会議資料・開催案内等



第27次地方制度調査会第7回総会 次第



平成15年11月13日(木)
10時30分〜12時30分
グランドアーク半蔵門「華の間」



1 開会




2 議題


    ・今後の地方自治制度のあり方に関する答申案
    ・当面の地方税財政のあり方についての意見案


3 閉会




*配付資料
  ・  今後の地方自治制度のあり方に関する答申案
  ・  当面の地方税財政のあり方についての意見案


  (当日追加配布)
  ・  税源移譲と国庫補助負担金の廃止・縮減に関する緊急提言の概要(PDF)
  ・  税源移譲と国庫補助負担金の廃止・縮減に関する緊急提言(PDF)
(平成15年10月 全国市長会)
  ・  「今後の地方自治制度に関する意見」の提出について(PDF)
(平成15年11月13日 全国市議会議長会)


  (答申・意見)
  ・  今後の地方自治制度のあり方に関する答申(PDF)
  ・  当面の地方財政のあり方についての意見(PDF)






○諸井会長  まだおいでになっていない委員の方もいらっしゃいますけれども、時間がまいりましたので、ただいまから地方制度調査会第7回総会を開会いたします。ちょっと風邪を引きましてお聞き苦しい点があるのはお許しを願いたいと思います。
  委員の皆様には大変ご多忙のところをご出席をいただきまして誠にありがとうございます。議事に先立ちましてご報告をいたします。
  本年8月18日付で委員の異動がございました。まず、全国都道府県議会議長会でありますが、会長の異動に伴い、会長代行でおられました東京都議会議長の三田敏哉委員退任をされ、現会長でおられます中畑保一委員が就任をされました。中畑委員から簡単にごあいさつをお願いいたします。
○中畑委員  全国議長会の会長をやっております中畑保一でございます。愛媛の議長もやっております。よろしくお願いいたします。
○諸井会長  それから、全国市長会でありますが、会長の異動に伴いまして、前会長でおられました立川市長の青木久委員が退任され、現会長でおられます金沢市長の山出保委員が就任をされました。山出委員お願いいたします。
○山出委員  山出でございます。よろしくお願いいたします。
○諸井会長  それから、全国市議会議長会でございますが、本年5月2日の川崎市議会議長としての任期満了に伴いまして、全国市議会議長会の小泉昭男委員が退任をされ、現会長でおられます北九州市議会議長の片山尹委員が就任をされました。片山委員お願いいたします。
○片山委員  全国市議会議長会会長の片山でございます。余分な話ですが、麻生総務大臣の隣の北九州市でございます。
○諸井会長  本日は大変ご多忙の中、麻生総務大臣にご臨席をいただきましたので、ここでごあいさつをお願いします。
○麻生総務大臣  それでは、第27次になります地方制度調査会の総会に当たりまして、一言、ごあいさつをさせていただきます。
  私の方はかれこれ1週間ほど前に選挙が終わったばかりですので、極めて殺伐としたところから格調高いところにまいりまして、なかなか品よくしゃべる調子になっておりませんのでご容赦を願いたいと思います。
  いずれにいたしましても、平成13年の11月に小泉総理の方から地方制度調査会に対しまして、社会情勢の変化に伴って、いわゆる地方行財政制度の構造改革ということで諮問があったのを受けられまして、この2年にわたりまして熱心なご審議をいただき、本日、答申をとりまとめていただくというところまでまいりました。皆様方のご努力に心から感謝を申し上げる次第です。
  地方分権一括法ができまして、ほぼ3年ということになろうかと思います。3年余りが経過をいたしておりますが、その間、各地域で市町村合併等々いろんなものが進んでおりまして、今、現在3,181 市町村というのがございますが、その中で444の合併の協議会ができまして、その対象市町村1,725 の市町村において話が進んでおるというところまで合併の話が進んでおります。
  いわゆる、地方に対して、これまで長い間、明治この方やってまいりました廃藩置県以後、中央集権が極めて強かった制度が敗戦後もそのまま基本的に残って、それが今、日本に大きく成功をもたらした背景にあったことは間違いなく認めなきゃいかんところだと思いますが、その大前提にありました、いわゆる工業化社会が終わり、冷戦が終わり、インフレが終わり、少子高齢化という今までになかったようなものが出てくる等々いろいろな意味で官僚主導、業界協調というのか、そういった中央集権的なものから、何となく中央集権から地域主権、大きな政府から小さな政府、効率性、いろんなことが言われるようになってかれこれ10年ということになろうかと思います。
  そういった中に合わせまして、いろいろな形で地方に合ったものをということで、均衡ある発展から特色ある発展ということに流れが変わっているという感じがいたしておりますし、事実、随分選挙の期間中もあちらこちら32都道府県に行かせていただきましけれども、各地の市町村で話を伺いますとほぼ同じようなことでして、それぞれに地方に自分たちなりのいろいろな自信を持っておられる市町村というのが出てきておられるのは誠に喜ばしいことだとは思いますので、そういった方々が任してくれればうまくやると言われる方と、何となくという方が2割、何でもかんでも任せられちゃうとちょっと困っちゃうという方が2割、真ん中の6割ぐらいがどっちにしようかなというところでしょうか。そんな感じがいたします。
  いずれにいたしましても、私どもにとりましては、この流れに沿ってことは動いていくことになろうかと存じます。大化の改新は戻り過ぎかもしれませんが、明治、戦後、これでいうと4回目ぐらいの  大きな大変革に当たっているような感じがいたしますので、この年末に向けまして、三位一体等々のいろんな改革を予算編成に合わせてやっていくことになりました。ぜひ皆様方の率直なご意見をいただきたいと存じますし、また、東北3県でいろいろ合併してみようとか、北海道で道州制をとか、いろいろな新しいことに対して、知事さんの意識が、やらせてもらえばこういうこともできるというような御意見も出てきているというような感じがいたしますのは、将来に向かって心強いという感じが正直なところであります。
  いずれにしても、本調査会の論議を聞かせていただき、それを参考にさせていただきながら、私どもといたしましては全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  大きな変化の中にあると思いますが、やはり、地域主権、地方が強くなるということは、結果としては国をも強くすることになっていくんだと思っておりますので、より一層、地方分権というものを法律の趣旨にのっとって、より強化していきたいと思っております。
  諸井会長、西尾副会長、松本小委員長ほか委員の方々、それぞれ2年間にわたってお世話になりましたし、また、新しく委員になられた方々にたいしましても、ぜひ積極的な御論議をいただき、もって国家の反映等々に資するように、皆様方のご協力をお願い申し上げてごあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。
○諸井会長  麻生大臣、ありがとうございました。
  麻生大臣は公務のために、これで退場されます。本当にありがとうございました。
(麻生総務大臣退室)
○諸井会長  それでは、早速議事に入らせていただきますが、当総会が始まります前に、運営委員会が行われましたので、まずその結果につきまして、運営委員長からご報告をお願いいたします。
○西尾運営委員長  総会に先立ちまして、先ほど運営委員会を開催し、本日の総会の運営等についてご相談いたしました。その結果、本日の総会におきましては、今後の地方自治制度のあり方に関する答申案及び当面の地方税財政のあり方についての意見案についてご審議いただきたいと存じます。
  以上運営委員会で決定いたしましたことについてご報告いたします。
○諸井会長  ありがとうございました。
  それでは、運営委員長からのご報告にありましたように、今後の地方自治制度のあり方に関する答申案及び当面の地方税財政のあり方についての意見案、これについて審議をしたいと存じます。
  まず、専門小委員会における審議状況につきまして、松本専門小委員長からご説明をいただきます。
○松本小委員長  ご説明を申し上げます。今次の地方制度調査会では、平成13年11月19日に開催されました第1回総会において、小泉内閣総理大臣から「社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度の構造改革について、地方自治の一層の推進を図る観点から、貴調査会の審議の調査を求める」との諮問を受けたところでございます。
  その後、本年4月30日に今後の地方自治制度のあり方についての中間報告を、5月23日に地方税財政のあり方についての意見を、それぞれ総会においてとりまとめていただいたところでございます。
  専門小委員会では、この中間報告の意見を踏まえ、その後、8回にわたる審議、2回の地方における意見交換会を行い、今般、「今後の地方自治制度のあり方に関する答申案及び当面の地方税財政のあり方についての意見案」を最終的にとりまとめ、本日の総会にお諮りすることとなった次第であります。
  それでは、専門小委員会でとりまとめた答申案及び意見案につきまして、事務局から朗読をさせます。
○山崎行政体制整備室長
今後の地方自治制度のあり方に関する答申(案)
   前文
  我が国の地方自治制度は、平成12年の地方分権一括法の施行により、そのありようを一新し、次なる新たなステージを迎えようとしている。市町村は、基礎自治体として地域において包括的な役割を果たしていくことがこれまで以上に期待されており、都道府県は、経済社会活動が広域化、グローバル化する中で、広域自治体としてその自立的発展のために戦略的な役割を果たすべく変容していくことが期待されている。
  また、地域においては、コミュニティ組織、NPO等のさまざまな団体による活動が活発に展開されており、地方公共団体は、これらの動きと呼応して新しい協働の仕組みを構築することが求められている。
  基礎自治体と広域自治体が21世紀においてそれぞれの役割を十分に果たしていく上で、どのような制度に変革していくべきかが問われている。
  当調査会は、平成13年11月19日に内閣総理大臣からの「社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度の構造改革」についての諮問を受け、現地での関係者との意見交換会なども行って調査審議を重ねてきたが、当調査会設置以来7回の総会と34回の専門小委員会にわたる議論の結果として、「基礎自治体のあり方」、「大都市のあり方」、「広域自治体のあり方」について、今回一定の結論を得たので、ここに答申する。
  なお、憲法第8章の地方自治の本旨の内容を具体化し、分権型社会を制度的にも確固たるものにすることが、さらなる分権改革に託されるべき重要な課題となるものである。このような課題については、地方自治に関する基本的な法制のあり方を含め、当調査会としても引き続き検討していくこととしたい。

第1  基礎自治体のあり方

1  地方分権時代の基礎自治体の構築

  (1 ) 地方分権時代の基礎自治体
  機関委任事務制度の廃止等により国と地方との役割分担を明確にした地方分権一括法の施行で、我が国における地方分権改革は確かな一歩を踏み出した。
  今後の我が国における行政は、国と地方の役割分担に係る「補完性の原理」の考え方に基づき、「基礎自治体優先の原則」をこれまで以上に実現していくことが必要である。
  このためには、今後の基礎自治体は、住民に最も身近な総合的な行政主体として、これまで以上に自立性の高い行政主体となることが必要であり、これにふさわしい十分な権限と財政基盤を有し、高度化する行政事務に的確に対処できる専門的な職種を含む職員集団を有するものとする必要がある。これを踏まえると、一般的には、基礎自治体の規模・能力がさらに充実強化することが望ましい。
  基礎自治体に対しては引き続き国として積極的な事務や権限の移譲を進めるべきである。都道府県も、条例による事務処理の特例の活用等により、規模・能力に応じて事務や権限を移譲するなど、可能な限り基礎自治体が住民に身近な事務を処理することができるようにしていくべきであり、少なくとも、福祉や教育、まちづくりなど住民に身近な事務については、原則として基礎自治体で処理できる体制を構築する必要がある。その結果、国民がこのような地方分権の担い手として十分な経営基盤を有する基礎自治体の住民となり、住民の自己実現を可能とするような豊かな地域社会を形成していくことができるようにすることが望ましい。
  (2 ) 住民自治の充実
  地方分権改革が目指すべき分権型社会においては、地域において自己決定と自己責任の原則が実現されるという観点から、団体自治ばかりではなく、住民自治が重視されなければならない。
  基礎自治体は、その自主性を高めるため一般的に規模が大きくなることから、後述する地域自治組織を設置することができる途を開くなどさまざまな方策を検討して住民自治の充実を図る必要がある。また、地域における住民サービスを担うのは行政のみではないということが重要な視点であり、住民や、重要なパートナーとしてのコミュニティ組織、NPOその他民間セクターとも協働し、相互に連携して新しい公共空間を形成していくことを目指すべきである。

2  市町村をめぐる状況

  (1 ) 市町村の役割の変化
  我が国の近代的な市町村制度は、明治初期に、地域の公共事務及び法令に基づく事務の処理のため、以前から存在していた、いわゆる「自然村」を基盤として、「行政村」を編成したことに由来する。その後、小学校事務の処理等のため300戸から500戸を標準として「明治の大合併」が行われ、中学校事務の処理のため人口8千以上を標準として「昭和の大合併」が行われた。
  今後、基礎自治体は、一層厳しさを増す環境、住民二一ズの多様化の中で、住民との協働の下に、質的にも高度化し、量的にも増大する事務を適切かつ効率的に処理することが求められている。
  (2 ) 市町村を取り巻く厳しい財政事情
  近年我が国の財政は、税収が落ち込む中で、国・地方ともに巨額の債務残高を有するなど極めて厳しい状況にある。地方においても毎年巨額の財源不足を生じており、その借入金残高は平成15年度末で約199兆円にのぼると見込まれている。
  このような状況を踏まえると、今後地方財政全般にわたり歳出の抑制が求められ、各地方公共団体は、コスト意識を持って事務・事業に取り組み、地域における郵便局との連携をはじめ、多様なサービスの提供方法の検討など、より一層効果的かつ効率的な行財政運営を行うことが必要となる。こうした観点から、市町村の規模等に対応して行われてきた各種の財政措置等についても見直しを図ることが避けられない状況にある。
  (3 ) 少子高齢化の進行
  今後、国全体の人口が2006年をピークに減少する中で、全国的に高齢化がさらに進んだ地域社会が出現するものと見込まれる。また、このまま推移すると、2030年には人口5千未満の市町村が現在の約700団体から1,200団体近くに増加すると予想されている。
  少子高齢化の進行への対応は、我が国の行政全般に関わる大きな課題であるが、特に小規模な市町村に与える影響は深刻であり、これまでのような行財政基盤を維持できない状態に陥ることが予想される。これにより、地方自治法第1条の2第1項に規定する住民福祉の増進を図るという基本的役割を担うことが困難となることを想定せざるを得ない。
  (4 ) 市町村合併の位置づけ
  このような状況の中で、今後の基礎自治体のあり方を展望すると、市町村の規模・能力の拡充を図る市町村合併を引き続き推進していくべきである。
  現在全国の市町村の約半数において市町村の合併の特例に関する法律(以下「合併特例法」という。)に基づく法定協議会が設置されており、当調査会としても市町村合併に向けての関係者の真摯な努力に敬意を表するとともに、大きな期待を寄せている。昭和40年の制定以来、10年毎に延長されてきた合併特例法の期限は平成17年3月31日までとされており、それまでにできる限り成果があがることが必要である。特に住民に対して合併による新しいまちづくりの可能性等合併に関するさまざまな具体的な情報を提供することが必要であり、住民自身が地域の基本的な課題として合併について真剣に考えることが重要である。国及び都道府県としても、さらにさまざまな方策を展開し、自主的合併が進展するように取組を進めていくことが肝要である。
  現在進められている市町村合併は、「昭和の大合併」後の生活圏や経済圏の拡大等をはじめとする経済社会の変貌、著しい少子高齢化の進行等の状況を踏まえつつ、地方分権改革により明らかにされた地域において包括的な役割を担うにふさわしい行財政基盤を有する基礎自治体を形成するために、市町村を再編成するものと位置づけることができる。
  また、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の機能を維持するため、自治体経営の単位を再編成し、都市と農山漁村が共生する新しい基礎的自冶体を形成する動きともとらえることができる。

3  合併特例法期限到来後における分権の担い手としての基礎自治体

  (1 ) 平成17年4月以降の合併推進の手法
1)   現行の合併特例法の失効(平成17年3月31日)後は、新しい法律を制定し、一定期間さらに自主的な合併を促すこととする必要がある。この法律は、合併に関する障害を除去するための特例を中心に定め、現行法における合併特例債等のような財政支援措置はとらないこととすべきである。
  なお、現行の合併特例法は延長しないことを前提に、平成17年3月31日までに関係市町村が当該市町村議会の議決を経て都道府県知事への合併の申請を終え、平成18年3月31日までに合併したものについては、合併特例法の規定を引き続き適用する旨の経過規定を置くことが適当である。
2)   新法においては、自主的な合併を推進するため、必要に応じて都道府県が市町村合併に関する審議会等の意見を踏まえて市町村合併に関する構想を策定することとすべきである。
  上記の構想は、現行の合併特例法の下で合併に至らなかったが、基礎自治体の規模・能力の充実を図るため、なお合併を行うことが期待される市町村を対象とすべきである。具体的には、生活圏域を踏まえた行政区域の形成を図るための合併、指定都市、中核市、特例市等を目指す合併、小規模な市町村に係る合併等がこの構想に定められるものとすべきである。
  なお、都道府県が構想を策定するに当たっての小規模な市町村としては、おおむね人口1万未満を目安とすることとするが、地理的条件や人口密度、経済事情のほか、現行合併特例法の下で合併を行った経緯についても考慮することが必要である。
3)   都道府県知事は構想に基づき、合併協議会の設置や合併に関する勧告、合併に取り組む市町村間のさまざまな合意形成に関するあっせん等により自主的な合併を進めることとすべきである。
  なお、現行の合併特例法においても、合併の是非を含め合併に関するさまざまな協議を行う場である合併協議会の設置について、一定の場合に市町村長の請求や有権者の6分の1以上の署名による請求によって住民投票を行うこととされている。このような場合と同様、都道府県知事が合併協議会の設置を勧告したとき、一定の場合には市町村長が合併協議会の設置について議会に付議するか、あるいは住民投票を行うこととする制度を設けることを検討する必要がある。
  (2 ) 市町村合併に関連する多様な方策
1)   合併後の基礎自治体における地域自治組織制度の活用
  合併後、総じて規模が大きくなる基礎自治体内において住民自治を強化する観点や、住民に身近なところで住民に身近な事務を住民の意向を踏まえつつ効果的に処理するという観点から、基礎自治体の事務のうち地域共同的な事務等を処理するため、下記4(1) の地域自治組織(仮称。以下同じ。)の制度を活用することが考えられる。
  なお、合併に際して地域自治組織を活用するときは、合併後の一定期間、下記4(2) 2)の法人格を有する地域自治組織を旧市町村単位に設置することができる等の特例を設けることが適当である。
  この制度を活用することにより、合併後の基礎自治体は、合併前の旧市町村のまとまりも活かした包括的な基礎自治体ともいうべき形態をとることが可能となる。併せて、地域自治組織に旧市町村の名称を冠することによって、合併前の名称を残すことも可能となる。
  市町村は、前述のとおり、その自主的な判断により、基礎自治体内の地域自治組織を設置できることとするが、都道府県知事も合併に際して、一定の場合に小規模な市町村等を対象として、その市町村を単位とする地域自治組織を設置することを勧告することができるものとすべきである。
2)   合併困難な市町村に対する特別の方策
  市町村合併については、地域の特性等を踏まえた上で推進していく必要があるが、例えば自らは他の市町村との合併を希望していてもさまざまな事情により合併協議が整わず、都道府県知事が上記の構想に位置づけて合併に関するあっせん等の調整を行ってもなお合併に至らないような事態が生じることがあり得る。
  このような事態において、市町村が基礎自治体として必要な経営基盤を有しないという自らの判断により合併を求めた場合に、適正な住民サービス確保の観点から看過し得ないと認めるときは、都道府県が関わる手続によって市町村の合併を行う新たな仕組みを引き続き検討していく必要がある。
  合併に関する新たな法律の下でも当面合併に至ることが客観的に困難である市町村に対して、合併の進捗状況や市町村の具体的ニーズを踏まえ、基礎自治体のみによって構成される広域連合制度の充実等の広域連携の方策により対応することについて検討を進める必要がある。
  また、そのような状況にある市町村については、組織機構を簡素化した上で、法令による義務づけのない自治事務は一般的に処理するが、通常の基礎自治体に法令上義務づけられた事務については窓口サービス等その一部のみを処理し、都道府県にそれ以外の事務の処理を義務づける特例的団体の制度の導入についても引き続き検討する必要がある。この場合において、都道府県は当該事務を自ら処理することとするほか、近隣の基礎自治体に委託すること等も考えられる。

4 基礎自治体における住民自治充実や行政と住民との協働推進のための新しい仕組み

  (1 ) 地域自治組織の制度化
  基礎自治体には、その事務を適切かつ効率的に処理するとともに、住民に身近なところで住民に身近な事務を住民の意向を踏まえつつ効果的に処理するという観点が重要である。
  また、本格的な少子高齢社会が到来しつつある今日、安全で住みやすい快適な地域づくりに資する地域のセーフティネットの構築が喫緊の課題となっている。このため、行政と住民が相互に連携し、ともに担い手となって地域の潜在力を十分に発揮する仕組みをつくっていくことも、これからの基礎自治体に求められる重要な機能のひとつである。
  こうしたことから、基礎自治体内の一定の区域を単位とし、住民自治の強化や行政と住民との協働の推進などを目的とする組織として、地域自治組織を基礎自治体の判断によって設置できることとすべきである。
  地域自治組織のタイプとしては、当調査会の「今後の地方自治制度のあり方についての中間報告」(平成15年4月30日) で示したように、a)行政区的なタイプ(法人格を有しない。) とb)特別地方公共団体とするタイプ(法人格を有する。) が考えられるが、一般制度としては、基礎自治体としての一体性を損なうことのないようにするということにも配慮してa)行政区的なタイプを導入すべきである。ただし、市町村合併に際しては、合併前の旧市町村が果たしてきた役割を踏まえ、合併後の一定期間、従前のまとまりにも特に配慮すべき事情がある場合には、合併前の旧市町村単位にb)特別地方公共団体とするタイプを設置できることとすることが適当である。
  なお、地域の状況がさまざまであることから、法律で定める事項は最小限にとどめ、地域の自主性を尊重し、地域において活用しやすいものとなるような制度とする必要がある。
  (2 ) 地域自治組織の仕組み
  地域自治組織は、区域内に住所を有する者が当然にその構成員となるものとし、具体的な仕組みは以下のとおりとすることが考えられる。
1)   一般制度としての地域自治組織の仕組み
  基本的な機能と組織
  一般制度としての地域自治組織は、住民に身近なところで住民に身近な基礎自治体の事務を処理する機能と住民の意向を反映させる機能、さらに行政と住民や地域の諸団体等が協働して担う地域づくりの場としての機能を有するものとし、基礎自治体の一部として事務を分掌するものとする。
  地域自治組織の機関として、地域協議会(仮称。以下同じ。)及び地域自治組織の長を置くこととする。また、地域自治組織には事務所を置き、支所、出張所的な機能と地域協議会の庶務を処理する機能を担わせることとする。
  なお、区域をはじめ各地域自治組織の基本的な事項は、基礎自治体の条例で定めることとするが、市町村合併に際して地域自治組織を設置する場合は、条例に代えて、あらかじめ合併協議によって定めることができることとする。
  地域協議会
(ア ) 役割
  地域協議会は、住民に基盤を置く機関として、住民及び地域に根ざした諸団体等の主体的な参加を求めつつ、多様な意見の調整を行い、協働の活動の要となる。また、地域協議会は、地域自治組織の区域に係る基礎自治体の事務に関し、基礎自治体の長その他の機関及び地域自治組織の長の諮問に応じて審議し、又は必要と認める事項につき、それらの機関に建議することができることとする。
  なお、基礎自治体の判断により、地域自治組織の区域に係る基礎自治体の予算、基本構想、重要な施設の設置及び廃止等一定の事項については、基礎自治体の長に必ず地域協議会の意見を聴くよう求めることが考えられる。
(イ ) 構成員の選任等
  地域協議会の構成員は、基礎自治体の長が選任する。
  (ア) で述べた地域協議会の役割から、構成員の選任に当たっては、自治会、町内会、PTA、各種団体等地域を基盤とする多様な団体からの推薦を受けた者や公募の住民の中から選ぶこととするなど、地域の意見が適切に反映される構成となるよう配慮する必要がある。
  なお、地域協議会は、住民の主体的な参加を期待するものであることから、その構成員は、原則として無報酬とする。
  地域自治組織の長
(ア ) 役割
  地域自治組織の長は、地域自治組織を代表し、地域協議会との緊密な連携の下、地域協議会によりとりまとめられた地域の意見を踏まえ、地域の実情に応じたきめ細かな事業・施策を実施する役割を担うものとする。
(イ ) 選任
  地域自治組織の長は、基礎自治体の長が選任する。
  財源
  地域自治組織が、地域協議会の意見を尊重しつつ必要な事業が実施できるよう、必要な予算を確保するなど、基礎自治体において地域自治組織の財源について所要の措置を講じることが期待される。
2)   合併に際して設置される地域自治組織(法人格を有する。) の仕組み
市町村合併に際しても、1)の一般制度としての地域自治組織を設置することはできるが、合併後の一定期間、合併前の旧市町村のまとまりにも特に配慮すべき事情がある場合は、特別地方公共団体である地域自治組織(法人格を有する。) を設置できることとすることが適当である。
  このタイプの地域自治組織についても、1)の地域自治組織と同様の役割が期待されるところであり、その組織についても、1)と同様、地域協議会と地域自治組織の長を置くほか、事務所を置くこととする。
  1)との相違点を中心とした制度の仕組みは以下のとおりである。
  設置
  合併協議により規約を定め、合併後の一定期間、合併前の旧市町村単位に設けることができることとする。
  なお、法人格を有することから、設置に当たって都道府県知事が認可等所要の関与を行う必要がある。
  事務の考え方
  地域自治組織は、法令により処理が義務づけられていない基礎自治体の事務のうち、その地域自治組織の区域に係る地域共同的な事務であって規約で定めるものを自らの事務として処理する。
  また、地域自治組織の機関が基礎自治体の補助機関の地位を兼ねることなどにより、法令により基礎自治体が処理することが義務づけられている事務を地域自治組織において処理することもできるものとする。
  組織等
  地域協議会は、地域自治組織の予算等を決定するほか、必要と認める事項につき基礎自治体の長その他の機関に建議することができることとする。
  地域協議会の構成員の選出方法は、地域の自主性を尊重する観点から、規約で定めることとする。なお、構成員は、1)と同様、原則として無報酬とする。
  地域自治組織の長は、基礎自治体の長が選任するものとする。
  地域自治組織の事務局の職員は、基礎自治体からの職員の派遣又は兼務を原則とし、必要な場合には、臨時の職員を採用できることとする。
  財源
  基礎自治体の事務の一部を処理するための財源は、基礎自治体からの移転財源によることとし、基礎自治体は地域自治組織の円滑な事務運営のための財源を確保するよう配慮するものとする。
  課税権と地方債の発行権限は有しないこととし、地方交付税の交付対象団体ともしないこととする。
  なお、地域自治組織が上記の移転財源による財源見合いの事務以外の事務を実施することを認める場合には、何らかの住民の負担によることができることとすることを検討する必要がある。
3)   指定都市への適用について
  指定都市については、行政区その他の一定の区域(出張所単位等) をもって地域自治組織を設置することができることとする。

第2  大都市のあり方

1   大都市に関する制度の現状と課題
  大都市に関する制度としては、昭和31年には指定都市制度が、平成6年には中核市制度が、そして平成11年には特例市制度が設けられ、今日に至っている。高次の都市機能が集積する都市地域においては、多様化する住民ニーズに即応して機動性の高い行政サービスの提供が求められており、大都市である基礎自治体に対する一層の権限の移譲をはじめとした権能の強化が求められている。
  一方、大都市は一般に人口が稠密で、多様で高度な都市機能が集積し、その社会実態的機能が一般の都市以上に広くかつ大きく周辺地域に及んでいるため、周辺地域との一体的整備が不可欠であり、大都市に特有の行政サービスの提供とともに、大都市を含む広域的なネットワークによる行政課題への対応が求められている。
  また、大都市地域においては、住民と行政との距離が大きいという指摘があり、また人口の集中や合併によって都市の規模が拡大するにつれ、このような傾向が一層助長される傾向も否定できない。個々の住民の意見を大都市経営に反映し、より多くの住民の行政への参画を促す仕組みが必要である。

2  今後における大都市制度のあり方
  (1 ) 大都市に共通する課題
  基礎自治体の権能の強化は重要な課題であり続けてきた。多くの国民が居住する大都市地域において、身近な行政を基礎自治体が担える制度改革を行っていくことは、地方分権の実を多くの国民が実感できる方途である。このような見地から、これまでも、中核市制度・特例市制度の創設、地方分権一括法等による市町村への権限の移譲などが行われてきたところであるが、引き続きこのような都市の規模・能力に応じた一層の事務権限の移譲が進められるべきである。特に、三大都市圏の既成市街地、近郊整備地帯における都市計画権限をはじめとした都道府県と市町村の都市計画制度に係る役割分担のあり方や農地転用のあり方については、その早急な見直しが必要である。また、義務教育、産業振興の分野を中心に一層の権限移譲が進められるべきである。
  このほか、大都市をはじめとした市町村に共通の課題として、都道府県においては、条例による事務処理の特例の活用等により、基礎自治体の規模・能力に応じて権限を移譲するなど、可能な限り基礎自治体が住民に身近な事務を自立的に処理することができるようにしていくべきである。
  条例による事務処理の特例は、都道府県の判断により都道府県の事務権限を基礎自治体に配分することを可能とする制度であるが、現行制度では基礎自治体の方から事務権限の移譲を求めることができないことから、基礎自治体が自らの判断により事務権限の移譲を都道府県に積極的に求めていくことができることとする必要がある。すなわち、都道府県知事の権限に属する事務の一部を処理することを求める基礎自治体は、都道府県に対し、事務処理の特例に係る条例の制定等を要請する旨の申出をすることができることとし、都道府県知事は、この申出を受けたときは、遅滞なくその申出を行った基礎自治体の長と協議しなければならない仕組みを導入することが適当である。
  (2 ) 指定都市制度
  指定都市は、一般の市町村よりも幅広い事務権限を有しているが、指定都市を含む大都市地域においても、環境保全、防災、交通ネットワークなど区域を越える広域的な取組を必要とする行政分野が存在している。また、沿革的には、当初制定された地方自治法に都道府県から独立した特別市の制度が設けられたが、実際には指定されることなく、昭和31年の地方自治法改正により同制度は廃止され、これに代えて指定都市制度が創設されたという経緯がある。
  このような状況や経緯を踏まえれば、指定都市については現行制度の大枠の中で、その権能を強化するという方向を目指すべきである。その上で、大都市圏全体で行政課題を解決することが求められる分野については、指定都市と周辺市町村との連携を強化するとともに、都道府県がこれに対応した調整の役割を果たすことが求められる。
  また、現在、指定都市の人口は合計で2千万人を超えており、我が国人口の約6分の1を占める住民が各行政区に居住し、日常の行政サービスの多くを各行政区から受けている。住民サービスを充実するという観点からは、大都市における行政区がより住民に身近なものとなり、住民の意向が一層反映されるよう、地域内分権化を図る必要があると考えられる。このため、各指定都市における実情に応じ、前述の地域自治組織の活用を図ることが期待される。
  (3 ) 中核市制度・特例市制度
  中核市制度・特例市制度については、基礎自治体の規模・能力に応じた権能の充実強化に積極的な役割を果たしており、また、制度の定着をみているところである。基礎自治体への一層の権限の移譲を推進していく見地からは、その指定のあり方等についてさらなる要件の見直しを行っていくことも考えられるが、市町村合併が進展する中で、各都市の規模・能力が合併特例法の期限である平成17年3月までの間に変動していく可能性が高いことを考えれば、少なくとも合併特例法の期限内においては、現行の中核市・特例市の指定要件を維持することとし、その後における要件緩和について、引き続き検討すべきである。

第3  広域自治体のあり方

1   変容を求められる都道府県のあり方
  都道府県の制度は、戦前の広域的地方制度である府県制から地方自治法の体系へ、そして地方分権一括法による機関委任事務制度の廃止による自立した広域自治体へと変遷してきたが、現実の都道府県の姿を見ると、明治21年に47ある現在の都道府県の区域の原型が確立されて以来、その名称及び区域はほとんど変更されることなく今日に至っている。
  近年においては、経済のグローバル化、産業構造の変化などを背景として、広域の圏域における戦略的かつ効果的な行政の展開が求められるようになっており、また市町村の規模・能力が拡大しつつある中にあって、広域自治体としての都道府県のあり方が改めて問われるようになってきている。

2   今後における広域自治体としての都道府県の役割
  都道府県のあり方がこのように変容を求められる中で、都道府県が自立した広域自治体として、世界的な視野も持ちつつ積極果敢にその役割を果たしていくためには、高度なインフラの整備、経済活動の活性化、雇用の確保、国土の保全、広域防災対策、環境の保全、情報通信の高度化などの広域的な課題に対応する能力を高めていくことが求められる。都道府県には国から移譲される権限の受け皿としての役割が引き続き期待されており、土地利用、地域交通、産業振興、国土保全などを中心に、国から都道府県へ一層の事務権限の移譲が進められるべきである。さらに、都道府県には、行政サービスの広域的な提供を通じて、バランスのとれた公共サービスの維持に貢献してきた側面があり、このような役割も引き続き必要である。
  基礎自治体との関係では、市町村合併の推進等により、今後は基礎自治体が自立的に事務を処理することになると考えられ、都道府県の役割は、規模・権能が拡大した市町村との連絡調整が主となり、これまで事務の規模又は性質から一般の市町村では処理することが適当でないものとして都道府県が担ってきた役割については、縮小していくと考えられる。

3   広域自治体のあり方(都道府県合併と道州制)
  規模・能力や区域が拡大した基礎自治体との役割分担の下に広域自治体としての役割、機能が十分に発揮されるためには、まず、都道府県の区域の拡大が必要である。
  また、国の役割を重点化し、その機能を地方公共団体に移譲するとともに、真の分権型社会にふさわしい自立性の高い圏域を形成していく観点から、現行の都道府県に代わる広域自治体として道又は州(仮称。以下同じ。) から構成される制度(以下「道州制」という。)の導入を検討する必要がある。
(1 ) 都道府県合併
  現行地方自治法上、都道府県の廃置分合は、国の法律によってのみ行い得ることとなっており、都道府県の発意により合併手続に入ることができないことから、現行の手続に加えて、都道府県が白主的に合併する途を開くことを検討すべきである。
  その方式としては、市町村合併の場合と同様に、都道府県の自主的合併の手続を整備することとし、関係都道府県が議会の議決を経て合併を申請し、国会の議決を経て合併を決定するといった規定を整備することが考えられる。
(2 ) 道州制
  道州制の導入は、単なる都道府県の合併とか国から都道府県への権限移譲といった次元にとどまらない地方自治制度の大きな変革であり、国民的な意識の動向を見ながら、引き続き次期地方制度調査会において議論を進めることとするが、当調査会としては、今後議論すべき論点として、現時点では次のように考え方を整理することとした。
1)   基本的考え方
  道州制は、現行憲法の下で、広域自治体と基礎自治体の二層制を前提として構築することとし、その制度及び設置手続は法律で定める。
  現在の都道府県を廃止し、より自主性、自立性の高い広域自治体として道又は州を設置する。
  道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が本来果たすべきものに重点化し、その多くの権限を地方に移譲する。
  道州の長と議会の議員は公選とする。
  道州の区域については、原則として現在の都道府県の区域を越える広域的な単位とし、地理的、歴史的、文化的な諸条件を踏まえ、経済社会的な状況を勘案して定められるものとする。
2)   役割と権限
  道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が本来果たすべきものに重点化され、その事務権限の相当部分を地方に移譲する。
  すなわち、国は、現行地方自治法上、a)国際社会における国家としての存立にかかわる事務、b)全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務、c)全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施などの役割を担うこととされているが、道州制が導入された後は、国の役割は重点化され、a)、b)のほかc)のうち限定された一部に縮小することとなる。
  道州制の導入に伴い、国から地方に移譲される権限のうち基礎自治体に移譲できるものは原則として基礎自治体に移譲するものとする。これにより、基礎自治体は住民に最も身近な総合的な行政主体として、より一層大きな役割を担うこととなる。
  道州は、規模・能力が拡大された基礎自治体を包括する広域自治体として、基礎自治体との適切な機能分担の下に圏域全体の視野に立った産業振興、雇用、国土保全、広域防災、環境保全、広域ネットワーク等の分野を担うものとする。
  また、国の地方支分部局が持つ権限は、例外的なものを除いて、道州に移管する。その際、移管される国の事務権限について、かつての機関委任事務制度の手法が採られることのないようにすべきである。
  道州制の導入に伴い、道州に対する国の関与、基礎自治体に対する道州の関与についてはいずれも必要最小限度とする。また、国、道州、基礎自治体相互間の新たな調整手続の整備を図る必要がある。
3)   道州の区域及び設置
  道州は、現行の都道府県よりも広い区域と権限を有することから、その区域は「国のかたち」と密接に関連する重要事項であり、法律により全国をいくつかのブロックに区分してその区域を定めるという考え方と、道州の区域は、関係都道府県が議会の議決を経て申請し、国会の議決を経て決定するという都道府県側のイニシアチブを重視する考え方とがある。
  また、道州の設置については、全国一斉に道州に移行する方法と、一定の道州の要件に合致した場合は順次道州に移行する方法とが考えられる。いずれにしても、道州の仕組みや設置手続については、法律に定めることが必要である。
4)   税財政制度
  地方税財政制度については、道州の権限に応じて、自立性を高めることを原則とする。また、自立性の高い道州制を実現する観点から、自主財源である地方税を大幅に拡充することを基本とし、道州の規模、権限、経済力等を踏まえ、新たな財政調整の仕組みを検討するものとする。
5)   連邦制との関係
  道州制をめぐって、連邦制、すなわち、憲法において権限(行政権のみならず立法権(又は立法権及び司法権))が国と州とで明確に分割されている国家形態の導入を議論する向きもある。しかしながら、連邦制の下では、連邦政府と州政府の間の立法権の分割、地域代表としての上院(参議院) の創設、違憲立法審査権・立法権分割の審判者としての司法権のあり方など憲法の根幹部分の変更が必要となること、連邦制は、歴史的・文化的・社会的に一体性、独立性の高い連邦構成単位の存在が前提となること、といった問題があり、我が国の成り立ちや国民意識の現状から見ると、連邦制を制度改革の選択肢とすることは適当ではないと考えられる。
6)   検討事項
  道州制の検討を行う際には、上記の観点のほか、a)現行憲法上は公選の長と公選の議員からなる議会を有することが地方公共団体の要件とされているが、広大な区域と大きな権限を有することとなる道州が、現行の地方公共団体と同じく、それぞれ住民の直接公選による二元代表制であることでよいか、b)道州制の導入に伴い、その議決機関、執行機関、補助機関のあり方をどうするか、c)首都圏、近畿圏、中部圏など、人口や経済集積等において他の圏域と著しく異なる圏域についても同じ制度としてよいか、d)道州制の導入に伴い、大都市圏域においては、現行の指定都市制度よりも道州との関係において独立性の高い大都市制度を考えるのかどうか、といった観点についても、併せて検討することが必要である。
  なお、道州制の導入については、都道府県も住民に身近な行政を担っており、また、小規模な市町村を補完するような都道府県の機能が引き続き必要であり、従来の都道府県の役割が依然として大きいものであること、また一方で、道州制を議論する前に圏域的なテーマについては既存の制度である都道府県間の広域連合を活用する方法もあると考えられることなどを踏まえ、道州制の導入については慎重な検討を要するとする意見もある。
  答申案文は以上でございます。
○椎川財政課長  次に「当面の地方税財政のあり方についての意見(案)」
   まえがき
  国と地方との役割分担や責任分野を明確化するとともに、地方が責任を持つべき分野について自己決定と自己責任の原則を徹底する地方分権改革は、平成12年の地方分権一括法の施行を経て次なる段階を迎えており、地方税財政の問題が残された最重要課題の一つとなっている。
  このような認識の下、当調査会は、地方税財政のあり方のうち、現下の喫緊の課題である三位一体の改革について、その考え方を整理し、平成15年5月23日に「地方税財政のあり方についての意見−地方分権推進のための三位一体改革の進め方について−」としてとりまとめた。政府は同年6月27日に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を閣議決定し、その中に三位一体の改革によって達成されるべき「望ましい姿」と「具体的な改革工程」を盛り込んだ。その内容は、当調査会の意見と基本的方向を同じくするものであると考えているが、当調査会としては、今後、明年度の予算編成をはじめとして平成18年度までの間に具体化される三位一体の改革についての基本的な考え方と特に留意すべき事項について、改めて指摘することとした。三位一体の改革が、地方分権改革の流れに沿って着実に推進され、実現されることを強く期待したい。
  なお、当調査会としては、地方税財政のあり方全般については今後も調査審議を続けていくべき間題であると考えており、各方面の意見を踏まえながら、引き続き次期地方制度調査会において議論を進めることとする。

1  基本的な考え方
  地方分権型の税財政システムについては、歳出面での国の関与の廃止、縮減により地方の自由度を高めるとともに、歳入面においては、地域における受益と負担の対応関係の明確化を図る観点から地方税中心の歳入構造を確立することが必要である。このため、歳出純計に占める国と地方の歳出の割合と租税総額に占める国税と地方税の割合との乖離を縮小し、地方への税源配分の割合を高め、国税と地方税の税源配分が1:1となることを目指して地方税源の充実を図っていくべきである。
  なお、こうした基本的な考え方にしたがって改革に取り組みながら、一方で現下の地方財政が巨額の財源不足状態にあることを踏まえ、地方財政の運営に支障を生じることのないよう適切な措置を講じていく必要がある。

2  三位一体の改革を進めるに当たって留意すべき事項

(1 ) 全般にわたる事項
  「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」に盛り込まれた三位一体の改革は、当面、平成18年度までの改革であり、税財政面における地方分権改革の第一歩と位置付けられるべきものである。したがって、当調査会の「地方税財攻のあり方についての意見」の方向を目指してさらに取組を進めていく必要がある。
  この三位一体の改革は、税源移譲、地方交付税の見直し、国庫補助負担金の廃止・縮減等の改革を同時併行で一体のものとして相互にバランスを図りながら行うことが必要である。
  なお、この改革に当たっては、離島、中山間地域等条件不利地域における財政力格差の適切な調整に留意することが必要である。
  平成16年度は、実質的な意味で三位一体の改革の初年度である。このことを踏まえれば、それに相応しい内容・規模の改革が行われることが必要であり、当調査会としてもその実現を強く求めたい。
(2 ) 税源移譲を含む税源配分の見直し
  税源移譲を含む国と地方の税源配分の見直しに当たっては、応益性と負担分任性という地方税の性格に十分配慮しつつ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築することが必要である。このような観点から、国庫補助負担金の廃止・縮減に伴う基幹税の充実を基本とした税源移譲については、個人住民税の拡充・比例税率化や地方消費税の拡充を中心に進めるべきである。
  また、国庫補助負担金の廃止・縮減に伴う税源移譲に当たって、個別の事業の見直し・精査や効率化を図る際に、これらに名を借りた地方への負担転嫁が行われることがないよう特に留意する必要がある。
  さらに、地方公共団体が自主的な課税を行いやすくするということも重要であり、課税自主権を更に活用しやすくするような方策について検討する必要がある。
(3 ) 地方交付税の改革
  地方交付税については、国の歳出の徹底的な見直しと歩調を合わせつつ、地方財政計画の歳出を中期的な目標の下に計画的に抑制することにより、総額を抑制するよう努めることが必要である。その際、地方公共団体の自助努力を促しつつ、地方の歳出の見直しを進めていくことが求められる。
  また、地方交付税は一般財源ではあるが、国への依存財源であることから、三位一体の改革における地方財源の拡充については、自主財源である地方税の拡充を基本とすべきであり、国庫補助負担金を廃止・縮減した上で、その財源を地方税として移譲することと併せて、地方交付税の一部も、両者のバランスを考慮しながらこれを地方税へ振り替えることに取り組む必要がある。ただし、その場合にも、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、必要な地方一般財源の総額を確保すべきである。
  なお、地方交付税について、財源調整機能だけに特化すべきとの意見があるが、地方交付税を通じた財源保障機能は、国が地方公共団体に対して、仕事を義務づけ又は実質的に地域格差を生じないことを前提に仕事を委ねる仕組みとしていることと不可分の関係にあり、こうした仕組みが存続している限りにおいては必要不可欠なものであるため、これを維持していく必要がある。
(4 ) 国庫補助負担金の廃止・縮減
  国庫補助負担金の廃止・縮減については、当調査会の「地方税財政のあり方についての意見」にしたがい抜本的な見直しに取り組むことが必要である。
  特に、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の「(別紙2)国庫補助負担金等整理合理化方針」において重点項目とされているものについては、それぞれ着実な取組を推進し、地方公共団体の判断と責任において施策を取捨選択できる領域を拡大することにより、住民二一ズに沿った施策の実施による行政サービスの向上及び行財政運営の自主性・効率性の向上を国民が実感できるような成果をあげるべきである。
  また、職員設置費、法施行事務費、公共施設の運営費・設備整備費に係るものなど地方公共団体の事務として同化・定着している国庫補助負担金については、平成16年度に、その全額を一般財源化すべきである。
  さらに、いわゆる奨励的補助金については、国家補償的性格を有するもの、災害による臨時巨額の財政負担に対するものなどを除き、原則廃止・縮減すべきである。このためには、各年度ごとの廃止・縮減の明確な数値目標を掲げ、抜本的な改革を推進する必要がある。
  国庫補助負担金の廃止・縮減は、三位一体の改革の入口であり、改革全体の成否を決するものであるため、平成16年度からこれを確実に進めていく必要がある。

3  平成16年度における地方財攻措置
(1 ) 地方財源不足への対応
  現下の地方財政は、平成15年度においても約17兆円に上る財源不足を生じており、その多くを借入金等の特例措置で補てんせざるを得ない状況が続いている。その結果、地方財政の借入金残高は平成15年度末で199兆円に達しており、非常事態とも言うべき状況に至っている。
  現行の通常収支に係る財源不足補てんルールは平成15年度までとされているが、歳出の抑制と歳入の確保のための努力を行ったとしても、来年度以降も、引き続き巨額の財源不足が生じる可能性があり、そのような場合には地方行財政制度の改正又は地方交付税率の変更を行うという地方交付税法第6条の3第2項を踏まえ、地方財政の運営に支障が生じることのないよう万全の措置を講ずるべきである。
(2 ) 地方債資金の確保
  地方債については、地方分権の推進や財投改革の趣旨を踏まえ、法律により義務づけられた事務の実施に必要な資金を中心に所要の公的資金を確保するとともに、流通性の向上、調達手段の多様化等の環境整備を行いつつ、民間資金による資金調達の充実を図る必要がある。
  以上でございます。
○諸井会長  どうもありがとうございました。大変長時間の朗読で皆さんお疲れと存じますが、早速、ただいまの案文についてのご質問とか、ご意見をお伺いしたいと存じます。
  ご都合で先に退室されるご予定の方もおられますので、伊藤先生、何かございましたら。
○伊藤委員  伊藤でございます。私は全体的には、これはいい答申というふうに判断しておりますが、問題は文章がずっと羅列されているわけで、こうせざるを得ないんでしょうけれども、問題が2つあるんじゃないかと。
  1つは地域自治組織であります。従来、基礎自治体の小さな市町村等においては、安定的な地域社会というものがずっと続いていたように思います。どこを中心として、どこの利益とか、主張を中心とした安定であるかは別であります。しかしながら、ある程度の安定的な推移があって、その上で、このシステム形成が組み立てられているような気がします。しかし、地方の従来の安定的な社会を指導していた層が変化をしている。変化をしているどころか崩壊をしているというような状況が全国的にある。
  一方、住民側からの不満、主張というものは、かなり鮮明に出てきている。これが選挙に反映される場合と反映されない場合があるんじゃないかというふうに思っています。ですから、地域自治組織の形成の仕方、どのようにやっていくかの段取り、その他を誤ると基礎的自治体の市長の権限や議会の権限との対立が起こるんじゃないかというふうに懸念をいたします。
  ですから、形態としての記述はここにされているようなことでいいと思うんですけれども、その背景にある社会分析をきちんとした方がいい。こういう政調というレベルではなくて、専門家なり、行政、地方からの人たちの参加とか、そういったことを含めて、徹底的な社会研究をしないと根本的なところで誤ってしまうというおそれを感じます。簡単に行けるもんではございません。ぜひ、そのように対応する必要があるのではないかと思います。
  それから、道州制に移行するということについては、一斉に移行、段階的移行ということでされておりますけれども、道州制に移行するやり方の段階的な方向ということとは別に、どういう機能を持つかということの、ある意味では実験的なヨーロッパがECからEUに行ったような段階を踏む必要があるんじゃないか。経済機能で経済圏をやってみるとか、ないしは環境とか、福祉の問題でやってみるか、さまざまなことがあると思うんですけれども、機能の段階的な試みをしつつ道州制に移行するというシステムの移行を考えないと、ここは失敗は全く許されないというものでありますから、ぜひそのことについても検討する必要があるんじゃないかと思います。
  答申に盛り込むか盛り込まないかは別にして、そういう意識を持つ必要があるんじゃないかということで2点について申し上げました。大変失礼しました。自分の都合で先に述べさせていただきました。
○諸井会長  どうもありがとうございました。
○山出委員  ちょっと先に述べさせてもらいます。全国市長会会長の山出でございます。
  今度おまとめになったわけでありますが、現地でのいろんな地方関係者との意見の交換会でありますとか、あるいは私ども都市自治体の意見もお聞きをいただきまして、終始熱心に論議がされたわけでありますが、私は、この自治体の権限、これを充実すること、そしてまた、税財政基盤の確立をすることが不可欠だというふうに思っています。
  この点に関しまして、自立性の高い基礎自治体の形成について、基本的な考え方を示しておられるわけでありますが、引き続きまして、分権改革を進めてまいりますために、広域自治体としての都道府県の役割、またそのあり方と基礎自治体とのことについて、次期地方制度調査会において、ぜひ論議が進められてほしい。このことをまず期待をしておきたいと思っています。
  次に税源移譲を核とした地方税財政基盤の充実強化の件でございますが、これは地方分権改革の残された最大の課題と認識をいたします。とりわけ、三位一体の改革に関しましては、私ども先般市長会といたしまして、『税源移譲と国庫補助金の廃止・縮減に関する緊急提言』なるものをまとめさせていただきました。
  実はお手元にお配りをしてございまして、それをぜひご覧をいただきたいと思っております。3ページから6ページにかけまして、主なる記述があるわけでございまして、まずは3ページをご覧いただきたいと思います。
  地方向けの国庫補助負担金、総額20兆4,000億円につきまして、これは市町村に直接交付するもの、また、県を通じて市町村に交付されるもの、これらを対象といたしまして、個々具体の補助金について検討をいたした次第でございます。
  その結果、3ページに書いてございますが、生活保護費負担金など国によります統一な措置が望まれるもの、また、災害復旧のために要する経費にかかるもの、こうしたものなど一部の補助金を除きまして、原則廃止するということにいたしています。
  この結果、廃止して税源移譲すべき補助金は101 件、総額にいたしまして約5兆9,000億円という数字になりました。そのうち、少なくとも約5兆円の税源移譲を行う必要がある。このようにいたしております。
  次の点でございますが、6ページをご覧いただきたいと思います。税源移譲に触れてございまして、廃止する補助金の対象事業の中で、引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものにつきましては、基幹税による税源移譲の具体化が重要でございます。税収が安定的でかつ税源の偏在性が少ない地方税体系を構築することが大事だというふうに思ってございまして、このために、個人住民税の比例税率化等によりまして、所得税から個人住民税への移譲を行う。また、消費税の1%相当額を地方消費税に移譲する。そしてバランスのいい税源移譲をする必要がある。このようにいたしております。
  次に3点目でありますが、ちょっと5ページに戻ってください。5ページに書いてございますのは、この補助金の廃止・縮減に当たっての必要な措置ということであります。税源移譲を行います際には、税源の偏在性から都市間の財政力格差が拡大をするということが予想されますので、財源調整と財源保障機能を一体として果たしますところの地方交付税の機能を強化する必要がある、このようにいたしております。
  そしてもう一つ、そこに付記してございますが、廃棄物処理施設の整備、あるいは下水道の終末処理場の整備、学校施設の整備、このように臨時的でかつ巨額の財政負担になる事業につきましては、平準的な財政運営ができるように財政措置を講ずる必要がある。このように記載をさせていただきました。
  ともあれ、平成16年度は実質的な意味で三位一体改革の初年度でございます。我々の提言も踏まえまして、それにふさわしい内容、規模での具体化を実現をして、分権時代の地方税財政基盤が早期に確立をされるように強く望みたいと思います。
  原則廃止ということを申し上げておるわけでありまして、このことについて都市自治体の分権にかける気概とか、意欲とか、そういうものをぜひ汲み取っていただく必要がある。このように踏まえておるわけであります。
  また、16年度の地財対策につきましては、巨額の財源不足が生じている状況を踏まえまして、交付税率の変更も含めて、都市財政運営に支障が生ずることのないように、万全の措置を講じられるように強く望みたいと思います。もちろん、我々都市自治体といたしましても、創意と工夫をこらしまして、行財政改革には積極的に取り組んでいくつもりでございまして、このことも申し上げて市長会の発言とさせていただきたいと思います。
  ありがとうございました。
○諸井会長  どうもありがとうございました。ほかにいかがですか、山本さん。
○山本委員  最初にお尋ねをしたいんですが、もし私の勘違いでしたらお許しください。前回のときはたしか「基礎的自治体」と言われました。今日は「基礎自治体」になっておりますね。この「的」があることとないことではかなり意味が違うと思うんですが、なぜそういうふうになったのか、御説明をいただければと思います。
  その基礎自治体がどういうものであり、基礎的自治体がどういうものであるという違いがわからないと、私は今日申し上げる意見が変わってしまうので、最初にそれを教えていただけませんでしょうか。
○松本小委員長  実は専門小委員会におきまして、前は基礎的自治体という言葉と広域の自治体という言葉を使っておりました。それに対しまして、もう「的」という言葉をあえて入れることはないんじゃないか。基礎自治体と広域自治体という2つにすっきり概念と統一した方がいいんじゃないかということでございまして、およそ意味するところは、今までの基礎的自治体ということと変わりはないものとしてお考えいただいて結構でございます。
○山本委員  そういうことを踏まえながら、私も町村会としての意見を申し上げさせていただきます。
  今の基礎自治体がさっきも言われておりますような、十分な権限と財政基盤を有し、自立性の高い行政体であるべきという理念については、私も全く反対はありません。賛成です。全くそのとおりだと思います。
  ところが今回は、市町村を合併させることにあるわけですから、いつも申し上げているんですけれども、合併をしても、いわゆる自立力が生み得ない、そういう市町村が一体合併をするとどういう効果が出るのか、結果になるのかということが非常に懸念されます。これは、私が住んでいるところがそのとおりでございまして、合併をしても10か市町村ありますけれども、マイナス1がマイナス10にならずに大きなマイナス1になっていくんです。それでは、これから努力をして自立のできるようにすべきじゃないかと言われても、それだけのポテンシャルを持っていないわけですから、言われるような自治体になることは非常に時間がかかると思います。
  同時にまた、経済変化が大幅に私どもの地域に好影響を与えることになれば別だと思いますけれども、今のところ全くそういう点は考えられません。会長さんご存じのように、白があったんですけど、もう白もなくなりました。黒と白で経済が成り立っておった地域なんです。黒がなくなりますと、白もなくなります。白も黒もなくなりましたから、あと残るのはなんでしょうか。赤しかないのかなと、そういうふうに思うんです。ですから、赤が10集まってもいきなり変わることはないわけです。赤というのは意味はおわかりだと思いますけども、マイナスという意味なんです。ですから、そういうような状態で合併をしたときに、一体どうしていくんだということを示していないのがちょっと気がかかりでございます。どうぞ、その点について配慮してください。
  それから、今回また言われているんですけれども、合併を推進することについて、どうかなという感じもするんですけれども、できれば、今申し上げたように、基礎自治体でみんななるような手だてというのが、どうも希薄のような感じがいたしますので、ぜひ、ひとつそういう点について、格別なご配慮というか、お考えを、これからの指針を示してほしい。そういうように思いますのでお願いしておきたいと思います。
  それから次ですが、17年の4月以降の合併推進の手法についてですが、この前もお願い申し上げましたが、いろんな合併障害というのが未だにあるわけですけれども、特例を中心に定め、現行法における合併特例債等のような財政支援措置はとらないと今回言われておりますけれども、このことに関して申し上げたいのですが、さっきの赤が、いうなれば不良債権といったものを含めて、マイナスの資産が非常に多い地域がございます。これらについて、事前にこれを解消することによって合併の促進になる、こういうふうに思われますので、そういうようなマイナスになっている不良債権を何とか解消することを考えていただけないか。こういうことでございます。
  それから、前回もお願いしたのですが、市町村長の処遇について、合併と同時に私どもは即座に解任されることになるわけですけれども、解任されてもいい人と、解任されるのには非常に苦痛を感ずるという人と二通りあると思うんです。ですから、解任されてもいいという人たちは、それでいいんですけれども、解任されては困るという個人的な感情もあるわけですから、そういう人たちが合併に対して、促進するだけの戦力になるようにすることが大事だと思います。ところが、いまだに、それについてどうしようということが出ておりませんので、ぜひ一つお考えを願いたい。
  それから合併をしますと、せっかく今まで関係市町村がつくってきた一部事務組合、広域連合等々を整理をしなければなりません。ところが一部事務組合だけを取り上げても、解散をしたり、あるいは脱退をしたりすることは手続が非常にややこしいわけです。規約がつくられておりまして、その規約に基づいて、関係の市町村の全部の議決が要るということになっております。これらは合併特例みたいなもので、何かの方法を考えることが必要なのではないでしょうか。
  特にまた、合併でいろいろな、私どもが今設置しております福岡県では、介護保険で71の市町村で広域連合を組んでおります。これが合併をするために脱退をしますということや、それからもう一つは退職手当組合、合併をするために脱退をしたい。せっかく、今県下で大方の市町村が参加をして退職手当組合をつくっておるんですけれども、合併のために、これが崩れるんではないかという心配さえしておりますが、これは何とか私ども知恵を出して、こういうふうにすれば合併のために脱退をする必要はない。むしろ、逆に加入してくださいよという加入をしたいという方が強いように思われます。
  しかし、今はそう言っているだけですけれども、もし現実になった場合に、維持をすることが可能かどうかというのも心配です。いわゆる、多くの関係の市町村がつくっている一部事務組合などをやめる場合には手続を簡略化し、しかもこれからもそれは維持存続させるべきであるというような、そういうものについては、こういう手立てで援助していくんだ、支援をしていくんだ、あるいは、こういうことがあるんだということを示していただくことが必要じゃないか。そういうふうに思いますので、この点についても十分ひとつご配慮を願いたいと思います。
  それから、次でございますけれども、今回のこの答申の案の中に、都道府県が言うならば、あまり前に出てくると市町村との間に対立感情が生まれて、せっかく仲良くうまくやっている県と市町村との関係で、いろんな紛争を起こしやすい関係になりがちになる。いわゆる、不仲になってしまうということも考えられますので、そこらあたりを考えてお願いを申し上げたいんです。
  勧告という制度は、皆さん方はどう思いになっているか知りませんが、たしか勧告をされますと、公告することになっているんですね。行使することになっています。ですから、おまえは怠けているからこうしなさいということと同じであって、知事は添田町長山本文男に対して、このことに関して勧告をしたということを公表することになるわけです。ところが、私は私なりの考え方で自分の町の町長として、こうすることが一番適当であるという判断をした。しかし、それが県の意向に沿わないということで、それはいけない、だから、おまえはこうしなさいと、こういうことで勧告をされた。
  もちろん、そのプロセスはありますけれども、今一口で申し上げとそういうことにされる。そうしますと、私は行使される、添田町の町民に対して、うちの町長は知事から怒られた。だから、ふとどきしごくなやつだと言われているから、もうこれからの信頼はできないなと、こういうふうになるんです。
  だから、勧告を乱用することは、私はやめるべきだと思います。勧告を乱用することによって、せっかく円滑に事務が進められているのに水を差すことになり、そしてぎしぎしとした間柄をつくっていくことになります。
  もちろん、この答申案の中には、きちんと一定の場合だとか、必要に応じてという文言が頭にかぶっていることは確かですけれども、しかし、考えてみますと、ここに書かれておりますのは、法定の合併協議会を設置しなさいということを勧告することになっているわけです。そんなことをなぜ知事が市町村に指示しなきゃならんのかということです。47都道府県があるわけですから、一人一人の知事の考え方が違います。勧告なんて、おれは全く無関心だよ、あくまで市町村長のご判断にお任せする。すなわち、自主性で合併をすることになっているわけだから、ことさらにここで知事が干渉する必要はないという考えの知事もおりましょうし、いや、もう国が何か言っているのだから、とにかく合併のための法定協議会をつくるようにしなさいよ。二、三回言ってもきかない、じゃ、勧告しますよということになる。それで47都道府県の知事さんたちが同じ考え方、同じ基準で勧告をするのであれば問題はないかもしれませんけれども、それぞれ、この47は全部違うと思うんです。県単位でばらばらな勧告が行われることになるわけです。その勧告をするたその一定の基準を決めていくかということになると、幾ら国でも法律で、それを定めることは難しいのではないか、こういうように思います。何のための地方自治かわからなくなってきます。
  だから、勧告と自主性というのは相一致しません。これは相対するものであると思います。自主性を尊重する合併にするんだということを、この答申案の中に書かれてあります。ところが一方では勧告をやると、こういうふうに書いてある。一体、どちらを言おうとしているのかわかりません。ですから、勧告そのものがどうしても勧告をせざるを得ないという状況が出た場合のことを、もっと深く突っ込んで基準を決めることが必要じゃないかと思うんです。どうしても勧告が必要とするならばですよ。だけど、もうこの勧告は今の場合必要はないんじゃないか、こう思います。
  勧告をすることによって、いうならば、合併というのは皆さんが喜んで希望にあふれてやるべきものでなければなりません。日本は先進国です。その先進国の市町村合併が上から押しつけられて、そして合併をしていくというような、あるいはやらざるを得ない、仕方がない、そういうような感情で合併をするということは、私どもとしては到底容認することができません。ですから、その合併をするためのいい環境をつくり上げていくこと。そして、明日への希望を持たせるというようなやり方をすることが必要だと思いますので、そこの勧告のところをご一考いただければと、そういうふうに思っているところでございます。
  その次でございますけれども、昨日も私どもの全国町村会で各県の会長会議を行いました。その中で、やはり皆さんが言われるのは、1万人以下、1万人未満という言葉です。1万人未満は1,500 ぐらいあることはご承知のとおりですが、その1,500ある町村長の皆さんたちの意向は、1万人という数字を書くこと自体が非常に不満足である。だから、1万人と書かなくたっていいじゃないか。これだけ合併、合併と言われているんだから、県が基本構想をつくる場合に、この答申案にも書かれているように、市町村長の意見を十分聞きながらやっていただきたい。
  もう一つわからないのは、地域審議会という文句が書かれておりますが、この地域審議会というのはどこにあるのか知りません。第三者の人で構成するものだろうと思われますけども、第三者の意見を聞くよりも、私は直接市町村長の意見を聞いて、知事が基本構想を決めた方がいいと思うんです。ですから、知事とうまく連携を保ちながら合併をしていくということが望ましいと思います。ですから、1万人以下を、この基本構想の中に組み入れなければいけないよというようなあり方というのは、現代的はないと思いますので、そこらあたりをいかがお考えなのか、さっき文書を読まれたのをずっと聞いておりますと、この文書からいくと、なるほどと思われますけれども、現実とは離れているような感じがいたします。
  どうぞひとつ1万人未満については、多くの町村長の皆さんが嫌がっているんです。だから、反対とは申し上げませんよ、嫌がっているんです。同時にまた、この合併について一生懸命にやっている市町村も数多くあることは、さっきのあいさつの中で言われたとおりです。ですから、合併を促進しているような市町村長さんたちに水を差すようなことは言いたくありません。だけども、1万人未満を書かなければ合併が促進できないとするならば、これは行政力の劣等化であると思う。だから、行政力が少し高まっていけば、こんなものは必要はない。言いかえると、知事さんがこれをやれと言うならば、知事さんの能力を否定することと同じだと思うんです。県が勧告ということについては、今申し上げたとおりですから、ぜひともひとつご配慮、ご考慮を願いたいと思っているところでございます。
  ここで一つお尋ねを申し上げておきたいのは、「勧告をしたとき、一定の場合」と書いてあるんですね。この「一定の場合」の理解はできませんので、後で結構ですが、教えてください。
  それから、前回までよく言われておりました水平、垂直補完については、引き続き検討をと書かれてありますけれども、これからの長い将来、日本の行政がどうなっていくか、あるいは状況がどう変わっていくかわかりませんので、それで引き続き検討ということになったんだろうと思います。少子高齢化のために町村の行政能力が低下していくんだと言われるのは、どうも私は納得がいかないんですけども、小さいなら小さいなりで生きていくことができるんじゃないでしょうか。人間とは一人一人が生きているのであって、集団で生きているものではないんじゃないでしょうか。集団で生きているというのは、お互いが力をあわせて、一つのいい社会をつくり上げていこうじゃないかということだけであって、生きているのは一人一人の人間だと思います。だから、人数が少なくなったから、もうおまえの村はだめだよと。能力はないよというふうに決めつけるのはいかがかと思います。ですから、そこらあたりをもう少し愛情深くお考えをいただければと、そういうふうに思っているところでございます。
  それから、私どもが提案しております市町村連合でございますけれども、広域連合の制度については、私ども市町村連合を提案を申し上げたところ、途端に広域連合がぐっと上がってきたんですね。今まで一考だにしなかった広域連合が、何で市町村連合を私どもが提案申し上げたところ上がってくるのか、そこらあたりもよく理解ができません。
  いずれにしても、合併をしたくない、されない、そういうような市町村が合併と同じ効果が、合併が100とすれば、広域連合や市町村連合で60%の効果を上げれば、合併と同じようなものになるというふうに思いますので、ぜひひとつ広域連合と市町村連合をうまくミックスさせて、新しい制度をきちんとしたものを恒久的なものをつくってくださるようお願いを申し上げておきたいと思います。
  そこで今まで私どもいろんな意見を申し上げて今日に至りました。その間、大変失礼なことも申し上げましたけれども、よく私どもの意見を聞いていただいて、今回の答申の中には、私どもの意見がかなり反映されていると、私はそういう評価をしております。しかし、さっき申し上げたような点については、まだまだ私どもとしては、これでは町村としては難しいんではないかなという感じがいたします。同時にこれは、私どもの町村長全員、今、2,400人以上の皆さんの全員の意志ではありません。賛成と反対との2つに分かれていると思いますけれども、この際、合併を促進している町村長のところは、どんどん促進できるようにすることが必要だと思いますし、これは私どもも町村会として、そういう町村長の皆さんたちには、それなりに進めるように激励などをしていきたい。推奨していきたいと思いますが、ところが困っている方に助けてやることの方が、やはり重点を置くべきだと思いますので、合併をしたいけれども、できない。できない条件を整理をしてやることが必要だと、そういうふうに思いますので、引き続き修正をしていただかなければならない点、今、大きなことを2つ、3つ申し上げましたので、それらについては、十分今後ともご配慮をいただきますようお願い申し上げたいと思います。
  これから、この答申が出た後、法案がつくられていくだろうと思いますから、その法案づくりのときや、それからまた、行政の指導要綱等をつくられると思いますが、そういうときに当たって、町村会の意見を十分ご斟酌いただきますことと、それからそういう機会ごとに、私どもの意見を聴取していただくようご配慮いただきたいと思います。
  私は欲張ったことを申し上げているようですけども、決して欲張ったものではありません。今の私ども町村長の心から思っていることを申し上げたつもりでございます。しかし、私は一番期待を申し上げているのは、諸井会長が、恐らく私が申し上げたことについては、特段なご配慮をいただけるというふうに思っていますので、大期待をしておりますので、会長、よろしくお願い申し上げておきたいと思います。
  次に税財源の関係について申し上げたいと思いますが、この地方税財源のあり方についての意見なんですけども、住民の最も身近な行政をやっているのは、私は町村だと思っていますが、ある村の村長さんは、1週間に1回のペースで自分の地域を回るんです。村内の地域を1週間で1回まわるわけです。ですから、毎日行くんです。1週間のうちに何区域か行くんです。そして、住民の皆さんたちと直接対話をし、スキンシップを行いますから、村長さんに対する信頼というのは非常に高いんです。
  ところが、肥大化した都市では、市長さんが1週間に1回住民のところに行くことなんて到底できません、夢物語です。できません。もちろん、知事さんもできないと思いますよ。だから、行政区画が大きくなりますと、住民との接触は遠ざかっていくんです。この点がどうも私は今回無視されているような感じがするんですけれども、やはり、住民とは身近でなくてはいけない。だから、今の地方自治組織というのを考えられたと思うんですけれども、それでも私は市長と住民との接触の機会というのは少ないと思いますよ。意見を上げることはできる。しかし、意見を上げることができるのは、今でも大きかろうと小さかろうとできるんです。スキンシップができないんです。これは身近な行政をやっている人のことであって、できない人は身近な行政をやっていない。極端なことを言うとそう言えると思います。ですから、身近な市町村が行政をやっているわけですから、自立ができるように、三位一体の財政改革は、その効果を十分発揮してくださるよう特にお願いを申し上げたいと思います。
  それから、この国庫負担の整理でございますけれども、負担をするのに、これをやめましょう、国庫補助をやめましょう、交付金やめましょうということで、地方に過重な負担をするようなことのないようにすべきだと思います。単純な負担転嫁だけはやめるべきだと思います。どうやら、そういう傾向が今まであったような気がいたしますので、ぜひひとつご配慮ください。
  それから、私は感謝申し上げたいのは、ここで何回かお願いを申し上げましたんですけど、中山間、離島、いうならば合併もでき得ないような地域に住んでいる町村というのはたくさんあるんです。ですから、そういう町村に対して、今回は特別に配慮をしていただきました。感謝を申し上げたいと思いますが、この税源移譲も財政改革も同じことであって、こういう地域の人たちが一番心配をしているのは、こういうことなのです、昨日の話です。私どものところは合併しようにもできない。できないから財政的なペナルティをかけるんじゃないですかということ、そういう意見を持っている。そういう恐怖感を持っている。そういう恐怖感を行政が与えることは、私は現在の日本の行政のあり方ではないと思いますので、この財政改革をやる場合に、今申し上げたような地域が、やはりきちんと法的な利益を受けられるような行政体として、運営ができるように格別な配慮をしてあげることが必要だ、そういうふうに思います。
  それから、次でございますけれども、町村というのは、これからどうなっていくかわかりません。合併でどこまでどうなるか、それは私には全くわかりませんけれども、町村は残るだろうと思います。だから、町村というのは、国家的な役割の大きなものを担っているということ、いわゆる町村そのもの、農業、林業、水産業、こういったものは町村特有の一次産業なんです。だから、こういうものがうまくやれるように、しかもそういうようなところは、国家的な役割を十分担って頑張っている町村ばかりでございます。そういうところに対して、地域振興については格別な配慮をしていただくように、財政の面から考えていく必要があると私は思います。悪口を言うわけではありませんが、どうやら我が国は大きいところにはすぐ目が行き、それから気が向くんです。小さいところは見もしないというやり方をしてくることが非常に多いと思います。ですから、小を助け切らないところが、大を助ける力があるはずはありません。また、できないと思います。だから、小さいところを大事にしてやるということを、この財政のところでは、特にご配慮を願うよう、1行それだけは入れてください。書いておいてください。お願いを申し上げたいと思います。
  それから、地方交付税については、先ほどから書かれてあるとおりで、調整機能も保障機能も維持すること、堅持するように、これから努力していくということでございますから、信頼をし、そして人口の多い少ないにかかわらず、円滑な行政が進められるようにしてもらいたいというように思いますので、さっき申し上げた町村の実態、町村のあり方などを十分ご配慮をいただきまして、この財政改革については、ご援助いただきますようお願いを申し上げたいと思います。
  以上、長々と申し上げましたけれども、昨日の会議を踏まえて、町村側としてのご意見を申し上げさせていただきました。質問の「一定の条件」のことだけお聞きしたいのですが、以上で私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○諸井会長  では、今の点だけ。
○松本小委員長  質問は8ページの中程の段落からのところですが、「一定の場合に市町村長が合併協議会の設置を」、この場合は、そういう勧告を受けましても、市町村長がまだ議会に付議するかとか、あるいは住民投票を行うかというようなことを判断するに時期尚早だというようなことをお考えになっておられるようなことがあれば、それは当然に住民も、なるほどそうだと思われるわけだと思いますから、そういうことについて、ここの一定の場合には、そういうことのない場合ということです。そういうようなことのない場合には、付議するか、住民投票を行うと、こういうふうに考えていただければと思います。
○山本委員  よくわかりませんな。
○松本小委員長  逆から説明することになって申しわけありません。一定の場合というのは、市町村長がなお考えられて、時期尚早だとか、今の段階ではかえってまずいとか、そういうように思われないときというようにお考えいただきたいと思います。そういうようなことがないときには、議会に付議するか、住民投票を行うことにするということです。
○山本委員  逆にあるときは勧告が生きてくるんでしょう。
○松本小委員長  勧告は残りますけれども、勧告はもう勧告していることですから残りますが、今申し上げましたようなときには除外されますよと、そういうことです。
○山本委員  なるほど。わかりました。
○石井委員  私、知事会を代表いたしまして、意見を述べさせていただきたいと思います。まず、地方自治制度のあり方の答申の案でございますが、今まで2回ほど、ここの場で意見を述べさせていただいておりますので、一部重複することがございますが、まとめるということでお聞き取りいただきたいと思います。
  新しい事項として、先ほど山本会長さんの方からもお話がございました。人口要件が概ね人口1万人未満、こういう新たな目安が入ったわけでありますが、これを含めて先ほどの勧告等の都道府県の関与、この規定が今入ろうとしているわけでありますが、この点についての知事会の見解といたしましては、やはり全体として見ますと、これは強制的な合併というふうにとられかねないというふうに思っておりまして、先ほどのお話のように、県と市町村は対等の関係です。上下の関係ではございません。そういった関係からいたしましても、地方分権の趣旨にこの制度が沿っているのかどうか、このような観点から、あくまで市町村の自主性、主体性をぜひ尊重していただきたいということでありまして、慎重にこれは検討すべきものではないかと考えております。
  次に2点目でありますが、いわゆる、垂直補完についての話でありますが、これも既に意見を述べさせていただきましたが、確かに、当県は広域自治体といたしまして、一般的に市町村行政を補完する機能、これは持っているわけではありますけれども、しかし、こういった特定の地域に特定の事務を補完するということ、この提案につきましては、やはり今申し上げました県と市町村が対等の関係であるといったこととか、あるいは都道府県がその事務を補完することが効率的なのかどうかといったような問題等、様々な議論をすべき課題があると考えておりまして、これも慎重に検討する必要があると考えております。ただ、今回は引き続き検討すると、このような表現になっておりますので、その点につきましては、評価をさせていただきたいと思います。
  次に3点目。大都市のあり方でありますが、これも既に述べさせていただきました。今後の大都市のあり方、政令市につきまして、その制度が活用されていく方向で検討されるべきではないか。このように考えております。ただ、その際に政令市の機能と権限につきましては、都府県との協議によって幅広い選択ができる。どの事務を移管するかどうか、これを幅広い選択がお互いの協議によってできる。こういうことを、すなわち、柔軟な制度、このことを検討していただければ、こういうことが必要ではないかと考えております。
  次に4点目。広域自治体のあり方でございます。この点につきまして、今回、非常に広範な観点から議論をしていただきまして、私どもは、この点真摯に受けとめまして、なお一層、機能の充実を図り、役割を積極的に果たしていく所存でございます。
  都道府県の合併についてでありますが、これにつきましては、現行の国の法律によって定めるとなっておりますが、これを見直していただきまして、都道府県自らの発意に基づいて、市町村合併と同様の方式で都道府県の自主的合併の手続を整備していただく必要がある。このように考えておりまして、我々といたしましては、法律によって定めるという現行の方式は、ぜひ見直していただきたい。このように改めて意見として申し上げたいと思います。
  そしてさらに、道州制等の導入につきまして、非常に今回具体的な論点整理を記述をしていただきまして、大変高く評価をさせていただきたいと存じます。私自身も、この道州制の議論は国民的議論をしていきたいということで、様々な場で提言をしているわけでございます。
  ただ、現在都道府県においての意見ということになりますと、実は各都道府県で、この問題につきましては、それぞれ調査研究はしておりますものの様々な意見があるというのが現在の状況でございまして、知事会といたしましては、今後十分に議論を重ねていこう。このように考えております。
  したがいまして、今後の検討に当たりましては、国と地方の役割分担というものを抜本的に見直していただきまして、例えば、国の地方支分部局が持っております事務を道州へ一元化する。すなわち、その事務を移管をする、あるいは道州における地方税財政制度のあり方の根本的な検討など、今後とも都道府県の意見というものを積極的に取り入れていただきますようにお願いをいたしたいと思います。もちろん、我々といたしましても知事会として、この点、十分にこれからも議論を重ねていく所存でございます。
  続きまして、地方税財政制度のあり方についての意見。これにつきましてでございます。先ほど市長会としての具体的な緊急提言がかる説明があったわけでございます。現在、ご案内のとおり、知事会といたしましては、会長私案というものを既に発表させていただいておりまして、約8割方の国庫補助負担金は全面的に見直して、廃止をして、縮小していただきたいということになっておりますが、近々、すなわち来週にも全国知事会としての提言をとりまとめるということにいたしております。
  そして、同時に平成16年度の改革のあり方につきましても、年度末、これから税制改正、あるいは予算編成でございますので、提言をしてまいることといたしております。具体的には来週ということになりますが、ただ、今までの議論を踏まえまして、ご意見を述べさせていただきますと、まず来年度は三位一体改革の初年度となります。ぜひとも、今まで申し上げました地方分権時代にふさわしい、自主、自立の地方税財政制度の確立に向けました措置が講じられるよう、具体的に三位一体改革が工程表に乗って確実に進んでいくという観点から、具体的な改革が打ち出されますように、ぜひお願いいたしたいと思います。
  もちろん、地方のおける歳出規模と地方税収入の乖離、これを縮小するという方向で抜本的に国と地方の税源配分の見直しを行って、地方税源の拡充・強化を図っていただきたいと存じます。
  たびたび申し上げておりますが、三位一体の改革は、文字通り同時にセットで実施されなくてはなりません。あくまでも三位一体の改革ということでありますので、どの一つが欠けましても、国・地方を通じました改革にはならないということを改めて強調をさせていただきたいと存じます。
  我々、今現在、国庫補助負担金につきまして、大胆な見直しをしようということで来週提言をするわけでございますが、これにつきましては、原則として廃止をして必要な縮減を行って、そして税源移譲によって、必要な財源が確保されるべきものであります。その際、税源移譲は基幹税であります所得税及び消費税から、それぞれ個人住民税及び地方消費税に税源が移譲される。このことが基本でなければならないと考えております。その際、地方交付税の問題がございますが、やはり税源が偏在をすることによりまして、地方公共団体間の財政力格差の是正、そして一定行政水準の維持、確保、これが必要でございます。したがいまして、地方交付税制度の果たす財源調整機能並びに財源保障機能を堅持をしていただきたいと存じます。
  また、地方財政計画における歳出を中期的な目標のもとに、計画的に抑制をしつつ、地方財政計画の作成を通じまして、移譲されるべき税源を含めた地方税、地方交付税によりまして、所要の一般財源を確保すべきであります。
  最後に、具体的な点について一言申し上げたいと思います。義務教育費国庫負担金の取り扱いであります。この点につきましては、全国知事会といたしましては、その全額を廃止をして、そしてそれに見合う所要額を税源移譲していくことと考えておりますけれども、政府におかれましては、平成16年度にこの方針を明確にいたしまして、「改革と展望」の期間内に速やかに実施をしていただきたいと存じます。
  退職手当等を国庫負担対象から外すなどの措置、これが今検討されているとのことでありますが、これは地方の自由度の拡大には全くつながりません。単なる地方への負担のしわ寄せであると、このように考えておりまして、知事会といたしましては、こういった制度改正というものは到底受け入れられるものではありません。したがいまして、国庫補助負担金を廃止して、税源移譲を先送りするといったような地方財政への負担転嫁、このことは断固認められなということでございまして、そのことを最後に申し添えさせていただきまして、意見表明とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○諸井会長  どうもありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。
○中畑委員  中畑でございます。都道府県議会の議長会の立場からご意見申し上げたいと思っております。
  まず、専門小委員会の皆様方ご苦労さまでございました。今回、答申案、意見案を取りまとめていただきましたことを、まずもって敬意を表したいと思っております。
  いろいろとご発言がございましたので、簡潔に申し上げさせていただきたいと思っております。
  まず答申案についてでございますけれども、第一の基礎自治体のあり方でございます。いろいろとご意見が出ました。合併困難な市町村に対する特別の方策のうちの都道府県に一定の事務処理を義務づける特例的団体の制度の導入については、事務の内容がどんなふうになっていくのか、都道府県と市町村の役割分担をどう考えていかれるのか、これからも検討する課題が大変多いかと思っております。今後新法の下で、知事によります合併に関する勧告、それから斡旋等の対応状況、市町村では対応できない事務の内容、その執行方法、今後慎重に検討する必要があろうかと思っております。
  次に、大都市のあり方でございますが、都市の規模や能力に応じて一層の事務権限の移譲を進めていくこと、それにまた、基礎自治体からの申し出も含めて都道府県の条例による事務処理の特例の活用により、可能な限り、基礎自治体が住民に身近な事務を自立的に処理できるようにしていくこと、これは賛成でございます。大都市圏域全体を見たときに、広域自治体としての都道府県の役割が依然として重要であるということは今さら言うまでもないかと思っています。
  3つ目には、広域自治体のあり方についてでございます。国から都道府県への一層の事務権限の移譲を進めるとともに、規模、能力が拡大した基礎自治体との適切な役割分担のもとに、都道府県は広域自治体としての役割、機能を十分に発揮していく必要があろうかと思います。そういうことから2つ。1つは、都道府県合併について、現行の手続に加えて市町村合併の場合と同様に都道府県が自主的に合併する場合の手続を整備することとされたこと。それから2番目には道州制について多くの論点について考え方を整理され、引き続き、次期の地方制度調査会において論議を進めることとされたこと。こういうことについて大変賛成をするものでございます。
  とにかく道州制につきましては、国民的な合意形成に留意をしながら、今後もさらに論議を深めていくべきものだと思っております。
  それから、当面の地方税財政のあり方についての意見案について少しばかり申し上げたいと思っております。今回の意見案、まことに時宜を得た内容であって、大いに賛成でございます。どうぞ政府において、ここに示された基本的考え方に沿って三位一体改革の早期実現に努めていただきますとともに、現在、地方の財政が大変な財源不足を抱えている状況でございます。平成16年度の地方財政の運営に支障が生じないように万全の措置をぜひとも講じていただきますようお願い申し上げたいと思います。
  以上ですけれども、せっかくの機会でございますので、地方議会の機能の強化について申し上げたいと思っております。地方議会の機能強化については、第31回の専門小委員会において、議会の三団体が一致して要望したところでございます。どうぞ住民自治の根幹をなす地方議会が自主的、かつ自立的に活動が今後ともできますように、地方議会制度の本格的な検討をぜひとも次期の地方制度調査会において進めていただきますよう、重ねてお願い申し上げまして意見とさせていただきます。ありがとうございました。
○諸井会長  どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○溝手委員  自民党の先生方、みんなお辞めになりましたので、残っている者として申し上げたいと思います。
  政治との関係性、選挙との関係について一つだけ申し上げたいんですが、もちろん、この地方制度と選挙制度というのは別物と言えばそのとおりなんですが、ただ、この話を進めるに当たって、いつも頭の隅に選挙制度というのを置いておいていただきたいという大変強い要望です。例えば、県単位で選ばれる人間というのは、県知事と参議院議員しかこれからいなくなるわけですね。これから中核市の問題、政令市の問題、いろんな問題が出てきたときに、県の枠というのは非常に流動化してくる、道州制についてもそうです。ですから、人間というのは、そこにそういう枠があるので、結構頭の中が回転するんですが、衆議院というのは県から完全開放されております。中には区から開放されたりしております。やはり頭の構造も随分変わってくる。この問題は、実は参議院の場合は憲法と関連していまして、簡単に言いますと、県の代表であれば、5倍、6倍の格差があってもいいというような最高裁の判定が出ているんですね。衆議院は2倍を超えるとキャーキャー言っていると。おかしな話なんです。この制度自体は連邦制を否定しているわけですから、ますますこれから選挙制度というのが知らず知らずに影響を受けてくると思いますので、ぜひこの点も並行してやるようなことを考えなくちゃいけないんじゃないかと、よろしくお願いしたいと思っております。
  それからもう1点は、岡山知事には大変恐縮なんですが、県と市町村が対等であるというのはあんまりいい表現ではないと思います。山本さんが何を言っているかということになるんですが、理屈でそういうことをおっしゃってもいいと思うんですけれども、政府全体の権限から見ると、やはり市町村長、市町村議会、県民というのは、県というのは大変偉いと思っていますし、権限を持っていますので、広域連合でやるという山本さんの意見に味方をされているんじゃないかと私は思ったわけです。県は面倒を見ないということですね。それからもう一つの今の県境を越える合併の問題等もありますので、これはもう少しフレキシブルにおやりになったらと思っております。
  以上でございます。
○諸井会長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。安原さんどうぞ。
○安原委員  大変時間も経過したようでございますけれども、全国町村議会の議長会を代表いたしまして一言申し上げたいと思います。
  私は第27次地方制度調査会が発足して以来、本日の総会まで一貫して委員を務め、審議に参加できましたことを心から感謝いたしております。
  さて、27次地方制度調査会の中心テーマは、地方分権時代における基礎的自治体のあり方であったと考えますが、しかし、実際のところ、最初のころはいかに町村合併を進めるかが審議の中心だったように思います。分権型社会の創造という地方分権推進委員会以来の重要なテーマは霞んでしまい、我々、町村が期待をおりました新たな分野の仕組み、特に住民自治の充実方策については全く触れることがなく、小規模市町村をいかに解消するかに論点に集中しておりました。
  私は当時、全国町村会議長会会長として、このままでは町村の自治は否定されてしまうと心から心配をし、山本全国町村会会長と相図り、本年の2月25日に町村自治確立総決起大会を開催したわけであります。幸い、我々の願いをくみとられまして、本日の答申案では、いわゆる垂直補完は引き続き検討して位置づけられており、ひとまず安堵いたしております。
  一方、住民自治の充実方策の一つとして、我々が主張してまいりましたコミュニティレベルの自治組織、すなわち地域自治組織については、この制度化が図られることに対しましては、これはまことに大変ありがたく、専門小委員会の委員の皆様方に対し厚くお礼を申し上げたいと思います。
  そもそも町村はいかに小規模であっても、竹下内閣の「ふるさと創成」以来、自ら考え、自ら行うことを身につけてきました。住民は十分な自治能力を有しております。コミュニティレベルの自治組織、特に合併後の法人格を有する地域自治組織は21世紀の日本を考えるとき、極めて重要な役割を果たすものと考えております。
  さて、私は最後に総会に臨み、以下、4点について意見を申し上げたいと思います。
  まず第1点ですが、本日の答申案では、都道府県が合併に関する構想を策定するに当たっての小規模市町村の概ね人口1万人未満を目安とするとしておりますが、この数字を法令に明記することを絶対にしないでいただきたいものであります。本来、人口規模と自治能力との間には何ら関係はございません。それにもかかわらず、人口規模を法令に明記するということになりますと、人口1万人未満の町村に与える影響は大変大きなものとなります。もちろん、答申案では地理的条件とか、人口密度を一定の考慮をすることが適当としていることは承知いたしておりますが、人口規模を法令に明記することは絶対に反対であります。
  次に第2に、新法の法案作成や法案審議の過程で、地方分権の大原則である自己決定、自己責任の原則を踏みにじるような規定を置くことは全体にしないでいただきたいと思います。当地方制度調査会の基本的な立場はあくまでも地方分権であり、住民自治の充実であることを忘れてはならないと考えます。
  第3点は三位一体の改革でありますが、税財源の地方分権を実現しないで真の地方分権はありません。ぜひ三位一体の改革の早期実現を提起するものであります。しかし、言うまでもなく、税源の乏しい市町村にとって税源移譲の恩恵はあまりにも少ないものであり、この点を十分理解をいただき、また町村の果たしている国家的、国民的役割を踏まえ、ぜひ地方交付税の財源保障機能を堅持していただきたいと考えます。
  第4点は、私がかねがね主張してまいっております市町村の区分の明確化であります。仮に市の特例である人口3万人を基準としたとき、平成14年3月31日現在では、人口3万人未満の市は全国で73団体ございます。市全体の10.8%を占める一方、3万人以上の町村は118 団体、町村全体の4.6 %を占めております。これはどうみても不合理であります。また市というだけで特別交付税が有利に扱われている点で問題がございます。基礎的自治体のあり方を論じたこの審議会で明確に市と町村を整理するための基準を打ち出すべきであったと考えます。今後引き続き検討していただくようよろしくお願いを申し上げます。
  最後になりますが、分権型社会を築くために地方議会制度の改革が不可欠であります。我々地方議会にある者にとって現行の地方自治法はかなり規制が多く、もっと自由度を高めるとともに、議会権能の強化が必要であると考えます。次回の地方制度調査会においては、ぜひこの点を課題として取り上げていただきたくお願いをいたします。
  以上を申し上げ、私の意見陳情といたします。ありがとうございました。
○諸井会長  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。
○紺谷委員  地方制度調査会の存在自体がひょっとしたら地方分権と抵触するのかという印象を少し受けてしまったんですけれども。石井委員がおっしゃるように、例えば政令市と都道府県との関係をもう少し柔軟にとか、それから山本委員がおっしゃったように、市町村連合を認めてほしいとか、そういうご要望があるのは当然です。もちろん自ら一定の枠は必要と思いますが、もっと柔軟に、自由度のあるオプションを示して、それをぞれぞれのご事情に応じて皆さんがお選びになれるというのが本当の分権じゃないのかなと。ここまで決めちゃっていいのかなという疑問をまず持ったんですけれども、私の専門の範囲と違いますので、専門の税財政の方について言わせていただきたいと思うんですが、たびたび繰り返してきたことですけれども、三位一体ということの中に分権というのがほとんど入っていない。何でお金の話ばっかりになるんですかということを重ねて申し上げたいと思います。
  まず、2ページに国税と地方税の税源配分が1対1とあります。国と地方自治体の仕事の分担を明確にしようと明言しているにもかかわらず、その分担が1対1かどうかということは何もわからないにもかかわらず、ここで何で1対1となってしまうのかという疑問がございます。
  それから4ページには効率化と書いてありますけれども、ここのところ国がずっと効率化として進めてきた施策は要するに歳出削減なんです。あるいは国税から国民負担への転嫁なんですね。だから、あんまり安易に効率化という言葉をお使いいただきたくないと思います。同じ4ページの一番下のところ、「地方交付税は一般財源ではあるが、国への依存財源であることから」とあるのですけれども、地方交付税に関しては、かつて自治大臣と大蔵大臣とが国会でやりとりを継続してきたように、間接課徴形態の地方税なのかと、あるいは国税を国が分けてくれるのかということで対立がありますね。それなのに、つまり地方固有の財源なのか、自治省の続きであるところの総務省がこういう文言でよろしいのかなと思うんですね。
  それから、国庫補助負担金の廃止という文言がしばしば出てきますが、皆さんがおっしゃるのは、要するに義務づけをやめてよということですね。がんじがらめにするのはやめてよということなんだけれども、「国庫補助負担金の廃止・縮減は三位一体の改革の入り口」であるということになりますと、補助負担金の削減・縮減が第一目標のような誤った印象を与えてしまうと思うんですね。それは全く違うんじゃないか。削減すべきは中央の権限で地方の裁量を広げてほしいと書くべきではないのかなというふうに思います。
  最後に7ページなんですけれども、真ん中辺に「歳出の抑制と歳入の確保のための努力を行ったとしても、来年度以降も、引き続き巨額の財源不足が生じる可能性があり」とあるのですけれども、これもしばしば申し上げてきたことながら、地方の財政の困窮というのは、基本的には税収不足にあるわけですよ。国の景気対策が誤ったために、ここまで困ってきたということであるにもかかわらず。ですから、本当に地方分権、地方の活性化というのだったらば、地方の200兆の借金は国が負担すべきというのが私の考えでございますけれども、あろうことか、逆に国が勝手に税収不足の状態をつくって、国が勝手にこしらえた借金を地方にも分担せよという非常に誤った議論があるのですね。地方分権改革推進会議も、地方制度調査会も、本来だったらば半分が地方の代表者であるべきだと思うんですけれども、何と地方分権改革推進は2人しかいない。しかも5人が財政審議会のメンバーと重なっているという異常事態になっておりまして、そういう問題をあわせて、今の文言のあたりをちょっとご配慮いただければありがたいと思います。どうもありがとうございました。
○諸井会長  ほかにいかがでしょうか。
  よろしゅうございますか。大分時間も経過してまいりましたので、そろそろまとめなきちゃいけないと思うんですけれども、皆さんからいろいろご熱心なご発言、ご提言をいただきました。一々ごもっともな点もたくさんあるわけです。ただ、この答申なり、案の基本的な考え方、趣旨に反対をするとか、否定をするとかということではなくて、もう少し配慮しろというような意見が多かったように思います。いずれにしても、おっしゃっていらっしゃることの大部分は、これからの法律改正、新しい法律をつくる、その法律をつくっていく作業の中で明確にすべき、あるいは明確になっていく問題、その場合には、当然、それぞれの当事者の方々と十分ご相談もするし、またいろいろご注文があれば、よく耳を傾けて伺いながら、そういう作業をやっていくということにこれからなるんだと思うんです。その法律なり、予算なりで一体どう決まっているかというのが一番ポイントなんだろうと。その辺については、皆さんのご意見は十分これからもお伺いするという前提で、今日のこの案2つ、一応、今日総理のところへ持っていくという段取りになっておりますものですから、もし、皆さんお許しをいただければ、表現上の問題についてまだ多少修文の余地があるかと思いますから、その辺は私ども、会長、副会長、小委員長にお任せいただいて、この案でご承認をいただけるのかどうか、いただければ大変ありがたいと思いますが、いかがでございましょうか。
(「結構です」と声あり)
○諸井会長  ありがとうございます。修文をする場合には、ご発言なさった方ともご相談を多少させていただきますので、そういうことでお許しをいただきたいと思います。
  本当に今日はご熱心なご討議まことにありがとうございました。今後も引き続きよろしくお願いをいたします。

閉会



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