系やどのように税が集められるかといった仕組みに着目します。

地方税の体系

 租税には所得税や消費税といった様々な税目(租税の名称)があり、その分類方法も多様ですが、課税主体(税を課す者、国や地方団体)に着目して、国税と地方税に分けられます。そして、徴収された租税は基本的に、国税であれば国の財源に、地方税であれば地方団体の財源になります。

 また、担税力(税を負担する能力)を何に見いだすかにより、個人の所得や法人の事業活動から生じる所得に担税力を見出す所得課税、財・サービスの消費に担税力を見出す消費課税、資産の取得や保有に担税力を見出す資産課税等に大別できます。

 以上を踏まえ、多様な税目を分類整理したものが以下の表です。

 本ページで扱う「地方税」は、下図の右側の税目を指します。

PDFが開きます。国と地方の税源配分について。
国税としては、所得課税には、所得税、法人税、消費課税には消費税など、資産課税等には相続時や贈与税などがあります。
そして地方税としては、所得課税には個人住民税、個人事業税、法人住民税、法人事業税、消費課税には地方消費税など、資産課税には固定資産税や都市計画税などがあります。

 そして、地方税は以下の図のように整理されます。

 まず、課税主体に着目して道府県税と市町村税に分けられ、さらに、それぞれ普通税と目的税に整理されます。

 普通税とは、その収入の使い道を特定せず、一般経費に充てるために課される税を指します。一方で、目的税とは、特定の目的のために課される税であり、その使い道はあらかじめ定められています。例えば、市町村の目的税である都市計画税の税収は、その名のとおり市町村の都市計画事業や土地区画整理事業に充てられます。

PDFが開きます。地方税は道府県税と市町村税に分けられます。そして道府県税と市町村税はそれぞれさらに目的税と普通税に分けられます。
道府県普通税としては、道府県民税、事業税、地方消費税、不動産取得税、道府県たばこ税、ゴルフ場利用税、軽油引取税、自動車税、鉱区税、道府県法定外普通税、固定資産税(特例分)があります。
道府県目的税としては、狩猟税、水利地益税、道府県法定外目的税があります。
市町村普通税としては、市町村民税、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、鉱産税、特別土地保有税、市町村法定外普通税があります。
最後に市町村目的税としては、入湯税、事業所税、都市計画税、水利地益税、共同施設税、宅地開発税、国民健康保険税、市町村法定外目的税があります。

コラム2 地方税の歴史
地方税の近代史

 我が国の近代税制の歴史は、1873(明治6)年の地租改正に遡ります。地租改正により国税として地価の3%が貨幣で徴収され、国の経費に充てられることになりました。一方で府県の経費に関しては、その多くが「民費」という分担金で賄われていました。

 その後、1878(明治11)年に府県税の法制化、1888(明治21)年に市町村税の法制化が行われ、地方税の歴史が本格的にスタートしました。

シャウプ勧告

 そして第二次世界大戦後、シャウプ勧告に基づき現行の地方税法が制定されました。

 シャウプ勧告は、戦前の地方自治の未熟さを指摘し、その完成のためには地方団体の財政力の強化が不可欠であると説きました。具体的には、(1)市町村税の充実、(2)附加税(国税や府県税の税額を基準に賦課される税目)の廃止と独立税の確立、(3)税の種類を減らして税率を引き上げることなどを勧告しました。

  1. (1) 市町村税の充実は、地方自治の発達上、住民にとってより身近な市町村を強化する必要から求められたものです。
  2. (2) 戦前の地方税制度は附加税が多くを占めており、社会問題の増加によって地方財政の役割が大きくなる中で、地方団体の主体性・独自性に欠けるこの体制は行き詰まりを見せており、戦後シャウプ勧告により否定されることになりました。附加税の廃止と独立税の確立は、課税を行う主体としての地方団体の責任が住民に対して明確になることを意味します。
  3. (3) 税の種類を減らし税率を引き上げることは、税制の簡素化を意味します。税制が簡素であれば納税義務者(税を納めなければならない人)の理解も得やすく、勘違いや面倒さによる租税の滞納などを避けやすくなります。

 以上の勧告を踏まえ1950(昭和25)年に現行の地方税法が成立しました。以降1954(昭和29)年の改正など手直しが加えられ、現在の地方税法につながります。

地方税の税源配分

 先述のように、地方団体は住民生活に密接に関わる事務の多くを実施しており、歳出ベースでおよそ6割の事務を担っています(国:地方=4:6)。しかし、歳入を見てみると租税総額に対する地方税の割合は4割となっており(国:地方=6:4)、逆転現象が起こっています。

 現行の制度では、このギャップを地方交付税や国庫支出金などの国からの財源移転により埋め合わせています。これらの制度は地方団体間の財政力格差を是正し、安定した行政サービスの提供に資するという働きがあります。

 一方で、地方分権の進展に伴い、地方の自主財源を確保し地方の独自性を維持・発展させていくために、税源移譲などを行い移転財源に依存しない地方財政を目指すべきであるという議論も行われています。

 地方税制のあり方については、今後も不断の見直しが必要です。

PDFが開きます。左図、国・地方の歳入歳出(令和3年度決算)

国民の租税総額113.3兆円の内訳は、国税71.9兆円[70.0兆円]、地方税41.4兆円[43.3兆円]となっており、割合で見ると、国税は63.4%[61.8%]、地方税36.6%[38.2%]となっています。
一方で国、地方の歳出を見ると、国から地方へ地方交付税や国庫支出金が移転され、国の歳出は純計ベースで97.3兆円、地方の歳出は122.6兆円となっています。割合としては国の歳出が44.3%、地方の歳出が55.7%となっています。
そして国民へのサービスの還元は純計ベースで219.9兆円となっています。

(注1)精査中であり、数値が異動することがあります。
(注2)地方税には超過課税及び法定外税等を含んでいません。
(注3)国税は特別法人事業税を含み、地方税は特別法人事業譲与税を含みません。[]内は、国税は特別法人事業税を除き、地方税は特別法人事業譲与税を含めた金額です。

右図、地方の税源・歳出配分の推移

国・地方の歳出総額に占める地方歳出の割合
単位は%です。
平成元年から62%、62、64、65、66、66、65、65、65、63、61、60、63、62、62、60、59、59、59、59、57、59、58、58、58、58、58、58、58、57、57、56、56と推移します。

国・地方の租税総額に占める地方税収の割合
単位は%です。
平成元年度から35%、34、35、37、37、37、38、38、39、41、41、40、41、42、42、41、40、40、43、46、平成21年から46%、44、43、42、40、38、39、40、39、38、39、38、37、令和4年度地方財政計画額では37%、令和5年度地方財政計画では37%と推移しています。
平成21年度以降、地方法人特別譲与税等を含めた割合は、47%、45、45、44、43、41、41、41、40、40、41、40、38、令和4年度地方財政計画額では39%、令和5年度地方財政計画では38%と推移しています。

地方税の賦課・徴収

 それでは、地方税は具体的にどのように課され、どのように集められるのでしょうか。

地方税の課税件数の9割以上が、地方団体が調査の上で税額を決定し、納税義務者(税を納めなければならない人)に通知をするという方法で課されています(これを賦課課税といいます)。

 そして、税を集める方法として、ここでは3つの方法を紹介します。

 1つ目に、賦課課税のほとんどが「普通徴収」という方法で税が集められています。 普通徴収では、納税義務者である皆さんの元に都道府県や市町村から「納税通知書」が届けられて納税を行います。

 2つ目に「特別徴収」という制度があります。特別徴収とは、納税義務者が直接税金を納めるのではなく、企業など「特別徴収義務者」が納税義務者の給与から天引きという形で税金を預かり、まとめて納税をする方法です。

 最後に、「申告納付」という方法では、その名のとおり納税義務者が自分の納めるべき税額について申告し、あわせて納税を行います。

地方団体の自主性

 地方団体は、その自主性を発揮するために地方税の税目や税率設定について一定の裁量が与えられています。これを「課税自主権」と呼びます。地方分権の流れの中で、各地方団体が歳入を確保し、自立した運営を行うために課税自主権の拡充が図られています。

課税自主権の発揮の仕方には3種類あります。

 1つ目に、地方団体は、地方税法上に定められた「法定税」以外に、地方団体の条例により税目を新設できます。これを「法定外税」といいます。法定外税の新設にあたっては、地方税制全体の整合性を保つために、総務大臣による「協議・同意」が必要とされています。

 2つ目に、地方税法上、標準的な税率が定められている税目や、税率の設定が任意である税目がありますが、地方団体は一定の条件の下で自由に税率を定めることが可能です。標準的な税率より高く設定された税率により課税することを「超過課税」といいます。

 最後に地方団体は「わがまち特例」という制度の下で、税額の計算の基準となる「課税標準」(固定資産税における土地の価格など)や、「税額」についても一定の条件の下で独自の軽減措置を行うことが可能になっています。

コラム3 様々な「税率」

地方税法における税率の定め方には、基本的に(1)標準税率、(2)一定税率、(3)任意税率の3つあります。

  1. (1) 標準税率
    標準税率とは、地方団体が通常よるべき税率として定められるものです。
    財政上その他の必要があると認める場合には標準税率以外の設定も可能です。
    ただし、「制限税率 」が定められている場合は、その税率を上回る税率を設定することはできません。

    PDFが開きます。税率を引上げる場合は、標準税率と制限税率との間で超過課税が可能となります。
また、税率を引き下げる場合は税率の下限などは特にありませんが、いずれの場合も基準財政収入額は標準税率で算定されることになります。

  2. (2) 一定税率
    一定税率とは、法律上ひとつの税率が定められているもので、地方団体はそれ以外の税率を定めることができません。地方消費税などがこれにあたりますが、国税との兼ね合いで手続き上の煩雑さを避けるために用いられることが多いものです。
  3. (3) 任意税率
    任意税率とは、標準税率も一定税率も定められていないものであり、地方団体に税率設定が委ねられています。ちなみに、課税そのものが任意である法定外税は当然に任意税率です。

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