(1)NTN(非地上系ネットワーク)実現のための周波数確保
ア 高高度プラットフォーム(HAPS)の携帯電話用基地局としての利用
高度20km前後の成層圏を飛行する高高度プラットフォーム(HAPS)に携帯電話用基地局を搭載して利用することで、山間部や海上等を含めたカバレッジの拡大及び大規模災害時の迅速な通信の復旧が期待されており、利用可能な周波数の拡大について我が国からの提案に基づき検討が行われました。
この結果、検討した4つの帯域のうち、1.7GHz帯、2GHz帯及び2.6GHz帯については、全世界で、700MHz帯については、我が国を含めた多数の国において、HAPSの携帯電話用基地局としての利用が可能となる決定が行われました。
総務省では、今後、実用化に向けた制度整備等を進めて行く予定です。
イ 携帯電話と衛星の直接通信のための周波数分配に関する検討の開始
地上の携帯電話ネットワークを衛星通信によって補完することで、携帯電話が使用できるエリアを拡大するとともに、非常時等におけるネットワークの冗長性が確保できるよう、携帯電話用として特定されている694/698MHz-2.7GHz帯の周波数を新たに衛星通信にも分配し、一般の携帯電話から衛星通信(携帯電話と衛星の直接通信)を利用可能とするための検討を開始することが、我が国からの提案等に基づき決議されました。
我が国は、次回の2027年世界無線通信会議(WRC-27)に向け、本決議を踏まえて技術的な検討を進め、提案国としてITU における議論に積極的に貢献する等、必要な措置を講じていく予定です。
(2)5G・Beyond 5Gに向けた新規周波数の分配
第5世代移動通信システム(5G)・Beyond 5G(6G)等で使用することができる周波数の拡大に向けた検討が行われ、我が国が支持していた6,425-7,025MHz(欧州・中東・アフリカ等向け)、7,025-7,125MHz(欧州・中東・アフリカ・アジア等向け)について分配が合意されました。
さらに、WRC-27に向けた追加的な分配を検討する周波数として、我が国から提案した周波数を含めた、4,400-4,800MHz、7,125-8,400MHz及び14.8-15.35GHzが合意されました。
(3)日本国内における既存業務保護のための対応
他国が推進する議題のうち、我が国の既存業務に影響を与えうるものについて、適切に保護するための提案を我が国から行い、以下のとおり我が国の意見を反映した内容で合意されました。
- 携帯電話用周波数の6,425-7,025MHzのアジア地域への分配について、我が国の地上業務に対して影響の大きい国への分配を除外した形で合意
- 14.8-15.35 GHz帯の宇宙研究業務への1次分配格上げについて、我が国の地上業務に対して影響の大きい地球-宇宙間の通信を2次業務扱いとすることで合意
- 非静止衛星から静止衛星への干渉保護基準の見直しをWRC-27の議題とする提案について、議題化をしないことで合意 等
(4)将来の世界無線通信会議の議題
その他、我が国の関心の高い議題として、以下の議題を将来の世界無線通信会議の議題とすることに合意しました。
- 月面・月周回軌道での周波数分配(WRC-27)
- 宇宙天気センサ用周波数分配(WRC-27)
- WPT(無線電力伝送)の周波数の検討(WRC-31)
- テラヘルツ帯(275-325GHz)の周波数分配の拡大(WRC-31)
- VHF帯等海上無線通信の高度化(WRC-31) 等