総務省トップ > 組織案内 > 審議会・委員会・会議等 > 独立行政法人評価制度委員会 > 第29回独立行政法人評価制度委員会 議事録

第29回独立行政法人評価制度委員会 議事録

日時

令和3年2月18日(木)14時から15時40分まで

場所

ウェブ会議にて開催

出席者

(委員)野路國夫委員長、樫谷隆夫委員長代理、天野玲子委員、梶川融委員、金岡克己委員、栗原美津枝委員、高橋伸子委員、野ア邦夫委員、浜野京委員、原田久委員、河合晃一専門委員
(事務局等)横田行政管理局長、阪本官房総括審議官、山本管理官他

議事

1 令和3年度から中(長)期目標期間が始まる法人の新たな目標案について
2 令和元年度における独立行政法人の業務の実績に係る評価の結果についての点検結果
3 法人の取組事例
4 その他

配布資料
議事次第PDF 資料1-1PDF 資料1-2PDF 資料2PDF
委員長提出資料PDF

議事録

【野路委員長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第29回独立行政法人評価制度委員会を開会いたします。
本日の会議は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催しております。
それでは、まず議題1の令和3年度から中(長)期目標期間が始まる法人の新たな目標案について審議したいと思います。
まず初めに、これまでの評価部会における審議の状況について報告をお願いします。
【山本管理官】 事務局から御報告いたします。
1月26日に開催された評価部会におきまして、昨年12月の委員会決定でお示しいただいた法人の次期中(長)期目標の策定に当たっての留意事項への対応状況を中心に、主務大臣が作成した法人の新たな目標案の点検を行っていただいたところでございます。
おさらいですが、12月の留意事項は、各法人共通の留意事項と、見直し法人それぞれ個別の留意事項という2部構成になっておりました。本日は時間の制約もございますので、まず共通の留意事項への対応状況を御説明し、その後、個別の留意事項への対応状況をそれぞれ一例ごとピックアップして、簡単に御説明したいと思います。
まず、共通の留意事項の関係から御説明します。最初の留意事項は、「新型コロナウイルス感染症の影響を含む法人を取り巻く環境の変化、直面する課題、法人の「強み」及び「弱み」についての把握・分析を十分に行い、法人が、その使命に鑑み、その役割を着実に果たし、一層その政策実施機能を発揮するにはどのような目標とすべきか、改めて、法人の長としっかりと議論し、検討を行うこと。」
そして、「法人が、新型コロナウイルス感染症対応で浮き彫りになった取組の遅れや課題を克服して「新たな日常」に対応し、その役割を果たすとともに、より高みを目指すことができるよう、(1)の議論・検討を踏まえ、法人における業務手法等の見直しを促すような目標とすること。
その際、デジタル技術の利活用に当たっては、デジタル化自体を目的とするのではなく、業務プロセス全体の最適化・効率化を意識することはもちろん、デジタル化によって組織やビジネスモデルを変革し、新たな価値を創造するデジタルトランスフォーメーション(DX)を意識することや、情報セキュリティの観点にも留意すること。」というものでした。
これらの留意事項への対応状況ですが、例えば国立女性教育会館の目標案では、「新型コロナウイルス感染症の拡大は、男女に関わらず社会的・経済的に大きな影響をもたらしている。配偶者等からの暴力や性暴力の増加・深刻化への懸念、また、雇用・所得への影響は特に女性に対して強く表れており、ポストコロナを見据え、男女共同参画社会の実現に向けて強力に取り組むことが必要である。一方で、この影響を負の側面のみならず変革の好機としても捉え、社会や人々の生活様式の変容を踏まえた、研修や調査研究事業等を行うことが必要である。研修事業に関しては、第4期中期目標期間中から、eラーニングを活用した動画配信と連携した取り組みを実施しており、今後は、オンライン研修と集合研修それぞれの利点を生かした、新たな研修体系を構築することが必要である。」と記載いただいております。
それから、教職員支援機構の目標案では、「中期計画の策定に当たっては、「Society5.0」と呼ばれる社会への対応、アクティブ・ラーニングの推進、「GIGAスクール構想」の下での教育のICT活用と環境整備、「学校における働き方改革」の推進、今般のコロナ禍の中での新しい教職員研修スタイルの構築などの現下の政策課題及びスケジュールを踏まえ、研修事業の再構築を図るものとする。」と記載いただいております。
また、国立美術館の目標案においては、「国立美術館が所有、蓄積する美術作品や人材等を活用し、美術振興のナショナルセンターとして、国際交流等を推進するとともに、我が国の美術館活動全体の活性化に寄与することが必要である。また、コロナ禍における「新しい生活様式」を踏まえた交流事業や連携事業等、新しい美術館のあり方を確立するための取り組みを推進するものとする。」と掲げられております。
また、国立美術館の目標案では、コロナ禍においては、来館者が減少している中、従前のように入館料を得ることが困難な状況となっておりますので、収益をどう確保するかという課題の認識に基づき、「『新しい生活様式』を踏まえた事業展開に伴う収益の獲得やクラウドファンディングを活用した資金獲得など、自己収入の確保を図るものとする。」と記載されております。
それから、農業・食品産業技術総合研究機構の目標案では、「基幹業務システムの活用、業務の見直し等によるデジタルトランスフォーメーションを推進し、徹底した業務の効率化を図る。」と記載されております。
続いての留意事項は、「法人の使命等を組織内の各階層に浸透させるとともに、役職員のモチベーション・使命感を向上させて、上記のような法人の政策実施機能の最大化や業務手法等の見直しを確実なものとするため、法人の組織風土や役職員の意識にまで踏み込んだ取組を促すような目標とすること。」という御指摘でした。
これについては、例えば酒類総合研究所の目標案では、「職員の役割・権限を明確にするとともに、表彰制度等を活用し、職員のモチベーションの一層の向上を図る。」と記載いただいております。
また、国立環境研究所の目標案には、「理事長のリーダーシップの下、幹部クラスで構成する会議をはじめ階層的な所内会議を定期的に開催し、中長期的視点を含めた組織運営のあり方や課題への対応方策について検討」していくということが書き込まれております。
また、水産研究・教育機構の目標案では、人事評価に関して、「研究開発職員の評価は、研究開発業績のみならず、研究開発成果の行政施策、推進の検討・判断への貢献、技術移転活動への貢献、漁業者への研究開発成果等の周知・紹介による信頼性確保への貢献等を十分に勘案したものとする」という形で、人事評価を運用していくということを書いてきております。
続いての共通留意事項は、「様々な関係機関との間で、データを共有し活用するなど、一丸となってイノベーションを推進するため、各府省、他法人や地方公共団体、民間部門等との連携・協働を一層強化すること。」という、いわばソフト面での連携の話です。
これについて、例えば情報通信研究機構の目標案には、「ネットワークキャリア、ベンダ、研究機関、ユーザの力を集結する研究開発・技術実証・社会実装のオープンイノベーション拠点として、運用及び利用を通じて実証環境が循環進化するテストベッドを構築する」ということが盛り込まれております。
また、国立高度専門医療研究センター(NC)6法人では共通に、「NCをはじめとする研究機関及び医療機関間のデータシェアリング」を行っていくということが新たに目標案に盛り込まれております。
さらに、国立科学博物館の目標案では、「国立科学博物館で所有している標本・資料のみならず、全国の科学系博物館等で所有している標本・資料について、その所在情報を関係機関等と連携して的確に把握し、情報を集約し、オープンサイエンスの推進に向け国内外に対して、標本・資料情報の活用を促す観点から積極的に発信する」ということが盛り込まれております。
次の留意事項は施設関係の話でございまして、「業務実施に必要な施設に関しても、老朽化が進む現状を踏まえ、法人内ですべてを賄おうとする「自前主義」を脱し、各府省、他法人や地方公共団体、民間部門等と連携し、それらの機関の施設を利用して業務を実施する可能性も視野に入れつつ、効率的な施設の在り方について計画的に検討すること。」という、いわばハードの連携についての御指摘です。
これに対する対応状況として、例えば教職員支援機構の目標案では、「保有する研修施設について、貸出対象の拡充を行い、施設の有効利用促進に取り組む。また、研修事業の在り方を検討し、その確立を図った上で、教職員の受講環境の整備の観点から、他法人や関係機関等の施設を利用して研修を実施する可能性も視野に入れつつ、不断の見直しを行う。」と記載されております。
また、農業・食品産業技術総合研究機構の目標案では、「新たな研究ニーズに対応した施設・設備の整備については他法人等との連携を図りつつ効果的・効率的に実施する。」と記載されております。
また、国立美術館の目標案では、「外部倉庫の活用」という点が盛り込まれております。
さらに、水産研究・教育機構においても、「都道府県や民間企業等との連携による研究施設等の共同利用等を推進する。」と掲げられております。
最後に、人材育成に関する共通留意事項をお示しいただいておりました。「『新たな日常』に対応してデジタル技術を利活用できる専門人材を含め、各法人が社会課題の解決に向けた役割を果たしていくための専門人材の確保・育成に、戦略的に取り組むこと。」というものでした。
これについて、例えば情報通信研究機構の目標案では、「NICT内の技術シーズと標準化や知財に関する知識・ノウハウを結集するため、……外部専門家の雇用を含む人材の確保……に取り組む」と書いてきております。
また同機構では、「産学官連携による共同研究等を通じた専門人材の強化、連携大学院協定等によるNICTの職員の大学院・大学での研究・教育活動への従事、国内外の研究者や学生の受け入れ等を推進し、一層深刻化するICT人材の育成にも貢献するものとする。」と、法人内の人材のみならず社会全体における専門人材の底上げという観点についても記載してきているところでございます。
また、住宅金融支援機構の目標案でも、「専門的な金融技術や金融業務に係る能力を有する人材のほか、民間金融機関とのネットワーク基盤等のIT技術、住宅の質向上に資する技術を有する人材等」の確保・育成に努めていくということを書いてきております。
それから、国立環境研究所の目標案でも、「クロスアポイントメント制度や年俸制を積極的に活用し、国立研究開発法人及び大学等との連携強化やRAも含めた優れた人材の確保に努め」ると書き込まれております。
少し駆け足でしたが、共通留意事項への対応状況を御説明させていただきました。
引き続いて、個別の留意事項を御説明したいと思いますので、資料1−1を御覧いただきたいと思います。
1個目が、まず情報通信研究機構のものでございます。情報通信研究機構の留意事項は1つございまして、先ほども御紹介しましたけれども、研究事務の補助者やリサーチ・アドミニストレーターといった研究支援人材や、知的財産の活用に係る専門人材の確保・育成に取り組むべきことを目標に盛り込んではどうかという御指摘でございました。この点については、先ほど御紹介したように、外部専門家の雇用を含む人材の確保に取り組むという形で記載してきております。
続いて、酒類総合研究所でございます。留意事項が1つございました。適正課税及び適正表示の確保といった業務にとどまらず、社会ニーズが高い業務、最近でいうと日本酒の輸出などが想定されるところですが、こうした業務に法人が積極的に取り組めるよう、目標の重み付けを行ってはどうかという御指摘でした。
これについて、目標案では、「日本産酒類の競争力強化等」と「酒類製造の技術基盤の強化」の2項目に新たに重要度「高」を付すとともに、政策体系図自体も見直しまして、これらの2つの業務を含んだ「酒類業の振興のための取組」という柱を一つ立てる形で位置付けてきているところです。
引き続いて、文部科学省の関係です。文部科学省関係は、大学入試センターと、研修を行う法人4法人、それと博物館・美術館系の3法人という塊がございますので、塊ごとに御説明したいと思います。
まず、大学入試センターについては、留意事項が3つございました。1つ目が財政基盤の改善、2つ目が、この法人は大きな試験をやっておりますので、試験実施により蓄積した統計データやノウハウ等の資産を有効活用する方策を検討すること、一番下のところは、試験問題の漏えい等がないよう、ガバナンスの強化について、それぞれ目標に盛り込んではどうかという御指摘でございました。
2つ目の留意事項のところを御覧いただければと思います。下線のところですが、「教育データを多様に利活用する動向を見据えつつ、個人情報保護に十分留意した上で、大学入学者選抜方法の改善、ひいては高等学校及び大学の教育改善が促されるよう、共通テスト等の試験情報の活用に関し調査研究を実施した上で、その仕組みを構築する。」ということを入れてきております。
その他の留意事項につきましても、御覧のとおり記載をしてきているところでございます。
引き続いて、研修系4法人関係のところを御説明します。この4法人につきましては、留意事項は4法人共通で、3つございます。1つ目ですが、コロナ禍ということでオンライン研修を始めておりますが、更に効果的なオンライン研修を構築するとともに、集合・宿泊型研修や体験型研修等の在り方について見直し、研修体系を再構築することを考えてはどうかということと、その際には研修の在り方について主務省がビジョンを示すことが肝要ではないか。また、研修の実施に当たって研修体系の見直しを進めていく中で、より効率的・効果的に実施するためにも、4法人の連携についても検討してはどうか、というのが1つ目の指摘でございます。
2つ目は研修内容の見直しの関係でして、単なる満足度を測るアンケート調査にとどまることなく、より現場の声を吸い上げられるような有意義な調査の実施等により内容を見直していくことを目標に盛り込んではどうかという御指摘でした。そしてもう一つが、主務省と各法人が連携して情報発信を強化することを目標に盛り込んではどうかというものでございました。
一番上の留意事項のところを御覧いただきたいのですが、下線部で、「『集合・宿泊型研修とオンライン研修とのベストミックス』の在り方についての研修を早急に進め、『フィールドを有する実践研究と架橋した研修』という研究所の強みを生かした研修体系を構築すること。また、研究所、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、教職員支援機構の4法人は、研修のより効率的・効果的な実施に資するため、その連携について検討すること。」という形で記載してきているところでございます。
次の国立青少年教育振興機構と国立女性教育会館は飛ばさせていただきまして、7番目の教職員支援機構のところを御覧いただきたいと思います。先ほど申し上げましたように留意事項は共通でして、1つ目の研修体系の再構築という留意事項の箇所を御覧いただきたいと思います。
先ほども説明しましたとおり、Soceity5.0への対応などといった「現下の政策課題及びスケジュールを踏まえ、研修体系の再構築を図る」こと、研修で扱うテーマを「教職員の職階・年齢別にシームレスに提供するものに再編する」こと、また、「教職員のICT活用能力の向上を図るとともに、適切な知識・技術の伝達を中心とする座学的研修はオンライン研修への移行を進める一方、集合・宿泊型研修は教師自身が自ら課題を見つけ解決方法を考える内容を中心に据えて実施する」こと、「集合・宿泊型研修とオンライン研修の両研修形態のベストミックスを指向するハイブリッド型研修の在り方を検討し、確立する」ことといった内容が記載されております。
また、2つ目の研修内容の見直しに係る留意事項に対しても、下線部のとおり、「調査研究の成果や関係機関との連携を通じて、教職員研修の高度化及び体系化を図る」とともに、「研修効果の最大化を図る観点から研修と調査研究を連携・往還させながら、集合・宿泊型研修の要素を組み込んだ最適な組合せを3年間(令和5年度まで)で検討し、確立する」ということを書いてきております。
研修系4法人は以上でして、説明を飛ばさせていただいた国立青少年教育振興機構と国立女性教育会館についても、留意事項に対応した記載をきちんと盛り込んでいただいております。
続きまして、美術館・博物館系の3法人でございます。こちらもそれぞれ共通した留意事項の内容になっております。
1つ目の留意事項は、関係団体・施設との連携強化や新たなタイアップの模索、更なるICT化への対応を含めた収蔵品等の保管・利活用、魅力的なデジタルコンテンツの開発等にイノベーティブに取り組むことについて、目標に盛り込んではどうかという御指摘です。もう1つは、国立科学博物館は、文部科学省から文化庁に所管替えになっていることも踏まえ、文化振興への貢献に係る具体的な内容を盛り込んではどうかという御指摘でした。
まず、国立科学博物館の1つ目の留意事項の箇所を御覧いただければと思います。下線部でございますが、次期目標期間は「不確実性とリスクのある中で、人々の『新しい生活様式』に対応した博物館経営を推進していく必要がある」という認識を示したうえで、「ICTを活用した収蔵庫の公開や標本・資料等のデジタルアーカイブ化による情報提供を行う」、「外国人を含む多様な入館者へのサービス向上という視点から、ICT等を活用し分かりやすい展示解説のコンテンツを充実させる」、「弾力的に開館日・開館時間を設定し、安全で快適な観覧環境を提供する」といった内容を盛り込んでいただいております。
国立美術館は飛ばさせていただきまして、国立文化財機構のところを御覧ください。こちらも先ほど申し上げましたように、留意事項は共通のものになっておりますが。1つめの留意事項の箇所の下線部を御覧いただきたいと思います。「『新しい生活様式』に対応した博物館の在り方を確立していくことが必要」という認識を示したうえで、「文化財の次世代への確実な継承のみならず、地方創生、観光振興につながる新たな活用のあり方を目指す。そのため、文化財に親しむためのコンテンツの開発とモデル事業の推進、国立博物館収蔵品貸与事業の促進、文化財機構の文化財のデジタル資源化の推進と国内外への情報発信及び文化財の保存等に関する相談・助言・支援を行う」ということで、いろいろと書いてきていただいております。
以上が文部科学省関係でございます。
引き続いて、厚生労働省関係のNC6法人でございます。こちらの6法人には共通の留意事項をお示しいただいております。御指摘の内容は、「本年(令和2年)4月に発足した「国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)」については、その具体的な取組内容や評価軸等をNC6法人共通的に目標に盛り込むなど、研究開発成果の最大化の観点から定期的に活動状況の評価を行い、適切にPDCAサイクルを回していけるようにしてはどうか」というものでした。
この留意事項への対応状況ですが、「NC間の疾患横断領域を中心とした研究開発とそのための基盤整備、人材育成等に取り組むものとする」ということで、具体的には、ゲノム医療、大規模医療情報の活用、コホート研究基盤の連携・活用、健康寿命延伸のための疾患横断的予防指針提言、実装科学推進のための基盤構築といったことが書き込まれております。また、人材育成については、特に研究支援人材を育成するための体制を構築するほか、広報の関係として、NCの研究成果の発信やメディアセミナーの開催、知財の創出・管理の強化や企業との連携強化に取り組むということが盛り込まれておりまして、定期的に活動状況の評価を行っていくと書かれております。
次は農林水産省関係の法人でして、まず家畜改良センターです。留意事項は3つございました。1つは国の全体目標と現状を整理した上で、法人に求める具体的な成果について目標において明確化してはどうかというもの、2つめが人材確保の関係、そしてもう1つは知財の関係でございました。
1つ目の留意事項のところを御覧ください。下線部ですが、「家畜改良増殖目標及び鶏の改良増殖目標では、消費者から求められる『品質』とそれに応じた『価格』の両面で、これまで以上に『強み』のある畜産物を安定的に供給することができるよう、より効率的な畜産物生産を進めるための、『家畜づくり』にデータを生かすことを求めている」とした上で、「改良速度の加速化や遺伝的多様性に配慮した種畜生産等の民間では取り組み難い事業を担い、農家への種畜・種きん供給を行う都道府県や民間事業体に候補種雄牛や育種素材等を供給してきた」「今後とも、我が国における全国的な家畜改良を推進するため、国産遺伝資源や希少系統を活用した種畜・種きんの改良や、遺伝的能力評価の実施、畜種ごとの課題に対応した情報の分析・提供及び多様な遺伝資源の確保・活用に取り組む」と盛り込んできております。
ほかの留意事項につきましても、御覧のとおり記載されております。
続いて、農業・食品産業技術総合研究機構のところを御覧いただきたいと思います。農業・食品産業技術総合研究機構については、2つ留意事項をお示しいただいておりました。1つは新たな国際標準化を目指す分野と既存の国際標準を活用する分野を整理し、戦略的に研究成果の普及を進めることについて目標に盛り込んではどうかというもので、もう1つは外部資金の獲得の話でございました。
1つ目の留意事項を御覧ください。下線部ですが、「農研機構が開発した検査・測定法等の技術を国際標準化する取組と同時に、海外が先行する国際標準に我が国の実情を反映させ、社会実装に向けた取組を戦略的に行う」と盛り込んできております。
続いて、国際農林水産業研究センターを御覧ください。国際農林水産業研究センターについては2つ留意事項がございました。他の農林水産業に関する国立研究開発法人との役割分担について明確化してはどうかという御指摘と、自らの役割に基づく研究成果の広報活動を更に推進してはどうかという御指摘でございました。
1つ目の留意事項を御覧ください。国際農林水産業研究センターは「開発途上地域における農林水産業研究に関する中核的な役割」を担うと位置付けておりまして、そのために他の国立研究開発法人との協力関係を強化し、この役割を果たすことができるように、「各法人が有する技術シーズや研究資源の相互活用を図り、役割分担を明確にした上で研究開発等を推進する」ということを目標に盛り込んできているところでございます。
続いて、森林研究・整備機構については、3つ指摘事項がございました。1つ目が、林業全体が直面している課題と、課題解決に向けて法人が取り組むべき具体的な業務の方向性について明確化してはどうかというものと、あともう一つが広報活動を通じた人材確保・育成、それともう一つが社会実装を促進するために産業界への広報を進めてはどうかというものでした。
1つ目の留意事項を御覧ください。下線部ですが、「森林資源の循環利用を進めるための低コスト造林技術の開発や新たな木材需要の創出、風水害に強い森林整備などを進める必要がある」とするとともに、課題として、「山村地域では、若年層を中心に人口の流出が著しく、過疎化や高齢化が更に進み、所有者が不明な森林の増加や林業労働力の減少のほか、地域経済の低迷といった問題が顕在化している」といった課題の認識を示すとともに、これを踏まえて、「再生可能な資源である木質資源と森林空間を持続的に利用しながら、安全・安心で豊かな循環型社会を実現するため、また、森林資源の循環利用を通じ、我が国の人工林の若返りを図り、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献するため」と方向性を示し、4つの戦略課題を設定する形としてきております。
ほかの留意事項につきましても、御覧のとおり記載されております。
続いて、水産研究・教育機構のところを御覧ください。留意事項は1つございまして、水産資源のモニタリングに必要なデータの収集分析に関し、民間の船舶を活用した幅広い収集活動を行うとともに、ICT化の推進によって、収集から分析まで効率的に行うことを目標に盛り込んではどうかというものでございます。
対応する目標案の3パラを御覧ください。「漁業から得られるデータや民間用船等による調査の充実等も踏まえ」、水産機構における調査体制の検討を進める、と記載してきております。
また、ICTの活用という意味では、一番下パラの下線部で、「ICT等を活用した効率的・効果的なデータ収集及び分析」を進めるということを盛り込んできております。
次から国土交通省所管の法人になりまして、まず海技教育機構については、留意事項を1つお示ししていただいておりました。人口減少などがある中で、船員の安定的・効果的な確保・育成を進めるためにも、国の検討会の議論や業界のニーズを反映した海技教育の見直し及び練習船や学校施設運用の効率化に向けた取組を進めることについて、目標に盛り込んではどうかというものです。
こちらについて、下線部を御覧ください。「『船員養成の改革に関する検討会』の結果や業界のニーズを反映した海技教育の見直し及び練習船や学校施設運用の効率化に向けた取組を進める」ということを新たに目標に盛り込んできておりまして、教育の関係は、内航船と外航船の2つに分けて、それぞれ教育訓練の見直しについて書き込んできております。
施設・設備の関係につきましても、帆船を汽船に更新することも含めて検討ということで書き込んできているところでございます。
続いて、航空大学校です。航空大学校につきましては、留意事項が2つございました。1つ目が質の高い教育に必要な教員の人材確保・育成や訓練内容の向上に向けた取組を目標に盛り込んではどうかというものと、もう1つは安全管理体制の強化について御指摘いただいておりました。
1つ目の留意事項ですが、教育の質の向上については、学生への教育と教官の質の確保に分けて記載しておりまして、例えば学生の方では、航空会社と業務運営等に関して定期的に意見交換や情報交換を行い、パイロットに要求される知識・技能等を的確に把握して、教育内容、教育体制の充実を図るということを書いてきております。
もう1つの留意事項についても、御覧のように記載されております。
次の自動車技術総合機構に移らせていただきます。自動車技術総合機構については1つ指摘がございました。自動運転などの技術の高度化が進んでおりますので、新たな自動車技術に関する保安基準が増えることにより業務量が増加する状況を踏まえ、車検や型式認証審査の効率化、検査設備の整備を進めるとともに、扱う情報が機微なものになっておりますので、情報セキュリティの確保に向けた取組について目標に盛り込んではどうかという指摘でございました。
こちらの御指摘に対しては、「自動運行装置に係る基準適合性審査並びに自動車メーカーにおける自動運転車等のプログラムの適切な管理及び確実な書換えのための業務管理システム等に関する技術的審査をはじめ、自動車が市場に投入される前に実施する型式認証における基準適合性審査等の的確で効率的な実施に向けた取組を推進する」ということを新たに盛り込んできております。
また、セキュリティの関係につきましては、「情報システム基盤の整備及びセキュリティ対策等を進める」ということを盛り込んできております。
続いて、住宅金融支援機構については、3つ御指摘がございました。1つ目は、法人の専門性を生かし、地方公共団体や民間金融機関・事業者等との連携による地域課題の解決に向けた取組を進めることを目標に盛り込んではどうかというもの。2つ目としては、手続のデジタル化を推進してはどうかという御指摘。もう1つが、海外の住宅市場へ我が国の事業者が参入しやすいように、海外の住宅ローン支援制度の構築・支援に関する協力や、それに携わる人材の育成支援などのコンサルティング業務等に引き続き取り組むことを目標に盛り込んではどうかという御指摘でした。
1つ目の連携による地域課題の解決に向けた取組については、「地方公共団体とより連携を深めるとともに、他府省、政府関係機関、地域金融機関、住生活産業を担う民間事業者、地域住民の団体、NPO等との連携及び協力を強化する」ということを盛り込んできております。
もう一つ、手続のデジタル化に関する御指摘については、「業務運営の合理化及び効率化に資するIT基盤の整備を引き続き図るとともに、国民・事業者の負担の軽減・利便性の向上等を目指した取組として、デジタル化を計画的に推進する」と盛り込んできているところでございます。
最後に、環境省の国立環境研究所です。指摘事項が3つございました。1つ目は、法人が環境政策において果たすべき役割を今一度整理した上で、優先的に取り組むべき課題及び期待する成果を明示してはどうかというもの。2つ目が、法人が有する実績やポテンシャルをより分かりやすく効果的に発信することによって、リソースの確保につなげていってはどうかというもの。もう1つが、研究支援人材の確保について目標に盛り込んではどうかというものでございました。
1つ目の留意事項の関係を御説明します。目標案においては、「環境研究に関する業務」と「気候変動適応に関する業務」について、重要度「高」と設定して、集中的に取り組むという形で位置付けてきております。特に環境研究に関する業務は、我が国の環境政策の意思決定をするための科学的根拠を提供するものであるから重要だという、という考えの下、重要度を付してきているところでございます。
ほかの留意事項につきましても、御覧のとおり記載されております。
少し駆け足でしたが、個別留意事項への対応状況については以上でございます。
【樫谷委員】 ありがとうございました。ただいま報告いただきましたとおり、昨年、評価部会の委員と各府省・法人の間で議論し、それを踏まえて委員会からお示しした留意事項に基づいて、評価部会において目標案を点検した結果、留意事項にはおおむね対応していただいたと認識しております。評価部会としては、目標案について「意見なし」とする旨の結論に至りましたので、御報告いたします。よろしくお願いします。
【野路委員長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの樫谷部会長の報告について御意見等がございましたら、どなたからでも結構ですので、御発言いただけますでしょうか。
なお、毎度のお願いですが、国立環境研究所の監事を務めていらっしゃる天野委員におかれましては、申合せにより、当該法人に関する意見を差し控えるとともに、議決には参加しないこととされておりますので、よろしくお願いいたします。
【天野委員】 天野です。おおむね各主務省ともよく書いていただいていると思います。その上で、2点お願いがあります。まず1点は人材育成に関してです。来年度から始まる第6期の科学技術・イノベーション計画でもかなり大きなウエートで人材育成という項目が掲げられる方向で議論されているように、研修系の法人はもちろんのことながら、国立研究開発法人においても、研究開発成果の最大化とともに、人材育成への取組が強く求められていると思います。
ただ、人材育成と一言で言っても、法人の中での人材育成、日本国内での人材育成、グローバルな視点での人材育成という、3つの段階に分かれていると思います。それぞれの成果をきちんと出していただけるように、次の中(長)期目標期間中、主務省ともども頑張っていただきたいと思います。
もう1点は、各法人で成果を出していただく上での連携についてです。特に農林水産省所管の各法人やNC6法人が、それぞれ各主務省の枠の中で連携するということは大いにあると思いますが、それにとどまらず、各府省から独立した法人として、主務省を超えて連携して成果を出していただけるよう、ぜひお願いしたいと思います。
【野路委員長】 ありがとうございました。事務局から何かありますか。
【山本管理官】 人材育成については、確かに法人の中のみならず、国内あるいは社会全体における人材の底上げというのは重要な観点だと思います。先ほども少し御紹介しましたように、いくつかの法人についてはそういった点も意識していただいているようで、例えば情報通信研究機構の目標案には「一層深刻化するICT人材の育成にも貢献するものとする。」ということで、社会全体における人材の底上げについても意識していただいているかと思います。御指摘の点については、引き続き主務省に共有していきたいと思います。
また、主務省を超えての連携という点についても、我々としてもぜひ期待したいと思いますので、この点につきましても主務省にも共有していきたいと思います。
【天野委員】 よろしくお願いします。
【野路委員長】 ほかにございませんか。
【樫谷委員】 これは念のためですが、目標案のあちらこちらに「連携」というキーワードが出てきていますが、ここで言う連携というのは、各法人の担当者、研究者同士のネットワークに基づく取組なのでしょうか。そうした連携も非常に重要ではあると思いますが、昨年の委員会決定でお願いしている「連携」というのは、組織と組織の間で方針をきちんと取り決めて、一体となって取り組んでいただくことを意図して言っておりますので、ぜひそうした意味での連携・協働を進めていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
【野路委員長】 ありがとうございました。ほかに委員の方ございませんか。
【河合専門委員】 共通留意事項への主な対応状況ということで、新型コロナウイルス感染症対応の中で御説明いただいた、オンライン研修に関して申し上げたいと思います。来年度からの目標案については、オンライン研修と集合研修それぞれの利点を生かした形で検討いただくということで、大変よろしいかと思います。
また、本来であれば対面での実習が必要な研修などについても、一部業種では、VRを利用して、実際の感覚に近い形でオンライン研修を受けられるというシステムが最近出来上がっているようです。したがって、これから様々な事例が民間企業も含めて出てくるかと思いますので、そういった事例も参考に、実習系の研修を行う法人におかれましては、オンライン研修の可能性を柔軟に考えていただければと思います。
【野路委員長】 ありがとうございました。事務局から何かありますか。
【山本管理官】 河合専門委員の御指摘はおっしゃるとおりだと思います。今回、研修を主な業務とする法人を中心に、様々な法人について、研修の在り方を見直す機会だという認識の下に、目標案にもいろいろ書いていただいております。「研修体系の再構築」を目標に盛り込んでいただいた法人については、今、河合専門委員から御指摘のあった観点も参考にしていただければと思いますので、御指摘の点を共有していきたいと思います。
【野路委員長】 ほかにございませんか。
【野ア委員】 各法人の目標案を見まして、目標策定に当たって委員会決定で示した留意事項を十分に理解していただき、いろいろ工夫していただいているなと感じました。
その中でも、役職員のモチベーションや使命感を向上させるためには、法人の組織風土や役職員の意識にまで踏み込んだ取組を促していただくことは、私も大変重要だと思っています。ただ、各法人共通の留意事項として掲げたのに対応して、色々な対応策を目標案に盛り込んでいただいておりますが、それぞれ工夫を凝らした取組ではあると思いますが、実際に取組を進めるのはなかなか簡単ではないのではないかと思います。
以前、野路委員長から、人事がよどんでいて、前例に従って仕事をするという雰囲気になってないかという御指摘もあって、もしかするとそれが当てはまっている法人もあるかもしれません。そうだとすると、各法人の役職員の方には、社会課題や国全体の課題を解決するための参加意識を持っていただくことがとても重要なのではないかと感じました。
一つ当社の例を申し上げますと、当社は100年以上続いている会社ですので、良く言えば伝統ある会社なのですが、悪く言えば大企業病とも言うべきところがありまして、なかなかそういった参加意識がなかったのですが、最近それがよくなってきた一つのきっかけとして、プレゼン資料や連絡文書といった社内の文書に、国連が定めるSDGsの17の目標のアイコンを必ずつけることにすることで、自分の仕事が17のSDGsの目標のどれに直接的に、間接的にせよ、つながっているかということを個々の社員に意識させるようにしました。
最初のうちはなかなか意識は根づかなかったのですが、少しずつ、自分のやっていることが、事務職や管理業務であっても、最終的には社会貢献につながっているというような雰囲気が何となく出てきまして、何年もやっているうちにそうした意識が根づいてきました。今申し上げたように、組織風土や意識を変えていくというのは簡単なことではなくて、地道な取組が必要なことだと思いますので、粘り強い取組を続けていただきたいと思います。
【野路委員長】 ありがとうございました。事務局、何かありますか。
【山本管理官】 まさに御指摘のとおりかと思います。今般、留意事項でお示しいただいている課題は、コロナ禍にあってもきちんと法人としての使命を果たしていけるようにすることや、コロナ禍において今までのやり方が通用しないのであれば、ITなどを使ってやり方を変えていかなくてはならないということともに、そうした改革を確実なものとするためにも、役職員のモチベーション・使命感を向上させるよう、法人の組織風土や役職員の意識にまで踏み込んだ取組を促すことも目標に入れて欲しいということだったと思います。
野ア委員御指摘のとおり、組織風土や意識にまで踏み込んだ取組は簡単な話ではないかと思います。それぞれの法人には色々な風土もあるかと思いますので、それに合った形で取り組んでいただきたいと思います。今回、目標にもいろいろ書き込んできていただいておりますので、我々としても良い取組などがあったらぜひまた聞かせていただいて、共有していきたいと思っております。
【野路委員長】 ありがとうございました。ほかにございませんか。
それでは、私から一点申し上げたいと思います。天野委員がおっしゃった連携というのは、非常に大事なポイントだと思います。特に、コロナ禍で、連携がうまくいっていない現状が浮き彫りになったと思います。これはどこかがリーダーシップを取って連携すればうまくいくのか等、いろんな要素があるのだと思います。
例えばPCR検査も、大学など色々な機関がたくさんの検査設備を持っています。また最近では、変異型ウイルスの遺伝子解析に関しても、様々な大学が色々な設備をたくさん持っています。しかし、感染症対策において中心的な役割を担う国立感染症研究所とこれらの大学等機関との間でデータ共有も含めた連携が進んでおらず、なかなか全てのデータが出てこないということになっています。
連携の話も含めて、有事のときの体制をきちんと構築するべきだとおっしゃる方は多いのですが、民間企業の視点からすると、私は、有事でないときの活動が一番大事なのだと思います。有事でないときにどうやっていろんな連携をして仕事をしていくかということが、有事のときに大きな実力を発揮します。有事のときだけうまくやろうしても、民間企業でもそうですが、なかなかうまくいかないのです。
例えば、停電に備えて、非常用発電機をどこかの病院に置いておき、停電になったときだけ非常発電を使うこととしたとして、停電になったとき本当に非常用発電機は動くのかというと、なかなか動きません。なぜかというと、普段からメンテナンスをしていないからです。普段から動かしていないから、非常時に発電機を動かせる専門の人がいなかったら動かせないということになります。そういう設備は、私どもの会社もそうですが、常時動かしているからこそ有事のときに機能するのであって、非常時だけ、有事だけ動かすというのは、なかなか難しいんです。
もう一つ事例を挙げると、会議です。私もよく講演へ行くのですが、講演の司会者は、東日本大震災の後1年くらいは、もし講演中に地震や火災が起きたら、こうやって避難してください、あるいは地震の場合、この施設は耐震がしっかりしていますのでここにいてください、というようなことを説明されていました。ですが、最近は講演に行ってもほとんどの司会者はそういうことを言いません。これも日常性の問題です。私は海外でもいろいろやっていますが、海外の人はほとんどの場合しっかりと説明されています。
何事も日常からきちんと活動することが大事だと思いますので、法人のトップには、関係機関との連携にも日常から取り組んで行くよう意識していただきたいと思います。
それでは、ほかの委員もよろしければ、本件については、当委員会として「意見なし」とさせていただくことで御異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【野路委員長】 ありがとうございます。それでは、そのように取り扱わせていただきます。
法人においては、今後、目標に基づいて計画を作成していくことになると思いますが、今回、留意事項を踏まえて目標に盛り込んでいただいた点については、ぜひ、目標に基づいて着実に取組が進むよう、取組の具体化について検討を進めていただければと思います。
それでは、議題2について、樫谷評価部会長から御報告をお願いいたします。
【樫谷委員】 樫谷でございます。令和元年度における独立行政法人の業務の実績に係る評価の結果につきましては、昨年12月の委員会で審議を行いましたが、その後、国土交通省所管の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」について、令和元年度業務実績評価の見直しが行われたことから、評価部会において改めて点検を行いました。結論としては、著しく適正を欠く評価の実施と考えられるものではありませんでしたが、詳細について事務局から御報告をお願いしたいと思います。
【山本管理官】 事務局より報告いたします。鉄道建設・運輸施設整備支援機構では、北陸新幹線(金沢・敦賀間)の整備事業について、工事の遅延と事業費の大幅な増嵩が見込まれることが明らかになったことから、国土交通省において、外部有識者から成る「北陸新幹線の工程・事業費管理に関する検証委員会」を設置し、今般の工期遅延・事業費増嵩に至った事実関係の検証を行いました。
その結果、令和元年度の時点において既に、法人における工程管理・事業費管理の体制やルール、関係者間との情報共有の在り方に重大な課題が存在していることが明らかになったため、整備新幹線整備事業の工程管理及び事業費の管理の項目について、抜本的な改善を求める必要があると認められる状況に至ったとして、昨年(令和2年)12月22日、国土交通大臣において令和元年度評価の見直しを行い、その結果を踏まえ、法人理事長に対して業務改善命令が発出されたところです。
見直し後の評価においては、整備新幹線整備事業の工程管理及び事業費管理の項目について、業務の抜本的な改善を求める必要があるとして評定がCからDに引き下げられたほか、「事業費の効率化」及び「内部統制の充実・強化」の評価項目についても、検証委員会による検証の結果を踏まえ、改善を要すると考えられる点があるとして評定がBからCに引き下げられております。今後の課題として、検証委員会が取りまとめた中間報告書において示された改善の方向性を踏まえて、速やかに改善策を検討する必要があるとの旨が評価書に記載されております。
なお、機構におきましては、改善命令を踏まえ、今年(令和3年)1月29日に、業務執行体制の強化、関係自治体との情報共有の拡充といった改善措置を報告・公表しているところです。
国土交通省においては、一連の経緯を踏まえ、改善措置の確実な実施を盛り込んだ目標変更を今後予定していると聞いております。委員会に諮問されましたら、評価部会において御審議いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【野路委員長】 それでは、ただいまの説明につきまして、御質問等ありませんか。
【樫谷委員】 鉄道建設・運輸施設整備支援機構においては、北陸新幹線整備事業に関して、ガバナンスや内部統制の一部に改善を要する点があったということで、こうした問題が出てきたのではないかと思いますが、事業の着実な進捗に向けて改善措置が公表されておりますので、この改善措置を確実に実施していただきたいと思っております。私どもも、取組の状況を委員会としてフォローしなくてはならないかなと考えております。これがまず一点。
また、改善措置においても情報共有の取組が記載されていますが、法人内部や関係機関との情報共有をきちんと行うなど、内部統制の充実・強化が重要になるのは、北陸新幹線整備事業だけではありません。同じようなことがほかの事業でも課題になる可能性もないわけではないと思います。ほかの事業も含めてしっかりガバナンスを利かせていただくよう、改めてチェックしていただきたいと思います。
加えて、各法人においても改めて、ガバナンスが有効に機能しているかどうか、点検していただきたいと感じております。
【野路委員長】 ありがとうございました。そのほか、御意見等ございませんか。よろしいでしょうか。
それでは、本件につきまして、法人において改善方策を適切に実行していただくよう期待したいと思います。よろしくお願いしたいと思います。
それでは続きまして、議題3について、事務局から報告をお願いします。
【方企画官】 法人の取組事例について紹介します。これまでも委員会において法人の取組事例を紹介してきましたが、今回は特に取組の成果のみならず、取組を実施するに当たっての工夫に注視しました。内容としては、「デジタル技術を用いた新たな取組への挑戦」と「コロナ禍におけるデジタル技術の活用」として2事例、「戦略的な広報」について1事例、国立研究開発法人の「社会実装」に関する2事例、計5事例を紹介いたします。
まず、国立科学博物館の「デジタル技術を用いた新たな取組への挑戦とコロナ禍における活用」の事例です。
この法人では、コロナ禍以前からデジタル技術を活用した先進的な展示やアーカイブ等の取組を推進してきました。
コロナの影響が出始めると、実際、博物館に来ることが困難になりました。このような状況下、国立科学博物館では、高画質画像撮影により、自宅でも博物館にいるような体験が可能な、3DビューとVRによる「おうちで体験!かはくVR」を公開しました。
また、研究者の家族もアバターで参加できる「VR学会での展示」、遠方で来館できなくても授業等で展示を利用できる「大学における講義・実習」など、外部組織により様々な方法でVRが活用されました。
また、研究者自らが出演しポイントを伝え、科学に興味を持ってもらえるきっかけとなることを意図した動画「おちうでかはく、科学にふれる時間」を作成、計26本配信し、さらにNTTドコモと連携し、博物館の本物の剥製とXR技術で表示する頭骨の3Dモデルをその場で見比べて学ぶ「XRで楽しむ未来の博物館」を試行的に実施しました。
これら取組が成功したポイントは、デジタル技術を活用して、標本資料の価値を引き出し公開するノウハウの開発と蓄積、またデジタルデータの取扱い に詳しい専門人材を登用し、技術面からもデジタル化を推進する体制を整備してきたことが挙げられます。また、プレス発表やテレビ放映といった広報をきっかけとして、民間企業との連携やデジタル化を実現してきたことが挙げられます。
今後は、多言語展示解説支援システム「かはくHANDYGUIDE」の運用開始など、アフターコロナを見据えて、デジタル技術を活用した取組、オンライン事業を推進し、新しい博物館の楽しみ方と利用者層の開拓をしていくとのことです。
また、令和3年度以降、博物館の情報発信、他館との相互連携、VRを使った新しい取組も検討中とのことでした。
以上が国立科学博物館でございます。
それでは、次のページに移りまして、国立美術館の「デジタル技術を用いた新たな取組への挑戦とコロナ禍における活用の事例」です。
この法人では、コロナ禍以前から、デジタル技術を活用した収蔵品の新たな楽しみ方を提供してきました。具体的には、2Dの「インタラクティブ鑑賞ウォール」や3Dの「8Kインタラクティブミュージアム」であり、これらは8Kモニターを使用した2D・3D鑑賞システムで、作品の細部や通常の展示では見ることが難しい裏面などをじっくり楽しむことができるものです。例えば、間近で見たり、直接手に取ったりすることが難しい貴重な美術作品などの鮮明な画像を超高精細の8Kディスプレイに表示し、タッチパネル操作で見たい部分を自在に拡大・縮小、回転しながら鑑賞できるシステムと聞いております。
コロナの影響が出始めると、前述の国立科学博物館同様、館に来ることが困難になりました。このような状況下、国立美術館では、スマホアプリ「日経VR」で所蔵作品展の3D・VR動画を公開し、また展覧会を解説つきで生中継する「ニコニコ美術館」で特別展の模様を配信するなど、外部メディアを活用した発信を積極的に実施しました。
また、従来から実施していた「対話鑑賞」、資料の説明にありますが、受け身で解説を聞くのではなく、観察し感じたことや考えたことを言葉にし、複数の参加者で話し合いながら進めていく鑑賞方法で、欧米の美術館で盛んに取り入れられている、探求的な鑑賞のことを言うものでございますが、これを、Zoomを用いてガイドスタッフと6人の参加者が対話鑑賞するかたちで、「オンライン対話鑑賞」を開催しました。
これら取組が成功したポイントは、広報と学芸員が協力して館の魅力を訴えるように心がけている点であります。広報が日頃から付き合いのあるメディアからのオファーに館としてベストなコンテンツを提案するなど、「効果的な媒体で、効果的に館の魅力を伝えるよう心がけている点」が重要です。特に、先ほど紹介しました「ニコニコ美術館」は、NHKニュース等でも紹介されまして、これに関するメディア取材への広報の対応により、配信だけでなく、その取組自体がメディアで発信され、閲覧が増えたと考えられるとのことでした。
なお、資料には記載しておりませんが、平成30年度から法人本部に渉外・広報課を設置し、広報の充実を図るよう組織体制を整備しまして、民間経験者も採用しております。
今後は、注目度が高く、高評価となっている「オンライン対話鑑賞」を継続し、アフターコロナを見据えて、オンライン対話鑑賞の遠隔地(沖縄の学校等)への配信や企業研修等での活用、更には他の美術館への横展開も検討しているとのことであります。
国立美術館は以上です。
それでは、次は製品評価技術基盤機構(NITE)の事例です。NITEでは、目標管理の工夫や効果の分析・検証を通じて戦略的な広報を行っています。
NITEは、「製品安全の確保を通じた国民生活の安全の確保という使命の達成」に向け、職員一人一人の高い意識の下、(1)タイムリーかつ継続的な情報発信、(2)広報媒体の視聴動向の分析による広報活動改善に向けたフィードバック、(3)「広告換算費」概念の導入等アウトカム指標による目標管理などにより、戦略的な広報活動を実施しています。
なお、広報コンテンツは広報の対象、例えば年齢層などを意識した適切な手段を用いながら、自前で作成しております。従来からあるパンフレットなどの印刷物による広報に加え、最近では特にSNSを利用した広報、YouTubeやTwitterなどにも力を入れております。
メディアを利用したNITEの広報の特徴として、1点目にあります、タイムリーかつ継続的な広報を行っています。例えば1枚目の図にありますように、冬季には暖房器具の使用が増えることを想定し、ストーブの使用に関し注意喚起する動画を作成し、次のページの(1)にありますように、冬の死亡事故に注意する観点から、除雪機の安全装置の正しい使い方や発電機・温水機器・暖房器具による一酸化炭素中毒の防止、また最近ではテレワークの普及という社会変化に対応し、プラグやコードの取扱いに注意を促すなど、国民生活に密着した情報や社会情勢の変化に対応した「お役立ち情報」などを適時・的確に発信しています。
前のページの2点目ですが、情報発信を行って終わりにすることなく、動画等の視聴者のアクセス傾向などを分析し、より多くの人に見てもらえるよう工夫を行っています。例えば、2枚目にありますように、YouTubeの視聴・アクセス動向を分析し、「動画の長さについて45秒から90秒で取りまとめ、長くとも120秒を上限とする」など、分析結果のフィードバックを行っております。
次に3点目、これは民間でも広く行っている手法と聞いていますが、広報の取組状況を的確に評価・分析するため、アウトプット指標のみならず、広告換算費の概念の導入やメディア掲載数などのアウトカム指標に注目した目標管理を実施している点です。
アウトカム指標としましては、広告換算費のほか、テレビ放映、新聞・ウェブニュース掲載件数、あるいは最近ではYouTubeの登録者、再生数、Twitterのフォロワー数などを挙げております。
なお、これらアウトカム指標による広告換算費は、令和元年度で目標額9.8億円のところを、14.7億円の効果があったというふうに評価をされております。
NITEは以上であります。
次から2点は、国立研究開発法人の社会実装に関する事例であります。
1つ目は、情報通信研究機構(NICT)です。「法人が開発した技術を、一般ユーザーを対象とした大規模実証実験を通じて、オープンイノベーションにより、効率的に社会実装に繋げた事例」です。NICTでは、最先端技術の開拓、研究開発を行うと同時に、それらの成果を利用した実証を、具体的社会課題に向き合う様々な組織や活動と連携して推進することで、オープンイノベーションの理念の下で実践的な研究開発を促進しています。
今回、御紹介する事例は「VoiceTra」です。これまでも何度か委員会で御紹介した事例でもあり、委員の皆様もよく御存じである「多言語翻訳技術」に係る研究開発です。これまでは、その研究成果、特に社会実装された成果について御紹介してきましたが、本日は、この技術がどのように「早期」に社会実装に至ったかについて、そのオープンイノベーションの手法について説明します。
資料にございますように、NICTでは実証実験を目的とした多言語音声翻訳スマートフォンアプリ(VoiceTra)を公開して、社会で多言語翻訳技術を広く普及させるとともに、実証実験によって得たフィードバックを研究開発に活用し、その結果、多数の製品やサービスが商用化されています。
まず、ステップ1として、最新の多言語翻訳技術を広く普及させるとともに、一般ユーザーを対象とした大規模実証実験を通じて、社会からフィードバックを得、翻訳事例を蓄積することを目的に、実証実験用無料アプリとして一般公開しました。
ステップ2として、VoiceTraの実用性の高さを体験してNICTの多言語翻訳技術を組み込んだ商用サービスを検討する民間企業等に対し、契約に基づき、APIを活用する開発キットを期間限定で提供、試作環境を提供することにより、民間企業における商用化の可能性の検討を容易にしました。
そして、ステップ3として、民間企業による商用レベルでのNICTの多言語音声翻訳技術の評価や、その技術を組み込んだ独自製品、サービスの試作の結果、それらの商用化を希望する企業には、必要な技術をライセンス供与しています。その結果、多数の製品やサービスが商用化されています。資料の一番下にございますように、例えばソースネクストのPOCKETALKなどが有名でございます。
次に、資料の2枚目を御覧ください。民間企業のみならず、公的機関とのオープンイノベーションとして、救急現場で使用頻度が高い会話内容を定型文として追加した「救急ボイストラ」を総務省消防庁と共同で開発し、全国の消防本部へ提供している例もあります。
また、その他の取組として、NICTの研究開発成果(シーズ)が産業界、大学、地域等に活用されるよう、OI本部(オープンイノベーション推進本部)を中心として、NICTシーズ集を令和元年6月から公開しております。
また、技術相談などの活動を通し、研究開発で得られた成果や専門的知識を生かして企業との連携を広めるなど、オープンイノベーションを推進する取組を実施しております。
以上、NICTでございます。
最後には、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の社会実装の事例であります。こちらの社会実装につきましては、「ビジネスコーディネーターを効果的に活用し、研究成果の社会実装に向け民間企業と連携した事例」ということで紹介します。
農研機構では、スマート農業等の新たな研究課題に対応するため、農業に限らず、幅広い先進分野の実績を有する人材をビジネスコーディネーターとして外部から採用し、ビジネスコーディネーターがマッチングから開発方針の取りまとめまで一貫してコーディネートを行うことで、民間企業との共同研究を推進しています。
今日御紹介する事例は、シャインマスカットなど付加価値の高い農産物を、新規参入者など栽培経験が浅い生産者でも安定生産が可能となる技術を開発した事例です。
この事例では、企業からの開発相談、交渉・契約締結、アプリの開発の各工程で一貫してビジネスコーディネーターが関わっています。
スマート農業の実現に情報通信技術は欠かせないところですが、このシャインマスカットの事例においても、(1)農研機構の研究開発成果であるシャインマスカットの「農作物栽培マニュアル」等のデジタル化、(2)IoTセンシングデータを用いた「圃場環境データ」のデジタル化、(3)デジタル栽培マニュアルと栽培データを連動させて農業生産者に栽培支援情報を提供するアプリの開発、更には(4)通信インフラ・クラウドなどのICT環境の提供など、幅広いICTに関する知識・経験が必要となります。
資料2枚目を御覧ください。この事例を担当しましたビジネスコーディネーターは、製造業でソフトウエアやハードウエアの開発に従事し、金融システムの構築を担当し、またICT技術(ネットワークやOS)、プロジェクトの推進、動向調査、事業計画づくりに精通した者です。
当該コーディネーターは、農研機構側の企業との総合窓口として研究部門と連携し、(1)農業を強い産業にするための科学技術イノベーションの創出に取り組んでいる農研機構、(2)ICTを活用し、地域の課題解決や成長を目指すNTT東日本、(3)初の農業×ICT専業会社として農業現場でのICT活用を進めるNTTアグリテクノロジー、更には(4)農業試験場等の生産者との間に立ち、調整の場をつくり、独自の栽培方法に合ったアプリ操作性への異なる要求などの調整も含め、お互いが満足するアプリ開発方針の取りまとめに奔走しました。
なお、令和3年内の本格展開に向けて、各地域の公設農業試験研究機関や地元生産者の協力を得てフィージビリティースタディーを行う予定と聞いております。
参考2 では、産業界と連携するきっかけとして4点挙げております。まず、理事長のトップセールスであるとか、学会等での情報交換、技術相談などの様々な取組を実施しておりました。
以上、5つの事例を紹介しました。既に民間等では当然のこととして実施しているものも多々含まれており、必ずしも先進的とは言えないとの指摘のあるものもあります。しかしながら、今回は取組の「工夫」に焦点を当てたこともあり、このような法人の積極的な「工夫」を委員会の場で紹介することにより、他の法人の異なる業務における一手法として参考となることを期待するものであります。
なお、今後の事例紹介としては、委員会で議論のあるテーマ、例えば「人材活用・人材確保(デジタル人材を含む)」、「様々な関係機関とのデータの共有・活用」、あるいは「コロナ禍における取組(博物館や美術館の収益確保や、新たな日常に対応した取組など)」についても調査を進めたいと考えております。
以上、説明を終わります。
【野路委員長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について御質問等ございませんでしょうか。
【天野委員】 色々と面白い事例を紹介していただきましてありがとうございました。
今回紹介していただいたような取組事例については、昨年度までは他の法人の参考になるような取組について、シンポジウムなどで広くお知らせしていたかと思いますが、コロナ禍において、こうした取組事例を、それこそデジタル情報として発信するようなことを、事務局として何か計画していれば教えていただきたいと思います。
【方企画官】 是非、法人の皆様に活用していただけるような場を設けたいと考えており、例えばそういう特設のサイトを設けるということもあり得るのかと思います。今後、デジタル化なども含めて検討していきたいと考えています。
【天野委員】 ありがとうございます。法人の関係者のみならず、国民の皆様方にも、法人がこういう活動をしているのだということをお知らせする良い機会だと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
【方企画官】 かしこまりました。
【野路委員長】 ありがとうございました。ほかにございませんか。
【原田委員】 1つだけコメントさせていただければと思います。今日伺ったお話はどれも非常に興味深い内容でしたが、我々の取組事例の紹介の仕方によっては、受け取る側からすると、「外部から広報に詳しい人を連れてくればそれで済むのではないか」と受け止められてしまうのではないかというところも少し心配をしています。
何か新しいアイデアやイノベーティブな取組というものを持ち込む人と、それに共鳴する人というのがいて、初めて新しいイノベーションというのが生まれるとすると、組織の内部で、そうした画期的な取組に対して「いいね」というボタンを押して後押ししてくれるような人を内部でしっかりと育成していくことも重要なのだということは、伝えていく必要があるかと思います。
【野路委員長】 ありがとうございました。浜野委員。
【浜野委員】 大変興味深い御報告ありがとうございました。今回紹介いただいた取組はコロナ禍になって突然全く新たに出てきたわけではなく、従来からデジタル技術の活用に取り組んでいたところ、コロナをきっかけに新たなチャレンジとして取り組んだという御説明もあったかと思います。この委員会でも以前に指摘があったかと思いますが、法人の皆様には、コロナ禍をネガティブに捉えるだけではなく、新たな取組にチャレンジする機会になっているんだというポジティブな感じで捉えていただきたいと思います
また、国立美術館のところでは、広報と学芸員が連携した結果取組が成功したというお話もありましたので、法人内の部門間での連携の重要性についても、各法人の皆様には御理解いただければと思います。
加えて、こうした社会実装等に向けた取組が、各法人の自己収入拡大につながっていけば良いと思いますので、先ほど天野委員からも御指摘のあったとおり、メディア等で法人の取組を広く色々な方に知っていただいて、次のステップに進んでいただければと思いました。
【野路委員長】 ありがとうございました。ほかにございませんか。
【高橋委員】 事例の紹介ありがとうございました。他の法人にも参考にしていただくという意味では、私もお知らせの仕方には工夫が必要かなと思います。他の法人が参考にするに当たっては、どういう点に苦労したのか、今後の課題として何が残っているのかということを知りたいのではないかと思います。これまでにこの委員会の場で発表いただいた事例では、お話を伺う中でそういった質疑応答ができて、大変役に立ったのではないかと思いますが、コロナ禍ですから、委員会の場にお越しいただいてお話を伺うことができないのは致し方ないなと思います。
そこで事務局に2点ほど伺いたいのですが、まず1点目として、国立科学博物館や国立美術館の事例の御説明の中で、デジタル技術を活用してコロナ禍をうまく乗り越えているというお話があったかと思いますが、「アフターコロナを意識して」という表現もあったので、どう意識しているのかということが非常に気になりました。デジタルを使って新しい楽しみ方が出てくるというのは非常にいいことだと思いますが、基本的には、例えば国立科学博物館であれば標本・資料に触れてほしいというのは、国立科学博物館に行った人なら必ず思うことだと思いますし、国立美術館にしても、こんな展示が見られるんだということがオンラインで分かったら、次は実物を見てみたいなと思うのではないかと思います。
ですので、リアル(美術品等の実物の鑑賞、直接の来館)との結びつきをどのように実現していくかという工夫が次の課題になるのではないかと、お話を伺って感じました。短くまとめた中ではなかなか御説明が難しかったと思うので、もしその辺りについて聞いていれば、ぜひ教えていただきたいというのが1点です。
それから2点目は、先ほどの次期目標案の審議のときにも申し上げていて、ある程度お答えいただいている部分もありますが、オンラインで事業を展開するときに、いかにして収益性を確保するかというのが大きな課題としてあると思います。先ほどの次期目標案の御説明の中でも、例えば国立美術館でも悩んでいるようで、目標案の中にクラウドファンディングというワードも出てきておりましたが、具体的には計画にきちんと書き込んでいくつもりだということが分かりました。
一方で、そんなにのんびりもしていられないと思います。現在あるリソースでどの程度のことができて、現状からさらに発展したり現状での課題を解決したりするためにはどれくらいの資金規模が必要かというのは、今までの取組の中でもある程度分かっていると思いますが、今後どのように更なる発展や課題解決を図っていくかを考えているところと思いますので、事務局の方で何かお聞きになっていたら教えていただきたいと思います。
民間の美術館では、例えば森美術館はオンラインでの展示は有料化する方法で考えているそうです。また、リアルへの結びつきについても、今後リアルに帰ってくるところを強く意識して考えているということを館長さんがおっしゃっていました。私は、そこまでやるのか、と非常に感銘を受けました。
次期目標案の中でも、入館者が会場に来られない中にあって、満足度評価のような形で成果を測っていくというお考えもあるという説明がありましたが、無料で満足するのとお金を払って満足するのは、実は違うのです。お金を取って対価に見合うだけのものが提供できたかということが大事なのであって、無料で提供してアンケートで「良かった」という回答をもらっても評価としてはあまり意味がないので、その辺りが今回の課題かなと感じました。事務局で調べた中で気づきの点などがあれば、教えていただきたいと思います。
【方企画官】 1点目の実物との結びつきについては、訪問した国立科学博物館も国立美術館も、現在は会場にお越しいただくことは難しいが、本当は現物を見ていただきたい、という考えは強く感じたところです。コロナ禍にあって、いかにリアルのものをデジタル技術を活用して展示していくかが重要だと考えているものの、今後はリアルとデジタルの連携についても考えていく必要があるといった考えも、若干ながら聞かれたところです。
2点目の収益の関係については、国立科学博物館・国立美術館とも収益が減っているというのは事実であって、例えば先ほど御説明した国立美術館においては、クラウドファンディングなども含めて、どういった収益確保の手段が考えられるのかも検討しているということでございました。
コロナ禍における収益確保のための取組についても、今後、色々な工夫の事例が出てくるかと思いますので、引き続き事務局で調査し、取組事例を共有していきたいと考えています。
【野路委員長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
それでは最後に、議題4「その他」ということで、樫谷評価部会長から御発言があると伺っていますので、よろしくお願いします。
【樫谷委員】 昨年末の委員会において原田委員から御発言いただきました独立行政法人制度改革のフォローアップ調査について、事務局において調査票を取りまとめていただき、2月9日に各主務省及び各法人に発出していただきました。この調査を通じて、新しい独立行政法人制度の仕組みや運用の現状や改善すべき点などをしっかり把握できればと考えております。主務省及び法人の皆様には、忌憚のない御意見を聞かせていただければと思いますので、お忙しいところかとは思いますが、独立行政法人制度の発展のため、ぜひ御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
【野路委員長】 樫谷評価部会長、ありがとうございました。ただいまの御発言について補足などございましたら、どなたでも結構ですので、御発言いただけますでしょうか。
よろしいでしょうか。それでは、調査への御協力をどうぞよろしくお願いいたします。
最後に、本日の議論全体を踏まえまして、私から一言申し上げたいと思います。
今後の独立行政法人のデジタル化の取組について、メモを私から提出させていただきましたので、御覧いただけますでしょうか。日本はコロナ禍にあって、デジタル化について様々な問題が浮き彫りになっており、菅政権になって、特にデジタル化について取組を一層加速していこうとしているところです。こうした中で、私の経験に基づいて、デジタル化とは何なのかということを少し整理させていただきました。少しでも各独立行政法人の参考になればと思い、資料として提出させていただきました。
資料の真ん中辺りに記載しましたが、一般に「デジタル化」と言われる取組には、3つの種類のものがあると考えています。
1つは、従来の仕事のプロセス・やり方をデジタル化して、システム化を図ることで業務を効率化するというものです。これは、基幹システムの導入や、独法内のそれぞれの業務分野間の連携といった取組を通じて業務の生産性を上げていくというものであり、法人内での生産性向上を図るものです。
2つ目は、デジタル技術を活用して、各法人が色々な技術、モノ、サービスを創造して、「新しい価値」を見出していくというものです。デジタル化によって「新しい価値」を創造することが、デジタルトランスフォーメーション(DX)と言われるものです。
3番目には、デジタル技術を活用して、法人の枠を超えて、データのプラットフォームを社会に提供していくことで社会的な課題を解決するというものです。「デジタル化」には、大きく分けるとこの3つがあると考えています。
各法人の目標には、「デジタル化」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といった記載が盛り込まれていますが、今後取組を進めるに当たっては、各法人において、自分たちの取組がいま申し述べた3つの「デジタル化」うちのどれに相当するものなのかを意識した上で進めないと、「デジタル化」がしきりに叫ばれているからデジタル化をするということで、デジタル化自体が目的となってしまうのではないかと思います。
その上で、まず1番目の「デジタル化」についてですが、これはもう皆さん御存じかと思いますが、従来の仕事のやり方をそのままデジタル化してもほとんど効果はなく、まず社内の業務プロセスの改革に取り組む必要があります。ERPなど色々なシステムを導入するに当たっては、法人内の組織風土や仕事のやり方をまず改革することを前提にした上で進めることが重要です。
そして、2番目・3番目の「デジタル化」こそが、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ぶべきものです。従来のIT化とデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、分けて考えた方が良いと思います。
2番目の「デジタル化」について、各法人は社会や国民に色々なサービスを提供していますが、これらをデジタル化するに当たっては、ただそのままデジタル化しても新しい付加価値は生まれません。国民の利便性を少し向上させるだけでは、なかなか使ってもらえるようにはなりません。デジタル化に当たっては、それによりどのような新しい付加価値が付与されるのか、国民や社会にどんな付加価値を提供すればそのサービスが使われていくようになるのかということを考えていかなくてはいけません。
3番目の「デジタル化」については、やはりデータのプラットフォームを提供することが重要です。各法人には色々な情報やデータがどんどん入ってきますので、そのデータをプラットフォームに入れて、国民がそのデータを使って様々な取組を進めていく「エコシステム」を構築していくことが重要です。
エコシステムは3層に分かれています、IoTを活用することで、プラットフォームに入れるデータを収集できますので、IoTが根幹の層に位置付けられます。真ん中の層に、クラウドというデータのプラットフォームが位置付けられます。そのデータを活用して作られる、社会的な課題を解決するようなソリューションのアプリケーションが一番上の層です。プラットフォームに入れたデータをオープンにすることで、多くの方が次々とアプリケーションプログラムを開発していくことで、エコシステムがどんどん出来上がっていく。あるいは、こんなデータが欲しい、と思った人が、新たな計装技術を開発してIoT機器を作るということもあるかもしれません。そのような形にすると、エコシステムがどんどん発展していって、スピード感を持って社会的課題を解決していくことができます。
私の会社でも、この3つのデジタル化の考え方に基づいて、色々なビジネスをやっていますので、私が日頃やっていることを少し整理して皆さんにお話ししました。私からの話は以上です。
それでは最後に、事務局から次回の日程等について説明をお願いしたいと思います。
【山本管理官】 次回の日程につきましては、別途連絡させていただきます。
併せて、いま委員長からお話があったデジタル化・デジタルトランスフォーメーション(DX)の関係のお話については、せっかく委員長からも資料を御提出いただきましたので、是非各主務省に共有させていただきたいと思いますので、御承知置きください。
【野路委員長】 ありがとうございました。それでは、以上をもちまして、第29回独立行政法人評価制度委員会を閉会いたします。
本日は、皆様お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。
(以上)

ページトップへ戻る