【宇賀代表】 それでは、定刻になりましたので、会議を始めます。
本日の審査では、まず、両当事者から口頭で陳述をいただくこととしております。初めに、本日の出席者の確認をさせていただきます。
審査申出人、出席しておられますか。それから、申し出の相手方も出席しておられますか。
ありがとうございます。
それでは、次に、本日の審査の進行等についてですが、審査省令第14条の規定に基づきまして、代表自治紛争処理委員である私が行うこととします。
次に、本日の審査の進め方ですが、初めに両当事者から、それぞれ20分以内で口頭陳述していただきます。まず、審査申出人である我孫子市から陳述を行っていただき、引き続きその相手方である千葉県から行っていただくこととします。
その後、まず、私ども委員のほうから、両当事者に対しまして質問をさせていただきます。その後に両当事者から質問等があれば伺うことといたします。
それでは、早速、審査申出人である我孫子市から20分以内で陳述をお願いします。
【我孫子市】 では、我孫子市長の星野順一郎です。我孫子市を代表いたしまして、本件審査申し出に係る陳述をさせていただきます。
時間も限られておりますので、申し出の法的な論述等につきましては、後ほど代理人からの陳述と提出書面で行わせていただくこととし、私からは、根戸新田地区を農用地区域から除外する計画案を定めた経緯、地権者や審議会の意向、根戸新年地区の現況など、地元の思いと地方分権・地方主権の尊重という点を軸に陳述させていただきます。
根戸新田地区の現況は、先日の現場検証でご覧いただきましたように、都市計画道路で分断されております。また、道路と農地には大きな高低差が生じております。このため、高齢化した農家の方々にとっては、非常に危険が伴い、農業用機械の移動や農地の出入りに支障を来しているのが現状であります。
先日、現地をご覧いただきまして、実際には農地として活用しているところが多いと感じられたかもしれません。しかしながら、根戸新田地区の農地では、都市計画道路の築造や手賀沼流域下水道の敷設工事により、これまで自然流下していた水が遮断されるなど、農地の排水機能が著しく損なわれております。さらに、農道が整備されていないことに加え、接道していない農地や不成形な農地が多く、大型機械の活用は困難であります。その上、用水につきましても、各自の井戸からの自給となっており、決して生産性の高い農地とは言えません。
それでも、我孫子市では地域農業の振興を図る立場から、根戸新田地区の農家や地権者の方々と長年にわたり、ひざを突き合わせた座談会等を通じ、話し合いを重ねながら、当地区の農業振興に努めてまいりました。そして、農地として決してよい土地とは言えず、なおかつ、高齢化や担い手不足が進行する中でも、行政と農家及び市民活動との協働の努力により、辛うじて農地の活用が図られているのが実情であります。
このように、根戸新田地区には、目に見える限りにおいては農地として活用されているように思われますが、土地の形状、排水問題など多くの困難な課題を抱えており、営農という観点からは、優良な農地とは到底言えない状況にあります。また、農家の高齢化が進むとともに、後継者が不足していることから、将来も農地として活用ができるかどうかについては大きな不安があります。
我孫子市は根戸新田地区の農家や地権者の方々と平成14年度から、今後の農業のあり方や方向性について、たび重なる議論をしてまいりました。そして、地権者との座談会では、都市計画道路が縦横に築造され、農地間の連絡が遮断された道路の築造に当たり、深度約5メートルのコンクリートの矢板を全線の両側に打ち込まれたため、排水機能が遮断され、時には冠水状態になるなど、耕作を断念したこともある。農道がないために、機械作業もままならない。将来の後継ぎがいない。行く行くは農地を荒らしてしまうことになる。なぜ優良農地でないところを農用地区域として設定するのかといったような切実な思いがその都度示されておりました。
こうした問題や将来への不安を抱える中で、根戸新田地区の土地所有者は、平成15年度6月の定例市議会に「農用地指定除外を求める請願」を提出いたしました。そして、市議会では、この請願を採択し、議会の意思としても、当該地区は農用地区域から除外することが相当との判断をいたしました。また、平成21年12月の定例市議会では、市議会議員の発議による我孫子市根戸新田農用地区域指定除外協議についての意見書を採択いたしました。これは、今回の千葉県知事による不同意が誤った法解釈によるもので、正しく法律を解釈、運用するとともに、農業者の主権、我孫子市の地域主権の尊重を千葉県知事に対して求めるものであります。
このように、地元の農家及び地権者の方々、市議会の一貫して農用地区域から除外することを強く要望しております。
ところで、我孫子市は、将来も根戸新田地区の良好な環境を守っていきたいと考えております。そして、そのためには、現在の農地を農地のまま保存できるのであれば、それが最適だとも考えております。
しかしながら、農地を農地として保存することには大きな困難が伴うのも事実であります。現状の根戸新田地区は、農地として決して好適地ではなく、農地を維持することについて、地元の農家や主権者の方々には大きな負担を強いております。また、今後は農家の高齢化が進み、世代交代の問題や後継者不足という問題が顕在化することも当然予測されております。その場合、耕作が放棄され、最終的に農地が荒廃してしまうことも強く懸念されております。無論、そういうようなことがないように、我孫子市は可能な限り地元との対話を続け、環境の維持に力を尽くしていきたいと考えております。
とはいえ、農地の保全にこだわり過ぎる余り、後継者不足等から農地の荒廃を招き、逆に環境の悪化を招いてしまっては元も子もありません。そうなってから農用地区域から除外しようとしても、もう手おくれであります。一たび失われた環境を回復することは極めて困難であるためです。また、農地が荒廃した状態となっては国土資源の有効利用に寄与することもできなくなります。このように、根戸新田地区の農地、言いかえると、国土資源である農地を有効利用していくためには現行の農振制度では困難であり、農地を自然環境として保全していくという新たな視点が必要だと考えております。
市の基本構想では、根戸新田地区を自然環境ゾーンとして設定し、手賀沼の水辺・農地・斜面林などの保全・再生を一体的に進めるものとしております。こうしたまちづくりの基本原則から、我孫子市では根戸新田地区が農用地区域から除外されることを前提に、農地を農地として活用していくための条例を制定しております。また、仮に農地の活用が困難な場合でも、地権者、市民との合意により自然環境として保全していく考えであります。
このように、我孫子市では長年にわたり、地元の農家や地権者と会話を重ね、現地の実情の把握や地元の意向の聴取を続けてまいりました。そして、その結果として、根戸新田地区を農用地区域から除外するのが相当だと判断いたしました。単に地元の意向を受けたというにとどまらず、根戸新田地区の良好な環境を保全する上でもそれが最善だと考えたからです。
ところが、千葉県知事は、この我孫子市の判断につき不同意といたしました。その理由は、根戸新田の土地の一部、約6.6ヘクタールが国営手賀沼干拓土地改良事業の施行区域内にあるというものです。しかし、このような形式的な理由から我孫子市の判断に不同意とされることは到底納得のできるものではありません。一体、千葉県知事は現地の実情や地元の意向についてどの程度のことを知っているというのでしょうか。地元の自治体である我孫子市が長年にわたり地元と対話をし、現地の状況の把握に努め、その末に下した結論をどうして簡単に不同意とすることができるのでしょうか。
平成12年には、地方分権一括法が施行され、市町村の事務処理に関する国及び都道府県の関与は必要な最小限度に制約されるとともに、市町村の自主性及び自立性が尊重されるものとされました。この趣旨からも、我孫子市における自治事務については本来的に我孫子市の判断と責任のもとで決するべきであり、千葉県知事による関与は可能な限り排除されるべきことは当然であります。千葉県知事は我孫子市の判断を最大限尊重すべきであります。また、農振法における知事同意の義務づけについては、全国知事会も反対の立場だったはずです。それにもかかわらず、千葉県知事は我孫子市の判断を不同意としましたが、地方分権・地域主権という流れには逆行するものであります。
本件審査に当たっては、以上の趣旨をご賢察いただきまして、地方分権が損なわれることのないよう十分に議論を尽くされ、「審査申出の趣旨」で示したとおり、千葉県知事に対して不同意を取り消した上で、平成22年5月28日までに同意をすべきである旨の勧告を行っていただきたいと考えるものであります。
以上です。よろしくお願いします。
【我孫子市】 続きまして、ここからは我孫子市長の陳述に示されました根戸新田地区の実情等を前提といたしまして、弁護士の中村から法的主張を行わせていただきます。
法的主張の詳細につきましては、さきに提出した「審査申出人反論書」に記載したとおりでありますので、この場では法解釈の指針について陳述させていただきます。
本件における各争点を判断するには、言うまでもなく、農振法及び関連規則等の解釈が不可欠となります。そして、当該解釈に当たっては、農振法の目的に十分留意する必要があります。この点、農振法第1条は、「この法律は、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域について、その地域の整備に関し必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とする」と規定してあります。このことからも明らかなとおり、農振法は、農業の発展のみならず、国土資源の合理的な利用をも目的としているのです。
そして、このような目的を受け、農振法第2条は、「国土資源の合理的な利用の見地からする土地の農業上の利用と他の利用との調整に留意」することを原則に掲げております。このように、農振法は、単に農業の発展という点にとどまらず、土地の合理的利用も目的としており、法の原則としても掲げられているのです。そして、農振法の解釈及び本件の検討に当たってはこのことを銘記しなければなりません。この点、もし根戸新田の土地を農用地区域の対象から除外しないと、逆に農地の荒廃を招くおそれがあります。さきの市長の陳述にもあったとおり、そもそも農地として好適地でないことや、農家の高齢化、後継者不足等の要因により、根戸新田の土地は今後、耕作が放置されるおそれも強く懸念される状況にあります。
ところが、もし農地の荒廃を招いたとしても、農用地区域に指定されている限り、農地以外の土地利用を検討することができません。その結果、根戸新田地区の環境は大きく悪化することとなります。かかる状態が国土資源の合理的利用という農振法の目的に沿うものでないことは明らかであります。
現在、我孫子市では、根戸新田地区における自然的環境を何とか維持したいと考えております。そのために最も有効な方策を実施したいとも考えております。我孫子市は地元の状況も最もよく理解する地方自治体であります。その我孫子市に具体的施策をゆだねることこそが国土資源の合理的利用という農振法の目的に最もかなうものであります。
また、農振法の解釈に当たっては、農振法の目的・原則とともに、憲法上の人権である財産権との調整についても考慮する必要があります。
憲法29条1項は個人の財産権を保障しております。個人は、原則として、自らが保有する財産を自由に利用、処分することができるとされているのです。もちろん財政権も公共の福祉の観点から一定の制約を受けることは否定できません。
しかしながら、憲法上の人権である財産権を制約する以上、この制約が必要最小限の場合に限定されることは当然のことであります。この点、農振法に基づき農用地区域として定められた土地は、その用途が著しく制限されるほか、開発行為の制限、転用の制限等もなされます。農用地区域としての指定は、個人の財産権を大幅に制約するものであります。
したがいまして、農用地区域としての指定は、財産権への制約が過度にわたらないよう、ほんとうに必要な場合に限定されるべきであります。この点、さきの市長による陳述にもあったように、根戸新田の土地は、都市計画道路で分断され、道路と農地には大きな高低差が生じている上、農業用機械の移動や農地の出入り等に支障を来しているのが現状であります。
さらに、根戸新田の土地は、このような土地の形状に加え、排水問題など多くの困難な課題を抱えておりまして、農地として好適地ではありません。このように、農地として好適地でない土地についてまで農振法による規制をかけ、地権者に農地としての利用を法的に強いることは個人の財産権に対する過度な制約になるものと考えます。農振法の解釈に当たっては、個人の財産権を過度に制約することとならないかという視点も念頭に置いて行う必要があります。
最後に、まとめになりますが、以上のとおり、国土資源の合理的な利用という農振法の目的・原則と、財産権に対する過度の制約になるという観点からも、根戸新田の土地を農用地区域から除外することが相当であります。
自治紛争処理委員におかれましても、このような視点を持った上で適切にご判断いただきたく、陳述を終わらせていただきます。
以上です。
【宇賀代表】 それでは、引き続きまして、相手方である千葉県のほうからも20分以内で陳述をお願いします。
【千葉県】 千葉県農林水産部農地課長の寺内と申します。
相手方は既に答弁書を提出させていただいておりますが、本日はその概要を陳述させていただきます。
まず、本件審査申出の趣旨に対する答弁でございますが、審査申出人の申出を棄却するとの審決を求めます。
次に、本件審査申出の理由及び審査申出人の主張に対する認否は、答弁書に記載のとおりでございます。
次に、相手方、千葉県知事の主張についてでございますが、本件不同意に至る経過については、答弁書第4の1に記載のとおりでございます。
審査申出人に主張に対する反論は、同第5に記載のとおりでございますが、かいつまんで申し上げますと、本件で係争地となっている根戸新田の土地の一部は、国営手賀沼干拓土地改良事業の排水受益地であること。同事業は農振法施行規則4条の3に掲げる事業に該当することから、本件受益地は農振法10条3項2号に該当し、農用地区域としなければならないものでございます。
しかしながら、本件変更案では、これを農用地区域に含めていないことから、本件変更協議については不同意といたしたところでございます。この点につき、審査申出人は、本件事業は防災を目的とする事業であるから、農振法施行規則4条の3に掲げる事業には該当しない旨、主張しておりますが、答弁書にございますように、本件事業は農業の生産性の向上を目的とする事業であると認められるものであります。
さらに、審査申出人は、千葉県が地方自治法が規定する基準を定めておらず、この点からも、本件不同意は違法または不当であると主張しておりますが、千葉県では農業振興地域整備基本方針を策定し、この中で農用地区域に含まれるべき土地の基準等を明らかにしており、同基本方針は、地方自治法が規定する基準に相当するものであります。また、この基本方針に関しては千葉県のホームページでも公表しているところでございます。基準を公表していない旨の審査申出人の主張は不当でございます。したがいまして、本件不同意に違法はなく、かつ、審査申出人、我孫子市の自主性及び自立性を尊重する観点からも不当な点はないのでありますから、本件審査申出は棄却されるべきものであると考えます。
以上でございます。よろしくご審議のほどお願いいたします。
【宇賀代表】 それでは、委員の方から質問等ございますでしょうか。
【高橋委員】 では、私から我孫子市にご質問をさせていただきたいと思います。
まず、今日の星野市長の陳述要旨ですが、細かいところで恐縮ですが、3ページであります。3ページの第2段落で、ここはちょっと細かいところですけれども、平成21年の定例市議会では、市議会議員の発議による云々とありますね。これ、採択しました。これは、今回の千葉県知事による不同意が誤った法解釈によるもので云々、千葉県知事に対して求めるものでしたとありますね。千葉県知事による不同意というのは、私の手元の資料では平成22年2月15日付の文書で来ているのですが。つまり、定例市議会が平成21年に行われていて、県知事の不同意は22年というのは時系列的におかしくないかということがまず1つ目であります。
【我孫子市】 よろしいでしょうか。
【宇賀代表】 はい。
【我孫子市】 代理人の徳本でございます。その12月の定例市議会で意見書採択された中身ですが、この農振法に基づく最終的な本協議の前段で、県の要領に基づく事前協議という手続を行っておりました。その事前協議の段階で不同意ということが回答されましたので、それを受けての意見書が採択されたということで、ちょっと言葉足らずになりましたけれども、そういう趣旨でございます。
【高橋委員】 結構です。続けてよろしいですか。
【宇賀代表】 はい。
【高橋委員】 それから、まず、陳述書についてもう1点。陳述要旨について、もう1点あるんですが、4ページですが、5番目の3行ぐらい上ですけれども、「農用地区域から根戸新田地区が除外されることを前提に、農地を農地として活用していくため条例を制定しています。」と書いてありますね。ここは農地を、この地区除外の目的ともかかわるんですが、農地として維持するための地区除外であるという趣旨と読めますね。そうすると、農地として維持するために、なぜ農用地区域の地区除外を外す必要があるのかということについてお答えいただければと思います。
【我孫子市】 では、代理人の中村のほうから。まずは、そもそもの我孫子市の除外の根拠なんですが、この部分については、地元の地権者の財産権の見地から、法律の規制について外すべきではないのかというような考えがあります。確かに市にしてみれば、あの地域については、農地には限らないのですが、自然環境という視点では残したいと考えております。その上で、現在では農地として利用することが自然環境上ベストなんじゃないかという考えを持っています。
ただ、正直なところ、地権者のほうはいろいろな考えがある方が大勢います。そういった中で、法律の規定上、各要件を現状では満たしていないという判断のもと、今回、除外区域、区域から除外してほしいという計画を立てたところです。
【高橋委員】 要件とおっしゃるのは農用地区域の指定要件?
【我孫子市】 おっしゃるとおりです。
【高橋委員】 もう一ついいですか。
【宇賀代表】 どうぞ。
【高橋委員】 今の最後の点とかかわるのですけれども、今回の地区除外の申請の最初の理由が都市計画道路の分断によって、20ヘクタール要件を欠けたからという理由で県のほうに申請されたと思うのです。その点についてちょっと伺いたい。おそらく1970年代の前半だと思うのですが、当初の当該地域全体での農用地区域の位置と、それから、今日の地区除外をまだしない段階での農用地区域のエリアと変わっているのかどうか。つまり、地区除外を何回かして今日に至っているのかどうか。
【我孫子市】 徳本のほうからご答弁させていただきます。
昭和49年に最初の農用地区域の設定をしておりますが、根戸新田地区については、その途中で一部、ガソリンスタンドや排水路などの除外だとかをやったことがありますが、全体としてはあのエリアで設定されたままでございます。
【高橋委員】 そうすると、北側も西側も東側も当初の設定エリアから変わってはいないと、ガソリンスタンドのところを除いて。
【我孫子市】 はい。
【高橋委員】 という理解でよろしいですか。
【我孫子市】 はい。現地視察でご案内した東から西までが当初からのエリアです。
【高橋委員】 わかりました。
それに続いて、都市計画道路ができて分断されたのはいつですか。
【我孫子市】 ちょっと資料を。ちょっとお待ちいただきたいと思います。
【高橋委員】 大ざっぱで結構です。何年前ぐらいで結構です、10年前とか20年前とかで。
【我孫子市】 お答えします。都市計画決定自体は昭和36年にやられて、計画自体は大分古くからされているところであります。路線については、一部、途中でルートが変更されたりしていますが、現計画、今の路線の形になったのは、昭和46年3月23日付で計画変更がされております。
【高橋委員】 そうしますと、先ほどのお話だと昭和49年に農用地区域を指定されたとおっしゃいましたね。
【我孫子市】 はい。
【高橋委員】 ところが、道路は46年にできているわけでしょう。
【我孫子市】 計画……。
【高橋委員】 だから、具体的に完了はいつなんですか。
【我孫子市】 お答えします。供用開始が平成元年4月となっています。
【高橋委員】 そうですか。1989年。そうすると、農用地区域指定後ということになりますね。ちなみに、本件地区内で道路敷地面積はどのくらいですか。
【我孫子市】 道路敷地面積については、今、手元にないんですが、幅員が12メートルから22メートルあります。そのほか、ちょっと具体的な数につきましては、今ちょっと手元にございません。必要ならまた出させていただきます。
【高橋委員】 つまり、なぜ聞いたかと申しますと、都市計画道路を通す前の段階で、既に当該地区は20ヘクタールを超えていたのかどうか。つまり、道路を通したことで20ヘクタールが欠けた状態になったのかどうかということを確認したかったからです。
【我孫子市】 20ヘクタールの問題でちょっとお話しさせていただきますと、当初は通達行政で、基本的に20ヘクタール。それで、我孫子市のような都市的な地域については、10ヘクタール以上あれば農用地区域に編入しても基本的にいいですという制度になっておりまして。
【高橋委員】 最初から?
【我孫子市】 はい。その観点から言いますと、10ヘクタール以上を満たしているものになっておりました。その後、法改正があって、20ヘクタールというのが法令上も規定されたというのがありますので。
【高橋委員】 法令上とおっしゃるのは農振法の改正で。
【我孫子市】 はい。農振法で。
【高橋委員】 その当時は、都市的な地域については、そのときは10ヘクタール以上でもオーケーという施行通達が残っていたのですか。
【我孫子市】 そうですね。平成10年のときに、この地域、将来どうしますかと地元の方々といろいろ相談をさせていただきました。そういう中で、当面、この10ヘクタールという面積がクリアされているというお話も説明させていただく中で、農業の将来像というのは、まだ地元の方々も見きわめがついていなかったんだと思いますけれども、やむなしだろうということでご了解をいただいて、縦覧等を出させていただいたときにも異議申立て等はなかったということでございます。
【高橋委員】 わかりました。そうすると、県に対する申請の趣旨である、都市計画道路により分断された結果、20ヘクタールを欠けたので農用地区域から地区除外するという説明はちょっと今の経緯からおかしいですね。
【我孫子市】 分断されたから、20ヘクタールを割ったという趣旨ではありませんで。
【高橋委員】 そういう趣旨でお書きにはなっていなかったですか。
【我孫子市】 分断されたことによって、それぞれ非常に使い勝手が悪い土地になっております。
【高橋委員】 読ませていただきます。「変更理由、計画道路に分断され、集団的に存在する農用地の規模が20ヘクタールを下回ったことにより、農用地等として確保すべき土地ではなくなったために除外したい。」この文章ですね。これは明らかに分断されて20ヘクタールを下回ったと読めます。
【我孫子市】 それはちょっと直接的には、時期との関係では、分断されたがために20を割ったということではないですけれども、趣旨としては、書き方がちょっと誤解があったかもしれませんが、分断されたことによって沼側の地区や、また西側、東側の地区も裁断されてきたという現状をちょっと説明をさせていただきたいという中身でございます。
【高橋委員】 とりあえずはそれで。また後で。
【宇賀代表】 本件事業の受益地の範囲の考え方と具体的範囲について、我孫子市と千葉県それぞれから確認させていただきます。最初に我孫子市に、事業の受益地の範囲について、どういう考え方を持っておられるかお伺いします。
【我孫子市】 代理人の島田です。
事業の受益地については、書面等でも大分問題になっている6.6ヘクタールの土地であると考えておりまして、受益の内容としては、あるとすれば手賀排水機場による排水。その点に限定されると考えております。
【宇賀代表】 では、同じ質問に対し千葉県からご回答をお願いします。
【千葉県】 千葉県の指定代理人、岩アです。私からお答えします。
当方は、協議について、受益地の範囲をどう考えるかということにつきまして、手賀沼土地改良区から取り寄せた賦課金の資料がございまして、それは1筆ごと賦課金の支払いがなされているかどうかが記載されているものなので、そこに記載のあるところは少なくとも受益地であろうと。そのほかにもまだ受益地はあるかもしれませんが、そこまで特定ができませんでしたので、少なくとも確認ができた範囲が6.6ということで物件目録に記載させていただいたところです。
【大橋委員】 我孫子市のほうにお聞きしたいんですけれども、今、県のほうから説明があったように、賦課金を払っているというお話だったんですけど、それはどうですか。ここのところについては、直接の目的は防災目的だということで、副次的に農業の生産性向上ということをおっしゃっているんですけれども、賦課金を支払っているということはどのように整理されているんですか。
災害防止目的で賦課金というのはちょっとなじまない気がするんです。
【我孫子市】 排水受益自体は、農家の方々は、排水場がつくられたことによってエリアに組み込まれたという意識から、支払うことを確認されていたのではないかと思われますけれども、受益の程度、農業の生産性向上が直接の目的となるような意味での受益費として支払っているという意識はないと考えています。あくまでも農地の水を流して、それが流末のほうではそういう処理がされているということのエリアに組み込まれたがためにそういう賦課金を払っているんだろうなと考えています。
【大橋委員】 それと、もう一つ、市にお聞きしたいんですけど、県のほうが基準を明示していないという主張についてです。そこをちょっと補足してもらえますか。先ほどの県の説明だと、そこはもうホームページにも公表して、具体的なものは出しているんだという説明がありました。
【我孫子市】 基本方針が示されているのは承知をおります。ただし、これにつきましては、反論書でも書かせていただいていますけれども、あくまでも農振法に規定された県の義務として総合指針に定められているんだろうなと。ここに規定された範囲内、それ以上を出ないと判断しています。
また、陳述書が求めるところでは、同意の基準ということを明示をして、この分が同意の基準だと、こういう場合は同意しないということが明示されて行動されなければいけないだろうと判断しました。その点、この基本方針にはその旨、書かれておりませんので、私どもはそういう主張をさせていただきました。
【大橋委員】 もう1点、市のほうに確認なんですけど、現在の市の基本構想では、6.6ヘクタールの土地というのはどういう位置づけをされているんでしょうか。別の言い方をしますと、今、検討されている条例、農地を農地として残すという条例というのは、規制的な内容と考えているのか。どういう条例を用意されているのですか。
具体的に、ここの土地は将来的にどういう目的に利用するのか。自然環境維持というお話ですけど、ちょっと横のほうを見るとかなり開発が進んでいるような気もしまして、現場を見ると、開発の計画があるようにも見えなくもないので、ちょっとここがはっきりしないので教えていただきたいんです。
【我孫子市】 条例と基本構想が書面なので。
【大橋委員】 では、書類で説明下さい。
【我孫子市】 わかりました。
【高橋委員】 先ほど我孫子市にお聞きしたので、今度は千葉県の方にお伺いしたい。最初の不同意の理由書を読ませていただきますと、6.6ヘクタールが土地改良事業の受益地であるがゆえに、「少なくとも」という言葉を使っているのですけど、6.6については農用地区域として残すと書かれています。本件14.8ヘクタールのうち6.6を除いた8.についての、受益地以外の土地で現農用地区域内に入っている土地についてはどういうふうにお考えなんですか。
【千葉県】 少なくとも本件で不同意としたのは、受益地に入っているがために、結局は農業の生産性の向上を図る事業の受益地だと判断して不同意にしておりますので、仮に受益地ではない、もしくは農業の生産性の向上を図る事業の区域の外であるというのであれば、農振法の10条の要件を満たさないことになりますので、不同意はできないと考えます。除外するのもやむを得ない。
【高橋委員】 ただ、不同意は全体としての不同意だと。
【千葉県】 ごめんなさい。ちょっと言葉が足りませんけれども、この変更案自体が14ヘクタール。根戸の土地全部を農用地区域に設定しないという変更案でしたので、その変更案の中に農用地区域として定めねばならないところが6.6ヘクタールほどは最低入っているので、その変更案については同意しないという趣旨の不同意でした。
【高橋委員】 なるほど。それから、もう一つ。これはむしろ我孫子市に伺ったほうがいいのかもしれませんが、手賀排水機場ですが、実際に使用に供されたのはいつからですか。
【我孫子市】 県のほうで基本的に管理して……。
【高橋委員】 では、県のほうにお伺いして。
【千葉県】 今、手元に資料がございませんので、申しわけございません。ちょっと調べて、また。
【高橋委員】 そうですか。
【大橋委員】 県の方にお聞きしたいんですけれども、市から出ている反論書というのはごらんになっていますね。反論書の中で、基準のところで、他方で同意基準を明示して定めているのに、今回のここのところについては、そういう意味での明示というのが足りないのではないか。そういう指摘が出ていますが、そこはいかがでしょうか。
【千葉県】 すいません、何ページ。
【大橋委員】 反論書の15ページの第7の上のところ。先ほどのお話だと、ホームページにも出していて、基準としては欠かすことができないんだというご指摘で、それに対して市のほうから見ると、しかし、明示の仕方に程度差があるのではないかという趣旨のご意見が出ていると思うんです。
【千葉県】 当方としては、これで十分足りていると考えております。公表しているもので足りていると、相当なものだと思っています。
【宇賀代表】 我孫子市は、反論書の中で、約6.6ヘクタールの土地だけを周囲の土地から区別して農用地区域として指定すべき必要性は明らかに存在しないので、仮に本件が法10条3項2号及び規則4条の3に該当するとしても、実質的な判断を加えた上で根戸新田の土地の一部を農用地区域から外すことは当然許容されると言っていますけれども、この反論の部分については、千葉県としてはどういうふうにお考えでしょうか。
【千葉県】 これは次回までに反論いたします。
【宇賀代表】 また、我孫子市は、反論書の中で、規則4条の3第1号本文括弧書きの解釈に当たっても、問題となる土地の個別事情ごとに当該事業の目的を見るべきと述べていますけれども、これについてもあわせてということですね。
【千葉県】 反論で。
【宇賀代表】 わかりました。
【千葉県】 その反論を踏まえまして、一応申出人の代理からありました農振法に関する解釈、これについても、私は疑義がありますので、それも踏まえてしますので。
【宇賀代表】 どうぞもし何か質問がありましたら。
【高橋委員】 大丈夫です。
【大橋委員】 解釈に後から説明を加えられるというところは、直接的とか、副次的、そこの部分を含めてということでいいですか。
【千葉県】 はい。そうですね。
【大橋委員】 では、そこについてのお考えもぜひ盛り込んで下さい。
【千葉県】 わかりました。
【宇賀代表】 よろしいですか。
【高橋委員】 もう一つだけ。我孫子市に伺いたい。水害の過去の状況について昭和13年、16年に大きな水害があったということは伺っているのですが、どんな状況だったのか。ちょっと大雨が降るとすぐにあふれちゃうという状況だったのか、それとも13年、16年だけ特別に湛水被害が生じたのか。それはどういう状況だったのかというのを、戦前のことになりますけれども、ちょっと教えてもらえないでしょうか。
【我孫子市】 それはまた資料をいろいろと用意させて、書面で出させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
【高橋委員】 はい。
【宇賀代表】 千葉県は、答弁書で、本件土地改良事業の施行に係る排水による増収の効果は、用水による増収の効果よりも大きいことが見込まれているのであって、本件受益地に対する事業の目的が湛水被害をなくすためで、農業の生産性の向上は副次的なものであるなどということはできないと述べていますけれども、この点について、我孫子市としてはどのようにお考えでしょうか。
【我孫子市】 その点につきましては、今回、お出しした反論書面に、実際に排水により10アール当たり0.5石の増収効果があるという文献がありますけれども、それ自体に根拠がない上に、計算間違い等もありますし、根拠がないというようなことをこちらとしては考えておりますので、それは書面に最初にあったとおりです。
【宇賀代表】 よろしいですか。
【大橋委員】 先ほど県のほうから、解釈のところについては、後から書面を出していただけるという話があったんですけれども、事実関係についても、市の反論書を読ませていただくと、いろいろ計算間違いのようなことから、見込みの数字が違うというような指摘がかなり出ていますので、そこの点についても、おっしゃりたい点があれば、今でも結構ですし、文書で出していただければと思います。
【千葉県】 わかる範囲で。
【宇賀代表】 よろしいですか。
それでは、これから両当事者から質問等があれば伺いたいと思います。発言される場合には、私に許可を得た上で発言をお願いします。
まず、我孫子市側から何かご質問などございますでしょうか。
【我孫子市】 よろしいでしょうか。6.6ヘクタールの土地だけが賦課金を課されて、受益地とされているようなんですけれども、その根拠について、わかるようでしたら教えてください。
【千葉県】 今日、ちょっと手元にありませんが、手賀沼土地改良区で各筆台帳とか、各筆明細というような標目の資料がございまして、それは各地権者ごとに地番が載っていまして、賦課金が賦課されている旨、わかるような資料がありまして、それに基づいて拾っていますが、とりあえず、不同意の書面を出すときに確認できたものとして、物件目録に受益地と記載させていただいています。だから、もう少しあるかもしれない。今のところ、まだちょっとそこまで全部は、正確なところはわからないです。というのは、これは国営事業でございますので、そもそも事業区域というのは国が定めて、受益、当然同意をとらなければいけませんので、その範囲というのは、当時の縦覧図書にあろうかと思うんですけれども、当方でいろいろ検索してみたんですが、図書館などでも見当たらないものですから、その点については、今回、証拠調べももう一度、そちらでされておりますので、それはしかるべく対応していただければと思います。
【宇賀代表】 ほかいかがでしょうか。
【我孫子市】 それから、もう1点、よろしいでしょうか。
今回、不同意とされた理由の中で、事業の目的について、直接という文言が条文上は出てくるんですが、その直接という文言が不同意の理由の中に示されていないのはどのような理由によるのかということを質問します。
【千葉県】 それは次回までにいたします。
【宇賀代表】 我孫子市の方、ほかいかがでしょうか。ご質問ございますか。
【我孫子市】 結構です。
【宇賀代表】 よろしいですか。それでは、今度は千葉県側から質問ございますでしょうか。
【千葉県】 ございません。
【宇賀代表】 わかりました。
それでは、今日、特に千葉県からはご質問なさることがないということですので、そろそろ公開の審査を終了したいと思います。千葉県のほうから出していただく書類ですが、もちろん準備の都合等もあると思うのですけれども、全体の審査の日程との関係もございますので、次回に参考人から意見聴取を予定しておりますけれども、そのときまでに出していただくということにしたいと思います。
それから、我孫子市側も何か書面を出されるご予定はございますか。
【我孫子市】 はい。
【宇賀代表】 では、それにつきましても同じように、そのときまでにということでお願いしたいと思います。
次回、参考人から意見聴取を、4月16日に予定しておりますので、4月16日までに書面を出していただくようお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
【千葉県】 4月16日の何時でしょうか。
【宇賀代表】 時間ですか。そうですね。これは夕方ですので。何時からでしたか。5時から。そうしましたら……。
【安田行政課長】 この日は参考人ですから。
【宇賀代表】 そうですね。この日は参考人からの意見聴取ですので、書面で出していただくということです。
【千葉県】 書面は。
【宇賀代表】 この日、17時から予定しておりますので。
【千葉県】 わかりました。
【宇賀代表】 一応それまでにということでお願いできればと思います。よろしいでしょうか。
では、最後にもう一度、確認しておきます。委員の方、追加のご質問はございますか。まだ時間的には余裕がございますけれども、よろしいですか。
【高橋委員】 ございません。
【宇賀代表】 大橋委員もよろしいですか。
【大橋委員】 はい。
【宇賀代表】 それでは、本日の公開の審査をこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。