個人住民税

 私たちは日々の生活の中で、公共施設、上下水道、ごみ処理、学校教育といった行政サービスを多く受けており、その地域に住む住民が、各地域で必要となる費用を分担してもらうことが望ましいと考えられます。

 個人住民税とは、このような行政サービスの活動費に充てる目的で、その地域に住む個人に課す地方税をいい、市町村民税と道府県民税があります。納税する際には、一括して各市町村に個人住民税を納めなければならず、道府県民税は各市町村によって、その道府県に払い込まれます。

 それぞれの地域において、地域住民の生活を保障するために、行政サービスの財源を適切に確保する観点から、個人住民税は極めて重要な税目となっています。

PDFが開きます。個人住民税は、納税義務者(税を納める人)が、道府県民税と市町村民税を一括して市町村に納めて、市町村が道府県民税を道府県に払い込むという仕組みをとっています。
<参考>所得税

 個人の給与などに対して課する税として、個人住民税のほかに、所得税があります。

 個人住民税は地方団体が課する地方税、所得税は国が課する国税で、どちらの税目も重要な地位を占めています。

均等割と所得割

 個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。所得とは、企業から受け取る給与や、事業による利益をいいます。

 所得割の税率は、所得に対して一律10%とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されます。

 均等割は、個人住民税は「地域社会の会費」的なものであるとして負担を求める個人住民税の性格を反映したもので、通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)※と定められています。

 なお、道府県民税には、所得割・均等割のほかにも、一定の株式などによる利益についても課税の対象とするもの(利子割、配当割、株式等譲渡所得割)があります。

※東日本大震災を踏まえ、地方団体が実施する防災費用を確保するため、2014(平成26)年度から2023(令和5)年度までの10年間、市町村民税・道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています。

PDFで開きます。

納税義務者(税を納めなければならない人)

 個人住民税は、その年の1月1日時点で市町村(道府県)に住所がある方に対して課税されます。ただし、低所得者層の負担を考慮し、一定の事由に該当する方については、税負担を求めることは適当ではないとして課税対象から外れます。これを、非課税制度といい、生活できるように養っている家族の有無や人数、所得金額などが考慮されます。

税額の計算方法

  1. (1) 所得金額から、所得控除額(詳しくは後述)を引き、課税対象となる所得金額(下図の課税所得金額)を求めます。
    所得金額−所得控除額=課税所得金額
  2. (2) 課税所得金額に、所得割の税率である10%をかけた後、税額控除額(詳しくは後述)を引き、所得割額を求めます。
    課税所得金額×税率−税額控除額=所得割額
  3. (3) 所得割額と、均等割額(5,000円)を足したものが、個人住民税の税額となります。
    所得割額+均等割額=税額

 なお、所得税の税額を計算する際も、(1)の課税所得金額の計算方法までは同じです。しかし、個人住民税が「地域社会の会費」的な性格を持つことから、所得税の方が個人住民税よりも控除額が大きいものが多く、税率も、所得に応じて段階的に高くなる超過累進税率となっています。

PDFが開きます。課税所得金額(課税対象の所得)が195万円までは税率5%、195万円から330万円までは税率10%、330万円から695万円は税率20%…というように、税率がかけられます。

所得控除(所得から差し引かれる金額)

 所得控除とは、納税義務者に扶養親族※がいるかどうか、病気や災害などによる出費があるかどうかなどの個人的な事情を考慮して、納税義務者の実情に応じた税の負担になるように、所得金額から差し引くものです。

※扶養親族とは
 納税者が、生活できるように養っている扶養家族のうち、一定の所得金額を超えない者をいいます。
扶養親族がいるかどうかが控除条件となりうる制度の一つに、寡婦(寡夫)控除があります。夫(妻)と死別又は離別した方のうち、所得や扶養親族の条件を満たすと控除を受けることが出来ます。しかし、「婚姻歴の有無による不公平」と「男性のひとり親と女性のひとり親の間の不公平」といった問題が生じていました。そこで、2021(令和3)年度分個人住民税から、婚姻歴や性別を問わず、生計を一にする子を有しており、かつ、所得金額が500万円を超えない単身者も控除の対象となりました。

PDFが開きます。改正後では、結婚したことがあるかどうかや性別にかかわらず、子どもがいる結婚していない人について、30万円の控除が適用されます。そのうち、子どものいない寡婦に対しては、改正前の控除額26万円を適用することとしました。また、ひとり親控除や寡婦控除は、所得が500万円以下の方に限られます。
なお、事実婚の場合は、控除の対象外となります。

税額控除(税額から差し引かれる金額)

 税額控除とは、株式の配当などの配当所得がある場合や、対象団体に寄附をした場合に、税率を乗じた後の算出金額から、一定金額を差し引くものです。例えば、対象地方団体への寄附である、ふるさと納税があります。

 ふるさと納税とは、総務大臣の指定を受けた地方団体に対して寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度をいいます。

 地方で生まれ、様々な行政サービスを受けた方は、進学や就職を機に都会で生活し、そこで納税することが多いです。そうすると、都会は税収を得ることが出来ますが、地元のふるさとは税収を得ることが出来ません。今は都会に住んでいても、生まれ育ったふるさとへ納税する制度があっても良いのではないかという考えから、ふるさと納税は創設されました。

 寄附先によっては、返礼品としてその地方の特産品が贈られることもあり、広く知られるようになりましたが、返礼品については一定の基準が設けられています。また、返礼品のない寄附も進んでおり、税金を納める代わりの寄附金の使い道への共感が前提とされています。

 納税者が自分で選択して寄附先を決めることができるため、納税者の税に対する意識を高めること、お世話になった地域、応援したい地域の力になれることが期待されます。

 ふるさと納税による控除を受ける場合には、原則として確定申告※をする必要がありますが、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」により、確定申告が不要となることがあります。

※毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得金額と所得税などの額を計算し、確定するための一連の手続きを確定申告といいます。

納付の方法

 個人住民税の納付の方法には、「普通徴収」と「特別徴収」があります。

 普通徴収とは、市町村が、納めるべき税額などを記載した納税通知書を納税義務者に送り、これに基づいて税金を徴収する方法をいいます。個人住民税では、納税義務者は毎年3月15日までに前年の所得を、自ら申告しなければなりません。その申告された所得などに基づき確定した税額が、納税通知書に記載されます。

 特別徴収とは、納税義務者以外の者(地方税法では「便宜を有する者」と呼んでいます)が、納税義務者から税額を徴収して、それを納税義務者の代わりに納める方法をいいます。個人住民税では、この「便宜を有する者」には、給与などの支払をする会社などがあたります。会社員などの給与所得のある方や、年金受給者は、原則として、給与や年金が支払われる際に、その支払者がその給与などから差し引いて市町村に納めます。

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