1) |
基本的考え方
道州制は、現行憲法の下で、現行の広域の自治体、基礎的自治体の二層制を前提として構築することとし、その制度及び設置手続は法律で定める。
ア |
現在の都道府県を廃止し、より自主性、自立性の高い広域の自治体として道又は州を設置する。 |
イ |
道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が本来果たすべきものに重点化し、その多くの権限を地方に移譲する。 |
ウ |
道州の長と議会の議員は公選とする。 |
エ |
道州の区域については、原則として現在の都道府県の区域を越える広域的な単位とし、地理的、歴史的、文化的な諸条件を踏まえ、経済社会的な状況を勘案して定められるものとする。 |
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2) |
役割と権限
道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が本来果たすべきものに重点化され、その事務権限の相当部分を地方に移譲する。
すなわち、国は、現行地方自治法上、a)国際社会における国家としての存立にかかわる事務、b)全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務、c)全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施などの役割を担うこととされているが、道州制が導入された後は、国の役割は重点化され、a)、b)のほかc)のうち限定された一部に縮小することとなる。
道州制の導入に伴い、国から地方に移譲される権限のうち基礎的自治体に移譲できるものは原則として基礎的自治体に移譲するものとする。これにより、基礎的自治体は住民に最も身近な総合的な行政主体として、より一層大きな役割を担うこととなる。
道州は、規模・能力が拡大された基礎的自治体を包括する広域の自治体として、基礎的自治体との適切な機能分担のもとに圏域全体の視野に立った産業振興、雇用、国土保全、広域防災、環境保全、広域ネットワーク等の分野を担うものとする。
また、国の地方支分部局が持つ権限は、例外的なもの(入国管理、矯正等) を除いて、道州に移管する。その際、移管される国の事務権限について、かつての機関委任事務制度の手法が採られることのないようにすべきである。
道州制の導入に伴い、道州に対する国の関与、基礎的自治体に対する道州の関与についてはいずれも必要最小限度とする。また、国、道州、基礎的自治体相互間の新たな調整手続の整備を図る必要がある。 |
3) |
道州の区域及び設置
道州は、現行の都道府県よりも広い区域と権限を有することから、その区域は「国のかたち」と密接に関連する重要事項であり、法律により全国をいくつかのブロックに区分してその区域を定めるという考え方と、道州の区域は、関係都道府県が議会の議決を経て申請し、国会の議決を経て決定するという都道府県側のイニシアチブを重視する考え方とがある。
また、道州の設置については、全国一斉に道州に移行する方法と、一定の道州の要件に合致した場合は順次道州に移行する方法とが考えられる。いずれにしても、道州の仕組みや設置手続については、法律に定めることが必要である。 |
4) |
税財政制度
地方税財政制度については、道州の権限に応じて、自立性を高めることを原則とする。また、自立性の高い道州制を実現する観点から、自主財源である地方税を大幅に拡充することを基本とし、道州の規模、権限、経済力等を踏まえ、新たな財政調整の仕組みを検討するものとする。 |
5) |
連邦制との関係
道州制をめぐって、連邦制すなわち憲法において権限(行政権のみならず立法権(又は立法権及び司法権))が国と州とで明確に分割されている国家形態の導入を議論する向きもある。しかしながら、a)連邦制の下では、連邦政府と州政府の間の立法権の分割、地域代表としての上院(参議院) の創設、違憲立法審査権・立法権分割の審判者としての司法権のあり方など憲法の根幹部分の変更が必要となること、b)連邦制は、歴史的・文化的・社会的に一体性、独立性の高い連邦構成単位の存在が前提となること、c)地方分権を推進する観点から連邦制を導入する議論もあるが、連邦制を導入しても必ずしも地方分権を進めることにはならない場合があること、といった点を考慮すれば、我が国の成り立ちや国民意識の現状から見ると、連邦制を制度改革の選択肢とすることは適当ではないと考えられる。 |
6) |
検討事項
道州制の検討を行う際には、上記の観点のほか、a)現行憲法上は公選の長と公選の議員からなる議会を有することが地方公共団体の要件とされているが、広大な区域と大きな権限を有することとなる道州が、現行の地方公共団体と同様、それぞれ住民の直接公選による二元代表制であることでよいか、b)道州制の導入に伴い、その議決機関、執行機関、補助機関のあり方をどうするか、c)首都圏、近畿圏、中部圏など、人口や経済集積等において他の圏域と著しく異なる圏域についても同じ制度としてよいか、d)道州制の導入に伴い、大都市圏域においては、現行の指定都市制度よりも道州との関係において独立性の高い大都市制度を考えるのかどうか、といった観点についても、併せて検討することが必要である。
なお、道州制の導入については、都道府県も住民に身近な行政を担っており、また、小規模な市町村を補完するような都道府県の機能が引き続き必要であり、従来の都道府県の役割が依然として大きいものであること、また一方で、道州制を議論する前に圏域的なテーマについては既存の制度である都道府県間の広域連合を活用する方法もあると考えられることなどを踏まえ、道州制の導入については慎重な検討を要するとする意見もある。 |