会議資料・開催案内等



第28次地方制度調査会第10回専門小委員会 次第



平成16年10月25日(月)
15時00分〜17時00分
ホテルルポール麹町 「マーブル」


1   開会

2   議題

  1) 道州制のあり方について
  2) 地方税財政制度のあり方について
  3) その他

3   閉会

配付資料(PDF)
 
資料1   道州制に関する論点メモ(委員限り)
−専門小委員会における調査審議経過−
資料2   最近の地方税財政関係の議論に関する主要な論点
資料3   地方財政関係資料1)<地方財政の現状>
資料4   地方財政関係資料2)<「三位一体の改革」総論関係>
資料5   地方財政関係資料3)<国庫補助負担金関係>
資料6   地方財政関係資料4)<地方交付税関係>
資料7   地方税制関係資料5)<税源移譲関係>
資料8   地方税制関係資料6)<税制全般関係>





○松本小委員長 それでは、まだお見えになっていない委員の方もいらっしゃるようでございますが、時間がまいりましたので、第10回の専門小委員会を開催いたします。
  最初にさきの台風等や今回の震災等で不幸にもお亡くなりになりました方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災されました地域及び地域の皆様方に心からお見舞いを申し上げ、一日も早い安寧と復旧を心からお祈り申し上げます。
  さて、本日は、「道州制のあり方」及び「地方税財政制度のあり方」について意見交換を行います。
  本専門小委員会では、6月8日の第2回総会において整理した審議項目とその論点を受け、数次にわたり意見交換を行ってまいりました。この間、「道州制のあり方」については、主要な行政分野における国と地方の役割分担・調整等を議題とした2回を含める合計5回の専門小委員会で審議を行ってまいりました。ここでとりあえず、「道州制のあり方」について、今までの審議経過を整理しておきたいと存じます。
  また、地方税財政に関しましては、9月9日の第7回の専門小委員会において状況の説明がございましたが、その後関係方面において議論がなされているところであります。当調査会では地方税財政のあり方を審議項目に取り上げているところであり、このような状況を踏まえて、専門小委員会においても審議することが必要ではないかと考えます。したがいまして、地方税財政制度のあり方についても、意見交換を行いたいと存じます。
  なお、本日の審議の順序でございますが、財政担当課長が所用のため途中退席したいということでございますので、最初に「地方税財政制度のあり方」の資料について、事務局から説明させます。財政課長。 ○椎川財政課長 それでは、お手元に資料をお配りしておりますけれども、地方税財政制度の関係は資料2から資料8まででございます。説明の便宜上、資料2は最後に説明をさせていただくことといたしまして、私の方から資料3、4、5、6、財政関係の資料をご説明をし、資料7、8につきましては、税務局の岡崎企画課長の方から説明をした後、資料の2を再度説明させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、資料3をお開きいただきまして、地方財政の現状の資料でございますが、簡単にご説明をいたしたいと思っております。
  1ページでございますが、地方財政は平成11年度以来、十数兆円オーダーの大変大きな財源不足が継続いたしておりまして、非常に厳しい状況にあるということでございます。
  2ページをお開きいただきまして、この財源不足なり地方の借り入れの残高でございますけれども、バブル経済崩壊後の経済対策、平成4年の秋から始めておりますけれども、その後「失われた10年」ということで、様々な景気対策にもかかわらず、経済が抜本的に回復しないということで、結果として需要だけが追加をされまして、借入金の残高がこのように右肩上がりに積もったということでございます。
  3ページをお開きいただきまして、現在の国と地方の長期債務残高でございますが、国の方が548 兆円程度、地方の方が204 兆円程度ということで、一部重複がございますけれども、トータルで700 兆円を超える借入長期債務残高ということになってございます。国も地方も同じような傾向で借入金の残高が増加をしているということでございます。
  4ページをお開きいただきますと、これは再び地方財源不足の方に戻りまして、特に平成11年度以降、十数兆円オーダーという不足が生じているわけでございますけれども、その原因を分析したものでございまして、平成5年度との対比が財源不足の要因がどのようなところにあるかを分析した資料でございます。平成16年度の一番右側の棒グラフを見ていただきますと、一番下が景気対策に伴う減税でございます。平成5年度と比べまして4兆円ほどの減税による減少が生じている。その上の3.7 兆円は景気の後退による自然減収でございます。それから、その上の7.0兆円 と書いてございますのが、先ほどちょっと申し上げましたけれども、平成4年秋以来行ってまいりました経済対策に伴う公共事業の追加、それから地方単独事業をこれに連動させて景気対策に動員した結果、公債費が平成5年度と比較して7兆円も増えてきているということでございます。
  その上は社会保障費でございまして、介護保険制度の導入でありますとか、諸々の児童手当の拡充でありますとか、そういった制度的な改善によりまして、2.4 兆円ほどの財源不足が平成5年度にかけて拡大をいたしております。その他、これは逆にマイナスの方に、下の方に表示してあるわけございますけれども、その他の経費については、ここのところ大変切り詰めてまいっておりまして、財源不足に対する寄与度としては、逆にマイナスになりまして、−4.3 兆円ということになっております。
  5ページをお開きいただきまして、このような国と地方の財政関係でございますけれども、総じて申し上げますと、国が赤字国債を発行して、地方に補助金を出して仕事をするというようなことになりますと、この地方負担分につきましても、地方財源がありません。したがって、地方財政も大幅な財源不足を生ずるという構造になっておりまして、この5ページの上の方のグラフを見ていただきますとわかりますように、赤字国債の発行がない年におきましては、地方の財源不足もない、赤字国債の発行額が増えるにつれて地方の財源不足も増えるといったような大まかな傾向にあるわけでございまして、その構造を書いたものが下の2の「赤字国債が地方財源不足を呼ぶ構造」ということでございます。
  国も地方も財源不足がないときは、この白の方の国税をもってその一部が交付税になり、一部が地方への補助金になる。こういう健全な時代には、補助金の裏負担につきましては、交付税と地方税によって賄われるような税源配分になっていたわけでございますけれども、赤字国債で地方へ補助金を出すということになりますと、国庫補助金の相当額の地方負担分が、地方の方に財源がありませんものですから地方は財源不足になると、こういうポンチ絵でございます。
  6ページはさらに長期的に見た場合の関係を書いたものでございまして、平成2年度から平成5年度の間は、両者とも赤字国債も財源不足もなかったということでございます。
  7ページは国と地方の財政関係でございますけれども、いろいろ言われております国の方が財政状況は大変だと言われることに関する資料であります。データ的にはそういうようなことも言えようかと思いますけれども、そもそも国と地方の関係というものを考えてみますと、国の方は当然のことですけれども、金融、経済、税制等幅広い権限を有しておりまして、自らの歳入をコントロールできる主体である。地方の方は、そのような権限がなくて、歳入に対する裁量性は非常に少ない。しかも、国の方は単一の大きな財政主体でございますけれども、地方の方は、特に財政規模の小さな町村まで含めた3,000 以上の財政主体の集合体でございまして、なかなか舵を切るときに大変だというようなことがございます。2番目に書いてございますが、諸外国の例を見ましても、国・地方のトータルの財政収支が赤字の国におきましても、余り地方団体の方に赤字を担がせるというようなことをやっている国は少ないわけでして、我が国の場合には、先ほどから申し上げておりますけれども、平成4年以来の景気対策に地方単独事業をかなり動員してきたとか、あるいは、かなり大きな仕事を地方にもやっていただいているというようなこともございまして、既に地方分の財政赤字も相当大きくなっているということでございます。
  次に資料の4でございますが、三位一体関係の議論が9月以降、国会や経済財政諮問会議が盛んに行われてございまして、その推移につきまして簡単にご説明をしたいと思っております。
  資料4の1ページをお開きいただきまして、これは三位一体改革の全体像の関係でございますが、「骨太方針2003」と「骨太方針2004」、閣議決定をされているわけでございますけれども、これを両者合わせ読むといいますか、合わせたものでございます。国庫補助負担金の改革につきましては、概ね4兆円程度を目途に廃止・縮減等の改革を行う。この何も網かけをしていない部分が2003の原文でございます。次の網かけをした部分が2004で加わった部分でございますが、平成17、18年度に行う残り3兆円程度の補助金改革の具体案につきましては、地方団体に改革案の策定を要請し、それを踏まえ政府の方で検討する、こういうことにされたわけでございます。
  税源移譲を含む税源配分の見直しでございますが、廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で、引き続き地方が主体となって実施する必要があるものについて、基幹税の充実を基本に税源移譲を行うということにされました。そして義務的な事業については10割、その他については8割程度を目安として個別の事業ごとに精査をして移譲額を決める。これが2003の大原則でございます。今年の場合には、出口がなかなか見えない、そのことによって「三位一体改革」の全体像がはっきりしないというご批判もありまして、様々な議論をした末に、総理からのご指示によりまして、税源移譲につきまして、出口につきまして、概ね3兆円規模を目指して改革を行う。ということが決定をされたわけでございます。交付税の改革につきましては、後ほど別冊でご説明いたしますので、ここでは省略させていただきまして、2ページは、その関係を絵にしたものでございまして、これはご覧いただきたいというふうに思っております。
  それから、4ページ以下は平成16年度の予算におきます「三位一体の改革」と、それに関連した国会での議論、あるいは地方からの意見というものをまとめたものでございますが、5ページをお開きいただきまして、昨年は衆議院議員選挙が秋にありまして、たしか11月の下旬になりましてから、1兆円の補助金改革を16年度予算でやるという、これも総理の指示がございました。全体で4兆円であるから16年度には1兆円ぐらいやらなきゃいけない、こういう強いご指示がございまして1兆円の補助金改革が始まったということでございます。時期が大変遅かったこともございまして、各省庁と地方の間でいろいろと意見の調整が難航したわけでございますが、最終的に、この絵にありますように、1兆300 億円程度の補助金改革がなされ、そのうちの公立保育所の運営費でありますとか、同化・定着ものと言われておりますけれども、そういった補助負担金につきましては一般財源化が行われ、これを税源移譲に結びつけることとなりました。大変議論のありました義務教育費の国庫負担金の問題、そのうちの退職手当と児童手当の問題につきましては、結論が出ませんでしたので、暫定的に一般財源化ということで税源移譲予定特例交付金という形で整理をされております。これが2,300 億円。一部国土交通省の関係でまちづくり交付金というのが法律をもちましてできまして、これが1,300 億円ぐらい。その他につきましては、約4,500 億円を超えるオーダーでございますけれども、公共事業関係の事業の縮減、奨励補助金の削減という形で財源手当がされないものが約4,500 億円出てきたということでございまして、このことにつきまして、地方の方からは補助金改革の額に比して税源移譲の額が小さいのではないか、こういうようなご批判もいただいているところでございます。
  一番下のところに、所得譲与税4,249 億円の説明があると思いますけれども、これは15年度分の補助金改革から出てきた税源移譲2,051 億円と16年度分の補助金改革から出てきた2,198 億円を合わせて16年度に制度化をしたものでございます。
  次に、7ページをお開きいただきます。交付税につきましては後ほどご説明いたしますけれども、結果だけ申し上げますと、歳出の見直しをすることによりまして、財源保障機能を見直し縮小するという方針に基づきまして、交付税は6.5 %の減、ただし、臨時財政対策債と申します交付税の身代わりの財源につきましても同程度縮減するということで、トータルでマイナスの12%ということで、各都道府県、各市町村の予算編成が困難であったと、こういうようなことがあったわけでございます。
  8ページは16年度予算におきます「三位一体改革」をめぐって、国会で毎日のように議論をされたこと、あるいは地方からご意見をいただいたことをまとめたものでございます。かいつまんで申し上げますと、先ほど申し上げましたように、補助金の削減規模に対して税源移譲の規模が小さいとか、交付税の削減が国の歳出改革努力と比較して大き過ぎるとか、あるいは全体像を示した上で改革に取り組むべきではないかといった意見が多かったわけでございます。また、税源移譲による財政力格差の拡大に対する対応策を明確にすべきではないか、地方の声を改革案の策定に当たっては反映させるべきではないか、こういうようなご意見も多数いただいているわけでございます。
  9ページは骨太2004を議論いたしましたときの全体像を作っていく過程についての資料でございますけれども、骨太2004に対しまして、総務省の方から麻生プランということで、総務大臣の考え方を提起させていただきました。全体像にかかわる方向性を骨太2004の中に盛り込みたいということでご提案させていただき、その相当部分が盛り込まれたというふうに考えてございますけれども、いずれにしても、これは全体像の方向性でございまして、三位一体改革、残る2年間、平成17年度、18年度の全体像につきましては、その資料の11月あたりに書いてございますけれども、三位一体改革の全体像を11月の半ばごろまでに、予算編成の基本方針を定める前までに明らかにいたしまして、最終的には、これは予算にかかわる問題、あるいは税制改正にかかわる問題、地財対策にかかわる問題でございますから、予算の時期に決定をすると、こういうような運びになったわけでございます。
  基本のところは、一番上に書いてありますように、方向性として税源移譲に結びつく補助金改革を実施していくということを基本にいたしまして、税源移譲は概ね3兆円規模を目指す、個人住民税フラット化の方向で検討していく、地方団体の財源につきましては、改革意欲をそがないように安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するというような基本的な考え方が骨太方針では示されたわけでございます。
  以上が総論関係でございまして、次に資料5の「国庫補助負担金関係」という資料がございます。お開きいただきまして、1ページは上の方が骨太2003、先ほど来ご説明をしておりますけれども、下線が引いてある部分、概ね4兆円程度を目途に廃止・縮減等の改革ということが決められたものでございまして、そのときに別紙2の国庫補助負担金等整理合理化方針に掲げる措置等に基づきまして検討していくのだと、こういうことが書かれております。
  骨太2004は下の方でございますけれども、17、18年度の残り2年間の3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込む。税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。その前提として、地方公共団体に対して補助金改革の具体案をとりまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。こういう文章になっております。
  2ページは、骨太2003の別紙2と先ほど申し上げましたが、国庫補助負担金等の整理合理化方針と言われているもので、これは閣議決定の一部をなしているものでございます。従来の地方分権推進計画などに定められました原則をもとに、その後、地方分権改革推進会議で国と地方の事務事業のあり方に関する見直しが行われまして、それらも踏まえまして、こういう整理合理化方針が定められたものでございます。
  詳しくは省略をいたしますけれども、2ページの1の(1)に書いてございますように、国庫補助金の原則廃止・縮減、国庫補助金と申しますのは、地方財政法16条の奨励的、財政援助的補助金と言われているものでございます。
  (2)の国庫負担金の廃止・縮減のいろいろな考え方、これは地財法の10条等に定められております国庫負担金についてでありますが、例えば、社会経済情勢等の変化を踏まえ、その対象を真に国が義務的に負担を行うべきと考えられる分野に限定していくとか、あるいは公共事業関係につきましては、国家的なプロジェクト等の大きな事業に限定をしていく。そういうような基本的な考え方が述べられた上で、(3)以下は、この国庫補助負担金、両方に通じた廃止・縮減等の考え方も詳しくまとめられております。
  3ページをご覧いただきまして、一番下の方に「重点項目の改革工程(いわゆる「重点11項目」)」というふうに書かれたものがございます。これは地方分権改革推進会議から報告がなされ、各省庁といろいろな議論の末に、三位一体改革の骨太2003の議論の始まります前にフォローアップをされまして、総理にも重点の改革項目というものが提案をされました。それを書いたものでございますけれども、この中に、いわゆる保育所の問題でありますとか、4番目の義務教育の国庫負担制度の問題でありますとか、あるいは7番目から9番目までは公共事業の関係のことがございます。それから、11番目の農業委員会・改良普及事業等々の「重点11項目」というものが提案をされ、そのまま閣議決定をされているわけでございます。
  4ページは補助金全体で国から地方に行くものが20.4兆円あるというものの明細でございます。この中に先ほどの重点11項目はもちろん含まれているわけでございますけれども、一番左からまいりますと、社会保障関係11.7兆円が、大変大きなウエートを占めております。このあたりにつきましては、保育所問題を除きまして、地方の方からは国と地方の役割というものがきちんと決まっているので、こういうところの負担金や補助金は今回の改革の中でいじらないでほしいと、こういうような基本的な考え方を示されているものでございます。
  文教・科学のところの義務教育の負担金2.5 兆円、それから公共事業関係は負担金と補助金と両方あるわけでございますけれども、4.8 兆円ぐらいのものがございます。こういった中から残り3兆円の補助金改革について、様々な角度から、様々な立場から検討がされているということでございます。
  5ページをお開きいただきますと、そのうちの地方の改革案、これは8月24日にまとめられたものでございます。2年間で3.2 兆円の補助金改革をやっていただきたい。その中から3兆円の税源移譲を実現してほしい、こういうふうにされたものでございまして、これは地方に仕事を任せてほしい、補助金を廃止いたしまして、税源移譲ということですから、地方に仕事を任せてほしいということでございます。いろいろな場面で議論されたり、あるいは新聞報道されたりするときに、事業そのものがなくなるような言い方も時々されておるわけでございますけれども、これは誤解でございまして、地方に仕事を任せてもらいたいと、こう言っているものが、この5項目でございます。
  1)が経常的な国庫補助金ということで、この中には高校以下の私学助成の補助金、それから在宅福祉関係の補助金等々がございます。
  2)の経常的な国庫負担金、これは義務教育以外のものでございますけれども、児童保護費等の負担金ということで、この中に私立保育所の運営費、負担金が含まれておりますし、公営住宅の家賃対策費補助、あるいは養護老人ホームの負担金、運営費の負担金、こういうものも含まれているわけでございます。
  それから3)は、いわゆる全国的にある程度どこの地域でもある、どこの地域でも整備しなければならない普遍的な施設整備に係る国庫補助負担金ということで、公営住宅、公立小中学校、社会福祉施設、廃棄物処理施設、こういったものが挙げられているわけでございます。
  4)は公共事業でございます。これは基盤整備的な公共事業というふうにご理解いただきたいと思いますけれども、そこにございますように流域下水、あるいは砂防事業、河川、治山、こういったもの挙げられておりますけれども、これは六団体の説明によりますと、都道府県のみが事業主体になる公共事業というメルクマールで挙げられてきたというふうに聞いております。
  5)が義務教育の国庫負担金でございまして、当然、地方六団体の方は第2期改革まで展望した中の平成17、18年度の第1期改革ということで、中学校分の一般財源化ということを挙げておりますけれど
も、2期改革まで通した形では義務教育費国庫負担金全額一般財源化、こういうご主張でございます。
  6ページは8月31日の日に三位一体改革の議論が経済財政諮問会議でなされましたときに、当方から麻生大臣の考え方として出させていただいたペーパーでございます。基本は地方団体の判断で真に必要な事業を重点的に実施できるような改革、税源移譲に結びつける改革を基本にやっていく。そのことによって補助金行政に係るいろいろなコストも削減できる。特に、人件費補助でありますとか、施設整備に対する補助金を検討すべきであるということであります。それから、補助金の改革と併せて、当然でありますけれども、国の関与・規制の見直しを併せて実施すべきであって、単なる補助負担率の引下げは自由度の拡大につながらず、改革対象とすべきでないと、こういう主張をさせていただいています。
  それから7ページ、8ページは、その後の経緯でございます。 8月の24日に補助金改革案が地方から出てまいりましたので、この経緯は9ページに時系列的に並べてありますので、ご覧いただきながら7、8ページをご覧いただきたいと思いますけれども、まず、閣僚懇談会で総理の方から、地方からの改革案を真摯に受け止め、各大臣は改革案の実現に向けて、率先して、責任を持って、全力で取り組み、17年度予算に最大限、活かしてもらいたい。こういう指示がなされております。この趣旨は、その後国会等でも何度となく総理の方から発言がされているわけでございます。
  9月7日には大臣会合というのが行われておりまして、内閣官房長官の方から7ページにありますような発言がされております。「3」のところにございますけれども、地方の改革案を実現することを原則として検討を行ってもらいたい。それから「4」のところで、仮に地方からの改革案に意見がある場合であっても、提案されている廃止額に見合う代替案を提出していただきたい。このような指示がなされているところでございます。
  8ページも、これは、内閣改造がございまして、その後、閣僚懇談会で再確認をされたものでございますけれども、このとき、「3」のところにございますように、10月の28日までに各省庁の検討結果を出していただきたい。こういうようなことが言われたわけでございます。10ページをちょっとご覧いただきますと、現在、国と地方の協議ということで、補助金関係につきまして、10月12日、10月19日、実は明日もあるわけでございますけれども、補助金関係を中心に国と地方の協議の場というものが持たれております。これは官房長官を中心に関係大臣、それから地方六団体の代表が出てきてやっているものでございまして、この場での議論を踏まえて、最終的には10月28日各省意見の締め切りと書いてございますけれども、検討結果が提出をされる運びになっております。
  一番下にありますように、三位一体改革の全体像のとりまとめを11月半ばを目途にするということでございますので、この各省検討結果を踏まえて、11月の上中旬には各省間の協議、場合によっては閣僚による調整、それから政府与党の協議も行わなければなりませんし、最終的に政府案を地方案をもとにつくると、少し変えていく部分もあるということになれば、国・地方協議というものも再度やらなければならないということであろうかと思っております。
  11ページ以下は、参考資料でございまして、地方案の各省ごとの金額、それから13ページ以下は個別具体の補助金の名称、こういうふうな補助金名が具体的に地方の方から、地方に任せてもらいたい仕事ということで提起をされているわけでございます。
  資料の6は交付税の関係でございます。1ページをお開きいただきまして、交付税関係の骨太方針、20032004を左右に並べてあります。骨太方針の2003では、「財源保障機能全般を見直し、縮小」と書いてございますけれども、その具体的な中身はこの下の3つでございまして、まず、マクロ的には地方財政計画の歳出を徹底的に見直して、交付税総額を抑制するということであり、その具体的な歳出削減の目標は、その下に4つかぎ括弧で書いてありますような公務員の数の純減でありますとか、投資的経費の単独事業を平成2〜3年度の水準を目安に抑制していくとか、一般行政経費の単独については、現在の水準以下に抑制するという具体的なことが書かれております。これをもってマクロ的な財源保障機能の縮小と、こういうことにされたわけでございます。
  ミクロ的には、個別の団体に対する算定という意味では、事業費補正等の見直し、算定方法の簡素化ということが中心になっている。さらに、不交付団体につきましては、市町村レベルで考えまして、不交付団体に居住する人口割合を大幅に高めていく。こういう閣議決定がなされました。その後、平成16年度の予算編成で、実質的な交付税が12%減ということになりまして、骨太2004の議論の中では、大変厳しい議論がなされまして、歳出の見直し、抑制は継続するのだけれども、地域のおいて必要な行政課題に対しては、適切に財源措置をしなければならないという認識が示され、そのことによりまして、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する。こういう項目が加えられたということでございます。
  さらに一番下に、16年度の予算の中で公立の保育所の一般財源化というようなものが行われまして、冬の段階では、特に財政力の弱い市町村から大変不安の声があったわけでございますが、7月の末に交付税を算定いたしましたところ、非常に交付税の機能について理解が進みました。しかし、いずれにしても、財政力の弱い団体につきましては、税源移譲額の国庫補助負担金の廃止・縮減額に満たない場合があるということは当然のことでございまして、これは交付税の機能を通じて適切に対応していくということが改めて加えられているわけでございます。
  2ページ、3ページは小泉内閣誕生時、平成13年度から16年度にかけての国の一般歳出、地方の一般歳出、交付税の削減の度合い、3ページは最近10年間の国の歳出と地方の歳出の総額の推移。地方の方がやや厳しめに最近は対処されているということではないかと思っております。
  4ページ、5ページは16年度の交付税の見直しにつきまして詳しく書いたものでございます。6ページの資料につきましては、先ほどもご覧いただきましたけれども、交付税については6.5 %、これの身代わりの特例地方債を合わせて12%の減となっております。
  7ページでございますが、これを受けて、大変各県、各市町村の予算編成が厳しくなりました。都道府県の資料でございますけれども、財政調整基金、あるいは減債基金といった一般的に取り崩しが可能な積立金の取崩額が、Eの欄にございますように8,400 億という多額に上りまして、前年度に比べて12%増加したわけでございます。
  次に、8ページはその基金の残高見込みが、もし16年度の当初と同じように基金を取り崩そうとすると残高がそこまでない、16年度と同じように基金の取り崩しができないという団体の数を調べましたところ、県では約半数の22団体、指定都市でも半数の6団体であります。市町村も概ね、例えば高知県の例がそこに書いてございますけれども、同様の傾向でございまして、交付税等が17年度に仮に16年度と同じようなことで縮減をされますと、非常に多くの団体で予算編成が困難になるのではないか。地方団体におきましては、当座は基金の取り崩しや地方債の弾力的な運用でしのいだものですから、この春からさらに行政改革の一層の取り組み、あるいは給与カットとか、そういうようなものに留まらずに住民サービスそのものについても税負担との関係で見直しをしなければならないというような動きが出てきているようでございます。
  そこで9ページ、10ページは、17年度(来年度)の交付税につきまして私どもがどう考えているかということでございます。現段階では経済見通しも出ておりませんし、国の予算自体も決まっておりませんから、なかなか難しいのでございますけれども、10ページをお開きいただきますと、地方財政収支の8月仮試算というものを初めて夏の段階で出しました。夏の段階ではいろんな前提がありまして、変わっていく数字が多いものですから難しいのでありますが、先ほど来ご説明しておりますような地方からの声、そういったものに耳を傾けまして、今の段階がわかり得る範囲で試算をしたものでございます。歳出につきましては、余り政策的な判断を加えずに骨太の2003で、既に決まっている歳出削減の方針、それから概算要求基準で国の方の予算が結果的にこのぐらいになるという大枠がわかったわけでございますので、それをもとに歳出を計算し、歳入の方は単純に「改革と展望」などで決められているGDPの伸び率を用いて計算をした結果、歳入の真ん中あたりに「地方交付税」というのがございますが、16.9という数字が並んでおりますけれども、17年度の今の段階の、かなりいろんな前提を置いた数値でありますけれども、地方交付税が前年同額程度、下から2番目の一般財源のトータル、地方一般財源のトータルも前年同額程度というような試算になっております。こういったものを現在、地方公共団体の方に説明をしながら、昨年度のように急に年末になって交付税の総額が決まったとか、あるいは急激な削減が強いられたとか、そういうようなことのないように、逐一情報提供しようということにしております。もちろん、この数字をまた三位一体改革の全体像が決まれば修正をする必要が出てまいりますし、税制改正や経済見通しが出れば修正をする必要がございますので、逐次修正をしながら情報提供をしていこうということでございます。
  11ページは交付税のことについて、実は先週も経済財政諮問会議で議論がなされておりますけれども、交付税の性格というのは、もともとは国税五税の一定割合、11ページの下から3行目ぐらいに書いてありますけれども、所得税や酒税は32%でありますとか、消費税は29.5%でありますとか、こういう一定割合が当然に地方交付税になるという法律の書き方になっておりまして、この地方の固有財源ということが昔から言われております。参考までに平成4年の5月の宮沢総理大臣の本会議答弁をつけてございますけれども、そういうものでございます。現在の運用は国・地方ともに非常に財源不足がありますので、法定率分にかなり特例措置ということで上乗せ的に足している。本来はこの法定率分を見直すか、あるいは地方行財政制度そのものの見直しがありまして、帳尻が中期的に合うように、改正をしなさいというのが法律の趣旨でございますけれども、国の財政状況からしても、急には、そういうことはなかなかできないということで、暫定的な特例的に交付税の総額を加算する、あるいは赤字地方債で一部対応する、そういうような暫定的な制度により対応しているために、交付税の本質が少し見えにくくなっているのではないかというふうに感じている次第でございます。
  12ページから14ページは交付税の財源保障機能の必要性でございます。これは過去に、この場でもご説明させていただきましたので説明は省略させていただきますが、13ページにありますように、小中学校の教職員1つとりましても、この法律で定める教職員の数を確保するためには、人口比例ではなかなか対処できない。14ページのように県でもかなり大きな県まで含めまして、この地方税というものが十分でないために、交付税で財源保障をしないと現在のような住民サービスができないという状況を示したものでございます。
  15ページは保育所の今年の一般財源化に伴う財源措置でございます。国庫負担金と県の負担金が廃止された分につきましては、当然、交付税で需要にカウントをして財源保障するという機能があるわけでございますけれども、その点について、ポンチ絵をかいたものが15ページで、16ページは実際に公立保育所が非常に多かった地方団体、市町村ですね、高知県の土佐市のようなところは、公立保育所の数が多かったので、これが一般財源化されると大変なことになるのじゃないか、こういうことでございましたが、きちんと交付税で需要をカウントいたしましたので、こういう団体では交付税が逆に増えた。交付税の平均がマイナス6.5% でございますから、土佐市においてはプラス7.3% になったということは、こういう機能が十分に働いているということを示しているのじゃないかということです。逆に、下の方の公立保育施設が全くなかったところは、これは影響がございませんから、平均的なマイナス6.5% 近辺のところで推移をしている。こういう交付税の財源保障が機能した例を挙げさせていただいています。
  17ページは交付税のあるべき論とか、そもそも論をやるべきだということが、今とりざたされているわけでございまして、先ほどちょっと触れましたけれども、もともとは地方共有、固有の財源で国が地方に代わって徴収する地方税と言ってもいいべきものでございますので、マクロ面では当然、現在は大幅な財源不足で多額の特例措置がありまして、国が恩恵的に足しているようなイメージで誤って捉えがちなのでございますけれども、本来はきちんと歳出の見直しなり、税の増収あるいは税制改正によりまして財源不足を縮小し、法定率分を再セットして、それだけで総額が確保できるような姿に戻していく必要がある。ミクロ面でも現在は、相当細かく実態尊重ということで、算定をしており、国の奨励的な政策、義務的な政策以外の奨励的なものについても、コミットしていくということで、かなり複雑な算定になっているのではないか。こういうご批判がございますけれども、これを義務づけが強いもの以外はできるだけ簡素化をしていきまして、事業費補正の見直しのように国の奨励的な政策から中立化をしていく。全体として抜本的な簡素化をしていくというようなことをやってまいりますれば、もとの交付税の姿に立ち返って、自主的、主体的な財政運営を阻害したり、あるいは国への依存体質を助長したり、モラルサバードを引き起こすようなものでは本来ないわけでございますので、そういう制度に戻していくベクトルで議論していかないといけないということでございます。現在の運用が少し本論からずれているからといって、交付税の間違ったそもそも論みたいなことをやり始めると、財政制度そのものが立ち行かなくなる。こういうような感じがいたしておりますが、私どもとしては、そういうことを基本に対処をしていきたいというふうに思っております。
  19ページは決算乖離の問題、新聞にも出て大変ご心配をかけておりますけれども、投資的な経費の単独事業が一般財源ベースでは、14年度の決算で見ますと計画に対して2.6 兆円不足している。逆に地方の方からいいますと、必要な福祉や教育のサービスの方に回しているということであります。ハードは我慢して、住民が直ちに求めている福祉や教育のサービスの方に回しているということで、逆に、一般行政経費の単独事業の方は、一般財源の決算の方が2.9 兆円多くなっております。この中でちょっと細かく括弧書きしてございますけれども、いわゆる各種の手当だとか、祝い金だとか、けしからぬと、こういうふうなご批判のあるようなものであります。医療費助成というのはちょっと難しいのでございますけれども、保険の原則から言えば、自己負担分をきちんと払っていただくというのが保険の原理原則でありますけれども、少子化対策について有効な手立てがないということで、乳幼児の医療費に対して自己負担分を助成をしたり、あるいは老人医療費についても高齢者対策として助成をする、こういうものが3,000 億円ぐらいあるわけでございます。その他の祝い金とか手当というのは1,000億円ぐらいなのですが、こういうものを合わせましても4,000 億円程度でございますけれども、こういうものの取り扱いについてはいろいろと議論があるところだろうと思います。例にこれを全て差し引きましても、いずれ2.5 兆円ぐらいは足らない部分がある。こういう状態になっておりまして、私どもとしては、一体的に決算との乖離を議論し、検討していくべきではないかと、こういうような感じで見ております。
  20ページ以下は8月31日に麻生大臣の方から出させていただいたペーパーでございますので、ちょっと時間の関係もありますので、説明は省略させていただきますが、最後に22ページだけご覧をいただきまして、市町村ベースで不交付団体に居住する人口の割合の増加につきます。中期的に人口割合を3分の1程度にすることを目指すという方針を表明させていただいておりまして、現在はこれが2,241 万人で17.7%、これを概ね倍ぐらいにしていくということです。景気の回復によります税収の増や、あるいは税源移譲によります税源の充実がかなりの規模で行われるということでないと、この目標水準の達成は難しいというふうに考えております。いつまでにやるのだというようなお話は、この間も、この場でもご質問いただいたわけでございますけれども、先週の諮問会議では大臣の方から、2010年代初頭ぐらいにはこの程度に持っていきたいということで表明をさせていただいております。関連の資料は23ページにつけておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○松本小委員長 企画課長。
○岡崎企画課長 企画課長でございます。今、国庫補助金と交付税の説明がございましたので、税源移譲関係をご説明いたします。1、2、3ページは、国・地方の税源配分の現状の資料ですので省略いたしまして、4ページをご覧いただきます。
  税源移譲する場合には、できるだけ税の偏在度が高まらないような工夫が必要でございまして、今の基幹税のうち、個人住民税、法人二税、地方消費税、固定資産税等のいわゆる偏在、一人当たりの税収の格差を掲げたものでございます。これを見ますと、法人二税は非常に格差がございますので、今後地方税として強化していくべきは、やはり個人住民税や地方消費税といった偏在度の少ないものではないかということで、実は18年度までの閣議決定では、このうちの個人住民税に所得税から税源移譲し、併せて税率をフラット化する方向であります。これは個人住民税に税源を移す場合に、所得割を比例税率化しようというような工夫をして、偏在度が高まらないようにしようというようなことを考えているわけでございます。
  5ページはいつもの表でございまして、税源移譲の一番根っこにあります税の配分が国・地方6:4で歳出は4:6であるということでございます。
  それで、6ページは、先ほど椎川課長から説明がありました所得譲与税について書いてございます。これは18年度の改正を目指して本格的な税源移譲を行うわけでありますけれども、それまでの間、補助金が暫時なくなってきますので、その分を補てんするものとして考えられたものでございます。当初は、政府税調などではたばこ税、国のたばこ税を減らして、地方のたばこ税を増やすという案もあったのですが、暫定措置として最も簡便な所得譲与税を創設することになりました。6ページの下にありますように、4,249 億円という補助金から来る額を移譲し、県が半分、市町村が半分にいたしておりまして、人口で単純に按分することとしております。
  それから7ページは、答申ですので省略いたします。
  8ページ、その後の本格的な移譲はどうするかということが骨太2004にございまして、この中では上から3つ目の「・」にあります税源移譲は概ね3兆円規模ということと、それから下の「・」、税源移譲については、所得税から個人住民税へ本格的に移譲するということ。それから、個人住民税所得割の税率をフラット化する方向で検討を行うということが決められているわけであります。
  そこで、具体的なイメージでありますが、9ページをご覧いただきます。9ページは現在の税率構造でございます。個人住民税は、道府県市町村合わせまして、所得階層において5%、10%、13%の3段階の累進構造でございます。その後ろの灰色の部分ですが、所得税の税率構造が重なっておりますが、10%、20%、37%という構造でございます。これを合わせますと、いわゆる日本の個人所得課税というのは5%、15%、20%、30%、33%、43%、50%という段階になっております。このときにフラット化の意味というのは、地方税の5%のところを10%に上げまして、その代わりに、13%のところを10%に下げるというイメージでございます。
  10ページをご覧いただきます。これは4月に麻生大臣が出された紙でございますが、今申し上げましたように、5%、10%、13%となっておりますのを、5%、10%に上げることにより大体3.4 兆円ぐらい地方税収が増えます。それに見合って所得税を減らすわけです。それから、右の方の13%を10%に下げることにより、4,000 億円程度地方税収が減ります。差し引きで3兆円ぐらいの移譲が実現するであろうということでございまして、増税に見えますが、所得税をその分下げるなどして、適切な調整措置を行う。つまり、住民税の設計と所得税の設計がセットでなされなければいけないということでございます。こういうことを行いますと、10ページの下でございますが、今の累進構造のもとでは、8兆円の住民税所得割のうち、東京都に16%が集中しておりますが、こうして移る3兆円についてみますと、東京都に行くのは約3,000 億、つまり、ほぼ人口割合と同じ、10%ぐらいが都に移譲されることになるのではなかろうかと思っております。
  なお、恐縮ですが、9ページにお戻りいただきまして、いろいろ細かい制度設計は難しいのでございますが、左側の5%が10%に上がるところでは、例えば所得税を15%に下げれば、増減税はないわけですが、一番左に飛び出しております住民税だけしか払っていない部分が若干ございます。こういうところは所得税を下げるわけにはいきませんので、住民税の中で何か仕組みを考えなくてはいけないわけでございまして、こうした詳細な設計は、これから財務省と私どもで行っていかなくてはいけないと思っております。
  それから次に資料8でございます。三位一体と若干離れますが、今の地方税収を取り巻く環境というものをご説明いたします。
  まず、1ページでございます。先ほど財政の話がありましたが、国・地方を通じての財政収支が左側のグラフでございます。それから債務残高、国・地方の合計の債務残高が右でございます。どちらも1990年ごろには、大体各国のお仲間に入れていただいたわけですが、その後は全く我が道を行くになっておりまして、現在では、日本はどちらもこれらの国の中で最低の水準にあるということでございます。
  それでは、そのためにどうするかというためのヒントでございますけれども、2ページをご覧いただきます。よくいろんなところでご説明に使う表ですのでご覧いただいているかもしれませんが、国民負担率の国際比較でございまして、一番左側が日本でございまして、租税負担率が21.1%、社会保障を加えまして、ナショナルインカムに対し、国民負担率は35.5%と、ほかに比べて低くなっております。かつ一番の問題は、下に赤字が飛び出しておりまして、−9.6 %、毎年30兆、40兆円が、収入不足のために将来世代に借金のツケ回しをしているという状況が毎年続いているわけでございまして、これが何とか上の方に上げておかなければいけないと思っております。上の方に上げる場合に、何をこれから強化するか、拡充するかといいますと、一目瞭然でありまして、個人所得課税の欄が6.1 %でありますが、これは他の先進各国に比べまして半分以下の数字でございます。それからその上の上、消費課税が7%、ちょっと多段階消費課税がないアメリカを除きますと、ヨーロッパ諸国に比べまして、これもまた半分以下の水準でありまして、これはやはり個人所得課税と消費課税が骨になっているのではないかということ、今後の重点課題はこの2つであろうということが言えるわけでございます。
  3ページでございますが、昭和62年以降の状況を見ますと減税の連続でございます。折れ線グラフは所得税でして、住民税はグラフにすると、やや波が小さいので数字で書いておりますけれども、いずれにしても、平成元年のときの抜本改革では、先行減税と直間比率の是正ということで、それぞれ減税いたしました。また、平成7年のときに、単発ものは別にしまして、今に尾を引くものとしては、税制改革で住民税、所得税で3.5 兆円の減税を実施しております。それから、平成11年以降はいわゆる恒久的減税ということで、毎年毎年、個人所得課税だけで4.1 兆円というような減税が重なってきているわけでありまして、所得税収で言えば、平成3年の26兆円から今13兆円と半減でしております。住民税収も平成4年の11.5兆円から今は8.1 兆円になっているわけでございます。
  そこで、当面の課題としてよく議論されますのは4ページでございまして、個人所得課税の定率減税、いわゆる恒久的減税の一環でございまして、個人住民税については15%の定率減税(4万円限度)、所得税は20%(25万円限度)ですが、これで毎年毎年、個人住民税は8,000 億円、所得税は2.5 兆円という減が出ている。これを今のような財政状況でどの様に扱っていくか。平成11年度に比べると景気は明らかに変わってきていますので、議論はしていいのではないかと思っております。
  あと、以降は、その他の控除等の話ですので一部省略いたしまして、8ページ以降に、もう一方の柱の消費税の話として、地方消費税の概要が出ております。地方消費税は1%相当分で、都道府県間で消費に応じて清算をするという仕組みでございますが、10ページ、消費税については、いろいろと益税等があって不公平ではないかというようなことが言われておりましたので、これをかなり縮小してまいりました。当然、地方消費税と消費税を合わせた話でありますが、創設するときには、免税点も3,000 万だったものを、売り上げ1,000 万に、現在は修正しております。また、簡易課税制度の上限も5億円を5,000 万に減らしておりますし、一番下の方にあります申告納付回数も2回から12回、価格表示も総額表示ということで、大分改善をしてまいりました。あとは消費税全体の水準をどうするかという議論がこれからの課題であろうと思われます。
  11ページは主な国の消費税の表面的な税率であります。標準税率でありますけれども、これを見ても一目瞭然で我が国はかなり下の部類にいるということでございます。
  以上でございます。
○松本小委員長  ありがとうございました。
  それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、ご意見等がございましたらご自由にご発言願います。
○椎川財政課長 資料2の説明をさせていただいて・・・・・・。
○松本小委員長 どうぞ。
○椎川財政課長 それでは、重複する部分が多いので、簡単に資料2の最近の国会や経済財政諮問会議で議論がありました際に、私どもが対応しているものにつきましてご説明をさせていただきたいと思います。
  重複部分を省略いたしまして、ポイントだけかいつまんでご説明いたします。資料2の1ページは、まず、下の方の(1)の税源移譲関係でございますが、総理のおっしゃった3兆円規模の税源移譲の確実に実施するということが何といっても第一でございまして、その際に偏在性の少ない地方税体系ということで、今、企画課長からお話がありました所得割の10%比例税率化が望ましいということでございます。
  それから、2ページをお開きいただきますと、補助金関係でございます。「○」の2つ目にございますように、地方も大変な苦労をして、いろいろな立場が違う中で統一案というものをつくってきた。総理の要請に応えまして出してきたものでございますから、政府としては、この具体案を最大限尊重して3兆円規模の税源移譲に結びつく改革に全力で取り組むことが必要だということであります。
  それから、「○」の4つ目でございますけれども、最近、各省庁の議論を聞いておりますと、補助率引下げみたいなことがまたぞろ出てきそうな感じもいたしましております。自由度が拡大すれば補助率を引下げてもいいのか、こういうような議論でございますけれども、あくまでも補助率というのは制度の基本にかかわる問題でございますから、この制度の基本的な部分、例えば生活保護にありましては、保護基準みたいなものに裁量度を与えるということでなければ、補助率というのはいじれないはずでございまして、今、議論されている生活保護とか国民健康保険は、そういう意味での地方の判断を許容するような部分がないということでございますので、地方からは大変反発が強うございます。単なる補助負担率の引下げは到底認められないということであり、去年も生活保護ですったもんだしたわけでございますけれども、最近では国民健康保険みたいなお話も出ておりまして、大変懸念をしているところでございます。
  それから、その下の最後の「○」の公共投資関係の国庫補助負担金についてでございます。財源が建設国債であるので、税源移譲になじまないというようなご議論があるわけでございますけれども、この財源を地方債に振り替える、地方負担分と合わせて地方債で事業するということに仮にいたしましても、その償還は最終的に地方税で賄われるべきものでありまして、どういうタームでどういうテクニカルな処理をして税源移譲するかは別でございますけれども、当然、将来にわたっては税源移譲が必要なことは明らかでございます。
  それから、交付税の関係につきましては、かなりダブるので3ページの方に参らせていただきまして、3ページの上から3つ目でございます。ちょっと文章で書くと難しいのですが、所得税から住民税への税源移譲ということを仮に3兆円というオーダーでやったといたしますと、その所得税の32%は交付税の法定率分、先ほどご説明いたしましたが、1兆円近くのものが法定率分であり、それが減ってしまうということになるわけでございます。これは当然、現在の地方財政計画の策定方法、あるいは地方財政対策のやり方ということからまいりますと、この欠けた分は全体の地方財政対策の中で財源をきちんと確保する。その確保の仕方についてはいろんな選択肢があるわけでございますけれども、とにかく穴があかないように万全の措置を講ずるということは当然のことでございます。
  それから、その下の「○」3つは中期的な見通しということであります。地方の方からも毎年毎年交付税が特例措置分のウエートが高いので幾らになるかわからないと、財務省と総務省が折衝するのをハラハラして見ておるのだと、こういうようなご意見がございました。私どもとしても、でき得れば中期的な歳出水準、あるいは国民負担の水準というものをきちんと見通した上で、交付税率というものを再セットいたしまして、先ほど来申し上げました交付税の本来の姿に立ち返っていく。そのことによって交付税総額に対する地方の予見可能性というものをきちんと高めていく。さらに、固有の財源ということの性格に鑑みれば、交付税特会への直入や交付税の対象税目の入れ替え等も検討課題ではないかと思っております。不交付団体の問題につきましては、人口の問題につきましては、ここに書いてございます2010年初頭に3分の1程度にすることを目指すことを表明させていただいている。
  最後(4)に地方財源不足への対応ということで、主に来年度の問題でございます。4ページの「○」のところ、下から2つ目の「○」を見ていただきますと、16年度で12%減という、人によりますと、地財ショックとか、大変そういったショッキングな言葉を使っておられるのですが、余りにも急激だったということもございまして、先ほど来ご説明しているような推移があったわけでございます。三位一体の改革をきちんと成功させるためには、補助金が廃止・縮減された場合に、それを交付税できちんと財源保障するということであります。これは、交付税の総額を増やすという意味ではなくて、3兆円の税収があるわけですから、これをきちんと仕事の量に応じてならしていくという機能をきちんと発揮させるということでございます。全体の交付税の水準が下がりますと、そういうものが見えにくくなるということがございまして、国と地方の信頼関係というものを維持して改革を成功に導くためには、ぜひとも、この交付税の所要額の確保が必要だと。こういうことを書かせていただいております。
  以上でございます。
○松本小委員長 よろしいですか。それでは、ただいまの資料2のご説明も含めまして、ご意見等ございましたら。
○薄井委員 今、最後にお話のあった資料2の論点ですが、これはどういう趣旨の文章なのか。その前に説明のあった話は、それぞれのお立場で事実関係を含め、あるいはご担当者の主張を含めてまとめたことをご説明いただいたように思ったのですけど、最後に論点2というのがぱっと出てきて、これがこの場のまとめということに最終的にはなるためのものですか、どういう性格のものですか。
○椎川財政課長 これは最初にご説明いたしましたように、国会でありますとか、経済財政諮問会議などで様々な議論がされている場合に、私どもが主に主張させていただいている事柄だと、こういうふうにご理解いただいてよろしいと思います。
○松本小委員長 よろしいですか、薄井委員。
○薄井委員 ということは、この場の我々委員の意見をまとめたものではないということでよろしいですね。あるいは今後何かまとめるときに、こういうものを議論したではないかということにはならない。
○椎川財政課長 当然、委員さん方で議論されるのが今日が初めて、実質的に初めてでございますから、この場の議論を踏まえて、私どもとしてはまたまとめさせていただきたいと思っております。
○松本小委員長 よろしいですか。
○薄井委員 非常にまとまり過ぎていて、これから議論するにしてははっきりし過ぎているような気がしたものですから。もうちょっと粗っぽい項目で議論をさせていただいた方が議論しやすかったなと。私は素人ですから、一々について、いいか悪いかよくわからないのですけど、かなりでき上がっているなという感じを受けたのでご質問させていただきました。
○松本小委員長 それは当然、事務局が今説明したとおりのような趣旨でございますから、議論はさらにこの場で進めていっていただきたいと思います。
  そのほかの方いらっしゃいますか。
○林委員 ちょっと質問をさせていただきたいのですが、交付税の資料のところで地財計画と決算額の比較を、これはよくいろんなところで目にするわけで、この乖離が非常に大きな問題だということがよく指摘されるわけですね。私自身は決算額と地財計画で計上された金額の乖離がどうして問題なのかなというのは常々思っておりまして、問題なのは、計画額の中に盛り込まれているのが何かということの方が問題なので。ということは、例えば一般行政経費のところで、老人向けの各種手当だとか祝い金だとか、こういうのがありますよね。これは一般財源というか、決算額には、当然、単独事業とかで盛り込まれていると思うのですが、計画額のところにこれが盛り込まれているのかどうかというところが問題なので、どうもこれが出ると、そういうものが盛り込まれてしまっていると。もちろん、私自身も本来盛り込むべきではない。例えば、単独事業のようなものを盛り込むべきではないとは思っている部分もありますが、そのあたりが決算額と比較すると、じゃ、投資単独も決算額が15.6兆円だったら問題ないのかというと、決してそんなことはないわけで、むしろ単独で景気対策をやってもらったというところの方が問題なので、そこらをきちんと資料としてわかるようにしないと、地財計画でこういうものまですべて見ているというような印象をどうも与えてしまっているのじゃないかという気がするんですが、ただ、ひょっとしたら入っているかもしれないので、そのあたり、祝い金等が入っているのかどうかというのをちょっとお聞きしたいなと思います。
○松本小委員長 財政課長。
○椎川財政課長 まず乖離の問題でございますけれども、地財計画、ご存じのように歳入の方には、標準税率分の地方税、それから地財対策で確保しました交付税という一般財源が計上されておりますので、ある程度計画と決算の乖離が出てくることは制度上予定されているわけです。一般財源でございますから、使い道が自由で使途が制限されていない。さりとて、トータルの数字がこれだけ乖離しているということでございますけれども、特に単独事業の系統、投資単独だとか、一般行政経費の単独の方は、個別に全部積み上げるということは不可能に近いので、これは枠的に確保しているというふうに思っております。枠というのはどういうふうに計算するかと申し上げますと、過去において、例えば公共事業が伸びた年もあれば縮んだ年もある。伸びた年には、同じように単独事業もある程度伸ばしていく。−3%のときには−3%にする。ただし、今お話のありましたように、バブル経済崩壊後の景気対策の場合にはややそれと違って、国の公共事業が余り追加できないときに、地方単独でその分をカバーするというような別途の政策的な判断が行われた場合もあります。そういう枠的なものとして計上しておりまして、投資単独の中で個別にこういう細かい積算があるわけではございません。
  それから一般行政経費の書きぶりが、こういう無駄なものが含まれているように見えるじゃないかと、こういうご指摘でございますけれども、これは決算の方が一般財源ベースで2.9 兆円上回っているということの中に、0.4 兆円、4,000 億円というものがあるというふうに書いたつもりでございまして、これは地財計画にこういうものが入っているということではなくて、決算で上回っている部分の一番上積みのところに言われているようなものがあるのじゃないかということであります。ですから、我々がこういうものまで含めて何か乖離を是正しようという議論しているわけではないという趣旨で表記させていただきました。
○松本小委員長 今のでよろしゅうございますか。それでは、先に紺谷委員。
○紺谷委員 地方交付税のところなのですけれども、2ページに地方交付税が3兆4,000 億減ったと。一方、国の一般歳出は、1.1 兆しか減っていないわけですね。それで国庫支出金は同じなわけですから、だとしたら、国の一般歳出は交付税を除いたものは増えたということですよね。何かずるいなという感じを受けましたけれども。
  それから、最近、財務省が盛んに批判している地財計画と実質の差額というのはどこから生じているのでしょうか。とても大きく見えてしまうのですけれども、それは何で、どこから生じているのでしょうか。
○椎川財政課長 2ページの資料はデータでございまして、おっしゃるとおり、最近、13度以降の数字でございますから、地方の一般歳出の方へは厳しめに見直しをかけてきているということであります。特に国の方は、年金でありますとか、防衛費でありますとか、いろいろな国だけの歳出、地方負担のない歳出というのがございまして、そういうものの影響もあるのじゃないかというふうには思っております。それから乖離の原因でございますけれども、いろいろこれは難しいわけでございますが、地財計画、先ほど申し上げましたように、国の予算とパラレルに枠としてこの単独事業を計上してまいりますので、形としては、国の予算の姿に構成が非常に似ているということではないかと思います。現実の地方団体の予算編成だとか、あるいは財政運営ということを考えてみますと、ハードよりもソフトという政策転換が現場では如実に起こっている。住民がハード事業は控えても、福祉とか教育のサービスに重点を置いて対応してもらいたいという強い要望があって、地方の政策がハードからソフトに転換している。我々の考える地財計画よりも急速に転換をしているということが1つの原因ではないかというふうに考えております。
○松本小委員長 よろしゅうございますか。
○紺谷委員 もう一つお聞きしてもいいですか。先ほど交付税のご説明で、もともとは地方固有の財源だと、「もともとは」とおっしゃったのは、途中から固有の財源じゃないかのような見方が出てきたということでしょうか。それから、固有の財源なら何で一般会計を通すのですか、通す必要がない。
○椎川財政課長 ちょっと言葉が悪かったかもしれませんけれども、固有の財源であるわけでございますけれども、本来の制度からいいますと、もう既に法定率を見直すか、あるいは地方行財政制度の改正というものをやって、きちんと法定率だけで交付税が賄われるようなことをしなければならない状態にあるわけでございます。国の財政状況全体として、あるいは国・地方が大幅な財源不足にあるということで、この暫定的な制度改正ということで、先ほど来ご説明いたしました一般会計からの特例的な加算と、財政対策債という2つの手法によって財源不足を賄っていくという、制度本来の趣旨からいたしますと、やや本筋ではない制度改正によって対処しているものですから、そのこと自体が何か国から恩恵的に交付税の総額が加算をされているのじゃないかと、そういうような誤解を招きやすいという説明をするために、ちょっと言葉がすべったような感じがいたします。どうも失礼いたしました。
  それから、今お話がありました一般会計をなぜ通すのかということでございます。これは地方分権推進計画が閣議決定されておりますけれども、当時から直入を検討してはどうかというようなこともいただいているわけでございますけれども、財務省の立場からいたしますと、予算の一覧性、国の歳入・歳出の全体が直入制度にしますと見にくくなるということで、なかなか合意が得られない。私どもは毎年、一応、事項要求をさせていただいておりますけれども、なかなか合意に至らないということではないかと思います。
○紺谷委員 財務省は一覧性をおっしゃるなら、特別会計とか、財投の透明性をもっと高めていただきたいと思うのですけれども、1つお聞きしたかったのは、地方交付税の法定率を変える発議は誰の権限なのですか、自治大臣ですか。
○椎川財政課長 これは法律で定まっておるものでございますから閣議決定する必要がございますので、当然、一義的には私どもの所管の法律でございますけれども、予算を伴うものでございますし、法律の改正に当たっては閣議決定を要しますので、財務省と合意をしなければできないと、こういうことでございます。
○紺谷委員 閣議決定のためなら、財務大臣のはずです。財務省の了解なく閣議にのせられないとしたら、それはとても変です。第3条総務大臣は、財政需要額が財政収入額を超える地方団体に対し、公平にその超過額を補填することを目途として交付しなければならないとあるわけですね。だから、定率の現在の総額の中におさまるようにするのか、あるいは足りないとなったらば、その定率の方を変えるのか、それはどちらでございましょうか。
○椎川財政課長 交付税法6条の3の第2項で交付税の総額が不足をする、引き続き著しく不足をする場合には、交付税率の見直しを行うか、あるいは地方行財政制度の改正をしなさいという規定がございますので、かなり幅広い選択肢は許されているというふうに解釈をされておりますけれども、そういった方法によりまして、帳尻が合うようにするのが妥当であるというふうに思っております。
○紺谷委員 最後に一つだけ。先ほどから盛んに「閣議決定」とおっしゃっているのですけれども、閣議決定にどれほどの意味があるのでしょうか。だって、いずれにしろ、これは国会を通さなくちゃいけないわけですね。だから、閣議決定なんて、そういう意味ではワンステップとしての意味しか持たないわけですよ。総理大臣が勝手に決めたからといって、国会が通さなかったら、それでおしまいですね。だから、閣議決定が最終的な決定機関ではないことを確認させてください。
○椎川財政課長 議院内閣制でございますので、当然、国会でご審議をいただく法律案なりについては、与党の了承を得ながら閣議決定をいたしまして、最終的にはおっしゃるように国会できちんと審議をして決まっていくものというふうに思っております。
○松本小委員長 それでは、神野委員お手が上がっていましたので。
○神野委員 ちょっと議事運営にかかわることかもしれません。意見としてですが、この28次地方制度調査会としても、現在行われようとしている三位一体の改革の関して意見書を出しておいた方がいいのではないか。これは臨機応変にという意味で出しておいた方がいいのではないかという意見といいますか、提案でございます。
  というのも、私の考えでは、現在、地方分権の改革にとってかなりクリティカルなといいますか、非常に重要な別れ道に差しかかっているのではないかというふうに思うからです。もちろん、三位一体の改革というのは、財政面での地方分権を推進するという目的だったわけですけれども、三位一体の改革を単に地方財政を構成する3つの歳入の要素の改革だということであれば、分権的にも集権的にもできるわけですね。
  私、諸井会長の下で分権推進委員会のときから分権改革に携わっておりましたけれども、諸井会長がおっしゃっているような意味で、分権推進委員会が築いた第1次分権改革のベースキャンプを崩すなというようなレベルの話よりも、もう少し現在は深刻になっていて、下手をすれば、別な山を登り始めているのではないか。言い換えれば、分権型社会を目指していたのが、3つの組み合わせの改革によって集権型社会を目指すような結果に陥るのではないかということです。
  先ほどもお話がありましたように、補助率の引下げという話まで出ているわけですね。私どもは分権推進委員会のときに補助率の引下げ、これは1980年代に行われた改革で、我々はそれの学習効果から、それは集権を強めるだけであって、つまり薄巻きの統制ができちゃうわけですから、補助金のカットを廃止・削減をする場合には、補助率の引下げは認めないということを諸井委員長の下で二次勧告の中でちゃんと書いてきたわけですけれども、そうした補助金を分権的に切っていくという方向性すら失われているということですね。
  それから、議論を見てみても、古色蒼然と言うと怒られるかもしれませんが、シャウプ勧告のときに言っていたような行政水準を確保し、国の責任を果たすという依然として論理を繰り返しているだけなのですね。今の流れを見ると、地方財政、これは増やしてくれと言っているわけではなくて、地方財政の裁量権、西尾先生の言葉を使えば、財政面での自己決定権を拡大するという目的を見忘れないように進めるべきだという意見をこの地制調でもやっておくべきではないか。というのは、今、分権という立場から発言できる審議会は恐らくここだけだろうというふうに思いますので、私たちは28次地制調としても、もしも何もしないということであると、不作為の責任、何もしなかったということに対して責任をとらなければならないわけですから、ここで意見をまとめておくということを臨機応変に、少なくても、三位一体の改革というのは、集権的な社会をつくるのではなくて、分権型社会をつくるんだという方向性を見失うなということは言っておかないと、この議論の混乱の中で逆方向に動いてしまう危険があるのではないかというふうに思います。
○松本小委員長 ありがとうございました。ただいまの神野先生のご意見につきまして、何かご意見ございますか。
○林委員 私も非常に危機感を感じておりますので、神野委員の意見書を早急にまとめて総理に提出するというのを支持いたします。
○松本小委員長 そのほかの方はございませんか。
○紺谷委員 補助金は削減すればいいかのようなイメージが振りまかれているのですけれども、どの国も補助金みたいな手段は持っているのじゃないですか。だから、本当に必要な補助金の手段というものは確保しておかなきゃいけないわけですよ。度々言わせていただいたように補助負担金に伴ってくる中央の介入が要らないと地方は言っているだけでございますよね。それなのに、補助負担金の削減ばかりが来て、それに伴う介入行政をどうするかという議論がほとんどないのですね。ですから、今、神野先生が言われたこと非常に重要なことであると思いまして、私、大賛成なのでございますけれども、地方財政法の12条を読ませてもらいましたら、地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、法律又は政令で定めるものを除くほか、国は、地方公共団体に対して、その経費を負担させるような措置してはならないとあるのですけれども、これは忘れられていませんでしょうか。だから、本当に権限を有しているのですか、義務教育であれ何であれ、生活保護であれ、介護保険であれ。そういうところをきちんと明確にしていくというところが地方分権の第一歩であるような気がするのでございますけれども。
○松本小委員長 そのほか。
  ただいまの意見につきまして、今後の日程は、専門委員会を予定しているのは11月の何日でしたかね。
○石川自治政策課長 2日でございます。
○松本小委員長 それから、その次は?
○石川自治政策課長 11月の8日でございます。
○松本小委員長 11月の2日は、この問題をもっと突き詰めて論議する時間はあり得ますね。事務局として。
○石川自治政策課長 ございます。
○松本小委員長 それでは暫時休憩させていただきまして、日程等について、会長、副会長と相談をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
(休憩)
○松本小委員長 それでは、ただいま会長、副会長とご相談させていただきまして、先ほど来のご意見を踏まえまして、11月2日に地方税財政問題について意見の提出のことを含め、論議を進めさせていただきたいと思います。11月8日は専門小委員会の日程にいたしておりますけれども、できますれば、総会を開催させていただくという方向で進めたいと思います。ご異議ございませんか。
(「異議なし」と声あり)
○松本小委員長 なお、その際に道州制の問題につきましても、現在までの審議の状況を整理し、同時に総理に報告するということで私どもとしては考えたいと思っていますが、そのことについてもよろしゅうございますか。
 (「はい」と声あり)
○松本小委員長 それでは、ただいまのようなスケジュールで進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
  そういうことでございますれば、なお、今度の11月2 日にもう一度地方税財政問題を論議いたしますので、今日は残っております道州制の問題につきまして、これから事務当局から説明を求めたいと思います。行政課長。
○久元行政課長 それでは、資料1「委員限り」と記しております資料をご覧いただきたいと思います。このペーパーのタイトルは、冒頭、松本小委員長から趣旨のご説明がありましたような、そのご指示に基づきまして、事務局として作成をさせていただいたものであります。ペーパーのタイトルは、「道州制に関する論点メモ(専門小委員会における調査審議経過)」としております。
  前文は、3月1日の以来の経過を書いておりまして、3段目でございますが、「今後、道州制に関する検討を一層深めるためにも、これまでの調査審議の経過を整理することは意義のあること」だし、その上でこの整理が「道州制に関する議論を深める上での一助となることを期待したい。」こういう前文を書いております。
  3つの部分からなっておりまして、最初の部分は、「国・地方の政府のあり方と地方分権」。現在、地方分権との関連で、国・地方を通じた政府のあり方の見直しが求められているということから始めております。
  最初に「期待される政府像」というタイトルで、「地方にできることは地方に」「民間にできることは民間に」との方針の下に、各分野にわたる構造改革が進められてきた。国と地方に関する分野でも、「三位一体の改革」に関する基本方針が定められ、その実現に向けて努力が傾注されているところである。今後、改革の方向を確たるものとするためには、国と地方を通じた政府のあり方の見直しが必要となるものと考えられる。としております。
  すなわち、国際環境の変化、日本に対する期待の高まりに触れまして、この中で、「我が国が主体的な役割を積極的に果たしていくためには、肥大化し硬直化した国の組織を改革し、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしい簡素・効率的・透明な政府を実現することが必要である。」という指摘をしております。
  「しかしながら、現状をみれば、国は、広範な分野において依然として濃密な関与を続けている。その反映として、地方公共団体が自らの判断と責任において地域における課題に対応するという分権型社会は、未だ実現しているとはいい難い。
  こうした問題認識に立つならば、国の役割は、国際杜会における国家の存立や特に重要な制度に係る企画立案などに重点化し、内政に関しては、現在国が担っているものも含め、広く地方が担うことを基本として、新しい国と地方を通じた政府像を構築することが求められる。このことは、国の役割を弱めようとするものではない。むしろ、国の機能を本来果たすべき役割に集中させ、国家として必要な問題解決能力を高めることを企図するものである。
  このような新しい政府像への転換は、ひとり中央政府の改革のみにより実現されるものではない。地方公共団体、とりわけ国と基礎自治体との中間に位置する広域自治体のあり方について、新しい時代に即したものとなるよう見直しを行い、そのような営みとあいまって実現できるものである」としております。
  第1の部分の2番目後半は、「広域自治体としての都道府県」のことを書いております。
  最初の「○」で、府県の、戦前の性格に触れ、そしてその性格は戦後抜本的に改められることになったが、第2段落ですけれども、都道府県にも機関委任事務制度が導入されたということを書いております。
  3つ目の「○」で、この歴史を振り返れば、地方分権一括法による改革では、機関委任事務制度の廃止に加え、国と地方の役割分担の明文化、国の関与等のレール化などが一括して実現されたことにより、都道府県の法的地位に変容があったものとみるべきである。都道府県は、この改革によって、名実ともに広域の地方公共団体となったと考えられるという経緯を書いております。
  すなわち「都道府県の性格は、このような経過をたどり変化を遂げてきた。一方、明治期から今日に至るまでの間、市町村数は合併によって大幅に減少し、経済圏や生活圏は、交通基盤の整備に伴って都道府県の区域を越えて拡大してきている。また、個別の都道府県をみれば、人口や経済規模といった基礎条件に関する格差の拡大もみられる。このような変化にもかかわらず、都道府県の構成やその区域については、明治21年(1888年) に香川県が愛媛県から分離して以来、特段の見直しはなく、基本的に現在に至るまで維持されている。
  地方分権改革によって新たな法的地位を得た都道府県は、この改革の成果や市町村合併による基礎自治体の規模・能力の拡充を踏まえ、広域自治体として地域における行政をどのように担っていくかが、改めて問われることとなる。このような時期にこそ、明治以来一世紀以上にわたって続いてきた都道府県制度を見直し、改革によって期待される役割を十全に果たすにふさわしい広域自治体を構築することが必要と考えられる」としております。
  2番目の部分は、「道州制が求められる要因」であります。3つの要因を掲げておりますが、これらは基本的には、10月1日の小委員会で提出させていただきました資料をもとに、各委員からご指摘をいただきました点を踏まえて書き下ろしをいたしました。
  第1の観点が「地方分権の一層の推進−役割と権限の観点から−」ということであります。
  近代的な地方自治制度が確立した明治期以来、市町村は合併や権限移譲により規模・能力を拡充させてきた。その結果、市町村数は、制度草創期の約7万から約3千へと20分の1 以下に減少している。現在、全国で合併が積極的に推進されているが、今後、規模・能力の拡充された基礎自治体が増加することを前提として、「現在、都道府県が担っている事務は、「補完性の原理」や「近接性の原理」に基づいて積極的に基礎自治体に移譲し、基礎自治体が一層総合的に地域の行政を担うことができるようにすることが求められる。このことを通じて、都道府県の重要な役割であった基礎自治体の補完機能や連絡調整機能に対するニ一ズは減少し、今後の広域自治体には、圏域の自立的な発展のための戦路的な行政の展開など、新たな広域的な役割への期待が高まるものと考えられる。
  現在、地域における広域的な事務については、企画立案の多くを国が担う一方で、実施に関しては、規模や性格に応じて、都道府県と国の地方支分部局が分担している。このことが、実態として、事務の分断や煩雑化、二重行政といった弊害をもたらしているとの指摘は多い。国の役割の重点化が求められる一方で、広域自治体には新たな広域的な役割が期待されることを踏まえれば、地域における広域的な事務については、現在国(とりわけ国の地方支分部局) が処理しているブロック単位の事務も含め、広域自治体が企画立案から管理執行までをできる限り一貫して実施できるようにすべきである。
  こうした事務を担うにふさわしい規模・能力を有する広域自治体を構築するという観点から、国と基礎自治体の中間に位置する政治行政主体のあり方を検討することが求められる。このため、道州制の導入を視野に入れて検討することが必要ではないか。」としております。
  2番目の観点は、「ブロック単位での地域戦略−圏域に関する現状と課題の観点から−」であります。
  経済のグローバル化、東アジアの成長といったことに触れながら、「地域がその特性に即した経済戦略に基づく産業政策を推進することによって、東京圏を介することなく、国際的な地域間競争・連携・交流を進めることが現実のものとなりつつある。
  我が国の地域をブロック単位でみれば、その規模や経済力、財政力等は、ヨーロッパやアジアの諸国にも比肩する圏域として把握できる。また、現行の都道府県単位では存する諸条件に関する大きな格差も、ブロック単位でみれば一定程度緩和される。これらを踏まえれば、今後期待される地域間競争・連携・交流は、こうしたブロックを単位として実現されるものと考えられる。
  また、産業振興のみならず、広域的観点からの国土管理や、地域間の機能分担に基づく効率的な社会基盤整備、さらには人口減少社会において行政に期待される生活機能の補完・総合調整といった政策課題にも、都道府県より広域のブロックを単位として取り組むことがより実効的であると考えられる。
  こうした広域の地域戦略を担う主体を構築するという観点から、道州制の導入について検討することが必要ではないか。」としております。
  3番目に「『選択と集中』−組織運営の観点から−」であります。
  「人口減少社会への移行や財政制約の増大などの前提の下では、例えば、フルセット型の行政投資からの脱却や、地域特性に即した産業政策の重点化、持続可能な地域構造への転換といった、広域の圏域における「選択と集中」が不可避である。こうした圏域における政策判断は、国の画一的な基準に沿って行うのではなく、住民の参画と監視の下で、そのニ一ズを的確に把握しながら、圏域単位で総合的かつ機動的に行うべきである。
  しかしながら、現在の広域連携方式には、このような役割を担っていくには不十分な面があり、新たな広域の政治行政主体について検討することが必要と考えられる。広域自治体の体制や業務運営のあり方を抜本的に見直すとともに、広域における「選択と集中」に適した新たな政治行政主体を構築するという観点から、道州制の導入について検討することが必要ではないか。」としております。
  このように、3つの観点から道州制が求められる要因を説明しているわけであります。
  3番目が「道州制の制度設計に関する主要な論点」であります。
  今後の調査審議では、これまで述べてきた道州制の意義や導入の必要性等と併せて、制度設計に関しても議論することを予定されています。その際に検討すべきものと考えられる主要な論点として、10の項目を掲げております。
  その上で「なお」といたしまして、第27次の答申の連邦制に関する部分、これをほぼそのまま引用をし、「○」の最後に書いておりますように、「連邦制を制度改革の選択肢とすることは適当ではない」としております。その前提のもとで、「主要な論点」を掲げているということであります。
  なお、「道州制における自主性・自立性の高い税財政制度のあり方については、制度設計に関する議論の進捗に即して検討していくことが必要である」としております。
  8ページ以降に10の論点を書いておりますが、これも10月1日の資料2をベースにご指摘を踏まえながらつくらせていただきました。
  最初に、「憲法における道州の位置づけについて」という部分でありますけれども、ご指摘を踏まえまして、「道州は、憲法(特に地方公共団体の長の公選を定める第93条)にいう「地方公共団体」として位置づけられるものか。」という表現とさせていただきました。
  2番目が「道州制の法的性格について」ということで、「道州の法的性格は「地方公共団体」とし、「国の総合的な地方支分部局」や「国と地方公共団体の性格を併有する中間的団体」とすべきではないと考えられるが、どうか」としております。
  3番目が「国と地方の役割分担について」。次のページをおめくりいただきますと、4番目が「道州と基礎自治体の事務配分について」。5番目が「道州の区域について」ということですが、その2つ目の「・」のところに、「首都又は三大都市圏等については、区域の広狭にこだわらず、都市の区域をもって道州の区域とすることが考えられる」ということから、10番目の論点と関連することに触れております。6番目が「道州の設置方法について」、7番目が「議決機関と執行機関のあり方について」、8番目が「長の補助機関・内部組織について」、9番目が「道州に対する国の関与及び道州の国への参画について」、10番目が「大都市等に関する制度について」であります。首都又は大都市圏においては、「現在の指定都市と同様に、道州に包括される基礎自治体に係る特例として大都市制度を設けることとするか。あるいは、道州としての性格も有する広域的な都市(都市州) を設けることとするか。)このような論点を掲げさせていただきました。
  私からの説明は以上でございます。
○松本小委員長 ありがとうございました。それでは、ただいま説明を踏まえまして、ご意見等がございましたら、ご自由にご発言をお願いします。
○西尾委員 先ほどの三位一体改革も分権改革の大きな曲がり角になっているように思うのですけれども、この道州制論議というのも地方分権改革の大きな分岐点になるのではないか。間違えば、これは集権型へ戻るという危険性を極めて強く持っている構想だと考えております。したがって、分権改革を一層進めるという観点から道州制というもののあり方を考える、そういう観点をこの地方制度調査会としては一貫して守っていただきたいというのが私の意見であります。
  ただいまの論点メモに触れられていることに即して申し上げれば、私自身は基本的にそういう立場なので、まだ道州制に切り替えることが、あるいは道州制に移行することが最善の道だというところまで踏み切っているわけではありません。差し当たり近い将来に必要になることは、現在の都道府県制の再編成ではないかというふうに考えているわけでありまして、このことは不可避なのではないか。市町村合併がこういうふうに進捗してまいりますと、やがて今の47都道府県制というものが、このままでいいのかという論議は当然に起こるというふうに考えていまして、それに対して何らかの対処方法が必要なのではないかと考えております。その際、基本的には、都道府県の合併ないしは統合という形で現在の都道府県を広域化していくという選択肢と、その都道府県の広域化、現在以上の広域化のみならず、その権能を拡大していくという、これが道州制だと私は考えるわけですけれども、それを一気に目指すべきかどうかという、これが2つの選択肢になるのではないかと思っているのであります。
  したがって、選択肢としては、都道府県合併という再編成のあり方ももう一つの選択肢としてあると、常にそのように考えておいた方がいいのじゃないかと思っているのです。
  仮に、そこで道州制というものを考えてみるということになった場合、最も重要な論点は、主要な論点として8ページ以下に並んでおります10項目の中の、「(2) 道州の法的性格について」というところだと私は考えています。ここで道州の法的性格は、地方公共して団体とし、国の総合的な地方支分部局や国と地方公共団体の性格を併有する中間的団体とすべきではないと考えられるがどうかということであります。私はこの道州の法的性格は地方公共団体とはっきりと決めるべきだという立場であります。それ以外のものを道州制と呼ぶようになると、これは集権化への逆コースであるというふうに考えているからであります。
  過去いろいろ道州制を唱えられてこられた方たちがありまして、その構想は一様でないものですから、何が道州制なのか、共通了解は全く成り立っていないわけですけれども、かなり多くの方々が都道府県を広域化して合併するというもの、それだけで道州制というふうには満足しておられない。そこに何かプラスしなければ、道州制ではないだろうと考えていらっしゃる。そのプラスするということは、これまで国の機関が担当してきた事務権限の少なくとも一部がその広域自治体に移譲されまして、広域自治体の事務権限の範囲がこの機会に拡大する、それが道州制として描いておられた事柄なのではないかと思われるのですけれども、この国の諸機関が担当してきた事務権限のどこまでの移譲を求めるのかというのが最も決定的な問題なのですね。ここで余りにも欲張りすぎまして、あれもください、これもくださいというふうに欲張って、国の機関を全部引き受けようというふうにしますと、どう考えても国の事務だというものを担うことになります。どう考えても国の事務だ、地方公共団体の事務と理屈づけしかねるというようなものまで引き取ってしまいますと、それはもはや純粋な地方公共団体ではあり得ない。純粋な自治体ではない。広域的な自治体であると同時に、国の第一級地方総合出先機関であるというものをつくるのだというふうに考えなければ、明らかに国の事務だというまで引き取ってはいけないのだと思うのです。そこまで引き取ってしまいますと、戦前の府県みたいな形になっていく。戦前の府県は、国の地方行政区画でありますし、県知事という機関は、国の地方行政総合行政機関であったわけであります。それにプラスして広域自治体としての機能を若干持っていた。不完全自治体という性格を若干持っていたというのが戦前の府県でありますが、それと同じことを再現することになるのではないかというふうに思われるのです。
  したがって、道州制論を唱えられた方々は、この機会に国の地方支分部局のほとんどを道州の方へ移すべきとか、あるいは中央省庁で抱えていた仕事の一部でさえ下ろしてもいいのではないかというふうに、非常に大胆なことをお考えになる方々がいらっしゃるのですけれども、そうすると、国というものを縮小することになるかもしれません、国の行政機構を縮小し、国家公務員として働く人たちの範囲をどんどん縮減するということになり、表面上、行政改革をやったような感じになりますけれども、そのようなものを引き取った道州という団体は自治体ではなくなるというふうに私には思えます。
  自治体ではないものをつくるというのは分権改革の理念からいって全く逆行です。第一次分権改革でやってきたことは、機関委任事務制度を全面廃止し、そして地方事務官制度も全面廃止するということをやってきたわけですが、国の事務と地方公共団体の事務は、きちんと分けようという理念に基づいてやってきたわけですね。国の事務を地方公共団体の執行機関が代わって執行するという機関委任事務制度というのは、もうこの機会にやめましょうと。すべてそれは地方公共団体の事務と割り切りましょうということで機関委任事務制度を全面廃止してきたわけです。
  その路線から行けば、今回の場合にも、今は国の省庁なり、地方出先機関でやっている仕事の中で広域的自治体に移譲しても差し支えないもの、支障がない、もの、あるいはその方がいい結果を生むという、そういう事務をこの機会に地方公共団体の事務と区分し直して下ろしましょうというのが基本なのであって、どう区分し直してみても、国の事務だというところまで手を広げてはいけないのだと思います。ですから、そこの論点が一番重要な論点でありまして、現在地方支分部局が担当しているような仕事のうちで、どこまでが自治体が担うにふさわしい仕事なのかという区分けをすること。これが一番混乱しているところでありまして、そこを明確にしないと、地方公共団体ではなくなってしまうと恐れておりますので、強調しておきたいと思います。
  それから、数々の論点が出ていまして、冒頭には、憲法にいう地方公共団体と考えるべきか、首長は直接公選でなければならないかという論点から始まりまして、7番目には、議決機関と執行機関のあり方というところにまたその問題が出てくる。そしてまた8番目に長の補助機関・内部組織について、今までの都道府県の制度そのままでいいかというような論点が出てくる。そして最後の10番目に「大都市等に関する制度について特例的なことが考えられるか」。これらは全部関連していると思うのです。ここをどういうふうに踏みきれるかという問題は、端的に言って、東京圏という区域を道州制という新しい制度の下でどう考えるのかという一点に関連しているのだと思うのです。ここで1都3県を一つの地域に考えるとか、あるいは関東地方というブロックを一つで考えるなどと言った途端に、極めて突出して巨大な道州があらわれてしまうわけですね。そういう巨大な道州が出てきたときに、果たして今の長と議会という仕組みでいいのか。単独の公選知事である関東知事などというものが生まれて、それで支障がないのかという問題から始まりまして、本当にこれだけ規模の大きな自治体を長一人で統治能力があるのかという観点から補助機関問題が出てくる。あるいはそういうことをとらないのだとすると、東京というところに特別な制度を何か考えなきゃいけないのではないかという逆の発想から言うと(10)が出てくる。こういう関連になっていると私は思うのです。もしそこに特殊な制度をつくるとすると、それは憲法という地方公共団体にできますかねという第1番目の問題にはね返ってくると、こういう構造になっているのではないかと思うのです。
  ですから、これはかなり特殊な問題でありまして、道州制という制度設計をしていくときに、東京圏をどうするか。もっと広げたとしても、ここに書いてあるとおり、三大都市圏をどうするかという問題なのでしょうが、言い換えれば、大都市問題です。大都市問題をどうするのかということをもっと詰めていかないと決まらないという問題なのだと思うのです。でも、これはかなり議論を詰めた段階になって考えたらよい問題でありまして、基本の問題はそれ以外のところにあるのじゃないかというのが私の意見であります。
○松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方。
○貝原委員 私はこのペーパーを見ておりまして、「道州制が求められる要因」という記述がありますけれども、ここの中で、突然「ブロック」とか、「圏域」というのが出てくるのですね。ブロックとは何であるかということがはっきりしない。何回目だったですか、圏域というもの、ブロックというものが我が国の中で実態的に形成されているのではないか。例えばロジスティクスですとか、経済ですとか、現実にそういうものがどういう形でできているのかということをきちんと認識した上で、それを管轄する行政というものがあるべきだということを明確にしていかないといけないのではないか。都道府県が市町村合併によって空洞化した。そして何となくより広域的なことをやれば、都道府県というのが意味があるのじゃないかというぐらいの非常に受け身の道州制論になっているような感じがするのですね。私としては、今の西尾先生の意見とちょっと違うのかもしれませんけれども、国か担当している部分を分権化すべきだと、そのためには、堅実にブロックの行政需要がたくさんある。それを担うような地方自治体をつくるべきだと。そうしたら、結果的に都道府県の事務の中の広域的なものは道州にいくし、基礎自治体は充実していくから、住民に身近な行政は基礎自治体の方へ行く。だから、都道府県は改革が必要なのだと。都道府県改革というのは、あくまでも付随的に出てくる話であって、より基本的には道州制の本論というのは、今求められている圏域行政というのがどういう実態に基づいて、どういう行政が必要であり、それを国でやるのか、地方でやるのかという議論をきちんとしていかないと、国民から見るとわかりにくいのではないかなという感じがいたしております。
  私は前から言っていますけれども、分権というのは、大きなものを小さくするということが分権のはずでありまして、今の都道府県行政、都道府県がやっているものを大きくして、これは分権だということには恐らくならないのであろう。現実に私ども関西圏域に住んでいまして、府県を合併して関西州をつくるというような議論をしてみましても、恐らく大阪圏以外の人はあんまり関心を示さないし、なぜそんなことをするのだということになってしまうのではないかと、このように思います。
  ごぢゃごぢゃ申し上げましたけれども、そういった意味では、この論点の今の西尾先生のご意見とも関連することですが、8ページの(3) のところで、国と地方の役割分担について、国の地方支分部局において処理している事務を中心に道州をつくるんだという考え方にするのか、それ以外の国の役割を重点化する観点から、それだけにとどまらずに国の企画立案にかかる事務の一部を移譲するというような考え方で道州をつくるのかという声がありますけれども、私は後段をすべきだと思います。後段のような制度をとるべき理由というのを、なぜそういうことをしなければいけないのかということについて、わが国の東京圏、あるいは関西圏、中部圏、それぞれのブロックごとにどういう実態にあるのかということをしっかり分析した上で制度設計をしていかないといけないのではないか、このように思います。ちょっとそこら辺の記述が、これのペーパーでは十分見えていないという感じがするのが1点であります。
  第2点は、今のこととも関連するのですが、全体として都道府県が今のままでは役割がなくなるから道州制をつくったらいいのじゃないかというような受け取り方をする部分というのは、どうもマイナスになるのじゃないかと。国民の目から見ると、マイナスに道州制論を受け取られる可能性があるのじゃないかということを危惧いたします。
  以上です。
○松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方。
○小早川副会長 今の西尾委員と貝原委員のご発言、対立しているのかどうかよくわかりません。いずれにせよ、道州が何をやるのか、何をやるための道州かということをはっきりさせる、その議論がこれから必要だろうと思っていまして、そういう議論をしていくうちに、そんなには対立していないのかなということになるのかとも思います。
  私は西尾委員がこれでいくと8ページの(2) 、これが基本であるとご意見を述べられましたが、そこで言われたことに私もほぼ賛成という感じを持っております。道州は地方団体とすると。逆に言えば、国の組織、国の機関でないというふうなおっしゃり方をされましたけれども、とりわけ、国の行政組織、国の行政の出先機関であるべきでないということは堅持すべきであろうと思います。
  その上でなんですけれども、今日は憲法学者は、プロパーの方はおられませんが、私も法律屋ですので、(1) の憲法との関係に戻ってみると、さてどうなのかなという、正直なところ、私自身よく姿勢が定まらないで今悩んでいるところであります。従来から二層制が憲法の要求かどうかという議論がありますが、その際に、出発点はとにかく市町村、基礎自治体、これは憲法上大事にされているんだということが出発点であって、それに都道府県も一緒につき合わさせてもらえるかどうかということだったと思うんですが、この道州というものを考える場合に、やはり都道府県との何らかの連続性というのは確かにあるのでしょうが、一方で基礎自治体が全国平均的には規模が拡大し、力をつけていくということが一方であり、他方、来るべき道州というのは、都道府県と比べれば、地域的に大きいし、それだけ住人からの距離は離れるということもあります。
  従来ですと、都道府県が力が十分でない市町村を補完する補完機能というのかなり大きかったわけで、補完するのその資格において、都道府県も地方公共団体としてきっちりと自治を担わなければいけないということがあったと思うのですが、そこは基礎自治体が強くなっていきますと、やや乱暴に言いますと、憲法上は基礎自治体さえしっかりしていればいいという時代がやがてくるのかもしれないなという気がします。
  道州制が基礎自治体と同じ資格で憲法上の地方公共団体でございますと言っていられるのかどうかということが、これは私、このところでちょっと悩んでいるところなのですね。
  最初に申しましたように、国の行政組織の一端であってはならないと思います。ですから、そのようなことで「地方公共団体」という言葉の使い方、定義の問題ではあるのですが、憲法上の地方公共団体と違う地方公共団体としてしっかりと制度設計をしていくということも可能性としてはある。ですから、地域的、民主的な組織であるということは、これは基本だと思いますが、というようなことをちょっと考えていまして、もちろん、この段階でこのペーパーのような書き方で、概ねこんな感じで現段階の議論をまとめるということはよろしいかと思うのですけれども、どうも地方公共団体とは何だという、そのイメージ自体がぐらぐらとしている感じがございまして、その辺をこれからまたじっくり議論していかなければならないかなとは思います。
○松本小委員長 ありがとうございました。
○浜田委員 何かいつも前向きの発言ならなくてじくじたる思いもするのですけれども、このパーパーをずっと読んでいて、やっぱりそうなのだ、都道府県制じゃだめなのだ、道州制にしなきゃいけないのだ、あるいは都道府県もいいかもしらないけど、道州制の方がやっぱりいいのだなという気持ちにならないのですね。説得力、それはやっぱり初めに道州制の方向ありきという気持ちで書いてはおられるけれども、ほんとに道州制でなきゃだめだというのがまだわからない方が書かれたのじゃないかという感じ、我々自身、その段階なのだけれども、それが1つです。
  もう時間もありませんので、もう一つだけ。途中で後半に「えっ」という言葉出てくる、また言葉の問題で恐縮ですけど、「選択と集中」という言葉が出てくるのですね。これは行政単位を議論するときに、この言葉はちょっと危険じゃないかという感じがしなくもない。選択と集中というのは、弱者とたたき、強者を伸ばすというあれがはっきりしていまして、行政もそれでいいのかなという感じが、やっぱり行政といのはきめ細かく公平・公正、弱者救済という精神を失ったら、行政じゃなくなっちゃうのじゃないか。これは最近アメリカナイズされてきて、会社をリストラして生き延びさせるのに使われている言葉を、ここではちょっと使わない方がいいのじゃないかなと思います。
  大分県の一村一品というのは、あれは選択と集中なのかな、何なのかな、逆なのかなと思いながらずっと思い出したりしていたのですけれども、あれはやっぱり個性伸長で選択と集中ではなんではないかなというふうな感じがするものですから、1つの村でどこにも負けない何かを育てなさいと、そのほかのものは、米とかミカンとかなんとかはやめなさい、シイタケ1本にしなさいということではないのじゃないかと思うのですよね。米とかリンゴ−−リンゴは大分はあんまりないのか、ミカンとかはしっかりやりながら、さらにほかに負けない強いものを1つ加えなさいという意味だろうと思うのですね。そういう意味で、選択と集中というと、一村一品でほかはやめろという極論をしますと、そういうことになりかねないので。
  以上です。
○松本小委員長 ありがとうございました。まことに申し訳ございませんが、そのほかにもご意見あろうかと思いますが、時間がまいりましたので、今日のところはこの辺で終わらせていただきたいと思います。
  先ほど今後の予定につきまして、11月2日と11月8日につきましては、会長、副会長とご相談の上で申し上げたところでございますが、なお、もう一度事務局から改めてご説明をしていただきたいと思います。
○石川自治政策課長 今後の予定でございますが、第11回の専門小委員会を11月2日火曜日午前10時30分から全国都市会館第一会議室でお願いいたしたいと思います。第3回総会は、11月8日月曜日午前10時からお願いいたします。総会の会場につきましては、後日改めて事務局から連絡させていただきたいと存じます。
  なお、地方における意見交換会でございますが、11月5日金曜日に岩手県盛岡市において開催いたします。参考人として参加いただける方々から内諾をいただいておりますので、お手元に参考人一覧予定ということで配付させていただきます。
(資料配付)
○松本小委員長 会長から。
○諸井会長 実は私は今日のような議論をもっと早い段階からどんどん展開をしていっていただけるとよかったなと前から思っていたのですけれども、さっき浜田さんがよくわかっていない人が書いたのじゃないかと言われたのですが、あれはそうじゃなくて、これからこの委員会の議論がどういう方向へ向いていくのか、そのことがまだよくわかっていないのですね、担当者の方も。その議論が必ずしも十分に行われていない。そういう段階で総会を開いて総理に報告を出すのは、ほんとはちょっと早いのかもしれないけれども、これはある種、中間報告のようなものですね。整理したものを一応、こんな議論をしてきましたということを総理のところへ持っていくのですから、我々の結論を、最終的な結論を出すという意味ではありません。そこで次回ひとつぜひ、お一人お一人から今日出たような問題についてのお考えをはっきりと述べていただければ大変ありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○松本小委員長 それでは、ただいま会長からもお話しいただきましたか、ひとつ次回はよろしくお願いいたしたいと思います。次回は11月2日火曜日午前10時半から全国都市会館第一会議室で開催することといたします。
  以上をもちまして、本日の専門小委員会を終わらせていただきます。ありがとうございました。

もどる

ページトップへ戻る