1 好事例2024選定ICT機器・サービス
2 募集・公表の概要
(1)募集期間:令和6年9月4日(水)から令和6年11月8日(金)
(2)対象製品:次の(i)〜(iii)をいずれも満たしているICT 機器・サービスを対象とする。
(i) 情報アクセシビリティに配慮した ICT 機器・サービスであること。
(ii) (i)の「ICT機器・サービス」は、以下のいずれかに該当する、自社が自社製品とし
て開発・製造・販売しているICT機器・サービスであること(他社から提供された技術
、部品、ソフトウェア等を組み込んだ上で、自社の最終製品としている場合について
も、応募対象とする)。
(ア) パーソナルコンピューター(JIS X 8341−2 対象製品)
(イ) ウェブコンテンツ・アプリケーション(JIS X 8341−3/WCAG 2.1対象製品)
(ウ) 電気通信機器(JIS X 8341−4 対象製品※)
(エ) 事務機器(JIS X 8341−5 対象製品)
(オ) 対話ソフトウェア(JIS X 8341−6 対象製品)
※ 電気通信機器とは、「電気通信に関する設備の中において,電気通信サービスの利用者が直接操作する機器」を指す。なお、従来の電気通信機器に当てはまらない新しい概念の製品及び製品群についても、従来の電気通信機器に含まれる機能等を有する場合は(ウ)に該当する。
(iii) 応募時点において企業や消費者向けに販売・提供等されている ICT 機器・サービスであること。
(3)審査:審査項目(※)に基づき、書面及び応募企業によるプレゼンテーションを審査
(4)審査結果:16件を好事例として公表
※審査項目
(1) 情報アクセシビリティへの対応
(2) 当事者ニーズを踏まえた開発
(3) 企業としての取組
3 審査委員の総評
今年度は2年目となるが、企業からの応募資料とオンライン形式での発表により審査した。審査を通して、各社の社会貢献に対する真摯な姿勢とユニバーサル社会実現に向けた高い志を感じることができ、審査委員一同、深い感銘を受け、心から敬意を表する。
今年度は、国内外を問わず16件に及ぶ多様なICT機器・サービスを選定した。一般向けの製品で情報アクセシビリティに配慮したものもあれば、特定の障害に特化した福祉的な支援機器等もあった。
各項目に基づく審査概要は、以下の通りである。
○審査項目(1)製品の情報アクセシビリティへの配慮
一般向けで情報アクセシビリティ対応に努めている製品については、複数の製品において、専門職を含む様々な職種の人々が従事・活躍することを視野に入れた工夫がなされている点が評価された。特に、役所での申請手続きのオンライン化や、学齢期からパソコンやタブレットのアクセシビリティ確保の多様性や有用性の理解を促す取組が高く評価された。
一方、いわゆる福祉的な支援機器・サービスについては、スマートフォンのポテンシャルを生かし、利用者の個別ニーズに合わせて実際に使えるところまで総合的に支援する取組や、独自の網膜投影技術を用いた機器により弱視者に対し文化芸術分野の鑑賞を新たに実現した点も高く評価された。
○審査項目(2)当事者ニーズを踏まえた開発
当事者が開発プロセスに参加する当事者参加型技術開発としては、障害者団体や外部機関との連携、障害のある職員によるチェックや開発への参画、専門家の助言を受けた開発、製品が利用される現場(学校や企業など)のニーズに応じた開発などの取組が評価された。
また、開発後の製品提供段階でも、電話、メール、チャットでの問合せ対応、カスタマーサポートと連携し、障害者からの意見を取り入れて対策を講じる体制構築など、当事者が製品やサービスを理解しやすいようにサポート体制を整備している取組も評価された。
○審査項目(3)企業としての情報アクセシビリティ確保に向けた取組
アクセシビリティ向上のための専門部署や横断的なチームの設置など全社的、組織的な取組が評価された。特に2024年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、民間事業者にも「合理的配慮」を行うことが義務づけられたことで、合理的配慮委員会を社内で立ち上げる事例が生まれた点が昨年度との違いである。また、社内チェックリストの作成、アクセシビリティ研修や定期的な勉強会など社員に対する啓発や研修への継続的な取組が評価された。
さらに、アクセシビリティに配慮したデザインシステムを構築し、開発の品質向上や画面・機能の作成における二度手間を防ぐ努力や、アクセシビリティ問題が発生しにくいパーツを開発し、それらを組み合わせて製品化することでアクセシビリティに関する問題を抑制する取組などが高く評価された。
〇今後さらなる配慮を期待したい点
製品自体の情報アクセシビリティ配慮は優れているものの、当事者の生活への浸透や普及に課題があるとのコメントがあった。応募製品のうち、利用対象に訪日外国人等を含めているものが2件あった。障害者だけでなく、より幅広い層への普及を目指すという発想の転換を行うことで、障害者にも使いやすい製品が広く市場で流通することが期待される。
また、今年度の特徴の一つは、いわゆるプラットフォーム事業者からの応募が3件あったことである。これらの事業者は、同種のサービスを実施する複数の企業、行政機関、資格試験主催者等に場を提供することで利用者へのサービス提供を支える立場にある。審査委員からは、こうした事業者が情報アクセシビリティへの取組を推進することは、ユニバーサル社会の実現を効果的に進めるものとして期待できると評価されるとともに、今後は、「場」のアクセシビリティだけでなく、そこで扱われる「情報」もアクセシブルにしていくことへの期待が示された。
昨年度に続き、好事例を公表することは、情報アクセシビリティに配慮したICT製品・サービスやそれに関わる企業等の前向きな取組を広く周知することとなり、障害当事者を含む多様な者がデジタル活用の利便性を享受し、豊かな人生を送ることができる社会の実現に資するものと考えられる。今後も、企業等における情報アクセシビリティへの取組の広がりを大いに期待したい。
4 審査委員(五十音順)
(1)学識経験者
- 榊原 直樹 清泉女学院大学 専任講師
- 中邑 賢龍 東京大学 先端科学技術研究センター シニアリサーチフェロー
- 松崎 丈 宮城教育大学 教育学部 特別支援教育専攻 教授
- 宮城 愛美 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 准教授
- 山田 肇 東洋大学 名誉教授
(2)業界団体
- 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)
- 一般社団法人 ビジネス・機械情報システム産業協会(JBMIA)
(3)障害者団体
- 一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
- 一般財団法人 全日本ろうあ連盟
- 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合
- 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会
5 情報アクセシビリティ自己評価様式について