法人住民税

 皆さん、トレーニングジムを思い浮かべてみてください。個人会員や法人会員は、ジムのトレーニングマシンなどを利用するために、ジムに会費を支払っています。言い換えると、個人や法人は、ジムが提供するサービスを享受するために、ジムの構成員として会費を負担しあっているということです。ここで地域社会に目を移すと、法人も個人と同様に、地方団体(都道府県と市町村)が提供する行政サービスを享受しています。そこで地方団体は地域社会の会費として、その構成員である法人にも、個人と同様に幅広く負担を求めています。これを法人住民税といいます。

納税義務者(税を納めなければならない人)

 この法人住民税の納税義務者は一体誰でしょうか。法律では都道府県及び市町村に事務所などを有する法人とされています。つまりその地域で商売などをしている法人が税金を払うということです。

均等割と法人税割

 法人住民税は均等割と法人税割の2つの税割で構成されていて、それぞれ納税義務者となる法人と納税額が異なります。

 均等割とは読んで字のごとく、法人であれば等しく払う義務のある税金です。「等しい額」といっても世界にも進出している大きな法人と地域密着型の法人とでは、法人の規模が違います。そのため、都道府県民税では法人の資本金等の額で、市町村民税では法人の資本金等の額と従業者数で払う税金の額が分けられています。このように法人の規模に応じて区分けした上で、同一区分内においては同一の額を法人に課しています。

 法人税割とは、法人が法人税額(法人が国に支払う税額)を基準にして都道府県や市町村に払う税金です。法人であれば等しく税額を課している均等割と違って、儲かっている法人ほど税額が高くなるという構造になっています。

 均等割と法人税割の決定的な違いとしては、法人税割は国に法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが払うのに対して、均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。言い換えると、均等割は、法人がどれだけ儲けたかに関係なく、地域社会の一員として支払う会費という性格が強いといえます。

税額の計算方法

均等割

 都道府県民税は資本金等の額によって5つの区分、市町村民税は資本金等の額・従業者数によって9つの区分に分けて、それぞれ下表のとおりです。

資本金等の額 都道府県民税均等割 市町村民税均等割
従業者数50人超
市町村民税均等割
従業者数50人以下
1千万円以下 2万円 12万円 5万円
1千万円超1億円以下 5万円 15万円 13万円
1億円超10億円以下 13万円 40万円 16万円
10億円超50億円以下 54万円 175万円 41万円
50億円超 80万円 300万円 41万円

法人税割

 法人が国に納めた法人税額に一定税率を乗じた額が法人税割の税額になります。

(都道府県)法人税額×1.0%
(市町村)法人税額×6.0%

分割基準

 複数の地方団体に事務所などがある法人は、その法人が事務所などを構えている全ての地方団体に法人住民税を納めなければなりません。ただ全ての地方団体に同額の税金を払うわけではありません。法人税割については、まず課税標準(税額の計算において基礎となる額)を各地方団体の事務所などで働く従業者数に応じて分割します。それに税率を乗じた額を各地方団体に払うことになります。

 結果として、ある法人が事務所などを構える地方団体数が増えるほど計算が大変になってしまいます。しかし、「地域社会の費用を構成員が負担する」という法人住民税の趣旨にとって必要な措置なのです。

コラム1 税額の計算をしてみよう

例 ある法人(資本金5,000万円、従業者数100人、法人税額200万円)がα県のA市、B市、そしてβ県のC市(従業者数はA市20人、B市60人、C市20人)で事業を行っている場合、各地方団体(α県、 β県、A市、B市、C市)に払う法人住民税はいくらでしょうか。

<均等割について>
(1) 市民税について

均等割については、課税標準は分割されず、均等割の税額はそれぞれの市で働く従業者数で決まります。表より資本金5,000万円の法人の場合、従業者数50人超であれば15万円、50人以下であれば13万円となるので、各市へ払う税額は
A市=13万円、B市=15万円、C市=13万円となります。

(2) 県民税について

表より均等割の税額は、5万円であるから、
α県=5万円、β県=5万円となります。

<法人税割について>
(1) 市民税について

課税標準額は200万円であるから、各市の分割後の課税標準額はA市=40万円、B市=120万円、C市=40万円となります。税率は6.0%であるから、各市へ払う税額は、
A市=24,000円、B市=72,000円、C市=24,000円となります。

(2) 県民税について

課税標準額は200万円であるから、各県の分割後の課税標準額はα県=160万円、β県=40万円となります。税率は1.0%であるから、各県へ払う税額は、
α県=16,000円、β県=4,000円となります。

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