第28次地方制度調査会第7回専門小委員会 次第平成16年9月9日(木)
10時00分〜12時00分 全国都市会館「第一会議室」
○松本小委員長 それでは、まだお見えになっていない委員の方もいらっしゃいますけれども、時間がまいりましたので、第7回の専門小委員会を開会いたします。 本日は、「道州制のあり方」についてを議題とし、都道府県の現状と課題という観点から意見交換を行います。 最初に、事務局において関係資料を取りまとめておりますので、事務局から説明させます。 ○久元行政課長 それでは、「都道府県の現状と課題」という資料を用意させていただきましたのでご説明を申し上げます。 目次をご覧いただきますと、3つの視点で整理をさせていただきました。1つは圏域という視点、2番目が役割と権限という視点、3番目が組織管理という視点であります。 この資料をつくりました基本的な視点、1ページをご覧いただきますと、道州制のあり方を議論するに当たって、これは審議項目を設定する際の議論だったと記憶しておりますが、まず都道府県の現状、そしてこれまで果たしてきた役割を把握するとともに、都道府県を取り巻く社会環境の変化についても幅広く分析をする。そして、広域自治体である都道府県のあり方の見直しが求められている要因について検討する必要がある。こういうご指示であったと考えておりますので、そういう観点からの資料を3つの視点から整理をさせていただきました。 2ページをご覧いただきますと、圏域としての都道府県の現状と課題であります。1つは人口とか、経済規模とかといったような都道府県の基礎的条件の現状がどうなっているのか。また、圏域内そして圏域相互の間における人やモノの移動といった観点からはどういうような傾向が見られるのか。また、国民生活や経済産業活動ではどういう地域単位で「まとまり」が認められるのか。また都道府県を越えた広域的な取組みには、どのような動きがあるのかといったようなものであります。 3ページですけれども、これは鳥瞰図的なイメージで図示をさせていただきました。同じ縮尺で絵に落としておりますけれども、北海道とオーストリア、これはほぼ同じくらいの面積を持っております。また、九州、オランダ、中国地方、ベルギーも似たような面積を持っております。数字でご覧いただきますと、北海道とオーストリア、これは面積はほぼ同じでありまして、 中国地方とベルギーもほぼ面積的には同じでありまして、この 九州とオランダにつきましては、九州の方が面積はやや大きいわけですが、 「都道府県の基礎的な条件の推移と格差」、ごくごく主要な指標でご覧いただきたいと思います。人口を見ますと、昭和30年と平成12年、1955年と2000年の45年間の推移ですけれども、昭和30年は、最小の鳥取県と、最大の東京都の間の格差は13.2倍でありましたが、これは平成12年には20倍弱ということで、人口について見ますと、拡大しております。 高齢化の状況ですけれども、昭和30年、最小の東京都が3.5 %、最大の島根県が7.6 %でありましたが、これが平成12年には最小が埼玉県に入れ替わっておりまして12.8%、最大が同じく島根県で24.8%ということで、格差は12ポイントということで開いているという状況にあります。 人口一人当たりの県民所得で見ますと、昭和30年、最小の鹿児島県と最大の東京都、格差は3.3 倍でありましたが、平成12年には、これが2.1 倍に縮小している。 また、次の製造品出荷額で見ますと、これは「工業統計表」に基づく指標でありますが、昭和30年には最小の鳥取県と最大の東京都との間の格差は69.3倍でありましたが、これが平成14年には最大が愛知県に入れ替わっておりまして、格差は63.5倍に縮小しているということであります。 都道府県税額の資料を簡単にご覧いただきますと、一人当たりの都道府県税額、東京が19万4,000 円ということになっておりまして、沖縄が6万8,000 円ということで大きな格差がある。これを9ページでご覧いただきますと、地方交付税等によりまして平準化をしているという状況であります。 次に10ページをご覧いただきたいと思いますが、以下の資料は、幾つかの切り口で都道府県の区域を越える圏域としては、どういうようなまとまりが見られるのかということであります。この資料は国の地方支分部局、そして大手の民間企業の支店、支社がどういうブロックをつくっているのかを見ております。やや特殊な要因があります税関を除き、大ざっぱに言いますと、北海道については、ほぼ北海道を単位としている。東北につきましても、青森など東北の6県で同じブロックを形成している。森林管理局が福島を関東の方に入れておりますが、それを除きますと、ほぼ東北6県が一つのまとまりになっております。 関東もほぼ同じようなまとまりになっておりますが、かなり、分け区々になっておりますのが、新潟、長野、富山、石川、福井であります。まず新潟、長野につきましては、関東のブロックに入れているケースが多いわけですけれども、例えば地方農政局などは、新潟を北陸と一緒にしておりますし、また、国土交通省関係の地方運輸局、これは北陸・信越というまとまりをつくっております。 北陸三県について見ますと、この三県で北陸というカテゴリーをつくっているケースが幾つか、例えば総合通信局とか、財務局とか、国税局とか、民間企業で言いますと、電力会社や郵政公社、大手建設会社などの例が見られますが、この北陸三県と静岡、愛知などの中部と一緒にしている例も幾つか見られるということで、これらの県の取り扱いについては、ややばらつきが見られるということであります。 近畿圏につきましては、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の各府県が一つのブロックの単位とされているケースが大部分になっております。 中国と四国につきましても、ほぼ同じような傾向が見られますが、管区行政評価局、あるいは地方厚生局などが中国と四国を同じブロックとしております。 九州7県もほぼ同じ九州というブロックを単位にしておりますが、国税局につきましては、北の福岡、南の熊本というふうに分けております。また、沖縄につきましては、独立して組織を置いておるケースもかなりの数に上っておりますが、それ以外のところは九州のブロックの中に入れているということであります。 以下の資料は人やモノの移動が都道府県の圏域を越えてどういうふうになっているかということであります。これは5年前の数字になりますけれども、高速道路ネットワークを使って自動車交通がどういうふうに移動しているのかという指標であります。数字が細かくて大変申し訳ございませんが、縦軸は高速道路を使ってほかの圏域に移動した、つまり、インターチェンジを使って出入りをした自動車交通の中から、一つの圏域の中で移動した、いわゆる内々交通量を除いた数であります。つまり、それぞれの圏域を見て、どれだけの自動車交通量が出入りをしているのかというのがこの縦軸の意味であります。一日に何十万台の自動車が出入りをしているかということであります。それぞれの棒グラフの頂点からラインが出ておりますが、これはそれぞれの圏域から出ていく車の量が、つまり向かう地域がどこが一番多かったかということであります。 例えば旭川から札幌圏にラインが出ておりますが、旭川から出た車は札幌に向かった量が一番多かったということであります。したがいまして、それぞれ棒グラフの頂点から幾つのところに何本かラインが出るということになりますが、ここの圏域がほかのブロック、ほかの圏域からたくさんの自動車交通量を集めている、こういうことになります。そういう意味で、そういう吸収力を持っている圏域ということを見ますと、札幌、仙台、それから京浜葉、つまり首都圏、それから中京、京阪神、広島、量はそんなに多くありませんが高松、それから北九州、福岡、こういうところがほかの圏域から自動車交通量をたくさん集めているということがわかるわけであります。 次は人口の移動の状況であります。これは1990年から2000年までの10年間における人口の増加率を見ております。この10年間の都市圏における人口増加率は三大都市圏が4%前後ということになっておりまして、その内訳で見ますと、東京、名古屋、関西という順番になっております。 一方、三大都市圏を除く地方圏、三大都市圏よりもかなり低い水準に留まっておりますが、このうち、中枢・中核都市圏が三大都市圏よりもかなり高い水準を示しており、中枢都市圏は最も高い伸び率を示しているということであります。ちなみに、この中枢・中核都市圏は、都道府県庁所在都市または人口30万以上の都市で昼夜間人口比率が1以上の都市を指しております。この中枢・中核都市圏からは、三大都市圏の内の都市は除いております。 もう少し細かく全国の主要な地方中枢・中核都市圏を設定いたしまして、その人口の純移動率を見たものが図2であります。これは1995年から2000年の5年間のデータでありますので、ここから余りにも大きなメッセージを読み込むことには注意しなければなりませんが、この時期の一定の人口移動の状況が読み込めるかと思います。人口増加率のうち、まず、同一の道府県内から移動してきた人の割合、そして同一のブロック、北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州、こういう9つのブロックを立てて、この同一のブロックから転入してきた人の割合、これを率として換算したものであります。 左の網かけしている部分が同じ道府県内の中から、そして右の白い棒グラフ、これが同じブロックからの転入の状況であります。両方がプラスになっているところ、これは同じ道府県内からも人口を吸収していると同時に、同じブロックのほかの道府県からも人口を吸収している、こういうことになります。札幌の場合には、道と圏域が同じですから同じ数値ということになります。この両方がプラスになっているところ、これを左から順番に見ますと、札幌、盛岡、仙台、新潟、富山、金沢、甲府、松江、岡山、倉敷、広島、山口、高松、福岡、熊本といったような都市がこれに当たります。こういうところは同じ県内、また、同じブロックの中から人口をかなり集めることができている都市ということになろうかと思います。 それから、もう一つの図は地方の中枢・中核都市から1時間で行ける圏域の外にある圏域からの人口移動の状況であります。交通がやや不便な地域の人口減少地帯が広がっており、こういう地域からかなり人口が流出しているわけですけれども、この地方の中枢・中核都市に1時間で行けないようなところから出ていった人口が一体どこに行ったのかということであります。1つの行き先は地方中核都市から1時間で行ける圏内、2番目は中枢・中核都市圏そのもの、3番目は同一のブロック、4番目はほかのブロックということであります。図が細かくて誠に申し訳ございませんが、北海道など地方の道府県ごとに、4本の棒グラフが立っております。 例えば、北海道を見ていただきますと、この交通が余り便利でないところから出ていった人たちは、同じ北海道内に留まっていて、左から2番目の棒が下に出ておりますが、ほぼ札幌に向かっている。そして、ほかのブロックに行った人の割合は、かなり少ない水準に止まっているということがわかるわけであります。 石川県でも、同じような傾向が見られます。かなり県内に移動しておりまして、中心都市金沢に相当向かっているわけですが、ほかのブロック、北陸以外のブロックにも相当出ていっているということがわかります。 鳥取県をご覧いただきますと、県内のほかの地域に移動して行っているわけですが、中心都市である鳥取がこれを吸収する割合はかなり少なくなっております。鳥取市は鳥取県内の人口移動を吸収できていないということがわかります。 香川県をご覧いただきますと、県内にもかなり出ていっておりますし、高松市がかなり吸収しておりますが、四国以外のブロック、この場合には近畿圏が中心になろうかと思いますけれども、かなりほかのところに流出をしていっているということがわかります。 図2と図3というものをあわせて考えますと、特に札幌、仙台、広島、福岡といったような中枢都市が同じ道府県内、また、ほかのブロックからもかなり人口を吸収している。そしてこれに次いで、盛岡あるいは金沢、熊本といったところが、人口を吸収する力が強いというようなことが、限られたデータではありますが、読み取れようかと思います。 次に、また限られた指標ですけれども、ブロック単位でどういうような人やモノの交流が行われているのかということを、ブロック別の空港定期便就航便数、これは対アジアで見たものであります。日本全体の人口が減少に入る中で、中国を中心としたアジアの成長が日本の経済に大きな影響を与えているというふうに考えられており、そのような観点から、アジアとの就航便数はどういうふうになっているかということであります。この数字は空港の能力、大きさ、施設といったようなものに規定される部分が多いわけですけれども、現実の数字で見ますと、関東の場合には、1990年、95年、2000年とほぼ横ばいに留まっておりますが、中部の場合にはこれが少しずつ増えている。近畿は中部圏を上回る勢いで、アジアとの就航便数が増加をしているということがわかります。九州もやや減少傾向にありますけれども、一定の大きさを示しているということであります。また、別の指標として、ブロック別の発着コンテナ貨物量を1993年と98年の比較で見ますと、関東が一番多いわけですけれども、中部、近畿もこれに比べて小さい数字ではありませんで、かなりのコンテナ貨物量を扱っている。また、九州、四国については、これに次ぐという状況であります。 次のグラフは、地域別の国際会議開催件数をブロック別に見たものでありまして、関東、近畿、九州、中部といったような順番で国際会議が開かれている。外国人の参加数はここの折れ線グラフで示したような状況にあるということであります。 時間の関係もありますので、非常に限られた指標でありますけれども、幾つかの例をご紹介申し上げました。人口が都道府県の境界を越えて移動している。そして、ブロックの中枢都市が強い人口吸引力を持ってきているということがここからうかがえようかと思います。また、ブロック単位で見ると、国際的な面を含め、人やモノの動きが活発に行われているということがわかります。 こういうふうに圏域を越える課題が出てきているわけですけれども、行政の方は、これらの課題にどう問題設定をいたしまして、どう対応していくべきなのかというような議論は、実はなかなかこれまで行われてこなかったように思われます。道州制の議論を見ますと、国のかたち、あるいは地方自治制度のあり方としての制度設計といったような提案はあるわけですが、こういう都道府県の圏域を越える行政課題に、だれが、どのように、どういうような政策課題を設定して対応していくべきなのかというような提案は、私どもが調べた限りではなかなか見当たりませんでした。そのような中で、今年の6月に関西経済連合会などが提出をいたしました関西州特区構想には、国の地方支分部局がどういうような対応をしているのかということを紹介しつつ、一定の提案が行われております。 この資料では、国の地方支分部局が本省の指示だけではなくて、独自に様々な企画・立案を行って、いろんな事業を展開しているということが紹介されております。近畿総合通信局では、情報通信ネットワーク基盤整備だとか、情報通信ニュービジネスの支援というようなことをやっておりますし、また、近畿経済産業局では産業クラスター計画の策定・実施、また文部科学省、文化庁では、知的クラスター創生事業といったような事業、構想の推進を行っている。また、地元の地方公共団体も含む様々な組織が設立をされておりまして、いろんな取組みが連携組織を設置して行われているという例も紹介をされております。ただ、この提案の中に書かれておりますように、国の地方支分部局が個別に構想を、それぞれの中央省庁と協議をしながら策定をして実施をしていくというやり方では、やはり縦割りそのものの弊害が出やすいといったような問題点、また、地域住民の意思が反映しにくいといったような問題点、また、これらの施策は独自に行っているわけでありませんで、それぞれのほかの地方支分部局も同様の計画をつくったり、構想を策定しているわけで、画一的な施策になりがちだと、そういうような問題があって、やはり、府県を越える広域自治体を設立して、広域的課題にかかわる政策の総合的な企画・立案を行い、権限と財源を集中して、効果的・効率的に実行していくということが求められているのではないか、こういう提言が行われていることをご紹介申し上げたいと思います。 次に、各都道府県の垣根を越えた広域連携の例を幾つかご紹介を申し上げたいと思います。 1つは8都県市の首脳会議であります。埼玉、千葉、東京、神奈川の各知事、そして横浜、川崎、千葉、さいたま、各市長が一堂に会した首脳会議でありまして、これは54年に発足しておりまして、昨年からは政令指定都市になりましたさいたま市長が加入して現在に至っています。 この圏域は、4のところに書いておりますように、全国人口のおよそ4分の1、約3,300 万人を擁していて、大都市圏としての地域社会を形成しており、首都圏県市が協調した取組みを進めるべきだということで、6のところにありますように、いろいろなアピールを行ったり、また、国の政策に対する意見表明、あるいはディーゼル車排出ガス対策といったような個別の分野に関する宣言・アピールなどが採択をされているという状況にあります。 近畿圏におきましても、17ページにありますように、幾つかの連絡会議などが設置をされておりますが、特に「大阪湾フェニックス計画」は近畿2府4県が参加し、海面の埋め立て、廃棄物の最終処分を行うという個別の事業を、共通のセンターを設立して行っております。昭和57年に始まる大変息の長い取組みが協調して行われているということであります。 18ページは「北海道・北東北知事のサミット」でありますけれども、ここは幾つかの具体的な成果が挙げられております。北東北三県・北海道でソウル事務所を設置している。北東北三県合同で北海道事務所を設置している。そして大阪、名古屋と順次合同事務所の設置を進めておりまして、人事交流の実施拡大といったような取組みも行われております。 2番目の切り口は都道府県の役割と権限であります。主要分野において都道府県がどういう役割を果たしてきたのか。今後における都道府県のあるべき役割や権限移譲についてはどういう議論があるのか。市町村合併に伴う市町村の減少、あるいは指定都市などの増加によって都道府県の役割はどう変容するのかということであります。 20ページは、都道府県の役割がどういう分野に重点を置かれてきたのかというものを四つの時期に分け、私どもなりに整理をさせていただきました。特に、高度成長期などは新産業都市建設促進法をはじめとして、都道府県が自ら実施主体になって様々な基盤整備が行われてまいりましたが、それ以降は生活重視、また、きめの細かい施策の展開といったような要請から、市町村の役割が大きくなってきていると考えられます。平成2年の、いわゆる福祉8法の改正で市町村に福祉関係の権限が大きく移譲されたといったようなことがシンボル的な出来事でありましたけれども、その後も都道府県から市町村へという流れが続いている。そのような考え方は21ページにありますように、分権推進委員会の勧告、あるいは27次の地方制度調査会の答申にも結実されているというふうに申し上げることができようかと思います。 22ページ、23ページは近年における都道府県のあり方に関する議論が非常に盛んになってきているという状況を紹介しております。また、北海道の道州特区に関する動きにつきましては、今年の5月に経済財政諮問会議で北海道知事が提案を提出しておられますし、その後の具体化に向けての提案が先月、提出されたというような状況であります。自由民主党の中では、「道州制を実現する会」が、その後、「道州制議連」になりまして、23ページをご覧いただきますと、道州制導入基本法案を策定するなど活動を続けております。民主党におきましても、いろいろな動きが見られます。 各県でありますけれども、25ページをご覧いただきますと、北海道をはじめ多くの県で、この都道府県のあり方、その中には道州制というふうにはっきりうたっているものもあるわけですけれども、幾つかの研究会がつくられまして、そして既に報告書もかなり出されております。知事会におきましても、道州制についての研究会を先般設置されたというふうに聞いております。 この都道府県の役割に関する議論は、国の権限をどういうふうにして都道府県に移譲していくのか、また、都道府県の権限をどう市町村に移譲していくのかという2つの切り口があろうかと思います。国の地方支分部局につきましては、次回、あるいは次々回に、またご指示に応じまして、より詳細な資料を用意させていただきたいと思っておりますけれども、都道府県の役割との関係という切り口から26ページの資料を用意させていただきました。これは地方厚生局、地方農政局、地方森林管理局、経済産業局、地方整備局、地方運輸局等につきまして、それぞれの所管省庁が、なぜこういう地方支分部局が要るのかということを地方分権改革推進会議に提出した資料であります。 一言で申しますと、複数の都道府県にまたがっている、あるいは全国的な統一性を確保する必要がある。全国的規模、視点で行う必要がある、といった主張が多いわけですが、地方運輸局は輸送の安全確保の適切な遂行のためには、全国一律の基準、一元的な運用が必要だ、こういう主張をしております。 これらの主張に対しましては、全国知事会、また先ほどご紹介いたしました北海道の道州特区提案でも、個々の権限につきまして、都道府県に移譲していただきたい、その方が合理的であるという主張がなされております。 特に、北海道の道州特区の提案に中には、極めて具体的に、27ページ、横長の資料になりまして恐縮ですけれども、個々の権限を道に移譲してもらう。その理由といたしまして、こうだということが具体的に書かれております。例えば、ハサップの製造過程については、申請の受理から承認に至る一連の事務を移譲してほしいと言っておりますが、それは現実に道が申請者の事前相談、あるいは助言指導を行っているわけだから、一緒にやった方が効果的・効率的になる、道民のためにも利便性の面でもいい、こういうような理由を挙げて、13の分野、事項につきまして、地方支分部局の権限を道に移譲すべきだということを道の組織の名前、法律の名前を挙げて提案しているという例が最近では目新しいところであります。 一方、都道府県の側が、自らの役割、あるいは権限について最近の時代の流れの中でどういうふうに認識をしているのかということをまとめた資料がございます。30ページですが平成13年7月にまとめられました「地方分権下の都道府県の役割」という資料であります。このアウトラインにつきましては、前にもご紹介申し上げたことがあると思いますが、やや個別の分野にわたる記述を紹介させていただきたいと思います。 この研究会の報告では、環境、保健・医療・福祉、産業・農業、教育・文化、基盤整備、防災・危機管理、こういった面で都道府県に期待される役割が大きいと言っております。環境の分野では、大気、水、土壌等の環境の要素の状態を把握・測定するために、高度な専門性が要請される。保健・福祉・医療では、市町村が中心だということを認めつつ、広域的・専門的観点から補完するという観点、そして質の維持・向上を図っていくという観点。産業・農業の分野では、製品・サービスの生産・供給は及ぼす影響の範囲が広域的であり、地域経済・地域産業の振興においては、研究開発など相当高度な専門性を要するといったようなことを言っております。 これに対しましては、こういう基本的な考え方について、異論を差しはさんでいるということでは決してないと思われますが、市長会が、個別の権限について、例えば産業の分野では、商店街整備計画の認定を市に移譲してほしい。地域内で完結する医療法人の設立許可などは市に移譲してほしい。といった権限移譲を求める提言を出しているということであります。 次に、市町村合併の進展と都道府県の役割の関係であります。31ページをご覧いただきますと、市町村の数がどういうふうに推移してきているのか、戦後の動向については、27次のときにも詳細な資料を提出させていただきましたが、現在の47都道府県になった明治21年からの推移の状況をまとめました。明治21年、これがいわば47都道府県体制になった年でありますが、市町村の数は71,000 余りでありまして、1道府県当たりの市町村の数は1,517 でありました。最新の数字ですけれども、現在、大臣と協議済みである市町村がすべて合併したときの数字、これは最低こうなるという数でありますが、平成17年5月には、2,735 という数字になります。もちろん、これからさらに大臣協議が進んでまいりますので、この時点の市町村の数は、2,735よりも当然低くなるわけですけれども、現時点では、この数字で確定をしているということであります。1団体当たり58という数でありまして、明治21年に比べますと、1つの都道府県が管轄している市町村の数は数%になっているということがうかがえようかと思います。 指定都市、中核市、特例市が順次増えていきますと、都道府県の仕事は身軽になります。33ページをご覧いただきますと、この指定都市の制度、これは昭和31年からあるわけですが、その後、中核市、特例市の制度ができて、順次指定が行われてまいりました。主要な県で、それらが指定されることによって、人口の面でどれぐらいそれらの市の割合が増えてきているのかということを図示させていただきました。 3番目の切り口は、都道府県の組織管理がどういうふうになっているのか。最近の市町村合併、あるいはほかの様々な社会現象の進展の中でどういうふうに影響を受けているのかということであります。都道府県の組織の基本形は35ページにあるような姿でありまして、知事の下に副知事が1人いて、出納長が1人いる。その下の直近下位の組織は、条例で決められるわけでありますが、大部分の県は幾つかの部を置いております。6から13の部を置いております。そして部の下に課がある。このほか、法律で定められた行政委員会とその下に事務局が連なっている。公安委員会の下には警察本部があるということであります。 幾つかの県の組織図をつけさせていただきました。最初に兵庫県であります。知事の下の副知事、そして防災監、理事という特別の職を置いておりまして、6つの部、そして部には局が設けられ、局の下の課がある、こういう組織になっております。 沖縄県、これは比較的、これはもともと地方自治法が想定されていた古典的な姿に近いわけですけれども、知事、副知事の下に政策調整監、技監という特別な職がいて、総務部など、ここでは7つの部が設けられ、その下に原則として課が置かれているという状況であります。 次に佐賀県でありますが、ここは最近新しい組織のあり方を模索している一つの例であります。もう既に部は設けておりませんで、知事の下に統括本部を筆頭とする幾つかの本部を設けております。従来の組織では、財政とか、人事とか、あるいは市町村関係を扱う課を束ねた総務部が筆頭の部としてあったわけですけれども、新しい組織では経営支援本部として、順番で言いますと、一番後ろの組織となっております。 39ページをご覧いただきますと都道府県の組織、これは戦前は地方官管制等によりまして法定しておりました。その後、地方自治法になりましたが、依然として部や局の名称も決めておりまして、平成3年以降は局や部の数を決めておりました。その後、平成15年に完全に都道府県の組織編成を自由化したわけでありまして、その結果、佐賀県のような組織形態が出てきているということであります。 都道府県の組織運営の実態についての研究は必ずしも十分ではありません。ごく限られた例の一つ申し上げますと、40ページですが、静岡県が部の業務の現状について分析を行っています。これは静岡県は「業務棚卸表」という、かなり全国的にも名の知れた取組みを行っておりますが、その一環として業務の実態を分析したものであります。静岡県の主要な4部が市町村を相手に仕事をしているわけですけれども、この図からはその業務の内容の3割強は指導・支援・調整である。4分の1ぐらいが補助金や要望の受付ややり取りである。12%強が照会・調査であるということがわかります。この3割強の指導・支援・調整というのは、個別の市町村と個別に行っているわけでありますから、市町村合併が進展いたしますと、こういう仕事はかなり減ってくる。また、規模・能力が拡大した市町村は、自らの判断で政策を企画・立案するようになると思われますので、こういう個別の仕事は市町村の数以上に減っていくと予想されると思われます。また、静岡県の4部の業務の具体的な相手方を見ますと、4割弱が内部である。つまり、内部管理、内部調整が相当のウエイトを占めているということが、ここからうかがえようかと思います。 次に 最後にこれまでの資料とはやや連続しない面もあるわけですけれども、広島県が道州制の導入によって、どれぐらい業務が効率化できるかという試算を行っておりますのでご紹介申し上げます。端的に申しますと、中国5県が一緒になれば、ほぼ人口が同じである愛知県ぐらいの職員数にすることが、もしかしたらできるのではないか。相当数の職員削減が可能になるということで一定の試算を出しております。教職員とか警察を相当削減するということについては限界があろうかと思いますが、都道府県の仕事のかなりの部分は内部管理業務が占めているということでもありますので、道州制の導入が、都道府県の組織や職員のスリム化に結びつくということを県自らが研究して、その試算を出しているという一つの例としてご紹介を申し上げました。 私からの説明は以上でございます。 ○松本小委員長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえ、ご意見等がございましたらご自由に発言を願います。 篠崎先生、これは何か追加してご説明するようなことはございますか。 ○篠崎委員 課長さんから適切な説明がありましたので、特にはございません。私がおりますは関西ですので、関西でまとめた資料を参考にしていただこうということで出させていただきました。今回は経済界からの提言ですが、これをとりまとめた研究会には府県の首長さんも入っています。私は関西のことだけをこの場でご説明したいというのではございませんで、ほかの地方でもいろいろ検討なさっているこういった提言を議論の基礎資料として皆さんにお配りいただければという思いで参考までに出させていただきました。 ○松本小委員長 ありがとうございました。この関西州産業再生特区構想、6月に出されましたものを参考資料でお配りしていますが、篠崎先生から各委員の方にはお送りいただいたのですか。 ○石川自治政策課長 先生の方から各委員に送っていただきたいということで、各委員の方には配付しております。今日は、念のために委員の皆様の席に配布しております。 ○松本小委員長 事前に送ってあるわけですね。 ○石川自治政策課長 事前にも送っております。 ○松本小委員長 そういうことでございますので、ご承知おきいただきたいと思います。委員の先生方、何か意見とか、ご質問とかございませんか。貝原委員、何かございませんか。 ○貝原委員 今日ご説明いただきました現状と課題で、私の受け取り方といたしましては、こういった圏域、グループ別の行政機構をつくるということについては、かなり実体的な需要があるのではないかというデータがご説明になったのではないかというように思いました。そして私も関西で実際知事を担当していましたときの実感からいたしましても、同じような感じを持っておりました。この関西特区構想につきましても、いろいろ私もご相談を受けたりはしてきているのですけれども、そこの道州制を議論する場合の最大の課題というのは、住民の意識がどの程度、こういった圏域行政ということについて必要性を感じ、あるいはそのことについて、これをどうするかという議論について理解をしておられるかということが、今後この道州制を進めていく上で非常に大きな要素になっていくのだろうと思います。 ただ、鶏と卵の関係で、道州制と言いましてもいろんな考え方の道州制がありますから、きちんとした制度設計をした上で、こういうことを前提とした道州制で、国民の皆さんがどうご判断になるかということについての意識を調査していく、あるいは、そういうことによって、逆に道州制の国民意識を集約していくというようなことが重要になっていくのかなという感じがいたしまして、関西州の特区構想についても、経済界の一部、あるいは行政の一部だけでこういうことを言っても、実際、関西に住んでいるそれぞれの府県の皆さん方がどの程度理解されるか、そこをどう進めていくのかが最大の課題ではないかということを意見として申し上げているのですが。そんなことを言っておったのではなかなか前へ進みませんので、やはり地方制度調査会としては、それぞれの専門家の先生方がいらっしゃるわけですから、今の日本の実情に合わせた中で、道州制の制度としては、こういう制度であるべきだということを設計していくということが大変大切なことなのではないか。それを国民の方へ投げかけて、国民の皆さん方で議論していただいていくことによって、逆に必要性があるということについての国民の認識が広まり、実現へ一歩踏み出していくということになりはしないかという感じがいたします。 そういうことは、当然、政党がやらなければいけないと思うのですが、自民党にしても、民主党にしてもマニフェストみたいなところにちょこちょこっと書いてありますけれども、国民にそういうことをほんとに問い掛けているのかということになると、私はどうもそういうふうな感じがいたしません。いずれにいたしましても、これをほんとにやるということになると、すごく政治的なエネルギーが要るはずでありますから、やはり、国民の意識を喚起するといいますか、こういった問題点について関心を持ってもらう。そうしてそのためには、くどいようですが、一定の制度、最も適切であると思われる制度を、この地方制度調査会ではつくっていくということにしていくべきではないか、こんな感じがいたしております。 ○松本小委員長 ありがとうございました。それではほかの委員の方ございませんか。 ○小幡委員 今、ご説明いただいた資料の中で、ちょっと趣旨がよく読み取れなかったのが、39ページのところで都道府県組織がどういうふうであったかというところです。いろいろな県の例も挙げられておりますが、39ページの変遷というところで、要するに余り変わっていないといいますか、比較的強い継続性が認められるという資料の提示がありますが、これはつまりはどういう読み方をすればよいのかなという素朴な疑問がございます。 ○松本小委員長 久元課長。 ○久元行政課長 先ほどご説明いたしましたように、去年の自治法の改正によりまして、幾つかの県が大きく組織を変えつつありますから、この継続性が認められるという部分は表現としてはやや書き過ぎだったかもわかりません。ただ、今でも東京都だけが局を置いていて、ほかの大部分の県は部を置いているわけです。制度的制約はなくなったわけですけれども、そうなっているのは歴史的経緯です。自治法の中でもともと東京都しか局を置くことができなかった。道府県は部を置くことができた。そして、その数を制限していた。その前は名称まで制限をしていた。戦前の地方官官制では完全に縛っていた。そういうような歴史的な経緯もあって、弱まりつつありますけれども、戦前の都道府県の組織の編制の名残りが今日までかなり続いてきている、こういうことを申し上げたかったわけでございます。 ○松本小委員長 よろしゅうございますか。 ○小幡委員 読み方とすれば、つまり、組織はほとんど変わっていなくて、かなり継続的なものとして堅固なものとしてあって、今ようやくここで柔軟になりつつあるという状況にあるわけですね。資料というのは中立的だと思うので、どちらでもよろしいのですけれども、都道府県としてはいろいろ頑張ろうとしている時期なのかもしれない、つまり、この時期、今まではほとんど同じだったけれど変わろうという兆しが実は見えているという理解ができますね。 ○松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員方いかがですか。 ○浜田委員 基礎的な資料の説明ありがとうございました。なるほどなるほどというのが結構ありましたけれども、その中の14ページ、ちょっと言葉尻をあれするようで申し訳ないのですけれども、小さな言葉尻ですけれども、大変重要な認識の問題じゃないかと思って、ちょっと発言させていただきます。 14ページの左下、現在の中央省庁の地方支分部局の問題点として、縦割りの弊害が出やすいとか、全国画一的な施策になりがちというのが問題点となっていますけれども、私は地方支分部局というのは、全国画一的な施策をするために布石された役割を持ったところだったのではないかと思うのです。だから、問題点じゃなくて、これは効果ありというふうに私どもの感覚だったら入るんですよ。今、盛んにそれがいけない、いけないというような世論が結構あるものだから、そっちにちょっとすり寄ったような表現になっちゃうので、どうしてかというと、これは大変重要な問題だと思うのは、かつて1億総貧乏だったわけです。それを1億総中流まで、全国、青森県は金持ちになったけれども、鹿児島県は貧乏の極だとならないように、ある県は教育水準が上がったけれども、ほかの県は取り残しちゃったとかということがないように、全国統一平等にレベル、水準を高めようということを、ほんとに全国努力してきて今日に来たわけです。そうしたら大変すばらしい国になっているわけですよ。今までのところは私は褒めていいと思うのです。今までの努力や方向は。だけどというところが今の我々が立ち止まって考え直さなきゃいかぬなというところの一番の問題がお金なのですね。お金以外の方がもっと私は問題として認識しているのはあるのだけれども、教育、治安とか、基礎的なことが相当心配事があるのだけれども、お金で代表される、1億総中流、もっともっととやってきたら、国も県も市町村も財政破綻状態よと。さて、どうするの、これをという問題が出てきたので、何か考え直さなきゃいかぬなと。 その証拠に、どこでしたっけ、最後のところ、道州制を中国5県と愛知県を比較すると、このぐらい効率が高まって経費が削減されますよという、特に効果の代表みたいな表現があるので、やっぱり最後はお金なのか、いや、確かにそうだなと思いながらも、お金だけで効果を図るのじゃ、この議論もちょっと寂しいなと思ったりしております。 感想方々の・・・・・・。 ○松本小委員長 これは久元さん、今の14ページの資料そのものは、この関西州の5ページ、この資料をそのまま写して書いてあるわけですね。5ページのところのこの資料がそのまま載っている。問題点というところがそのまま出ていると、こういうことでしょう? 何か付け加えて言うことがあれば。考え方としては従来はそうであったと、それがまた効果を発揮していたと。しかし今やそういう時代でなくなっているのではないでしょうか、ということが言いたいわけでしょう、ここの資料の問題点としているところは。おそらくそうだと思うのです。 ○浜田委員 国民全国同じように平等にどんどんよくなっていくというのは、理想的にすばらしいことですよ、これからも。それがよくないことと言うのだったら画一的、統一的というのをやめなければいけないでしょうけれども、そんなことを言っていられなくなったよという状況認識というのでしょうか、その辺はある程度合わせておかないと、また議論があっちに行ったりこっちに行ったりしそうな気もするものですから、ここにも書いてありますよね、今の5ページにも。今は、だけど、こう言われているのだけれども、この辺ちょっとね、行政というのは何のために変えようとするか、どういう方向に変えようとするかというときに、大変重要な言葉ではないかなと思うものですから、素人の立場から。 ○松本小委員長 ありがとうございました。篠崎先生、何かありますか。関西州構想に関係されておりますけれども。 ○篠崎委員 これはそれぞれの地方が画一的に発展をしたのだけれども、ここまでの発展の結果、今現在、地方の側から見れば、それぞれの地方の住民がもっと自分たち独自にやっていける、いきたいと考えたときにという視点でございます。関西の立場でこれを検討した立場から申し上げますと、この提言は関西独自にやらせてもらえれば、地方支分部局が指導したり、規制したりしていらっしゃること以上に独自に関西の個性を尊重し、活かした施策ができるのにという視点から書いてあるものでございます。地方がそういう力を持っているものを削いではいけないのではないか。地方からの視点というふうにご理解いただければと思います。 ○松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方御質問なり御意見のある方はいらっしゃいますか。 ○今村委員 質問ではないのですが、先ほどご説明の際に近いうちにということで、今たまたま話題になりましたけれども、支分部局の資料についてはさらに充実したものが提供いただけるようでございますが、道州制の問題を考える際には、やはりこれが焦点であることは間違いないことだと思います。今も浜田委員からもご指摘がありましたけれども、この国の出先機関がやっている仕事を自治体としての広域的な地方公共団体が代わりに担当していく大きな制度設計というのが求められているのだと思うのです。ですから、最後のスリム効果だけではなしに、この地方支分部局、国の出先機関の仕事が、今度は現在の都道府県を越えるブロックでイメージしたらいいのか、人によって違うでしょうけれども、地方公共団体の仕事として増えるわけでありまして、スリム効果だけではないわけでありますね。その場合、お金の問題と並んでぜひともご用意いただきたいのが、この10ページにもありますような主要な支分部局がございますが、人的な人数でございますね、と申しますのも、さきの第一次分権改革でいわゆる地方事務官の整理がやっと実現したばかりなのですけれども、この問題を考えていきますと、要するに、国の国家公務員としてお勤めの方々が、将来の広域的な団体への身分移管の問題も生じてくるわけなのですが、どの程度の人々をここで想定するかということは、どんな仕事がということとも関連してまいりますので、お金の面もさることながら、そういう人的な支分部局のそれぞれの規模、サイズ等について、その際には資料を提供いただきたいというお願いであります。 ○松本小委員長 どうですか、それは事務局出すことができますか。 ○久元行政課長 地方支分部局の資料を提出させていただきましたときに、今村委員からお話がありました組織ごとの人員などにつきまして、できるだけ詳細なものを用意させていただきたいと思います。 ○松本小委員長 よろしいですか。組織ごとじゃなくして、組織もだけれど、仕事が必要になってくるのですよね。こういう仕事で、この出先機関で何人ぐらいやっていますかと。これを移せばこうだと。そうならないといけないから。そこまで出ます? ○久元行政課長 地方支分部局について、それぞれの設置法や組織例で書いてある内容だけですと抽象的でイメージがわかないかと思いますので、できるだけ具体的にブレークダウンした資料、例えば業務の内容、設置目的、それから組織、人員、この辺のものは最低用意させていただきたいと思います。 ○松本小委員長 それでは、そのほかの委員の方いらっしゃいますか。 さっきの43ページの、これは非常に思い切りのいい資料なのですけれども、やっぱり人口だけではだめなのですよね。面積があるから。面積の広さによってかなり人の配置が変わってきますので、そこは注意しておかないと。これがそのまま、このままの生の数字が合理化余地になるということではないでしょうね。面積が大きければ、それだけどうしても人の配置もたくさん要りますから、そのことについてはミスリードしないように気をつけていただきたいと思います。 ○諸井会長 ナショナルミニマムを整備していく段階、これは浜田さんが言われるように、全国がどの地域に行っても同じような行政サービスを受けられるという、それが非常に重要で、それがまた平等な日本の国家をつくるということに寄与してきたと思うのです。その場合に、結局今度は中央省庁の立場からすると、全国を一律に平均的に公平に平等にやっていくのだと、これはまさに中央省庁の仕事じゃないかと。だから、俺たちが全部分野ごとに分担管理してそれを決めていくのだと。これはむしろ中央集権の論理になるのですよね。それに対して事情がどう変わったかというと、やはり、地域によってあらゆる条件が違うわけです。もちろん人口密度なんかも違うわけだし、あるいは高齢化の進展具合も違うわけだし、産業がどれだけ発展しているか、あるいは何の産業が発展しているか、あらゆることが全部違う。気候風土から人情、風俗から生活慣習まで全部違う。それを全部全く同じように一律に平等にやるということは、それは公平という観点からすればいいかもしれないけれども、しかし果たして実情に合っているのだろうか。住民のニーズに一体合っているのだろうかというと、そこは相当疑問があるわけです。むしろ、その地域の住民が一体何を望んでいるのか、何に優先順位を置こうとしているのかというようなことをベースにして、その地域の自治体が中心になって、その地域の行政のやり方を決めていく。それは中央集権の一律主義とはむしろ相反する形になってくるわけです。しかし、中央省庁がすべての末端の細かいことに至るまで企画をし、そして命令を下し、監督をしていくという形よりも、むしろ、その地域の住民を主体にして、住民自身が優先順位を考える、あるいは住民が行政に協力をする、あるいは住民が行政を監視する、そういう形に持っていく方が、結果としては、全体に効率的にはもちろんなるわけだし、ある意味では住民満足度を上げていくという点からすれば、その方が望ましい姿ではないかというのが今まで地方分権を支えてきた原動力なわけですよね。 今度の場合も、道州制というものを基盤にして、それがそういう意味での地方分権の方へつながっていくのか。要するに中央省庁が全部決めていたものが、道州によりさらに市町村に下りて、住民の身近なところで決められるようになってくる。そのことがまた、住民の満足度も上げるし、行政の効率化も進めるのだと、そういう考え方というものを基盤にして持っていきたいという考え方があるわけですね。ですから、浜田さんのおっしゃることも決して間違っているわけじゃないのだけれども、むしろ、それは中央集権の中央省庁の論理なのですね。今まで我々が闘ってきたのはそれで、彼らは必ず我々がやった方が効率的だと、そして広域的にやった方が平等なのだというような言い方をしてきているわけですね。ここが一番重要なポイントだと思います。ありがとうございました。 ○松本小委員長 どうもありがとうございました。 ○浜田委員 会長のご発言内容は私も全く同感で、それを確認するための発言でもあるわけですけれども、今までは、あの時代から今日まではというのはちょっと遅すぎる今日なのですけどね、本当は10年、20年前にもうちょっとこういう議論すべきだったのではないかと思うぐらい遅すぎる喫緊のテーマだと思うのです。それは全く同感なのです。今までは全国一律に統一してやってきてよかった時代、だけども、そのままではいけない時代というのに気づきがちょっと遅かったという、我々国民全員の反省なのですけれども。 そこで、御国のおやりになることに、中央のお金をもらいながら従っていれば、みんな国民が平等になるよ、この図式は一切通用しないのですよと、国民は全員認識しなければならない。国の金は使い得、自分の金はなるべくポケットから出さないという悪口がありますけれども、そういうふうになっちゃった。それをブロック単位で自ら稼いで、そこでやり方もやれてという方に変えなきゃいけない。これは大変なことなのですね、変えるということは。どういうふうに変えればいいか。それが県単位ではちょっと統一的なやり方をやってきた、この何十年の歴史もあり、県単位でそれをやれというのは無理なようだから、ブロック単位でまとめよう。いろんなテーマもブロックでなければ、経済再生にしても、関西の方から提案が出ていますけれども、無理なようだというときに、ちょっと考え込んじゃうのはこの3ページですね。ベルギーと九州がほぼ同じ面積で、同じような人口だ、ほぉーっと思って見ていたのですけどね、これは何を言わないとしているのかな、このページは。ちょっと待てよと、あなた方、簡単に道州制、道州制と言うけれども、九州一つは立派な一つの国の面積であり、人口でありレベルなのよと、 ○諸井会長 おっしゃるとおりな面があって、逆に道州制にしたときに、今度は道州制の中央集権ということが起こらないか。我々は道州制にするのは、最終的には市町村に下ろしていくために道州制にするつもりでいるのだけれども、結果としては、道州制が地方において、中央集権をしてしまうのではないだろうか、そういう心配も実はあるわけです。ただ、今まで我々は県というものと国というものを相対して、まず県へ下ろせと、こういうことにしたのだけれども、国と競合するときに、県というのはいかにも小さいのですね。とても国に対抗ができない。国ということは省庁の側も、そんな小さいところへ権限が下ろせるかと。 例えばバスの認可一つにしても、バスなんてものは幾つかの県をぐるぐる回っているじゃないか。それを一つの県で認可させてしまっていいのかと。だから、これは地方支分部局でやるのだよというようなことを今まで言ってきているわけですね。それを道州制単位ぐらいに持っていくと、実際の行政としても、広域にわたるような問題も処理できるわけだし。そして中央省庁と十分に対抗してやっていける。それで結果は、市町村の方へ下ろしていくという目的だと思うのですけどね。 小早川さんにちょっと、学問的に補足してください。 ○小早川副会長 学問的にということではありませんが、お二方の発言があって、私もかつての諸井委員長の下で一緒に闘わせていただいた家来なのですが、諸井会長よりやや現実的というか、妥協的なことをちょっと申し上げたいと思います。 先ほど浜田委員が最初に言われたように、従来、日本という統一国家の中で国民全体の公平な幸福の発展を保障するという、ナショナルミニマムを国家が引き受けてきたというところがあるわけですね。先般の地方分権改革で、その部分を全部自治事務にできるかというと、これはなかなか現実に壁がかたかったわけです。国に残すべきものもあるでしょうし、実際上抵抗が強くて変えられなかったというものもあると思います。今回、先ほど会長が言われるように、道州制ということで、本当は国ではなくて自治的な仕組みでやるべきものというのを、もう一度頑張って国から引き離していくべきじゃないかというのがあると思うのですが、それをやっていくときに、下手をすると無理をし過ぎて、道州に移したけれどもやっぱこれは道州に任せっきりにもできないので全国的な調整を図りましょうというような、現在の法定受託事務的な話がさらに一層強く出てくるおそれもあるわけですね。その辺が、私も基本的に道州はもしやるとすれば、完全自治体としてつくるべきだと思いますので、それは道州の性格が今のようなやりとりの中で歪んでいくといいますか、従来の地方支分部局のシステムの魂を残したままそっちに移管するというようなことになると、これは道州制そのものにとっての根本的な問題を抱えてしまうということになると思います。ですから、あんまり欲張り過ぎないということも大事なのではないかというふうに思います。 その意味では、前回、現行の国と県と基礎自治体と、各事務事業についてどこが責任を負ってやることになっているのかという、そういう整理の表がありましたけれども、あれなんかをベースにして、今のような問題なしに本当に道州制に移せるもの、それから、移すとしたら相当な覚悟でもって今のような悪い結果にならないようには仕組みをしっかり慎重に考えなければいけないものとか、そういう仕分けを、今すぐではないかもしれませんけれども、適当な段階でやる必要があるのではないかと思います。 それとあわせてもう一つ、今、後の方で諸井会長が言われたように、道州そのものを、ミニ国家化でなくて住民自治のための道州であるという、その性格なり構造なりをどうやって確立していくかという問題ももう一つ当然あると思います。差し当たって。 ○松本小委員長 ありがとうございます。神野先生。 ○神野委員 浜田委員からうかがった意見、私、財界の方としてうかがって感動いたしました。ただ、分けておかなくちゃいけないのは、人間の生活と産業政策と分けておかないとだめだと思うのですね。私たちは孔子の教えで、「少なからずを憂えず、等しからずを憂えなさい」と。等しい国はみんなが豊かになりますからという教えで大体豊かになってきたわけですが、それはそれぞれの地域における生活を保障していくという意味での平等化だったと思うのです。ただこれも、同じサービスを配っていいかというと、もともと格差がない、みんな少なからずのときに、同じサービスをやっても嵩上げになりますけれども、もともと地域ごとに違っちゃっている場合には、違ったサービスをやらないと等しく公平性が保てるかという問題は残るかと思うのです。 ただ、もう一つは産業政策なのですが、これがミニマムがあるかという問題になるのではないかと。地方支分部局を見ていただきますと、厚生労働省を除くと全部産業官庁なのですね。産業官庁が行う産業政策を全国一律的にやるということが果たして地域の産業の発展にとっていいか。つまり、むしろ産業政策に行われる相違というのは、格差ではなくて差異であって、それぞれ個性ある差異を発揮した方が地域産業は発達するのではないかという立場に立つかどうかということで、道州制を議論するときには割と地域産業政策的なことを担う。市町村は対人社会サービスを担うと思うのですが、そういうレベルの政府だということをある程度前提にしなくちゃいけないのではないかと思います。 産業官庁でやらなければならないときにミニマムを主張しているという論理の正当づけで根拠があるのではないかと思われるのは、ネットワークだと思うのです。全国的なネットワークが必要だという場合には、全国的なネットワークができるような根拠があると思いますが、あとは余りない。全国的に同じ産業政策を打つという根拠はないのじゃないかというふうに思います。 それからあと、あんまり人口とか、面積だけで比べても意味がないという、先ほど松本委員長もおっしゃいましたけれども、それはヨーロッパの場合には大体平地で地域が放射線上にでき上がっているのが集まっているわけですよね。日本の中国地方なども夜景を見てもらえばわかりますけれども、ずっとこうなっているわけですから、同じ面積だからとか、同じ人口だからといっても、少し条件をくっつけて考えざるを得ないかなと。 それからあと、分権の考え方でいいますと、先ほど諸井会長がおっしゃいましたけど、私の考え方は大きく考えると2つあって、1つは、補完性の原理で市町村でできないことを都道府県が、都道府県ができないことを国がと下から上げていくことが分権だと考えるところと、それからもう一つは、カナダがそうだというふうに言っていいのかどうかわかりませんけれども、非常に強力な地方自治体をつくっておかないと、強力な国家に対抗できないと。その州の中ではあんまり下の市町村というのが力がないというふうにしておいた方が分権が発達するという2つの思想があるのではないかと思うのですね。私、いつもいい加減なものですから、やっぱり中をとってほどほどにというのが考え方の中にありますので、両方にらみながら進めていくかなというのがいいのではないかというふうに思います。 以上です。 ○松本小委員長 ありがとうございました。事務局はこの3ページの表について、先ほど浜田委員からご指摘あったことについて、何か言いたいことはありますか。なければいいのですよ、別に。 ○久元行政課長 ありません。 ○松本小委員長 浜田委員が非常にいいことをおっしゃったのですが、「自ら稼いで」という言葉で言われました。27次の地方制度調査会のときに、広域自治体の役割というところで、広域自治体はその圏域における自立的発展の役割を担うとされたことと一致しているわけで、この程度ならば、「自ら稼ぐ」基盤がありますということを言いたかったのじゃないのですか、違うのですか。 そういう比較として出されたと。「自ら稼ぐ」というのは非常にわかりやすい表現だと私は思うのですけれども、それは27次の地方制度調査会において、広域自治体は広域の圏域の自立的発展のための戦略的役割を担っていくのですよということと合っている。それでこのぐらいの国がやっていけるのだから、これぐらいの圏域ならやれるでしょうと。それから、後で浜田委員がおっしゃった広域自治体の地域内をどうしますかということは、会長がおっしゃったように、できるだけ合併をした基礎自治体の方に権限を下ろすと同時に、残りをどうするかということを、これから議論しなければならないと思うのです。前から大変気にされておられます現在の都道府県の単位でのものをみんななくしちゃっていいのか、そういう議論が一方にあり、かつ一方で、そういうものを残したときに、効率化の視点から、三重になって無駄になるのじゃないかとか。そういうことに対して道州制導入の際には、どういうことにしてゆくべきかということを議論していく、こういうことではないかと思うのです。 そのほかの委員の方いらっしゃいますか。 ○貝原委員 基本的な議論、分権とは何ぞやというところから始めるときりがないのですけれども、私の記憶では、私の今まで携わってきた経過の中から判断しますと、日本は、浜田さんがおっしゃるように、中堅所得層が8割を占めるというような豊かさになったのは1980年代だろうと思うのですけれども、そのころから分権というのが非常に真剣に議論されてきたのですね。これは政府のいろんな答申書なんかにも書いてあるのですけれども、確かに経済的に日本国民は豊かになったけれども、本当にそれで幸せになったのかということについての疑問が非常に強く出てきて、やっぱり自分たちがお上の言われるようにやってきて豊かになってきたのだけれども、それでほんとに自分たちが幸福感を感じているかというと、そうでない理由というのは、やっぱり自分たちがだれかに言われたとおりやっていくということについて、それは間違っているかもしれない。間違ったことも非常にたくさん出てきたわけですけれども、そういうことに対して、自分たちのことを自分たちで判断をして、自分たちの生活をつくっていきたいという国民の意識の変化というのが、底辺にあったのだろうと思うのですね。 そういうことの中で、分権、いろんな行政改革の取組みが始まって、今の分権推進一括法まで続いてきたと思っているのですが、そういう中から考えますと、先ほど関経連を中心とした関西の浜田委員ご指摘の問題点のところまで、実際私も担当しておりまして感じましたことは、一昔前だったらそうでもなかったんでしょうが、現在ほど経済がクローバル化して情報化が進みますと、関西がこれだけ地盤沈下していることについて何かしようというときに、例えば外国とも交渉するというようなことになりますと、例えばアメリカとか、あるいは中国の州省とかというのは相当の権限を持っているのですね。相手からすると、規模は関西全部相手になってやらなきゃいけないぐらいの相手の規模なのですが、そういうことを担当するのが関西にあるのかと、経済界の方はそこに非常に不満を持っておられるわけです。各府県の知事に話してみると、それぞれ自分たちの府県のことばかり言って、関西全体のことを考えて責任持ってやってくれる人がいないではないかと。それを今やっている人はだれかというと、近畿経済産業局、運輸局とかそういうところになるのですね。ところが、この人たちは役人さんですから、やっぱり東京向いて仕事をしている。関西だけがよくなるということについては、日本国民が平等に発展する方がいいというような基本的な論理があるわけですから、なかなか関西人が考えたようなことを受け入れてくれないと。そこら辺が、こういう縦割りの弊害とか、一律だとかというような表現として出てきているのじゃないかと思うのですね。 そういうことを考えてみますと、先ほど分権の流れの中で道州制を考えた場合に、これは諸井会長が言われたけれども、道州制が集権になってはいけない。これは今の都道府県の権限を集めて州をつくったら、これは集権になると思うのですね。これは今の関西経済の浮揚というのは、経済政策を考える場合にいろいろやろうとして道州制に担ってもらおうとしているのは、今、国がやっている権限とか政策を道州制にやらせる、こういう考え方ですから、これは10か11か道州ができれば、今まで国が一つだったのが、10か11ぐらいでそれぞれ個性的な地域が、州間の競争もあるでしょうし、外国の地方政府との競争もあるでしょうし、そういう中でビビッドに地域の活性化が図っていける。みんな東京圏に吸い上げられて、みんな萎えてしまっているというような今の実態が是正できるのではないか。そういう形での分権を考えなければいけないのじゃないかと思うのですね。ところが、私はそう思っていますけれども、必ずしも、道州制を言っている人たちはいろんな考え方がありますから、国民に道州制がいいのじゃないかと言っても、どの道州制ですかというような話になっちゃうので、これではなかなか議論が前に進まないなという感じがしてしょうがないのですよ。 今の関西の経済を申し上げましたように、しかも今日のデータでいろいろありますように、国民生活は、かなり圏域行政がやっていかなければいけないような実態が一昔前と違って出てきているわけですから、これをどうするのかということを基本に置いて、やっぱり道州制の制度設計を専門家の皆さんにやっていただいて、国民に問い掛けるというようなプロセスをやるべきじゃないかなという、重ねての意見ですけれども、そういう感じを持っています。 ○松本小委員長 ありがとうございました。まだいろいろご意見もあろうかと思いますが、自治財政局の方から現下の状況に鑑みまして、資料を出していただいておりますので、地方財政関係について関係資料を説明していただきたいと思います。 ○椎川財政課長 お手元に資料2から4までをお配りしておりますけれども、最近の地方財政に関連する事柄につきまして、簡単にご報告をさせていただきたいと思っております。 資料2は、来年度の地方交付税の概算要求の関係の資料でございますが、各省8月末に概算要求を提出したわけでございますけれども、交付税につきましても概算要求をしております。 そして2ページ、3ページをご覧いただきながらお聞き取りいただきたいわけでございますけれども、来年度の地方交付税の概算要求に当たりまして、新しい試みといいますか、新しい方式で概算要求をすることにいたしました。具体的に申し上げますと、来年度の地方財政収支の8月仮試算というものを公表いたしまして、これに基づいて必要と考えられる交付税の総額を要求するということにさせていただきました。これは昨年末の三位一体改革や予算編成の中で、地方公共団体の方から、補助金改革や税源移譲については、自分たちも相当意見を述べたり参加する機会があったが、交付税については、関与できないところで決まったのではないかという意見が強かった。その中身を見ますと、歳出の大幅な削減というものが盛り込まれていたということで、そういう地方財政に関連する議論について前広に知らせてほしいというような意見がございました。私ども、地方公共団体との意思疎通、情報提供ということに意を用いてきたつもりですけれども、意外に市町村レベルまでいきますと伝わっていないというようなことも改めて感じましたので、春先からいろいろブロック会議、東京での地方三団体、地方六団体の会議に出かけてまいりまして情報を提供しているわけでございますけれども、交付税の概算要求に当たりましても、数字はかなり仮定を置きませんと今の段階ではできないわけでございますけれども、こういうフォーマットに従って予算編成過程で議論を重ねていって、あるいは計数を固めていきながら、最終的な地方交付税の必要額を協議していくと、決めていくというようなことについてご理解を得ておいた方がよろしいのじゃないかということで作成をしたものでございます。今後も秋のブロック会議だとか、そういう場で十分に説明をしてご理解をいただきたいと思っております。 そういうことで数字はあくまでも仮定に基づくものが多いわけでございまして、例えば、歳出については閣議決定されております既定の歳出の削減方針でありますとか、あるいは国の概算要求の基準に基づきます数字を単純に置いております。その結果、3ページをちょっとご覧いただきますと、交付税の総額が前年比で0、あるいは一番下から2つ目の地方一般財源の総額が0というような水準に現在置かれておるわけでございまして、これを議論の出発点として、これから予算編成をしてまいるということになろうかと思っています。 それから、説明の便宜上資料4の方を先にご覧いただきたいと思うのですけれども、これは地方六団体の方で策定をされました三位一体改革案の関係の資料でございます。中心になりますのは、総理が春の骨太方針の議論の際に、3兆円の税源移譲を目指すと、その代わり地方の方から補助金の改革案を提案してほしいとおっしゃられたことを受けまして、地方六団体で検討されて策定をされたものでございまして、8月24日の日に総理の方に提出をされ、同日の経済財政諮問会議でも説明をされております。そしてこのことにつきましては、総理の方から改めて地方の提言を真摯に受け止めて誠実に対応するようにというご指示もいただいております。同趣旨の発言は、9月の3日の閣僚懇でもなされておりますし、一昨日の9月7日には関係閣僚会合というものが開催されまして、これは内閣官房長官がヘッドで関係省庁すべて入りまして開かれたものでございますけれども、11月の半ばを目途に、三位一体改革の全体像をとりまとめたいので、まず補助金改革案につきまして、地方からの改革案を真摯に受け止め、補助事業等の所管府省が地方の改革案を実現することを原則として検討してもらいたい。あわせて国の関与、規制の見直し等の改革案、それから17、18の2か年度分の改革ということでございますので、この年度の仕分け、そういうものを関係府省で検討していただいて、10月下旬を目途にその結果を提出していただきたい。関係大臣には、自ら率先して責任をもって全力で取り組んでもらいたい、こういうような趣旨のご発言をいただいております。 なお、来週14日の日には、地方が求めております国と地方の協議の場というものの初会合が開かれるという段取りになってございます。 補助金改革案の中身につきましては、1ページ、2ページに概要版をつけてございます。私が説明するのが適当かどうかわかりませんけれども、聞き及んでいるところによりますと、知事会でも、改革案を提示するに当たって、前提条件というものがかなり議論されまして、昨年の経緯に鑑みまして、地方が出したものを国の方がいいとこ取りするといいますか、そういうようなことがあっては困るという意識が非常に強くて、前提条件のところに書かれておりますように、国と地方の協議機関を設置することを絶対の条件にするということでございます。梶原会長の方から総理にも最初にそのことが申し入れられまして、総理の方から、はっきりと「協議機関を設置する」というご回答があったようでして、それに基づいてこの改革案が政府の方に出されたということでございます。 その他具体的な前提条件といたしまして、補助金改革と税源移譲を一体的に実施をすることでありますとか、財政力格差が拡大していくことに対する懸念から交付税による確実な財政措置をすること、あるいは三位一体改革の名の下に、地方への負担転嫁というようなことがないようにすること、あるいは補助金を廃止して、新たな類似の補助金を創設するということが従来見受けられたわけでございますけれども、そういうようなことをしないでほしいというようなこと、あるいは先ほどご説明いたしました交付税の関連で地方財政計画の作成に当たっても、地方公共団体の意見を反映してほしいなどという条件もつけられたわけでございます。 この補助金改革の中身につきましては、昨年知事会がまとめております9兆円の補助金改革、8兆円の税源移譲という基本線を踏襲いたしまして、これを総理のおっしゃった平成17、18年度での3兆円の税源移譲ということに結びつけるべく第1期改革と第2期改革に分別したというのが大きな特徴ではないかと思っておりまして、概要ペーパーの1ページの下の方にございますけれども、17、18の両年度行う国庫補助負担金の改革につきましては、3.2 兆円、これに伴って行うべき税源移譲については3兆円程度、こういうようなまとめ方になっております。 2ページの方に、3.2兆円の補助金の大まかなジャンルごとの内訳をつけてございますけれども、経常的な国庫補助金で6,000億円、経常的な国庫負担金で6,000億円、小中学校やごみ処理施設等の施設整備に関する国庫補助負担金で6,000億円、公共事業で6,000億円、義務教育関係につきましては、中学校の職員の給与費相当分で8,000億円、こういうような第1期改革ということにされておりますけれども、当然、第2期改革というものを続けてやっていくという前提になっておりまして、例えば、義務教育につきましては、全額一般財源化ということを第2期までの改革の中で行うべきであるという主張でございます。 税源移譲につきましては、個人住民税の10%、比例税率化により所得税から住民税へ3兆円程度の税源移譲を行っていくこと。それから、国庫補助負担金廃止の前提となる交付税による財源措置についても改めて触れられておりますし、国直轄事業に対します負担金につきましても、建設費の負担と維持管理費の負担を分けておりますけれども、維持管理費については、早急に廃止をすべきであると、こういうご主張になってございます。 以上が地方六団体から提出されました改革案の概要でございますが、資料3の方に戻っていただきまして、8月31日の日でございますけれども、経済財政諮問会議でこういった状況を受けまして、「三位一体改革」に関する集中審議というものが行われてございます。その関係の資料をまとめて参考までに配付させていただいておりますけれども、総務大臣の方から、それから民間議員の方から、さらに谷垣財務大臣の方から資料が提出されておりまして、本日は時間の都合もありますので、総務大臣の提出資料について簡単にご説明させていただきます。 お開きいただきまして、2ページに三位一体改革の全体像に対する考え方が書いてございます。補助金改革については、総務省としては地方の改革案を最大限に尊重して、税源移譲に結びつく改革を実施すべきであろうと思っております。税源移譲につきましても、地方が提案をしております住民税の10%比例税率化を中心に3兆円の税源移譲を実現すべきであるというふうに考えております。 交付税の改革につきましては、当面、この18年度までの国庫補助負担金の廃止・縮減、税源移譲ということを行いますと、財政力格差が非常に拡大をしてまいるということがございます。これに対して、交付税の機能を適切に発揮して、この問題に対処していかなければならないという基本的な認識でございます。 それから、国の歳出も、当然、財政の収支ギャップが非常に大きいので見直しということが行われると思いますけれども、そういった見直しと歩調を合わせながら、地方歳出についても見直しを図っていく必要があると考えております。また、交付税の計算方法につきましては、国の関与の廃止・縮減に対応して、算定方法の簡素・中立化というものを一層進めていく必要があるというふうに考えておりますし、不交付団体に居住する人口の割合を着実に増加させていく必要があるというふうに基本的に考えているところでございます。 なお、6ページをお開きいただきますと、不交付団体の人口の割合につきまして、従来から骨太方針の中で人口を基準に議論していこうということになっておりましたが、今回初めて総務大臣の方から不交付団体の人口割合を中期的に3分の1程度に増加させていくことを目標にするということが表明をされております。 それからもう一点だけ。民間議員さんの方から、これは11ページでございますけれども、三位一体改革の中で、特に交付税の問題につきまして提案をいただいております。11ページから14ページまででございますが、14ページの絵をご覧いただきますと、地方財政計画を現在の地方のトータルの財政の姿をお示しするという形から二分をいたしまして、地方が自主的に決定するような歳出の部分と国が必要最小限財源保障すべき歳出の部分に二分をしたらどうかというご提案をいただいております。この二分論につきましては、まず歳出の切り分けについていろんな議論があろうかと思います。ここでは、公債費とか、公営企業繰出金というのは地方が自主的に決定すべき分野というふうに分類をされておりますけれども、例えば、小中学校をつくった場合の地方債の償還費とか、ごみ処理施設をつくった場合の償還費がどうなるのか、あるいは公営企業と申しましても非常に幅が広いものですから、上下水道のような住民生活に密着した社会資本整備を公営企業という形でやっている場合に、これをどう考えるかというような問題もございます。 このように、歳出の切り分けも大変議論があるところでございますけれども、さらに難しいのは、「自主財源」と書かれております地方税のことだと思いますけれども、これを地方の自主的な決定に全く任せてしまう地方税と、ある程度国の財源保障の内側に入ってくる地方税というものを定性的に切り分けることは非常に困難ではないかというふうに思います。 さらに、最大の問題は、ここで自主財源というのはかなり大きく見えるように書かれておりますけれども、私どもの実感では、非常に自主財源が乏しい団体の数が多いわけで、例えば、自主財源が5%とか、10%しかないような団体の絵をかいてみますと、上の方の部分の自主財源がほとんどないわけでございますから、自主的に決定すべきというふうにされた歳出については、地方税の乏しい団体においては、ほとんどできなくなってしまうというような可能性もございまして、憲法で保障されました地方自治というものが否定をされるような懸念もある、あるいは我々が目指してまいりました地方分権改革の方向とも齟齬を来すのではないかというような心配もございます。これは大臣の方からも、そういう意見を述べさせていただいております。 最後に、15ページ以下は、かなり大部な資料ですけれども、財務大臣の方から、いつものように財政審等で出されておりますような資料が提出をされております。38ページ以下は地方六団体の改革案、先ほど私がちょっとご説明をいたしましたけど、これに対しまして、財務省からスリム化の視点が欠如しているとか、あるいは公共投資については税源移譲ができないのだとか、あるいは個別の補助金について、所管省庁と地方との間で政策論をする必要があるとか、そういうような問題点の指摘のようなことがございました。これについても逐一私どもの大臣の方からは、私どもの立場から考える問題点というものは意見として申し述べさせていただいておりますけれども、細かく触れる時間がございませんので省略をさせていただきたいと思います。 以上でございます。 ○松本小委員長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえ、ご意見等がございましたらご自由にご発言いただきたいと思います。 ございませんか。西野委員何かございませんか。 ○西野委員 6ページのところをちょうど今見ていますので、ここに関しておうかがいさせていただただきます。 ○松本小委員長 資料のどちらの? ○西野委員 資料3です。不交付団体の人口の割合については、当面3分の1程度を目指すということですが、3分の1という数字の根拠についてお尋ねしたいと思います。また、長期的には、やはり50%ぐらいを目指すというような考え方があるのかどうかうかがいたいと思います。 ○椎川財政課長 この不交付団体の人口というのはいろんな要素で決まってまいりますので、大変将来推計することは難しいわけでございます。そして、いかにも三位一体改革をすれば、不交付団体が増えていくというような論調もあるわけでございますけれども、三位一体改革の中における財源移譲というのは、補助金が廃止・縮減されたことに対応して税源移譲するわけでございますから、いわば歳入中立ということになっておりまして、そのこと自体であまり大きな不交付団体人口の増加というものが期待できるかどうか我々も大変悩んでおるところでございます。むしろ三位一体改革が位置づけられている経済財政運営の基本方針、あるいは構造改革という中で、景気が回復軌道に乗ってくるという前提がございまして、そういう景気が回復するに伴って税収も回復してくる。そういうような要素がむしろ大きいのではないかというような感じもいたしますし、全体としては、国も地方も歳出を、これから税が伸びていく局面で、税が伸びるからといって歳出を伸ばすということではなくて、税が伸びる局面でも歳出はやっぱり抑制基調を維持していこうというような方針の中でプライマリーバランスも回復の方に向かっていくし、この不交付団体の人口の問題についても増えてくるんじゃないかということで、大変いろんな要素が絡まっておりまして、中期的にと申し上げておりますのは、18年度までの三位一体改革の期間中だけではなくて、もう少しロングスパンで考えて景気の回復なども織り込んで3分の1を目標にしたということでございます。その後の目標についてはなかなか立てにくいところがございまして、努力はいたしてまいりますけれども、数字的なものはちょっとお示しできないというような段階でございます。 ○松本小委員長 よろしゅうございますか。そのほかの委員の方ご意見ございませんか。 それでは、本日はいろいろご意見をいただきありがとうございました。次回の専門小委員会では、引き続き道州制のあり方について意見交換を行いたいと考えております。 最後に、今後の日程につきまして、事務局よりご説明願います。 ○石川自治政策課長 今後の予定につきましてご説明いたします。 第8回の専門小委員会を10月1日金曜日の午前10時30分からルポール麹町「マーブル」でお願いしたいと思います。 なお、前回の専門小委員会におきまして、松本小委員長から提案のありました地方における意見交換会でございますけれども、11月5日金曜日、岩手県盛岡市で開催するように調整中でございます。 以上でございます。 ○松本小委員長 それでは、今の事務局のご説明に対して何かご意見とかご質問ありますか。 ございませんか。それでは、今の説明のとおり、第8回専門小委員会を10月1日金曜日午前10時30分からルポール麹町「マーブル」で開催することといたします。 以上をもちまして、本日の専門小委員会を閉会いたします。どうもありがとうございました。
閉会
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