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第13回独立行政法人評価制度委員会 議事録

日時

平成29年12月4日(月)13時29分から15時12分まで

場所

中央合同庁舎第2号館地下2階 第1〜3会議室

出席者

(委員)野路國夫委員長、樫谷隆夫委員長代理、天野玲子委員、梶川融委員、金岡克己委員、栗原美津枝委員、高橋伸子委員、中村豊明委員、原田久委員

(事務局等)山下行政管理局長、堀江官房審議官、栗原管理官他

議事

  1. 独立行政法人の中(長)期目標の策定について
    (平成29年度に中(長)期目標期間が終了する24 法人に係る見込評価及び業務・組織の見直し関連)
  2. 平成28年度における独立行政法人の業務の実績に係る評価等の結果について
  3. 法人活性化事例について
  4. その他
配付資料

議事録

【野路委員長】 それでは、定刻になりましたので、ただ今から第13回独立行政法人評価制度委員会を開会します。
それでは、まず、議題1について、樫谷評価部会長から説明をお願いします。
【樫谷委員】 樫谷でございます。それでは、議題1の独立行政法人の中(長)期目標の策定について(案)というのがございます。資料1ですが、詳細は事務局に御説明いただきますけれども、総論部分というか、コンセプトについて少し御説明をしたいと思います。10月16日の独立行政法人評価制度委員会での御意見を踏まえまして、各ユニットにおきまして24法人にかかわる調査審議を進めてきたところでありますが、並行して今年度以降の当委員会の活動方針、考え方についても事務局とも相談したところであります。
まず、本年度24法人に関する見込評価、業務・組織の見直しにつきましては、必要があると認めるときは主務大臣に意見を述べなければならないと、通則法の第35条3項に定められておりますが、今般の調査審議の結果、ともに意見なしとしたいと思います。他方、独立行政法人評価制度委員会での御意見、あるいは、ユニットにおける委員各位の御意見を踏まえると、新たな独立行政法人評価制度のもとでは、PDCAサイクルを機能させる、これも同じところをグルグル回るPDCAサイクルではなくて、上がっていくスパイラルというスタイルのPDCAサイクルを機能させるためには、まず、目標策定過程を通じ、主務大臣と独立行政法人との間で独立行政法人のミッションをしっかり共有することが必要です。
それから、日々の政策実施については、独立行政法人トップがミッションを組織内に浸透させ、その達成に向けて不断に自己改革を行っていただきまして、より高みを目指すことが何よりも重要であるということで認識が一致しているところだと思います。また、ユニット内でも御意見をいただいているところでございますが、我が国の様々な課題を鑑みるに、国の政策実施に大きな役割を担う法人が、その専門性・人材といった強みを最大限発揮して、各府省、法人の共同により国の政策課題を解決していくことが、これまでにも増して重要となっており、これは各ユニットとも意見が一致しているところだと思います。
このような状況を踏まえまして、独立行政法人評価制度委員会として、何ができるのかということを考えたときに、調査審議を通じて各主務大臣が政策実施に当たって独立行政法人にこのような役割を担ってほしいと考えていることが分かってきましたので、そうであるならば、独立行政法人評価制度委員会としては、こうしたことを目標策定に当たって考えてみてはどうかと提案、後押しをすることができるのではないかとの観点で、今年度以降、主務大臣が目標を策定するに当たっての留意事項をまとめてはどうかと考えております。こうした観点に立ちまして、考え方を整理したものが資料1でございますので、詳細を事務局から説明させたいと思います。よろしくお願いします。
【栗原管理官】 事務局より御説明させていただきます。まず、説明の前に、資料1から3につきましては、紙でも配付させていただいておりますので、そちらを御覧ください。資料1の独立行政法人の中(長)期目標の策定について(案)について御説明申し上げたいと思います。
まず、資料1の構成でございますが、3段構成になっております。1.で新たな独法制度の趣旨を改めて確認し、2には目標策定に当たっての独立行政法人評価制度委員会の視点というものが書いてあり、3にそれを踏まえた今後の独立行政法人評価制度委員会の活動が書かれています。要は過去、現在、未来といった構成をとらせていただいております。まず、1について御説明申し上げます。御案内のように平成27年4月から施行されました新たな独法制度でございますが、次の1段落目のキーワードを拾っていきますと、中央省庁改革に伴い独法制度を導入した本来の趣旨にのっとり、主務大臣から与えられた明確なミッションの下で法人の長のリーダーシップに基づく自主的・戦略的な運営、適切なガバナンスにより法人の政策実施機能の最大化を図ることを目的としたものであります。
2段落目でございますが、この新たなスキームの下では、独立行政法人が政策実施機能を最大限発揮するために、目標策定から法人の政策実施、業績評価、業務・組織の見直し、新たな目標策定、要はPDCAサイクルとPダッシュに主務大臣が一貫して責任を果たすということとしたところでございます。その際、政策実施を直接担うのは法人でございますので、PDCAサイクルを機能させるためには、特に以下の二点が重要であります。一点目は目標策定過程を通じまして、主務大臣と法人との間で法人のミッションをしっかりと共有すること。二点目は政策実施については、法人トップがミッション及び目標等を組織内の各階層に浸透させ、その達成に向けて、不断に自己改善を行ってより高みを目指すことであります。
特に、独立行政法人評価制度委員会で最も重視しております目標策定に関しましては、主務大臣が独立行政法人の政策実施機能をいかに最大化できるかという観点から、法人業務について国の政策の中での期待する役割、位置付けを示し、また、他の主体との分担や共同が必要なものについては、その具体的なあり方を示すことなどにより独立行政法人が達成すべき目標を可能な限り具体的、明確に示すことが必要であります。その際でございますが、ユニットでもいろいろ御議論いただきましたが、業績評価を客観的に行うということを過度に考慮するあまり、独立行政法人のミッションとの関係で意味の乏しい数値目標を設定するようなことは本末転倒ということでありまして、目標策定に当たっては法人に正しい「努力の方向性」を示すことが何よりも大事であるということに留意すべきでありますということでございます。
なお、業績評価、業務・組織の見直しについては、それ自体で完結するものではなく、あくまでも次の目標策定を的確に行うための重要な手段であるということを意識しつつ、取り組むべきでありますということが一番に書いてございます。ここにつきましては、前回、10月16日の独立行政法人評価制度委員会でも考え方として改めて御議論、確認させていただいたところでありまして、そうした認識の下でユニットでも議論を進めてきたところでございます。それを踏まえましてこのような新たな制度であることの認識に立ちまして、本年度の24法人の調査審議を進めてきたところでございますが、その目標策定に当たっての視点を取りまとめたのが2.法人の中(長)期目標の策定についてでございます。
まず、最初の段落でございます。これは各ユニットでの御議論の際に、法人を取り巻く課題等を議論いただきました。その結果を踏まえますと、生産年齢人口の減少、それから、地域の高齢化、エネルギー・環境問題といった課題に直面している一方で、第4次産業革命のイノベーションというものをあらゆる産業や社会生活に取り入れること、すなわち社会実装することなどを通じて、こうした課題を解決するだけでなく、人口減少下においても成長できる社会の実現につなげていく仕組みを構築するのが我が国にとっての喫緊の課題であるということをいろいろ御議論いただいたと思います。
そうした御議論の中で、独立行政法人に何を求めるのかというのが次の段落でございます。やはり国の行政の一部として政策実施に大きな役割を担う法人が、その専門性、人材面での強みを最大限発揮して各府省、他法人や地方公共団体、民間部門等との分担と協働によりまして、こういった国の政策課題を解決していくことがこれまでにも増して重要となっている。そういった状況であるということで認識が一致したかと思います。
そうしたことを踏まえますと、主務大臣、独立行政法人に行っていただきたいことというのがまさに三段落目でございます。主務大臣は従来の目標の延長線上で新たな目標をどうするかというのを考えるのではなくて、法人の長とも十分議論を行い、政策課題を取り巻く環境の変化、それから、正しい認識や法人の持つ専門性・人材性の現状について客観的な分析をした上で、仮に法人の中に足りないものがあれば、ベンチャーを含む民間部門の新たな技術や知恵等、外部の活力をどのようにいかせるかなども含めまして、政策課題の解決に向けた具体的な道筋を検討の上、目標を策定していただきたいということ。また、目標の策定を受けまして、こうした政策課題の解決を担う法人におきましては、法人の長のリーダーシップの下で組織内の各階層がミッションの達成に向けて進むマネジメントが行われなければならないということでございます。
これを受けまして、今回の独立行政法人評価制度委員会決定の肝になりますが、今般、独立行政法人評価制度委員会におきまして、この中(長)期目標の調査審議を行うに当たって重要と考えられる視点を以下のとおり取りまとめてはどうかというものでございます。主務大臣は、今後の独立行政法人の目標策定に当たっては、事務・事業の特性、規模等踏まえながら、特に以下の視点から目標に盛り込むことについて検討していただきたいと考えるということで、各主務大臣に対して独立行政法人評価制度委員会として投げかけをしてはどうかというものがこちらでございます。内容としては、以下(1)(2)にございます(1)から(4)のとおりでございます。重要なところでございますので、読み上げさせていただきます。
(1)独立行政法人の事務・事業についての目標策定に関して、(1)人口減少社会の到来により、人材確保やノウハウ継承が困難となっている分野等について、独立行政法人がその専門性・人材面での強みをいかし、特に、地域の地方公共団体、非営利法人、民間企業等を支援する役割を積極的に担うことを目標に盛り込むことを検討してはどうか、(2)府省や他の法人等関係者と日常的に密接に連携して、オールジャパンで対応すべき国の政策課題(例:資源外交、インフラ輸出、農産物輸出、インバウンド増、国際競争力強化等)が増加している。国の政策課題の解決に向け、国・法人・その他関係者間の役割分担(業務)を明確にしつつ、協働体制を確立・強化することについて、具体的な内容を目標に盛り込むことを検討してはどうか。
(2)「独立行政法人マネジメントに着目した目標」及び「評価の在り方」に関して、(3)チャレンジングな取組や目標期間を超えた長期的な取組、地道なマネジメントの取組を後押しするため、直接的な結果の成否ではなく、結果に至る過程において的確なマネジメントを行って業務改善につなげることや、取組過程で得られた知見の他分野での活用等、プロセスにおけるマネジメント自体を目標に盛り込み、適切に評価することを検討してはどうか、(4)独立行政法人の長のトップマネジメント(役職員へのミッションの浸透、業務改善への取組、主務大臣への提言等)についての取組を促すとともに、それを適切に評価した上で、法人自身がより高みを目指すことを促すことができるような目標策定を検討してはどうか、というところでございます。
次に、今後の状況、今後の当委員会の活動についてというのを示したのが3.でございます。これは(1)と(2)に分かれますが、(1)につきましては、中(長)期目標の策定の審議についてでございます。これにつきましては、平成29年度末に中(長)期目標期間が終了する法人の新たな目標案については、今後、各主務大臣において独立行政法人評価制度委員会でのこれまでの調査審議、特にこの上記2.の(1)から(4)の視点を踏まえつつ、検討いただきたいということでございます。なお、独立行政法人評価制度委員会のこれまでの調査審議におきまして、当該視点に関連して特に重要とされたものは具体的項目として別紙のとおり取りまとめておりますので、後ほど御説明いただきたいと思っております。また、今回、当該視点に関連して、特に重要であるといったものについて委員会としては来年度以降の調査審議に当たっても、同様の視点に立って進めてはどうかと考えておりまして、その旨も事前に各主務大臣に提案してはどうかと考えております。
それから、(2)として、その他今後の委員会の取組についてでございます。今般、いろいろと新たな視点をいただきましたので、(1)のところ、現行の指針につきまして各主務大臣や法人の意見を聞きながら、見直しを検討すべき内容を把握しまして、これらの指針の将来的な改定に向けて独立行政法人評価制度委員会として意見を述べる準備を進めてはどうかと考えております。それから、(2)でございます。これは我々の委員会は制度委員会でありますので、法人が柔軟な運営を進める上で障害となると考えられる制度やルール面での課題等があれば、どのような課題が解決できるかについて議論して提言していくことを目指してみてはどうかというものです。それから、三番目は、本日の三番目の議題とも関連いたしますが、各法人において組織運営を活性化し、法人の職員が元気を出して業務を行っていくための取組の事例の把握というのを引き続き取り組んでいってはどうかと考えているところでございます。少し長くなりましたが、総論部分の説明は以上でございます。
【野路委員長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして独立行政法人ごとの個別の留意事項については、各ユニットの議論を反映したものでありますので、各ユニットの委員から概要を御説明いただきたいと思います。まず、第1ユニットの樫谷評価部会長からお願いします。
【樫谷委員】 樫谷でございます。第1ユニットについて御説明したいと思いますが、先ほど御説明いただきました独立行政法人の中(長)期目標の設定についてという考え方に基づきまして整理したものでございます。
まず、4ページでございますが、国民生活センターです。本法人につきましては、高齢者、障害者等の被害防止に関する対策を推進するため、地方公共団体ごとの取組に対する法人の支援方策等について具体的に検討した上で目標に盛り込むことを検討してはどうか、あるいは、消費者の被害防止の成果をより高めるために、今後行う実証的な取組において、法人の活用策を検討し、その活用内容が決まった段階で速やかに目標に記載することを検討してはどうかと考えております。
次に、水資源機構でございます。5ページでございますが、本法人につきましては、水の安定供給や洪水被害の軽減のための施設連携のノウハウとか、建設・管理に係るハード・ソフト両面の高度な技術力を保有している強みをいかしまして、水インフラにかかわる技術力の低下が懸念されている地方公共団体等への積極的な支援の実施を目標に設定することを検討してはどうか。特に、災害等の状況によっては、いわゆる「プッシュ型」の支援を実施することも目標に設定することを検討してはどうかと考えております。
次に、農林水産省が所管いたします農林漁業信用基金でございます。農業におきましては、法人形態の増加等によりまして、利用される金融機関が多様化しております。農業者等が必要な営農資金を円滑に調達できるようにするため、幅広く農林漁業信用保証保険制度が利用可能となる環境の整備が必要となっております。次期の中期目標の設定に当たりましては、主導的に民間金融機関に対して本制度の普及及び利用促進を図って、その取組内容及び法人に求める成果を具体化した目標とすることを検討してはどうかと考えております。
次に、経済産業省が所管する、いわゆるNEDO、新エネルギー・産業技術総合開発機構でございます。本法人につきましては、第4次産業革命の技術革新を取り入れて、様々な社会課題を解決するSociety 5.0の実現に向けまして、三つの項目でございますが、まず一つ目は国際標準化の取組や知的財産マネジメントの支援、二つ目は技術戦略・研究開発プロジェクトの質の向上、三つ目は法人のプロジェクトマネジメントの機能強化などについて具体的に目標に盛り込むとともに、その成果の評価に当たっては、研究開発プロジェクトの実施結果が将来に波及させる経済効果等について、その考え方を目標に盛り込むことを検討してはどうかと考えております。
次に、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)でございます。本法人につきましては、2030年までに石油及び天然ガスの自主開発比率40%以上とする政策目標達成に向けて、まず産油国等のニーズを的確に把握し、関係強化・権益確保のための技術支援策等のツールを組み合わせたパッケージで提案することを具体的に目標に盛り込むこと、さらに、機構法改正により拡充された支援メニューを含め、リスクマネー供給支援に関する具体的な内容を目標に盛り込むことなどを検討するとともに、その成果を的確に評価する指標を目標に盛り込むことを検討してはどうかと考えております。
それから、観光庁の国際観光振興機構(JNTO)でございます。本法人につきましては、海外の最新の訪日ニーズやプロモーションのノウハウを蓄積している強みをいかし、訪日プロモーションについては国別や顧客別に魅力を訴求する等のより戦略的な実施。外国人旅行者の誘致に取り組む地方自治体などの支援の強化については、まず、外国人目線のニーズ等の的確かつ迅速な情報提供、それから、地域の観光資源を掘り起こし、プロモーションするノウハウの提供などであります。それを検討してはどうかということでございます。
次は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構でございます。鉄道建設につきましては、完成までに長い期間を要するほか、その過程において様々な工夫や努力の結果、完成に至ると承知しております。このため、これらの努力や工夫をその後の業務にいかすためにも、開業予定期間に建設工事の完了を間に合わせるという結果のみに着目するのではなくて、完成に至る各プロセスにおける工程管理のための取り組みといった努力、工夫についても評価できる目標とすることを検討してはどうかと考えております。
以上でございます。
【野路委員長】 ありがとうございました。
それでは、次に第2ユニットについて、原田評価部会長代理が本日御欠席のため、栗原委員から御説明をお願いいたします。
【栗原委員】 第1ユニットに続きまして、第2ユニットでの議論について代表して私から説明させていただきます。
まず、4ページに記載されています国立重度知的障害者総合施設のぞみの園についてですけれども、本法人については、重度知的障害者支援を専門とします唯一の国立総合施設ですので、その強みをいかして地域で障害者が自立し、安定して生活できるよう各地域の障害者支援の質の底上げに一層貢献していただくということが期待されていると思います。ですから、例えば、障害者支援施設の職員向けに行っています研修ですとか、あるいは、各種学会での発表といったような本法人が持っているノウハウや成果を全国の障害者支援施設等に情報発信する取組を強化していくということを具体的に目標に盛り込むことを検討してはどうかと思っております。
次に、6ページですけれども、日本学術振興会、学振についてです。まず、我が国の学術研究を取り巻く状況に対する認識としまして、我が国と主要先進国の研究者との間の、例えば、共著論文数が停滞するといったような国際的なトップレベルの学術研究から取り残される危機に直面しているということがあります。それに対して本法人は諸外国の学術振興機関と連携したり、あるいは、外国人研究者の招聘などの事業を行って、国際研究基盤の構築に取り組んでおりますので、我が国の学術研究のプレゼンスの向上に向けまして、具体的な取組を目標に盛り込んで一層推進していただきたいと思います。また、その取組の際には、総花的に行うのではなくて、研究ニーズを踏まえた諸外国の学術振興機関との連携状況ですとか、あるいは、事業実施国または関連する研究分野における共著論文数などの適切な指標を設定して、その推移を見ながら進めていくということを検討してはどうかと思います。
次に、同じく6ページ、日本芸術文化振興会、芸文振についてです。本法人については、まず、6月に文化芸術基本法が改正されまして、観光や国際交流ということが基本理念に追加されましたし、また、2020年にはオリパラもあるということで、インバウンドの拡大への貢献が期待されているということですので、こうした環境変化を踏まえまして、新たな観客層の獲得、外国人を含む新たな観客層の獲得に一層取り組んでいただくということを目標にしていただきたいと思います。そのためには、外国人をはじめ、たくさんの方々に見ていただくための伝統芸能のコンテンツとしての魅力を高めるということが重要だと思います。さらに、例えば、外国人を対象とした公演の鑑賞者数ですとか、あるいは、観客層がどれだけ多様化しているかといったような状況などを取組成果として測定するための指標を設定して、こちらもその推移を見ながら進めていただくということを検討してはどうかと思います。
次に7ページですが、高齢・障害・求職者雇用支援機構、高障求についてです。まず、背景事情としまして、近年、第4次産業革命が進展しておりまして、その中でIoT、AI、ロボット、こういったものについては大企業だけではなくて、中小企業等においても積極的に取り入れていく必要性が増しているということがあります。そこで、この法人はもともとものづくり分野における人材育成のノウハウを蓄積しているという強みがありますので、今後は中小企業等の生産現場で働く人材の育成、その技術力の強化に貢献していくということも法人の一つの役割として明確化した上で、これにしっかり取り組んでいただくということを検討してはどうかと思います。
次に、10ページですけれども、理化学研究所についてです。この法人は平成28年10月に特定国立研究開発法人に指定されていまして、我が国のイノベーションの牽引役となっていただくということが期待されています。従いまして、本法人の持つ革新的な技術シーズの社会還元に一層取り組んでいただくということを目標に盛り込んでいただいて、それについては産業界におけるイノベーションの創出を促進・先導するという観点から、例えば、民間企業との共同研究の実施状況ですとか、あるいは、特許の実施化率、こういったものを評価軸・指標として設定していただいた上で、社会還元に向けた具体的な取組を進めていっていただきたいと思います。
また、本法人については、ヒアリングの過程で既存の組織や分野を超えた人材育成が行われていたり、あるいは、個々のセンターの予算項目に固定化されない機動的な予算配分が行われていたりしておりまして、理事長がリーダーシップを発揮して非常に戦略的な法人運営がなされているなと感じたところでございます。従いまして、こういう良いところを一層伸ばしていただくために、例えば、研究の進捗状況評価の実施の状況ですとか、あるいは、人材育成といったようなものの状況を評価軸・指標として設定した上で、本法人としてのマネジメントについて適切に評価していくということを検討してはどうかと思います。
最後に11ページ、宇宙航空研究開発機構、JAXAについてです。この法人については、近年宇宙航空分野で民間の新規事業者の参入が進んできておりますので、宇宙産業の市場規模拡大に一層貢献していくという役割が期待されていると思います。従いまして、先ほどの理化学研究所とも共通しますけれども、民間事業者に対する技術面での支援や協業等によりまして、事業化されたものの数ですとか、あるいは、本法人が持つ技術を産業界に橋渡しする結果として、民間にどれだけライセンスが供与されたかなどを指標として、民間の宇宙利用の裾野の拡大や研究開発成果の社会実装を推進していってほしいと思っています。
また、本法人が行う事業の中には、例えば、ロケットが計画どおりに軌道に乗らなかったといったようなことですとか、あるいは、当初企図したものと異なる結果になる場面もあるかと思いますけれども、そういった場合でも、その結果だけを捉えて評価するのではなくて、目的を達成するために行った取組や工夫、それを組織としてノウハウとしてどう蓄積、共有しているか、あるいは反省すべき点は次にいかしていくということですとか、最終的な結果に至る過程で得られた様々な成果についてもきめ細かく評価に反映していくということによりまして、職員がチャレンジしていくということに対してインセンティブやモチベーションになっていくということを検討してはどうかと思います。
以上が第2ユニットの法人についての議論の一部でございますけれども、今回、独立行政法人評価制度委員会決定という形での取りまとめにはなっていないものでも、前回10月の時の独立行政法人評価制度委員会でお示ししました論点については、独立行政法人評価制度委員会でも引き続き注視してまいりたいと思っております。この点に関して最後に二点だけお伝えいたしたいと思います。
一つ目が日本学術振興会の情報発信、広報についてです。本法人は科研費ですとか国際共同研究の基盤構築など様々な業務を行っているわけですけれども、本法人としての成果がどのように上がっているのかということが見えづらいのではないかという議論がありました。本法人においても、次期中期目標期間にかけて、この広報体制の整備を含めて今後の情報発信のあり方を検討していくと聞いておりますので、まずは次期目標期間の早い段階で検討を行っていただいた上で、できるだけ早く本法人としての成果のアピールができるよう進めていただきたいと思います。
それから、二点目が、日本スポーツ振興センター、JSCが現在建設を進めている新国立競技場についてです。新国立競技場の2020年のオリパラ後の運営管理のあり方については、現在、関係閣僚会議の下に置かれております「大会後の運営管理に関する検討ワーキングチーム」で検討中であると聞いておりまして、今回、策定します中期計画の中には、具体的なことは記載されないかもしれませんけれども、しかしながら、この新国立競技場の建設に関しましては、整備計画の変更などこれまでにも様々な経緯があった施設でもございますし、それから、国民もオリパラ開催だけにとどまらず、その後の利用についても関心が非常に高い国家的プロジェクトだと思いますので、オリパラ後の運営管理についての目標がどういうものになるのかということについても独立行政法人評価制度委員会としても引き続き注視してまいりたいと思っております。
以上で第2ユニットの説明を終わらせていただきます。
【野路委員長】 栗原委員、ありがとうございました。
では、第1ユニット、第2ユニット、それぞれ意見発表がありましたけれども、皆さんからさらに御意見等ございませんか。
【天野委員】 今回の中(長)期目標の策定についての案については特に大きな異論があるわけではありません。特に目標策定に関して、(2)の府省や他の法人等、関係者等云々という記載、これがとても重要だと思っています。私は国の防災関係の発災後の情報共有化プロジェクトに携わっているのですが、各府省が連携して情報発信をするというのが非常に重要です。今回の独法の中でもお話を聞かせていただきますと、スポーツ振興センター、こちらは海外のオリンピックの選手の方たちが練習に来られる場所と伺いました。JNTOは、オリンピックも絡めて、とにかく海外の旅行者をたくさん集めたいというお話でしたし、芸術関係は、来た方たちにはいろいろ鑑賞していただきたいというお話をして、どの独立行政法人でも、発災の時の体制はというお話を一応聞かせていただいたのですけれども、明確にお答えいただいたところはありませんでした。そのため、やはり3年後ですから、国としておそらく近々オリパラに対する体制等については明確になってくると思いますので、是非本法人の目標策定に関しての(2)を使って、実務を担うのは独立行政法人だと思いますので、それぞれ主体的になるかどうかは別として連携はとっていただかないと非常に難しいと思いますので、是非この案を出すことによって、具体的な喫緊の課題にも対応していただきたいと考えています。
【野路委員長】 ありがとうございました。
他にございませんか。原田委員。
【原田委員】 最初の1ページ、2ページは、もう既に説明がなされたと承知しておりますけれども、その中で私、今回、取りまとめるに当たりまして、このペーパーのキーワードの一つなのかなと強く思いますのは、1ページ目や2ページ目に出てまいります「協働」という言葉であります。独立行政法人という組織は主務省だけを見ていれば良いということではなくて、関連するその他の独立行政法人であるとか、周りのアクターについても十分目配りをしながら一緒に仕事をしていくということが今回、非常に大きいところの一つなのかなという気がいたします。
もう一つは、例えば、地方に任せるところは地方に任せたら良いのではないかという議論も依然として引き続きあるわけですが、やはり人材であるとかノウハウであるとか、秀でたものを持っている独立行政法人におかれましては、肩代わりとまではいかないにしても、やはり積極的に地方自治体の活動を支援していくというやり方もあっても良いのではないか、また、そういう時代がだんだん近づきつつあるのではないかということを今回感じました。官民であるとか官公の関係においても、従来から少しずつ、独立行政法人が果たすべき役割として我々が期待するところが変わりつつあるというところは、今回強調すべきところなのかなという気がしております。
以上でございます。
【野路委員長】 ありがとうございました。
他にございませんか。では、金岡委員。
【金岡委員】 これまでの独立行政法人評価制度委員会の議論を踏まえて、適切にこの独立行政法人評価制度委員会そのものの性格付け、また、主務省と独立行政法人のあり方についてまとめていただいたのではないかなと思っております。
その中で一つだけ私がさらに指摘するとするならば、私はIT業界に30年以上いるのですけれども、現在は非常に珍しい時代でございまして、IT業界におけるいわゆるバズワード、すなわちこういうことを考えなくてはいけないということと、一般社会におけるバズワードが完全に一致しています。それはIoTであり、AIであり、あるいは、ビッグデータ、ロボットといったものですが、これは非常に珍しい時代でございまして、それはやはり少子高齢化を踏まえて圧倒的な生産性の革命、それは技術要素だけではなくて、これまでのプロセスの見直しを通じてのものかと思いますけれども、それが世の中として求められている時代なのではないかなという感じがいたします。
従って、今回、もう既に1ページの中に第4次産業革命のイノベーションをあらゆる産業社会生活に取り入れることと書いてございますけれども、よりここを強調していただいて、あらゆるプロセスの見直しを通じて圧倒的に生産性を高めていかないと日本の将来が担保されないというトーンを強めていただければなと感じております。
以上でございます。
【野路委員長】 ありがとうございました。
他にございませんか。では、高橋委員。
【高橋委員】 まず、この目標の策定についてなのですけれども、今回、2ページのところに、政策課題の解決に向けた具体的な道筋を検討の上に目標を策定すべきであると表現してあります。この具体的な道筋ということの中には、当然ながら、ヒト・モノ・カネの部分が入ってくるのだろうと思います。この確保とか、無駄の排除なくしては具体的な道筋ということには至らないので、これらが検討内容に入るということを確認させていただきたいということが一点でございます。
それと二点目は、今後の独立行政法人評価制度委員会の活動の(2)の(3)のところに、各独立行政法人において組織運営を活性化し、独立行政法人の職員が元気を出して業務を行っていくために取組の事例の把握及び紹介に引き続き取り組んでいくこととすると書いてあります。今日もそういった好事例、ベストプラクティス、グッドプラクティスの発表ということをお願いしているわけなのですけれども、こういうものを横展開し、できるものは見習ってていくべきであるという考え方と、しっかりやっているところに関しては、表現は適切かどうか分かりませんが、褒めて育てるというようなところが非常に重要だと思っています。ただ、どういう事例を今後拾い上げるかということにつきましては、私としては、募集とか、手挙げ方式といったことも非常に重要で、そういう形でいろいろな事例を拾っていくこともできたらなと思っておりますので、これは意見として申し上げておきたいと思います。
それから、私自身は第1ユニットを担当させていただいており、そこで二点ほど補足させていただきたいと思っております。まず、一つ目は国民生活センターのところでございます。ここでは留意事項として消費者安全確保地域協議会、いわゆる見守りネットワークが実施している取組に対しての支援方策ということを特出ししてございますけれども、徳島で始まる業務と非常に関連が深いものです。留意事項の二つ目のパラグラフの「また」以下のところに書かれておりますが、消費者の被害防止の成果をより高めるために消費者庁が今後行う実証的な取組において、法人の活用策を検討し、その活用内容が決まった段階で速やかに目標に盛り込むというふうに表現はしてあるのですけれども、私はもう少しこの実証的取組のプロセスに関して、国民生活センターもかかわることが必要だと感じております。
そのため、実証的取組のところで情報公開にも努めていただきたいと思いますし、この消費者行政の取組自体が消費者庁と国民生活センターと内閣府の消費者委員会の三者での分担、連携ということが基本にあるわけです。また、ここでは背景事情のところに消費者基本計画、平成27年閣議決定のものを引いておりますけれども、消費者庁ができてから5年ごとに消費者基本計画が立てられて、今、3期目が進行中であるので、これについては5年の中でも工程表をしっかり示していて、1年ごとに消費者委員会の意見を聞いて改訂するということになっておりますので、徳島業務を受けたものももちろんのこと、全体的にやはりスピード感を持って取り組むことが非常に大切だと思っています。以上は確認ということで申し上げておきたいなと思ったところでございます。
もう一つは、第1ユニットで担当しております農林漁業信用基金のところでございます。私は残念ながら、ここは実際に団体にお伺いすることはできなかったのですけれども、今回、留意事項として民間金融機関に対して農業信用保険制度の普及及び利用促進を図るということが書かれています。民間金融機関を使って、この信用基金を広めていくことはもちろん大事なことだとは思うのですけれども、やり方を間違えますと大変なことになると思っております。支援保険制度でモラルハザードを起こす可能性がありますし、実際に起こしているところもあるわけです。前回の委員会においてレンダー・ライアビリティの視点が必要という議論があったと思うのですけれども、信用保険に関しても同様に、単に増やせばいいという話でもございませんし、収支改善のために政府の予算を取ってくればいいという話でもございませんので、その中身をしっかりチェックしていくということを監督官庁にもお願いしたいと思います。
以上です。
【野路委員長】 ありがとうございました。
他にございませんか。よろしいでしょうか。皆さん、ありがとうございます。今回、各ユニットでいろいろ留意事項をまとめてもらいました。私からは一言だけお話ししたいと思います。今、世の中は大きく変化しています。特に独立行政法人としても、来年度から大きな変化を捉えているのだろうと思います。大きな環境変化の一つは、何といっても民間企業の人手不足、これはどの業界にも当てはまり、全て人手不足になっています。そのため、今こそ独立行政法人が活躍する時代が来たのだと考えています。今までは合併しましょうとか、このようなことをしましょうといった話が多かったのですが、今こそ民間企業ができないこと、あるいは民間企業が不足しているところで、独立行政法人は何ができるのかということを、過去の考え方の延長ではなく、今回の留意事項をよく検討頂き、いろいろな活動計画を立てるということが、一つ、大きく独立行政法人の長に伝わるといいなと思います。
二つ目は、委員の皆さんのご意見にもありましたとおりAI、IoT、Industry 4.0、Society 5.0ということで、急速に技術が進歩していることです。私も技術系の出身ですが、これだけ急速に技術が進歩している時代というのは、過去を見渡してもありません。いわゆる産業革命など、いろいろな革命が起きようとしているという時代なのです。やはりそれに素早く適応していただいて、独立行政法人を世の中の社会的な課題を解決するような方向に持っていっていただきたい。以上の二点が是非法人の長に伝わると良いと思います。
先ほど、天野委員がおっしゃった、災害が起きたときの対応、防災の話も非常に大事な視点です。特にこれも伝えてほしいなと思います。弊社(コマツ)では東日本大震災の後、このような会場やホテルで会議をする場合、冒頭に司会者が必ず、地震や火災などの災害が起きた場合の避難通路や手順を説明しており、これは現在でも続けています。皆さん、最近においても、そのような取組みを行っておられるでしょうか。日本人の国民性なのかもしれませんが、時が経つとともに我々は災害への対応を忘れがちになってしまうものです。別に日本人がだめだと言っているのではありませんが、海外はそのようなところが非常にシビアです。私などもいろいろなお客様のところに行きますと、一番先に避難経路を説明してから会議が始まることが普通です。今からでも遅くないと思いますので、特に東京オリンピック・パラリンピックに向けてだけではなく、日頃の活動そのものをそのような具合にしておく必要があるかと思います。少し時間をいただいて私が社長の時の話をさせていただくと、例えば、停電になったら発電機が要るので非常用発電をつくれば良いと皆おっしゃるのですが、おそらくそれではうまくいきません。非常用発電機を置いたとしても燃料がないかも知れない。あるいは、その発電機を日頃から整備していなかったら動かないかも知れない。非常用で普段使用しないものだから、そもそも動かし方すら知らないというケースも考えられます。一方、海外の例では非常用発電機が三台あったら一台は常に動かしています。考え方そのものを変えていって、いかにその非常時に対応できるかということを、この機会に考えていただければ、民間企業に対してもいろいろなアドバイスをしたり、民間企業で気がついていないところのサポートをしたりできるのではないかと思います。
以上で、今回については議論を終わりますが、本件については案のとおり、独立行政法人評価制度委員会として決定させていただくことでご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【野路委員長】 ありがとうございます。それでは、そのように取り扱わせていただきまして、独立行政法人評価制度委員会決定については各主務大臣に通知させていただくとともに、2月に諮問いただく中(長)期目標策定に向けて十分に留意していただくよう、要請したいと思います。
続きまして、議題2について樫谷部会長から説明をお願いいたします。
【樫谷委員】 それでは、平成28年度における独立行政法人の業務の実績にかかわる、いわゆる年度評価等の結果につきまして、事務局に点検を指示したところですので、詳細を事務局から説明いただきたいと思います。
【栗原管理官】 お手元の資料2を御覧ください。平成28年度における独立行政法人の業務の実績に係る評価等の結果についての点検結果でございます。10月16日の本委員会におきまして樫谷評価部会長からの御指示に基づきまして、年度評価、それから、期間実績評価について点検を行った結果を資料2のとおり取りまとめましたので、御説明させていただきます。点検に当たりましては、A評定以上については目標を上回る成果が得られていると認められること、難易度を高く設定した目標の水準を満たしていることが具体的根拠として説明されているかどうか。C評定以下については、改善に向けた取組方針、または、具体的な改善方策が記載されているかといった視点を中心に評価書の記載状況を点検いたしました。そうしたところ、著しく適正を欠く評価の実施と考えられるものはございませんでした。
また、具体的な点検結果といたしましては、A評定以上については、ほぼ全ての評価項目において評定に至った根拠・理由に係る具体的な記述が確認できたところ、中には取組の内容は記述されているものの、評定に至った根拠・理由の合理的かつ明確な説明が十分ではないと考えられるものが数例見られましたため、所管府省に評定に至った根拠・理由等は確認いたしましたところでございます。また、C評定以下につきましては、いずれも改善に向けた取組方針または具体的な改善方策に係る何らかの記述を確認いたしました。なお、個別の項目のうち、情報セキュリティ対策につきましては、いずれの法人においても評価が実施されておりまして、情報セキュリティに関する事項を理由にC評定が付されている1法人につきましては改善のために講じた方策の内容が具体的に記載されていることを確認させていただきました。
また、調達等合理化につきましては、いずれの独立行政法人においても評価が実施されており、調達等に関する事項を理由にC評定を付されている2法人につきましても、いずれも改善のために講じた方策の内容が具体的に記載されていることを確認させていただいたところでございます。いずれにいたしましても、S、A、B、C、Dといった評定の結果自体に重きを置くものではなく、評定に至った判断の根拠、理由等が合理的かつ明確に説明され、評価結果によって判明した課題や社会経済情勢の変化などを踏まえた業務及び組織の見直し等の対応が行われることが重要と考えているところでございます。
以上でございます。
【野路委員長】 ありがとうございました。
本件について何か御意見ありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、特段なければ、次の議題に移りたいと思います。次に議題3については、法人活性化の取組として参考事例を紹介していただくことにしています。本日は、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「NCNPメディア塾」の取組について、NCNPのトランスレーショナル・メディカルセンターの和田センター長からお話をいただきます。それでは、和田センター長、よろしくお願いします。
【和田センター長】 どうもありがとうございます。国立精神・神経医療研究センターから参りました和田圭司と申します。本日、お時間をいただきまして、誠にありがとうございます。私どもの国立精神・神経医療研究センターは、主務省が厚生労働省で、場所は東京都の小平市にございます。そこで行っておりますNCNPメディア塾の取組について御紹介をさせていただきたいと思います。ちなみに、National Center of Neurology and Psychiatryの頭文字を取ってNCNPと呼んでおります。私どものセンターは、日本語で読みますと非常に長くて、なかなか覚えていただけないということで、当時の理事長自らがあらゆる場所でNCNPということを連呼されました。そのため、NCNPと称していますのも我々が採ります広報戦略の一環でございます。
本日は、NCNPメディア塾とは何かということと、開始に至るまでの経緯、それから開催内容、その効果について御紹介させていただきたいと思います。見出しのところに番号が振っておりますので、その番号に基づいて説明をさせていただきます。
1番の「NCNPメディア塾」とは、でございますけれども、平たく言いますと、私どもの医療関係者あるいは研究者がジャーナリストの方々を対象に、そのジャーナリストの方々にとって役立つことをお話しするという会でございます。昨年、『広報の仕掛け人たち』という本が出版されましたが、そこで私どもの取組が紹介されておりまして、その中でもNCNPメディア塾とは、NCNPが提供するジャーナリストのための学校であると書いてくださっております。ジャーナリストと医療者・研究者がリアルなコミュニケーションの場を形成し、正しい医療・研究の情報を共有する場と位置付けています。ジャーナリストの方々からは、我々の領域について関心はあるけれども精神や神経のことはちょっと小難しいという声をよく聞きます。一方、我々医療者・研究者サイドからいたしますと、この記事はもう少し正しい情報を盛り込んでいただいて、こういう記事にしていただいたらよかったのにということを思うことが度々ございます。また、NCNPといたしましては信頼性の高い医療・研究情報の提供使命を有しております。このような、いわゆる三者の思いと目的が合致したのが、NCNPメディア塾でございます。
2番、NCNPメディア塾(ホームページより)と書いております。重複しますけれども、NCNPの第一線の研究者・医師たちとジャーナリストの皆様方が一堂に集まり新しい対話の場を2014年度よりスタートしているものでございます。脳と心に関連する精神・神経疾患の医療と研究の取材に必要な基本情報と最先端の情報をお伝えするために、基礎から学んでいただける座学とともに、メディアの皆様とのディスカッションを行う機会も多く取り入れて、お互いに学び合う環境づくりの一つとして、NCNPメディア塾を企画したわけでございます。ニーズに応えるだけの正確で十分な情報がこれまで提供されていなかったのではないかというものがきっかけの一つであり、我々といたしましては、信頼性の高い医療情報をお届けする必要がございますので、ジャーナリストの方々に対しまして、その最低限理解しておくべき知識を現代社会との関連性の中で学んでいただくとともに、国民から真に求められている情報に係る報道の在り方を考える場として開催してきております。今年で第4回目を迎えました。来年もまた開催する予定でございます。
次に3番、「NCNPメディア塾」誕生の契機でございますけれども、契機はまさに独立行政法人化でございました。そこに大まかな組織図が書いてございますけれども、国の時代は総長がおりまして、その下に運営局長、運営局次長という並びでございました。独立行政法人になりましたときに、総長の下におりました運営局長が企画戦略室長という名称に変わり、当時その下に部署がなかったのですが、NCNPでは企画戦略室長のもとに企画戦略室を設け、室員を配置しました。六つほどナショナルセンターはございますけれども、これは当時の理事長と当時の企画戦略室長の考えと思いで、このようなことが実現したわけでございます。
4番、NCNP企画戦略室の取組です。上のところに総長と理事長の名前、その下に年度、それから運営局長、企画戦略室長の名前を書いてございます。企画戦略室は主に広報と経営に係ることをこれまで行っており、現在も行っております。2008年度に独立行政法人化が決まりましたときに厚生労働省で独立行政法人化準備室というものが用意されました。私もそこに併任がかかりまして2年ほど、時々本省にお伺いして議論をするということを重ねておりました。2010年度に独立行政法人になりました時に、先ほど申し上げましたが、広報に関しては企画戦略室が設置されて室員を配置したということです。まず、広報戦略の策定を行いました。広報戦略として、基盤整備をして、高度化をして、ブランディングをするということを2010年度に定めたわけでございます。基盤整備として、まず、広報委員会を整備し、きちんと広報規程を定めました。また、センター全体を紹介するパンフレットがございませんでしたので、日英文両方でパンフレットを用意し、ホームページも改訂いたしました。運用整備も定めて分析ツールも導入するというようなことも行っております。次に、高度化のときに何をしたか。2012年度を中心として、発信コンテンツの拡充と認知度の向上というものを目指しました。まず、私どものセンターには病院が付いておりますので、病院はこういうことをしているということを映像化いたしまして流すようなこともしました。メディアの取材、それから、出演情報の集約化ということも行いました。また、発信ということを考えましてYouTubeでチャンネルを開設しております。さらに、私ども小平市にございますので、新宿からでも三、四十分かかってしまいます。東京駅からですと一時間ぐらいかかりますので、都心で市民公開講座を行いました。この時にも告知の徹底、再録記事の掲載、認知度調査の実施等、いろいろな取組を行いました。あわせて記者発表会も行ったときに、外部PR会社と良いお付き合いができるようになりまして、この外部PR会社のお力添えもありまして、ブランディングのところでメディア塾というものが実現したわけであります。また、NCNPのアニュアルレポートも、それまでは各部署単位のアニュアルレポートはあったのですけれども、組織全体としてはありませんでしたので、それをビジュアルに訴えるような年報としてつくりました。
メディア塾を実施する前に、主なメディアの高名な記者の方々にお集まりいただきまして、プレミーティングを実施し、お互いのニーズを確認し合いました。このように行ったら良いのではないかという議論を重ねて、主要メディアを訪問いたしまして、2014年度に第1回目を実現したということであります。以来、第2回、第3回、今年の8月に第4回を行ったところでございます。
下の方の経営について、でございますけれども、少しだけご紹介しますと、当初2010年度の時にワーキングチームを形成し、職員に対して、こういうことを行うのだけれども、参加したい者はいるかという形で手を挙げていただきました。実際、何人かおられましたので、その方々と、それから私どもが指名させていただいた方々と一緒にセンターの中のいろいろな課題を洗い出して、それを克服するにはどうしたらいいのかということで、週に1回、夕方五時ぐらいから夜八時、九時ぐらいまで、ミーティングを重ねるということをほぼ半年ぐらい行いました。その中で経営科学の導入と提言ということも行いまして、2011年度には、いわゆる運営交付金に頼らないで運営できるような経営安定化プロジェクトが組み立てられないかという報告もしました。現在、しばらく広報の方に注力しておりますので、経営の方は運営改善プロジェクトとして昨年度から別途立ち上がっているところでございます。
それでは、5番のところを御覧ください。実施の背景でございます。全てはゼロからのスタートと書いておりますが、2010年度の独立行政法人化直後のNCNPでは、広報マインドもはっきり言ってゼロに近く、広報機能も不在の状態でありました。繰り返しになりますが、広報のロードマップを作成して意思決定の仕組みをきちんと定めたということであります。2012年度には広報グループという広報組織を整備いたしました。そして、NCNPの見える化・わかる化を広報のコンセプトといたしました。これは当時の理事長が見える化・わかる化ということを考え、それをコンセプトにしたということでございます。ブランディングの一施策といたしまして、メディアリレーションの構築・強化を掲げて、メディアへの発信強化を2012年度からスタートさせたということでございます。
先ほど御説明したところは割愛させていただきまして、最後のところですが、NCNPメディア塾は企画立案段階から大手新聞社の記者の方々に参画いただき創設したもので、今もなお改善を積み重ねて共創、協働という形で発展させているところでございます。開催内容でございますが、別添パンフレットを御覧ください。第1回目は私どもの敷地ではなく、別のところで一泊の泊まり込みで行いました。また、どういう講師がどういうタイトルで話をしたかということが御覧になっていただけるかと思います。
第1回目からタイトルには気を遣っており、分かりやすいタイトルにしてくださいということで、例えば、8月23日、二日目の最後、「うつ病の常識は本当か」というように、ジャーナリストの方々の関心を引くようなタイトルにしております。それから、その顔写真のところも御覧になっていただいたら分かりますように、非常ににこやかな顔をしております。ちょっと雰囲気の悪い写真を出していただいた方は差し換えました。それからタイトルも、魅力的でないときは差し換えました。その下に文章が書いてありますけれども、その紹介が分かりにくいときは全部赤ペンを入れまして、最終的にこれでよしという形で出しております。第2回目のものもにこやかな写真が続いているかと思いますし、第3回目のときも表紙のカットやタイトルのところも注意を払っております。今年の第4回目につきましても、そのような形でございます。
演者は何回か登壇したことがある方もございますけれども、フレッシュな人材も登壇するようにしていまして、メディアの方々に、若い人もベテランも含めて我々のところにはこういうスターがいるのだよということを紹介するように努めているところであります。プログラムは、いわゆる座学のほかに施設見学というものも入れております。私ども広い敷地のところで幾つも良いものを持っておりますので、それを実際に見ていただくということもしております。その後、座学、施設見学が終わりますと必ず、御出席いただける方には交流会に御出席をいただいて情報交換をするということもしております。第1回目のときは泊まり込みでしたので、お互いに人となりを非常に深く知るということが実現できたということもございます。
それでは、資料に戻りまして7番のメディア塾の結果状況のところを御覧ください。参加意向度のところでありますが、来年以降も参加したいですかという問いに、「参加したい」という回答を多く頂いています。「予定が合えば参加したい」という方も含めますと大多数の方から参加したいという結果をいただいております。それから、8番、推奨意向度の調査をいたしました。今後、社内の人に受講を勧めたいですかということで、濃い赤が「勧めたい」でございますけれども、多くの方々から勧めたいというふうにいただいております。第4回の今年につきましては、どちらとも言えないというパーセンテージが増えておりますけれども、これはジャーナリストさんの情報に対する特性が段々と回を重ねるにつれて出てきたのではないかなと私ども考えているところでございます。
それでは、9番を御覧ください。NCNPメディア塾を進めることとなった推進力でございます。いわゆるホップステップジャンプで基盤整備、内容の拡充、ブランディングということで進めてまいりましたが、このように広報機能の整備と強化が推し進められていたことが一つの推進力になっていることは間違いないと思います。また、メディアの方々にどういうことを聞いてみたいかとかいうような事前リサーチを徹底したのと同時に、よく似たことを行っているところが実はアメリカのNIHにございましたので、NIHの試み、あるいはがんセンター、あるいは東京大学での試み等々のスタディを実施し、こういう形で我々は行ってみようということにいたしました。事前リサーチが十分であったことも推進力の一つになってございます。
また、外部パートナーの獲得ということもあります。先ほどPR会社のお話をしましたが、実は私ども室員は企業実務の経験者を二名配置しております。ですから、企業での経験を積んだ方々が室員にいたということも推進力の一つになっております。それから、登壇する人たちは一回か二回、事前に必ず集まっていただきまして、こういうことで話をしてください、メディアの方々にはこういうことが本当に必要とされているのですよということで、成功ゴールイメージを共有するということを毎回必ず行っております。
マーケティング戦略につきましては、先ほど申し上げました通り、魅力的なタイトルも含めた講義コンセプトを設計するということと、小平地区でも喜んで参加してくださるような工夫、プロモーションの工夫を行っています。それから参加メンバーの顔ぶれのことが書いてありますが、他社の記者さんでも、こんな有名な記者さんが参加されるのですかという形でNCNPメディア塾のファンになっていただいた方もございます。「共創」と書いてございますけれども、企画立案段階から参加いただいた大手新聞社の記者数名を中心に改善を積み重ねて「共創」と「協働発展」を実施してきたということでございます。
10番、NCNPメディア塾における人の重要性でございます。まず、理事長を含めたリーダーが存在し、そのリーダーが理解のある上司だったということが非常に重要でございます。私どもはこの試みに関しまして、ノーと言われたこと、無理だとか、やめておけとか、だめだとかいうようなことを言われたことは一切ありません。次に、その戦略を立てるプロジェクトリーダーが存在したということも大きな点だと思います。そして、私どもを含めまして意気に感じる職員がいたということであります。広報に関心を示す職員が研究者、医師、事務方にもおり、繰り返しになりますが、民間出身者も企画戦略室にはおります。理解のある報道機関社員並びに媒介者が、これはPR会社のことを指しますけれども、存在したということも非常に大きな要因でございます。
では、11番、NCNPメディア塾における効果でございますが、広報はなかなか定量的な評価というのは難しい面がございますので、質的効果ということが中心になってまいります。個別事例を書いてございますけれども、患者さんからは、実際にその報道記事等々を見てNCNP病院へ検査入院して、仕事復帰まで実現したというような非常にうれしい声を直接寄せていただくこともできましたし、メディアの方々からは、NCNPのプレスリリースは毎回チェックしているよとか、なかなか取材できない医師・研究者からの話がまとめて勉強できて、交流も深めることができましたというお言葉もいただいております。
科学・医療分野の記者・ジャーナリストの方々におけるNCNPの知名度は浸透しているのではないかと考えているところでございます。また元職員の方々からは、勤務期間にこんなに素晴らしい病院だとは知らずに勤務しておりました、もっと早く気付けばよかったのにというような声等も届いております。また、間接的ではございますけれども、取材・報道記事をきっかけに研究継続のための研究費獲得にもつながっていったのではないかと考えているところでございます。なかなか定量的な評価は難しいのですが、そのように考えております。
同じく12番、NCNPメディア塾における効果ということで、先ほど御紹介いたしました本を紹介しております。博報堂ケトルの代表取締役社長からのコメントといたしまして、「いわば病院がメディア向けの学校をつくったようなものです。その手があったかというやり方ですね」という講評もいただいております。
それでは、13番を御覧ください。「NCNPメディア塾」がNCNPにもたらしたこと。メディアリレーションが向上したというのは間違いないのではないかなと考えております。おかげさまでジャーナリスト、特に、医療・科学系の方々におけます我々の認知度・理解度というものは向上したのではないかと考えているところでございます。職員の広報意識も向上したというのは、先ほど述べたところであります。
新たな取組の企画も実は実施できております。例えば、災害の時に災害地に行って取材をするときに、被災された方にどうやって声をかけたら良いのか分からないという声がありましたので、それでしたらということで、メディア塾の個別版といいますか、災害取材におけるPFA研修というものを実施しております。また、メディアの方々からは、もう少し深堀したセミナーを聞きたいので、都会で何とか行ってくれませんかという声もいただいております。こちらにつきましては、原資をどうするかということがまだ現在検討中で実施できておりませんけれども、行いたいという気持ちでおります。
14番、外部リソース活用の重要性でございます。繰り返しになりますが、本当に最初はNCNP内に、広報機能も、ノウハウも、広報プロフェッショナルも存在しなかったわけなのですが、民間の経験者を配置するなどして組織的なものを整え、プロモートする専任者を配置したということが施策1でございます。施策2といたしましては、我々は本当に恵まれていると思いますが、採算を度外視して我々の広報機能を何とかして育て上げていこうという熱い思いを持ったPR会社さんと出会うことができ、その方々のおかげでここまで育ってきたところもあるのではないかなと考えているところでございます。
それでは、15番を御覧ください。独立行政法人における広報強化の必要性と切迫感について、でございます。独立行政法人でなければ広報強化の必要性も、NCNPメディア塾も存在しなかったことは確かかと思います。当時、国民にもメディアにも認知度が低く、記憶に残りづらい長い組織名を持つNCNPにとって、広報機能強化は優先度の高い課題の一つでした。いわゆるベンチマークといたしまして理化学研究所を見学させていただきましたが、RIKENブランドは世界で浸透しております。そういうことに非常に刺激を受けまして、我々も見える化・わかる化を中心にNCNPというブランドを育てていきたいということで、今もその活動を続けているところでございます。
16番、NCNPメディア塾の成功要因でございますけれども、マッキンゼーの7Sモデルを書いてございます。時間の関係もございますので、詳細は今まで述べてきたとおりでございますけれども、システムにしても、人材にしても、戦略にしても、価値観にしても、スタイルにしても、組織にしても、スキルにしても、それぞれにぴったりと合うものがあり、ここまできたのではないかなと考えているところでございます。
17番、資料の最後でございますけれども、「NCNPメディア塾」の継続・発展への課題ということでまとめてございます。NCNP内の少ない内部リソースでは、円滑な広報機能を発展することが難しく、特にNCNPメディア塾の高い成果を今後も継続するには、メディア各社との密接な関係を維持継続している外部リソースの活用が必要だろうと考えております。内製化ということも試み、内製化もそれなりに必要なところはございますけれども、やはりきちんとした外部リソースを活用するということも重要なことではないかと考えております。NCNPをよく理解しているPR会社に非常に恵まれましたので、そういうPR会社の活用が成功を大きく左右すると考えております。
最後でございますが、メディア塾に関わる全てのプレイヤーが喜んで参画・目的達成意欲が生まれる契約のあり方、それから、財源確保を改善することが必要ではないかということを考えてございます。どういうことかと言いますと、広報はなかなか定量的な評価が難しく、言葉は悪いですけれども、何でこんなにお金がかかるのだという指摘も度々ございます。それを説明して分かってくださる方もおられますけれども、説明してもなかなか御理解いただけない場合もございます。では、数値的にどうなのだ、何か出せないのかということもよくあります。そこのところは検討課題でありますが、しかし、広報というものは間違いなく成果を生むものと思っておりますので、ある程度の費用をかけることは必要であろうと考えているところでございます。
本日はお時間をいただきまして、誠にありがとうございました。拙い説明でしたが、以上です。
【野路委員長】 和田様、ありがとうございました。それではせっかくの機会ですので、何か御質問等ございましたらお願いいたします。
【天野委員】 ありがとうございました。プログラムの内容を拝見すると、是非私も聴きたいと思うような内容が幾つかあったような気がします。広報というのは、ある意味、日本人が非常に苦手としているようなところなので、これは非常に素晴らしい取組だと思います。それで御質問なのですけれども、この取組はNCNP自身にも非常に大きな成果をもたらしていますけれども、ある意味、主務省にとっても、ものすごく大きな成果だと思います。そこで、主務省との連携の状況というのを教えていただけますでしょうか。あまり主務省の力が強くなっても、良い活動はできないかもしれませんが、その辺りを是非お伺いしたいと思います。
【和田センター長】 もちろん、NCNPメディア塾を行うときには、必ずプレスリリースをしておりますので毎年主務省に御連絡しております。メディア塾以外にもプレスリリースはかなりの本数を出しております。それらのプレスリリースにつきましても、その都度必ず主務省に報告しておりますので、そういう形で、報連相の「報」を行っているというところではあります。実際、何か主務省の方々と共同で、ということになりますと、個別のところまで主務省の方々の御意見を伺う、というところは、まだ少し難しいところがございますが、主務省からの人事異動で来られる方々が企画戦略室長をはじめ、何人かおられますので、そういう方が間に立つような形で常に連絡を取っていただいているということでございます。
【天野委員】 ありがとうございます。
【野路委員長】 梶川委員、どうぞ。
【梶川委員】 素晴らしい取組の御説明、ありがとうございました。非常に参考にさせていただきました。この広報活動というのは、独立行政法人においても大変重要なテーマだと思いまして、ある意味では、こういう公的機関の説明責任といいましょうか、そういうものが原点にあると思いますけれども、これを第三者に説明していくということは、少し記載されていたのですが、むしろ、組織内部の皆様に与えられた影響、特に広報意識が高まったということもさることながら、自分たちの主たる業務活動といいましょうか、研究活動や組織運営を人に伝えることで、振り返った際に、さらに良いことを言いたいという思いを持たれるのではないかと思うのですけれども、その辺りについて何か感じられたことがありましたら、教えていただければ幸いです。取組を何年かやられていて、目標策定等の場面で感じられたことがあれば、その辺りを教えていただければと思います。
【和田センター長】 ありがとうございます。私自身も本職は基礎医学の研究者でございます。研究所には、いわゆる研究仲間がいっぱいおりますけれども、彼らの広報意識は間違いなく高まっております。今までは、どちらかと言いますと、良い仕事をしていれば向こうから取材に来るだろうという考え方でいたわけなのですが、それがガラッと変わってまいりまして、私はこんなことをしているので、もう少し訴えたいのだけれども、どうしたらいいのだろうというような声が高まってきております。企画戦略室のところに担当窓口があるのですが、そこにも自らメールや電話をしてくださる方の人数が増えてきておりますので、職員に対しても非常に良い効果を与えているのではないかと思います。あの人が載っているのだったら、私も載らないだろうかというような形で、良い意味で競争原理が働いております。
【梶川委員】 ありがとうございました。
【栗原委員】 メディアへの広報は非常に重要で、それを通じてメディアからまたさらに広報していただくということだと思いますが、関係者という意味では必ずしもメディアだけではなくて、地域もあれば、連携されるいろいろな機関や企業もあるのではと思います。そこで、このメディア塾からさらに発展的に他のいろいろなステークホルダーへの広報として、何かお考えになっていることはあるのでしょうか。あるいは、これまでの取組から何を学ぶことができたとお考えでしょうか。
【和田センター長】 メディア塾と並行いたしまして、市民公開講座等も行っております。いわゆるメディアリレーション以外に一般の市民の方々に直接働きかけるということも行っております。御質問いただきましたメディアリレーションを通してさらに国民の方々へということも、いわゆる総合戦略的な形で行っております。メディアリレーションを通すことによって発信力が増えますと、フィードバックをいただく場合もございます。今までは言いっぱなしだったのですけれども、この記事はどういうことなのだろうと、はね返ってくるというところが出てきているように思いますので、その意味で国民の方々の理解度の向上につながっているのではないかと考えているところであります。
【樫谷委員】 御説明ありがとうございます。メディアというと、いいことばかりを取り上げるのではなくて、何かとんでもないことをしたときにも取り上げられるイメージがあったのですが、5.のところの「見える化」の中に「わかる化」と書いてあります。これは分かってもらう化とか、分からせる化ということだとも思うのですけれども、確かに見える化で何かたくさん見せれば良いというのではなくて、分かってもらわなければいけないというところが、この取組の非常にユニークというか、興味深いところだと感じました。私も若干のメディアの方との付き合いがありますけれども、新聞記者やメディアの方は異動によって担当が頻繁に替わってしまうため、また一から説明しなければいけない、分かったころにまた替わるというようなイメージがあるのですが、その点はどのようにお考えですか。
【和田センター長】 どこにも人事異動はあると思いますので、替わられても、その都度きちんと私どもの使命をお話しすれば、それだけ理解される方が増えていくのだろうと思っております。もちろん、それほど異動はされない上に立つ方にもきちんと理解をしていただき、今の現場の記者さんたちにも理解していただくというような、その両面で取組を行っております。そのため、替わるから、1回しゃべったから、と言って、何でまた同じことをしゃべらないといけないということは考えておりません。何回でも喜んで、どこに出かけても話をしますということで行っております。
【高橋委員】 御説明ありがとうございました。メディアをうまく使って正しい医療・研究の情報を流すという御趣旨が良く分かりました。一方で、メディアの側に長くいた人間からすると、ジャーナリストによっては、相手に言われたものをそのまま記事にすることをよしとしない方も少なくないのではないかと思います。
他方、若い記者を中心に、自分の都合に合わせた記事をセットで提供されると楽でありがたいという人たちも増えていると感じています。私も40年前、医療系のジャーナリスト的な仕事をしていたこともあるのですけれども、記者も大変苦労して情報を集めており、一般の人に対しての講座等を聴きに行って、この先生は良いかもしれないと思うと取材をしていくとか、いろいろなやり方をしていました。今回のお話を聞いていると、目の付け所は素晴らしいと思うものの、お金をかけたり、PR会社を使ったりした取組は、どの独立行政法人でもNCNPのように、同じようにうまくいくかというと、必ずしもそうは言えないところがありそうな気がしております。
そこでお伺いしたいのは、経験豊富なジャーナリストであれば、ここで聴いたお話をそのまま記事するのみではなくて、それをきっかけにして取材を始めて、いろいろ世の中に対して問題提起を行ったり、解決を図ったりしていくと思うのですけれども、そこまで行った例というのがあるのかを教えていただきたいと思います。
【和田センター長】 もちろんございます。私どもNCNPメディア塾では、話をした内容は直接記事にせずに、改めて取材申し込みをしてくださいと言っております。ですから、受講された方で、私どもへ何回も取材に来られて、いわゆる医療面や科学面等々で特集を組んでくださった事例は多数ございます。メディアの方々とは親密過ぎてもいけないし、でも、遠く離れて声が聞こえなくても困りますので、ほどよい距離感を保つということが大事かなとは思っております。そういう中で、メディアの方々の中に、いわゆる応援団が増えてきたのではないかなと感じているところです。
【金岡委員】 大変素晴らしい取組をご紹介いただき、ありがとうございました。一つだけ、いわゆるパブリシティについて教えていただきたいのですけれども、このメディア塾を四年間行われた結果として、この独立行政法人が具体的にどの程度メディアに取り上げられていらっしゃるのか、そういう件数というものは内部で把握していらっしゃるのでしょうか。
【和田センター長】 それは把握しております。
【金岡委員】 その件数はかなり増えてきているのでしょうか。
【和田センター長】 手元に資料を持っておりませんけれども、2012年を境に我々を報道してくださり記事になった件数は増えてございます。それは一つには間に入ったPR会社がきちんと記者の方につないでくださるということがございました。リテナー契約を結んでいる時代もありましたけれども、今はリテナー契約をしていませんので、若干、そこのところでつながり力が少し弱くなっているかもしれませんけれども、件数といたしましては増えております。
【金岡委員】 ありがとうございます。
【高橋委員】 もう一点お伺いしてもよろしいでしょうか。ジャーナリズムといった場合に、大手のメディア、放送、新聞社、雑誌等あると思うのですけれども、今はそういう人たちがだんだん食べていけないぐらいソーシャルメディアが進んでいる時代です。特に、医療系の情報というのは、昨今大きな事件もありましたけれども、時には曖昧な情報が流されているということもあります。そういうものに対して何か働きかけをされているのか、あるいは、ここでちゃんとしたものを出しておけば、良貨が悪貨を駆逐するようなことが起きてくるのか、その辺りに関する取組を教えていただきたいと思います。
【和田センター長】 基本、我々が取材を受け、我々のことが記事になった場合で、我々の意に反した内容になったときは必ずコンタクトするようにはしております。メディア塾では、こういう報道はこっちの書き方にすれば良かったよというようなことまでお話しすることが度々あります。具体的な報道記事等も参考にしながら、ここはこうだったのじゃないかなというようなことも対話しておりますので、良い報道に結びつければいいなという形で取り組んでおります。
【中村委員】 このように明るく取り組むという姿勢は非常に良いことだなと思います。本来の目的が最先端の医療と研究に取り組むということなので、これだけ注目が上がって、この活動をこれだけやってきたことでこれだけ進捗したとか、今までだったらなかなか職場に復帰ができなかった人たちの復帰できる確率が増えてきたとか、原因の特定がこのようにできて、対策も進歩してこうなったとかいうような実績を出していただけると、記者もそういう実績があれば書かざるを得ないですし、もっと良い方向に進むのかなと思いますが、その辺りの状況を教えていただければと思います。
【和田センター長】 ありがとうございます。認知行動療法を中心にしまして社会復帰プログラムというものを私どものセンターで実施をしております。手元に数値に関する資料を持ち合わせておりませんけれども、具体的な例数としては着実に増えてきております。それから、企業の中でも一定の割合でそういう心の病を持った方々がおられますので、そういう方々の社会復帰、あるいは予防も含めて企業との連携も始めているところでございます。
【野路委員長】 他、よろしいでしょうか。では、和田様、ありがとうございました。
【和田センター長】 ありがとうございました。
【野路委員長】 私もこれを聞いて、非常に素晴らしいと感じました。NCNPの場合、特にメディア関係の広報が非常に重要だということをよく理解いたしました。一言だけコメントさせていただくと、弊社では、企業価値とは、あらゆるステークホルダーからの信頼度の総和であると定義をしています。では、独立行政法人の価値は何なのでしょうか。おそらく企業価値と同じようなものだと思います。今の時代、小さな不祥事を発端として会社の倒産につながることもあります。企業の場合は特にそうだと思いますが、利益が出ていれば良いというわけではありません。独立行政法人の場合、そこまでは行かないでしょうが、NCNPで行われているように、いろいろなステークホルダーに対してどうやって信頼される独立行政法人になるのか。そのポイントを、今回、和田様から教えていただきました。是非、他の独立行政法人もそういう観点で皆さん考えてほしいということを言っていただきたいと思います。
私もNIHだとか、マックス・プランクとか、理化学研究所とか、いろいろと行かせてもらっていますが、和田様もおっしゃったように、やはり海外の取組は素晴らしいと思います。それと理事長というか、トップにお会いすると、日本のトップとは全然おっしゃることが違っています。経営的な観点で、社会的な課題にこのセンターやこの法人がどう役立っているかということをまず一番先におっしゃるのですね。だから、今でも志が高い方もおられるでしょうけれども、そういう志の高い長がもっと生まれるように、今回の成功事例がありますので、是非横展開していただけるよう、事務局でもそういう紹介を、今皆さんが言われたコメントをつけて言っていただくとよろしいと思います。
また、個別の話ですが、企業でも心の病を持つ方はおられます。長時間労働だけが原因ではなく、精神的に追い詰められて自ら命を絶たれる方も見受けられます。人が命を絶つなんて、こんな悲しいことはありません。そのため、是非、企業といろいろなことができるのであれば、我々民間企業も、どのように向き合うべきか非常に苦労しているので教えていただければと思います。企業に入ってからでは遅いのであれば、子供時代にどうしたらいいかとか。私自身も理科の好きな子供たちを育てるにはどうすれば良いかなど、いろいろなことをアメリカの研究機関の論文を読んだりして勉強しています。
それと同じように、いろいろな研究もあるのだと思いますので、どういう具合に子供たちを育てたら良いか、あるいは、企業に入った人たちに対してはどのような取組みができるかというものを是非教えていただいて、いろいろなところとの共同研究等もお願いしたいと思います。私のコメントは以上で終わります。
和田様に改めて感謝の拍手をお願いしたいと思います。それでは、和田様はここで御退席されます。ありがとうございました。
最後に、議題4について、事務局から説明をお願いいたします。
【栗原管理官】 次回でございますが、来年1月29日に委員会を開催いたします。場所、時間、議題等詳細は追ってご連絡させていただきます。
以上でございます。
【野路委員長】 それでは、以上をもちまして第13回独立行政法人評価制度委員会を閉会いたします。本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
 

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