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地域力創造に関する有識者会議(第7回)

日時

平成21年11月4日(水) 10:00〜12:00

場所

三田共用会議所 第3特別会議室

議事次第

1.開会

2.議事
 関係府省庁ヒアリングについて
  ・経済産業省 地域経済産業グループ地域経済産業政策課
    統括地域活性化企画官  能瀬 宏隆 様
  ・環境省 環境計画課長    正田  寛 様

3.閉会

配布資料

議事録

平成21年11月4日

【月尾座長】  前々回から、この会議のテーマに関係する各府省の施策についてご説明をいただいておりますが、本日は、最初に経済産業省の地域経済産業グループ地域経済産業政策課の統括地域活性化企画官の能瀬宏隆様から、その後、環境省環境計画課長の正田寛様からご説明をいただきたいと考えております。
 それでは能瀬様からお願いします。

【能瀬様】  能瀬と申します。よろしくお願い申し上げます。
 資料をお配りしておりますが、お手元にございますでしょうか。「地域経済産業活性化策について」というペーパーでございまして、最後のページにソーシャルビジネスの写真が出ておりますが、その資料に従ってご説明をさせていただきたいと思います。
 私どもは地域経済産業グループと申しまして、要するに局みたいなものなんですけれども、経済産業省の中で地域経済の活性化に資するような施策をいろいろやっております。その中で、今日、3点、ポイントを絞ってご説明をしたいと思います。
 1点目は、企業立地の促進ということです。各自治体、昔から企業の誘致と産業の集積に力を入れておられますけれども、そういったものを国としてご支援する枠組みが1点目でございます。
 2点目は、農商工連携の推進ということであります。お聞き及びの言葉かどうかわかりませんけれども、地方において農林水産業、いわゆる一次産業と商工の産業がお互いの経営資源を持ち寄ることによって、新たな価値を生み出し、地域を活性化していく。こういったもののお手伝いが2点目です。
 最後は、ソーシャルビジネスの関係の支援策についてご説明を申し上げたいと思います。
 それでは、早速、資料に従って、ご説明をしていきたいと存じます。
 ページの振り方がややこしいですけれども、4ページ目、資料の一番最初のところでございます。企業立地促進法についてご説明をしていきたいと思います。
 これは、私どもの地域グループの中で、いろいろな施策を考える上で骨格となっているような法律でございます。法律の目的は、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化のために地方公共団体が行う取り組みについて、国としてご支援をしていくという法律でございます。
 これは平成19年4月に国会でお認めいただき成立してございまして、6月から施行しているものでございます。
 基本的な法律上のスキームでございますけれども、4ページの左の真ん中に地域産業活性化協議会、「基本計画」の策定とございます。これは地域における市町村・都道府県といった自治体でございますとか商工団体、大学等という、いわば地域産業の活性化に資するような主体が協議会を構成していただきまして、ここにおいて基本計画を策定する。ここが出発点でございます。
 この基本計画については、いろいろと書いてございますけれども、要は、各地域において、地域の強みを生かして、どういった区域にどういった産業を集積するのかということを決めていくということでございます。こういった基本計画ができましたら、国のところに矢印がございますけれども、国から同意をするということでございます。そして、同意した基本計画がありますが、これに従って、フロー図の下ですけれども、各事業者の方は「企業立地計画」とか、生産力を向上させるような「事業高度化計画」をおつくりになるということでございます。
 繰り返しますが、地域のいろいろな主体が協議会をつくり、基本的な絵姿を描いて、絵姿にのっとって個別の事業者が計画をつくり、これに対して国としてご支援をしていくというものでございます。
 右に主な支援策が書いてございます。1つ目は課税の特例とか規制緩和でございます。立地される企業の方がいろいろな設備投資をされますときに、特別償却を適用するとか、工場立地法の特例などがございます。
 (2)予算措置による支援でございますけれども、基本計画の策定にかかる活動費に対する助成をいたしましたり、あるいは各地域において人材育成をされるときの助成をしたりというものでございます。
 あと、日本政策金融公庫による低利融資でございますとか、交付税による支援ということで、総務省さんにお願いをしてやっていただいております。
 (4)でございますけれども、自治体が立地企業に対して地方税の課税免除をしたときに、この減免額は75%を普通交付税に補てんするということもお願いをしてやっていただいておるところでございます。
 この、法律の趣旨としては、私ども、この地域のいろいろな主体の方がまさに自主的な取り組みとして、どういった産業を集積して未来につなげていくのかというその地域の絵姿をつくる、その過程に非常に重要なところがあると考えております。
 あと、支援策につきましては、国としてどこまでやるんだという議論はあると思いますけれども、基本計画を策定し、人材育成をし、4ページ、右の一番下に(5)企業立地支援センターによるサポートとございますが、自治体や事業者をサポートするための総合的な支援窓口を設けておりまして、一気通貫的にこういった企業誘致のための支援をしているところでございます。
 5ページと6ページは、今の法律に従いまして策定をされました計画を一覧として示してございます。2ページに分かれていて見にくくて恐縮でございますけれども、今まで、47全都道府県において約160の計画は同意済みでございます。この計画におきまして、どういった立地の件数をするのか、どのぐらいの雇用の創出が見込まれるのかということを計画上、書き込んでございますけれども、こういうのを足し込んでいきますと、5年後の目標として、立地件数で約1万件超37万人ぐらい雇用創出がされるのではないかと考えているところでございます。
 計画ですが、それぞれの箱に地域が書かれてございまして、括弧の中にはどういった産業を誘致・集積するのかを書いてございます。一言で言うと、地域の強みを生かして決めるということでございますけれども、具体的には、国土形成計画の体系の中で広域地方計画ということで、ブロックごとに、産業も含めて地域の絵姿を描いておられますけれども、そういったことでございますとか、各県での国土利用計画、あるいは既存の立地している産業と関連する産業を誘致するとか、その地域における学校とか人材面の強みとかもろもろが勘案されて、どういった産業を集積、高度化するのかをお決めになっていると考えてございます。
 これをやっていると、悩みというほどではございませんけれども、ちょっと思いますのは、神奈川とか山梨は県全域でこういった産業を集積することをお決めになっていますけれども、ページをめくっていただきまして、兵庫などは、何とか市は何とか産業であるということで、わりときめ細かくやっておられます。あと、長野もそうでございまして、地域地域で、県下の中できめ細かくやっておられます。
 この点については、地域の特性ということで、地域のいろいろな事情を勘案してお決めになっているところだと思っておりますけれども、そういった疎密が若干あるなというところが正直ありますのと、法律上の枠組みとしては、県を超えるような連合について、例えば、何とか県と何とか県が共同して、こういった産業を集積しますよということについても、協議会をつくって基本計画を策定すれば、ご支援を申し上げるという枠組みになってございますけれども、そういった事例が、若干はあるんですけれども、まだ少ないということで、そういった広域連携的なものについても力を入れてご支援をしていかなければいけないという問題意識は持ってございます。
 7ページは企業立地支援センターの概要でございます。自治体とか事業者が企業を誘致したり、工場を進出させるときに、相談業務とかの窓口は非常に重要だと考えてございます。私ども、こういった企業立地をする企業の声をアンケート調査しております。私どもが特徴的な声だと思いますのは、企業立地される方について、国として、企業立地促進法に基づく支援もございますし、県によっては補助金をいろいろ出されておるところもございます。立地企業にとって、そういった補助金とか助成制度というのは効果があると思っていますし、アプリシェートされていると思いますが、現場の生声的なところを聞きますと、補助金とかこういった支援は非常にありがたいんだけれども、こういった窓口について、非常に多岐に分かれていたりするところがあり、私どもが思っている以上にお困りとか、当惑されている部分があると聞いています。私も役人でございますので、こういった縦割りになることはやむを得ないとある程度思ってございますけれども、工場立地法とか、環境関係のいろいろな法令とか、都市計画法とか建築基準法は、当然、部局によっていろいろ分かれてございますので、そういったものについて、もちろんそれぞれの部局によって権限がございますので、それはやむを得ないにしても、窓口的なところで、なるべくワンストップ的にやっていただけるとありがたいというのは、企業の方が非常に重視されているところかなと聞き及んでおります。
 あと、従業員の教育とか生活環境についても、会社としては非常に重視されてございまして、そういったところについても、政府一体として支援できるところは支援していかなければいけないと考えているところでございます。
 8ページでございます。先ほどの支援策と重なりますので、さらっと流させていただきます。企業立地促進法を活用した企業立地の流れでございます。基本計画の策定からソフト的な補助を申し上げたり、企業誘致前の人材育成とか誘致後の人材育成についても補助を申し上げるということで、一気通貫的に支援を申し上げているところでございます。
 ちなみに、平成20年度の予算額ですが、Iの22.2億円というのは、基本計画の策定とか企業誘致活動、人材育成への支援ということで、私どもがソフト補助と申しているものでございます。
 IIの地域企業立地促進等共用施設整備事業と申しますのは、私ども、ハード事業と申しておりますけれども、企業立地や産業集積に伴いまして、例えば共用研修所をつくる、インキュベーション施設、貸工場をつくるといった、幾つかの主体が共同で利用できるような施設について私どもが支援を申し上げるといったものでございます。
 最後は、ワンストップサービスの提供ということで2.6億円を平成20年度に計上しているところでございます。
 企業立地の関係は以上でございまして、2つ目は農商工連携について簡単にご説明させていただきます。
 資料の10ページをお願い申し上げます。農商工連携と申しますのは、私ども、今、地域グループの中で一丁目1番地と申しますか、農水省さんと連携して非常に力を入れている施策でございます。
 何で私ども経済産業省が農業の関係に携わるのかということについて、10ページと11ページに簡単に書いてございます。私どもとしては、平たく言うと、経済産業省の仕事というのは将来の日本の食いぶちを見つけていくことでございまして、そういった成長産業は何かということを考えました場合に、特に地域における農林漁業、そこから派生する食品製造業、流通業が非常に大きなポテンシャルを持っておりますし、それを支援していくことによって、直接的に地域の経済の活性に資するのではないかと考えてございます。
 ポイントだけご説明いたします。農林水産業の産出額は大体10兆円でございますが、食品加工業とか製造業、流通業を合わせて、食品関連産業という広い意味で申しますと100兆円ぐらいの規模になりまして、これは事業者数とか従業員数で自動車産業を上回る規模になるということでございます。
 ご案内のとおり、農林水産業ですとか食品製造業は、広く地域にあまねく点在をしているところでございまして、特定の地域においてはこれが主力になっているという状況でございます。
 11ページでございます。非常にアジビラ的なところが書いてございますけれども、農業におきましては、耕作放棄地の拡大、就業者の減少とか高齢化という問題がありますが、私どもは課題がありますけれども、例えば、海外における日本食のブームがございますように、そういったところにおける輸出振興、あるいは国内においても、景気が厳しいと言われている中で、食品は一定の需要があるわけでございますので、こういったものについて非常にポテンシャルがあるのではないかと考えてございます。
 11ページの下に「農業への期待」と書いてございます。要は、農業と商工業を連携するということで、経営資源を融合させることによって、消費者ニーズの高い、新しい商品を開発する、新しい価値を生み出すことにおいて、農業にどんどん付加価値をつけて地域経済を活性化することはできないのかということを考えているところでございます。
 そういった意味で、私どもは広い意味で農商工連携と申しておりますけれども、こういった農業の高付加価値化、より高度化を考えておるところでございます。
 具体的な施策としては、次のページ以降に出てまいりますけれども、法律による支援もございますが、それ以外のさまざまなものもございます。
 12ページで農商工連携関連施策についてということでまとめてございますけれども、1つ目は法律による支援がございます。
 3つの柱に分けて書いてございます。一番左は法律による支援ということで、一番狭い意味における農商工連携と考えてございまして、農商工連携促進法を昨年7月から施行させていただいております。これはどういう法律かと申しますと、商工の中小企業者と農林漁業者がお互いに連携して新しい商品やサービスを開発する場合に、補助金あるいは低利融資、債務保証でご支援を申し上げるというものでございます。
 施行から今まで1年強ということで、1年に100件ぐらい全国で計画が認定できればいいねということで進めてきておりますが、今までのところ、件数的には順調にいっておりまして、現在までに1年強で大体256件、採択し、補助をさせていただいているところでございます。これが狭い意味での農商工連携でございます。
 真ん中の関連予算の確保ということで、金額はここに書いてあるとおりでございますけれども、広い意味での農商工連携の施策ということも取り込んで予算化しておりまして、例えば、輸出促進ですとか、農商工連携の担い手の人材育成もやってございます。
 あと、農水省さんにおかれましても、生産から販売までのサプライチェーンの構築への支援とか、アンテナショップとか農林水産物直売施設等、新たな流通の形態に対する支援を講じておられるところでございます。
 一番右でございますけれども、全国的な取組の促進ということで、枠組みづくりみたいなものでございます。今まで各地域ブロックごとに、私どもの出先であります経産局、農水省さんの地方局、都道府県、商工会議所という農商工連携に携わるような主体の方に連携していただくということで、地域別のブロック協議会を昨年度中に全部設置していただいておりまして、そういった場において、例えば、農林漁業者の方と商工業者の方のマッチングですとか施策の説明会とかフォーラム等を今までやってきており、雰囲気づくりをさせていただいております。
 上に「農商工連携88選」とございますけれども、ベストプラクティス賞を選定させていただき、広報するということもやってございます。
 次に進めさせていただきます。
 農商工連携の普及・啓発ということで、先ほどと重ならないところだけご説明いたしますけれども、その他でやっておりますのは、13ページの左にございますが、農商工連携「新発見」ツアーをやってございます。私どもの問題意識として、フォーラムとかセミナーをやっても、どうもその場限りで頑張りましょうということで終わってしまいがちなので、なるべく関連事業者の方に意識を持っていただくという観点から、バスツアーで先進事業者の方のところに行って、直接お話を聞いていただくような見学会などを企画してございますし、資料の右でございますけれども、農商工連携応援キャラバンということで、各地域において農商工連携をやろうとされている方について、必要に応じてまちづくりとか観光分野、経営の関係の専門家であるとか、そういった専門家の方を派遣し、ご支援を申し上げることもやっていきたいと考えてございます。
 次のページをお願いいたします。
 農商工連携の認定事例です。狭い意味での農商工連携促進法に基づく新しい商品の開発、あるいは販売に対する支援ということで、時間の都合もございますので細部の説明は省略いたしますけれども、これを見ていただきますと、件数的には新しい種類のお菓子とか飲み物が商品として多くなりがちでございますけれども、中には、右下にございますが、例えば、豚肉の旨味の分析装置みたいな工業製品的なものとか、あるいは下の左から2番目、間伐材を使った企画住宅といった林業のようなものも入ってございます。
 この農商工連携について、私どもが今後やっていきたいことを一言で申しますと、この法律は中小企業者を対象にしているものですから、どうしてもこういったものが多くなりがちで、これはこれで地域経済に一定の効果があると考えていますけれども、私どもはもう一段大きなところを目指したいと思っていまして、この法律は法律で今後もやっていきたいと思っていますが、中堅企業、大企業がこういった連携に参加することによって、より地域的な波及効果の大きい取り組みにしていけないかということでございます。
 あと、地域のブランド化も含めて、個別の事業者がやるということだけではなくて、地域ぐるみでこういった新しい商品とかサービスをやっていく試みについて、何らかの形でご支援をしていきたいという問題意識を持ってございます。
 時間の関係もございますので、植物工場の関係は省略し、ご質問があればお受けするという形にさせていただけたらと思います。
 最後に、ソーシャルビジネスの関係について、簡単にご説明をしたいと思います。
 18ページをお願い申し上げます。ソーシャルビジネスというのは、障害者支援、子育て支援、貧困問題、環境保護、まちづくり、まちおこしという社会的課題について、ボランティア活動ではなくて、ある程度サービスに対する対価を取りながらビジネスとして回していくという新しいスタイルの事業形態です。
 私は、ソーシャルビジネスについては一定程度関与しているんですけれども、初め、ビジネスとしてやるというのは非常に抵抗がございました。社会的な課題のあるようなことについて、なおかつ、政府全体としては新たな公の肉声という言葉が叫ばれている中において、ビジネスとしてやるというのは、よこしまなと申しますか、それで金を稼ぐのかよと、正直言って、私個人は初めは抵抗がありましたけれども、いろいろな事業者の話を聞くにつけ、持続可能性というのは非常に重要であるということで、社会的な事項について責任のあるサービスを提供していくためにある程度の対価は重要だし、ポイント、ポイントで専門的な方の助けもいただかなければいけないという中で、質を確保していく、あるいは持続的な可能性があるようなことにしていくためには、対価をとり、ビジネスとして回していくことが非常に重要な一つの切り口であると考えるに至ったわけでございます。
 定義のところは簡単に飛ばさせていただきます。ソーシャルビジネス研究会ということで、一橋大学の先生にもいろいろご指導をいただきまして、社会性、事業性、革新性に当てはまるものということで考えてございます。
 19ページに、私どもの施策について簡単にまとめてございます。私どもソーシャルビジネス研究会を平成19年9月から平成20年3月ぐらいまでやりまして、有識者の方の見解を伺ったり、ソーシャルビジネスに携わる方にアンケート調査をしたりして勉強させていただきました。19ページの右上にソーシャルビジネスが直面している主な課題ということで2つございます。1つは認知度がなかなか向上しないということ、あと、事業としての経営上の問題ということで、ビジネスとして蓄積するのは難しい、ノウハウが足りないということを課題として私どもは認識させていただいたところでございます。これに対して右下の(1)ですが、ネットワークの構築と普及・広報ということで、セミナー、フォーラムを開催させいただく。こういったソーシャルビジネスに携わる方々のネットワークの構築づくりのお手伝いをするという観点からさせていただいておりますのと、NPOのためのNPOと申しますか、中間支援機関の方々が人材育成をすることに対して、お手伝いをさせていただくというのが(2)でございます。
 (3)は、先進的な取り組みをされているようなソーシャルビジネスの方が、そのノウハウをほかの課題に直面しているような、同じような問題に取り組まれているNPOの方に技術を移転すると申しますか、ノウハウを移転するものについて、例えばテキストの作成、あるいは講習会に対して支援を申し上げる、こういったこともやってございます。
 最後は、政策金融公庫の関係で、資金の供給を確保させていただいているところでございます。
 駆け足で申しわけございません。私の説明は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

【月尾座長】  的確に説明していただき、ありがとうございました。
 それでは委員の皆様から質疑をお願いします。

【杉沢委員】  企業立地の最初にご説明をいただいた、企業立地促進法についてです。国が基本方針を策定する、そして、市町村や県が絵姿を描き、それに基づいて基本計画を策定する基本的な形で進めるという姿勢は大変よくわかるんですけれども、地域が自分たちの地域を活性化していくんだという思いを強めてもらうために、みずからが自主的、主体的に計画の策定をするということで、私の住んでいる埼玉県などでも県、あるいは市町村で夢のような絵姿を描いて、企業誘致と称して、土地を買収する。そして、この場所に30ぐらいの企業が誘致される、何万人の雇用だということで説明を受け、市民は夢を抱いて大事な農地を手放していったわけです。ところが、10年たっても30入るはずの企業が2つくらいきり入らない。残りの土地はずっと塩漬け状態です。その土地を見ながら、あの夢は何だったんだろうと思っているという現状です。そういう現状に対して仕方なく切り崩しをしながら、私は都市計画審議会に携わっているんですが、企業誘致をしようと思ったがうまくいかない。大型ショッピングモールのお誘いがあるので商業の土地として転換してもいいかという審議を経て、大型のショッピングモールが建つという例が周りにどんどん増えているという実情に対して、市町村が本気で企業誘致をしようとしたのか、国はそれを本気で支援しようとしたのかという10年前のことを思うと、疑問を感じております。そういう実情に対して、経済産業省として、今、振り返ってどんなふうに考えているのかということが1点。
 それと、私は、人が育っていないというあたりが一番のネックになっていると思うんです。誘致産業に対するニーズを踏まえた人材を育成していくんだということに対しては、100%の支援をしていくということが書かれているんですが、その内容について、どんな形で人を育てていこうと考えているのかをお伺いしたいと思います。

【能瀬様】  まず1点目でございます。
 委員ご指摘のとおり、厳しい経済状況にあって、企業誘致がなかなか進まない面があるというのは、それも否定できないところだと思っています。この仕組みは、行政だけが描くというのではなくて、市町村・都道府県のみならず地域の産業団体、商工会、大学の方、そういった方々が将来図絵を描くことが、ひとつ大きな意味があると思っています。
 人材育成とも絡むんですけれども、地域の強みを地域として分析していただき、国もそうですし、地方自治体もそうですが、資源は限られているんです。地場産業の強みというのがどこにでもあるわけで、それを生かしながら、人材育成について、どういったところに重点的に資源を投入していくのかというところについて、絵姿を描いてやっていくというのは意味があると思っています。ただ、今おっしゃったような実情もあるわけでございまして、フォローアップをきめ細かくやっていかなければいけないと思っています。企業立地の動向、企業、市町村の方の意向を、アンケートをし、定期的にフォローアップしているつもりでございますけれども、きめ細かくやっていかなきゃいけないと思っているところでございます。
 人材育成については、企業立地促進法に基づくソフト補助もございます。人材育成は各省庁にいろいろな施策がありなかなか難しいです。私どもが力を入れておりますのは、企業立地促進法に基づく人材育成と、中小企業者の人材育成と申しますか、地域の地場産業である中小企業者の方と地域の学校、高専であるとか大学、そういった方が連携してお互いに講師を派遣したりして、大学、大学の教育目的があるにせよ、実践的に役立つようなカリキュラムをつくっていただく。こういったものに力を入れているつもりでございます。
 お答えになっているかどうかあれでございますが。

【堂垣委員】  今の話にちょっとだけ関係するかもしれないんですが、企業立地に関して5年後に雇用創出数が37万人と先ほどおっしゃったんですけれども、こういう達成度みたいなものをどうフォローしていくおつもりなんでしょうかという質問が1つです。
 もう一つは、今、達成度の評価の質問をした心は、実際に夢のような数字を積み上げて、いつもこんな形で数値目標といいますか、が出て、それが予算確保につながったりとかいろいろあると思うんですけれども、現実的にはうまくいかないというか、ここに達しないことはございますよね。そういうものに対して、よりうまくこういう数字に近づけるように経済産業省だけの問題ではないと思いますけれども、地方を叱咤激励するといいますか。結果責任を問うというか、そういった姿勢はこれから必要になってくると思うんですが、その辺についての考えをお聞かせ願いたいというのが1つです。
 あとは、先ほど飛ばした植物工場についての質問です。例えば、太陽光発電とかと組み合わせたり、循環系のシステムをうまくつくって、植物工場のノウハウみたいなものをそのまま輸出する可能性はあるような気がするんですけれども、その辺についてどうお考えになっているのか。
 2点、お伺いしたいと思います。

【能瀬様】  1点目でございます。
 施策について、施策があって、税金を投入している以上、それをフォローアップするのは当然でございますし、私どもはしっかりフォローアップをやっていきたいと思っています。
 ただ、今、考えなければいけないのは、目標自体を達成するようにやっていかなければいけないと思いますし、こういった基本計画について、つくったらそれが金科玉条ということではなくて、「時代の流れ」と言うと大げさですけれども、その時々の経済状況に応じて、きめ細かく機動的に見直していくということは、法律が想定しているところでございます。
 企業立地はもともと雇用創出のためにやっておりますので、なるべく雇用が出るようにやっていかなければいけない。今、県単位、市町村単位でやっているものが多いのですが、イノベーションを巻き起こすというのはつながり力だと思うんです。例えば、県ごとに、県境を越えたら全然関係なくなるよということではなくて、必要、課題においては県をまたぐような形で連携することによって、企業誘致、イノベーションもそうでございますけれども、新しい価値を生み出していくというところがあると思いますので、企業立地促進法に基づく計画もそういったものができていけばいいと思います。そういった広域連携みたいなものも、私どもの施策の中で促していきたいと考えているところでございます。
 時間の関係があって資料も持ってきませんでしたけれども、産業クラスターとかイノベーションを誘発するためのいろいろな取り組みも、正直、若干、マンネリ化しているところもございますが、ロングランの施策で2001年ぐらいから営々とやってきているものでございます。そういったイノベーションを起こす仕組みづくりと、地域の方が関与した産業の集積といったものが車の両輪となって雇用創出につながっていければいいなと。明確なお答えになっていないと思いますけれども、そういった意気込みでやっていきたいと思っております。
 植物工場は申しわけございません。説明は完全に抜かしました。結論から申しまして、輸出の可能性は当然あると考えてございます。15ページの下に写真を載せてございます。2つのタイプがございます。今、委員がおっしゃいました太陽光を併用する型のもので、一番右のものでございます。温室みたいになっていて、太陽光を利用するんだけれども、天気が悪いときや夜間は人工の光で補うということで、より生産性を上げられるという概念でございます。私ども輸出の観点から特に着目しておりますのは、左から2番目、完全人工光型と申しまして、全く太陽光を使わないということで、工場的にLEDや蛍光灯を使って作物を生産するものでございます。まだ具体的な商談には至っておりませんけれども、完全人工光型のものについては、水耕栽培で、水をリサイクルしながら使うというシステムであるらしく、中東諸国から事業の引き合いが来ていると聞いてございます。
 これについては、太陽光発電と組み合わせるとか技術的な波及効果も大きいと思っておりまして、農水省さんと共同して普及拡大をしていきたいということでございます。
 ノウハウの輸出とおっしゃったのは、まさに私どもの心の中のポイントと同じでございまして、大きなことを言うようですけれども、これからの輸出産業は、通常のものづくりはライバルたちが追いついてきている中で、新しい輸出の可能性の形の一つは、機械とか装置を輸出するだけではなくて、ノウハウとともに輸出し、維持・管理もあわせて請け負う、物だけでもうけるのではなくて、ノウハウもあわせてシステム一体としてもうける。こういったものはこれから力を入れていかなければいけない分野だと思います。例えば、水ビジネスでいうと、欧米におくれをとっている面もある。要するに、要素技術とか装備は非常にすぐれているが、維持・管理というトータルのノウハウとか、インテグレーション力、営業力、そういうところは欧米に比べて、まだまだ一歩も二歩もおくれているところだと思っていますので、そういったノウハウを含めた一体としてのパッケージの輸出で外貨を稼ぐと申しますか、価値を国内に還元していくことが非常に重要だと思っております。そういった面で、植物工場もそういった輸出のいい形のモデルケースになるのではないかという気もしておりまして、しっかりやっていきたいと思っています。

【名和田委員】  ソーシャルビジネスについて、1点お伺いしたいと思います。私も非常に零細ですけれども、移転事業の補助金を受けたものにかかわっておりまして、大変ありがとうございます。
 コミュニティービジネスとかソーシャルビジネスと言われていることについて、初めのころは、例えば、介護保険事業、あるいは既にさまざまな省庁の補助金が入っていることが前提になっているものが結構目立ったと思うんです。ところが最近は、葉っぱビジネスとかその他、かなり自前で回るようなモデルも出てきているように思われます。
 中身も、ビジネスの中身自体がソーシャルなものと、中身自体は別にソーシャルではないもの。葉っぱビジネスは広い意味では、農山村振興として公共性を持つと思っておりますけれども、中身自体はもうけるということだと思います。いろいろな類型があるかと思うんですけれども、最初に申しました補助金が入ってとか、あるいは何らの形で税金ないし公的なお金が入りながら回るというソーシャルビジネスのモデルもあれば、介護保険みたいに自前で回っていくようなモデルもあるように思います。
 ソーシャルビジネスにおける補助金とか、公的なお金の役割についてどういうふうにお考えであるか、ちょっとお願いします。

【能瀬様】  介護保険という話になってくると、私、当省だけでお答えできるような問題でもないような気がして恐縮なところもございますけれども、保育とか介護という話になりますと、前提から申しますと、私がこういうことを言うのも変ですけれども、ソーシャルビジネスと一くくりにしてしまうところに難しさがあり、介護とか子育てみたいなものですとそうではないんですが、地域振興みたいなものが入ってくると、はっきり言ってビジネスそのものもソーシャルビジネスになってしまうところもあり、なかなか難しいところがございます。
 これは、私が責任を持ってお答えできることではないような気がいたしますけれども、病児保育自体、私、フローレンスはあまり補助金をもらっていないようなことも聞いたことがあるんです。介護保険とか育児保育という分野は相当経費がかかりますし、人の命にかかわるようなものでございますので、これぐらいの高さだったらこれぐらいのサービスでしようがないよねということになりがたいと思うんです。そういった行為について、ある程度公的なお金とかいろいろな形の扶助が介在せずを得ないところもある。ただ、中には、補助金をもらってしまうと補助金を前提とした収支の立て方になってなってしまうので、サービスの対価もそれで設定しますということになってしまって、補助金だけで回るようなサイクルでずっと続いていきがちだということは聞いたことがございます。
 一度補助金をもらって、それでビシネスモデルをつくってしまうと、そこからビジネスとして回していくのはなかなか難しいという問題も聞いたことはございます。ただ、私見でございますけれども、こういった分野は、ある程度、公的なお金が何らかの形で入っていないと、まだ不安なところがあるのではないかと思っています。
 ただ、今、葉っぱビジネスとおっしゃいましたけれども、こういったその他の多くの分野について、私はNPOそのものの事業に補助をするというよりも、ノウハウの移転であるとか、NPOのためのNPOに支援していくことが効率的でもございますし、NPOの方たちもそういったことを望まれているのではないかと思っているんです。
 NPOの方にいろいろお話を伺いますと、いろいろな事業をやられているんですけれども、その方にとって必要なノウハウとか分野は人によって違うんです。例えば、ITを使われていろいろやられている方ですと、ITはすごく得意だよと。例えば、箱物をつくらなければいけなくなってしまった。そうすると、自分は建築士のノウハウはない。ただ、そこは人脈、ネットワークで建築士を探してきて、初めの事業の立ち上げのときはお金がないので安くやってもらったとか、そこで立ち上がっていく。そうすると、ソーシャルビジネスというものについて、分野も多岐にわたってございますし、それぞれのNPOに着目しても、必要となるようなお助けの仕方はNPOによって違っていて、それに直接補助するのは必ずしも効率的ではないのではないかと思っているわけです。
 したがって、資源の有効性もございますけれども、一番効率的なのはノウハウの移転やネットワークをつくることをお手伝いする。そういったNPOの方々同士、あるいはNPO活動に携わっている方々同士が知り合って、ネットワークをつくっていただくようなお手伝い、場づくりをするのが一番効率的なのではないかと考えているところでございまして、必ずしも個々の事業について直接補助するのは特定の分野以外はあまり効率的でもないし、望ましくない面もあるのではないかと思っています。
 ちょっと私見も入ってございますので、お許しをいただきたいと思います。

【小田切委員】   実は、私、地域経済産業グループに注目しておりまして、というのは、たしか、かつての立地公害局の一部でしょうか。全く新しい仕事をされて、政策イノベーターといいましょうか、地域力創造グループと同じような機能を持つというニュアンスで受けとめているんですが、それを前提にして、まだ議論になっていない農商工連携のことをお尋ねします。
 10ページ、緑で枠を囲ってあります、国内最終消費支出が80兆円。これは2000年の産業連関表の数字でありまして、ご存じのように2005年には74兆円ということで、5年間で6兆円減っているという事実があります。そういう意味で、実は食品産業といいましょうか、フードチェーン全体は農業と同じぐらい衰退過程にある可能性があって、日本人の人口減少と胃袋の縮小、高齢化に伴ってそういう実態だと考えた場合、農商工連携をどういうふうに位置づけるかは非常に大きな課題かなと思っております。
 そういう意味で、妙な聞き方ですが、農商工連携事業のアウトカムは何でしょうか。アウトプットはいろいろあると思いますが、最終的なアウトカムと考えた場合、国内消費支出を80兆円に戻す、あるいはさらに増やすことになるのかどうか。そんなふうに考えていくと、意外と農商工連携の今後の進め方は難しいと思っておりまして、私自身の悩みでもありますので、ぜひ議論できればと思っております。

【能瀬様】  すごく難しいご質問でございます。
 いろいろな議論を聞いておりましても、先生がおっしゃるとおり国内最終消費は、人口が減っていくというのは当たり前でございまして、非常に厳しい材料があるのかなと思っています。
 そういった中で、施策のアウトカムというと非常に難しいんですけれども、施策の方向性としては、私もここに詳細なデータは持ってきておりませんが、世代別の食品の支出額を見ますと、高齢者の方は意外に減っていないんです。余裕がある層なのかもしれませんけれども、わりと高い水準で消費されているということもございますので、明るい材料がないわけでもない。
 もう一つは、輸出というのも口で言うほど簡単なことではないというのを勉強するにつれてわかってまいりまして、そもそも売れる産品は限られてきておるところもあるし、我が国の主食である米にしても、米はうまいけれども海外で売れるのかというと、いろいろと難しい問題もあるわけでございます。
 ただ、品目によっては、輸出はまだまだ伸びる余地のあるようなところもございます。ただ、課題はロットをまとめなければいけないとか、流通に経費がかかりますので、実際、輸出した人はそんなにもうかっていないではないかということにもなりかねないところがあって、私も口で言うほど輸出は簡単ではないと思っていますけれども、今、ご指摘にあったとおり、国内最終消費が減っていく中で、加工食品も含めて輸出の可能性を探っていかざるを得ないようなことではないかと思っていまして、農商工連携の法律自体、輸出についても排除しておりませんので、いろいろな形で支援していきたいと思ってございます。お答えになっていないと思いますけれども……。

【まくどなるど委員】  石川県金沢で国連大学がつくった里山里海、農山漁村を対象にした研究所の所長であります。
 最初、農商工連携を見たときには、なぜか江戸時代の士農工商の日本社会の構造があったというのがふと頭の中に浮かんだりしていて、平成時代に「士」はなくなりましたけれども、農商工が変わってしまったのは、日本社会は徳川時代から変わったのかなと思ったりしました。悪い冗談で大変恐縮です。
 この間政権が変わって、私のところでは環境保全型の農業・林業・漁業を今後どうやっていつくっていけばいいのかをかなり重視した研究活動をしているところでもあるので、非常に興味があるのが、今度、日本はかなりアンビシャスな温室効果ガス排出量を削減していくと宣言している中で、化石燃料依存度の高い農林水産業でもあり、環境保全型農業・林業・漁業と商業との連携の中で、どういった新たなイノベーションのある連携モデルをつくっていくのか非常に興味があるんですけれども、こういったマッチングを選定していく中で、例えば環境保全型産業重視を今後していくつもりであるのかどうか。温室効果ガスをかなり削減していかなければいけない状況も一方にありながら、経済を何とか改善していかなければいけない課題がいろいろあるんですが、どういったビジョンでこれを促進しているのかちょっと興味があります。
 最後、低次元な質問で大変恐縮ですけれども、ソーシャルビジネスの中で徳島県のいろどりが書いてあるんですけれども、これは農業の世界では非常に大きな成功例の一つですが、どうしてソーシャルビジネスの中でぽつんと出てきているのか。個人的な興味もあるんですけれども、以上です。
 ありがとうございます。

【能瀬様】  まず、省エネとかそういったものでございます。今、私がご説明いたしました農商工連携促進法につきましては、中小企業支援と地域の活性化を目的とする法律、あと、当然、農林漁業者の方の経営の高度化もそうでございますけれども、そういったものを目的とする法律でございまして、省エネ自体を目的とする法律ではございませんけれども、農商工連携ということで申しますと、植物工場もそういう色合いがちょっとございますが、広い意味で農業に省エネとか環境技術も含めて、商業や工業の技術を導入するということでやっていくので、私どもは農商工連携の射程範囲の中に十分含まれておると考えてございますので、いろいろな環境施策と連携をとりながらそういうことをやっていかなければいけないと思っています。
 環境という言葉もそうでございますし、目先の地域振興だけを考えましたときも、化石燃料を投入することによる経済的なコストは経営面から見ても、圧縮していかなければ立ち行かなくなってきているわけでございますので、こういった面からも予定調和的にということでございますが、そういうところに力を入れていくつもりもございますし、入れていかざるを得ないのではないかと思ってございます。
 いろどりはどういうお答えをすればいいのかわかりませんけれども、地域資源の活用ということで、地域振興の一つの類型ということで入れさせていただいております。もう一つの意味合いは、これを入れた理由をしゃべってもしようがないのかもしれませんが、これを入れた心としては、今、介護の話が出ておりましたけれども、地域コミュニティーのあり方、特に高齢者の方のライフスタイルのあり方という中で、ビジネスモデルとしての有効性もさることながら、高齢者の方は寝たきりの方も少なくなって、非常に生き生きと働いておられる、高齢者のライフスタイルということで取り上げさせていただいた面が強うございます。

【月尾座長】  最後に、私から2点です。
 経済産業省が通商産業省時代以来進めてこられた産業政策は、新産業都市とか工業整備特別地区から始まり、テクノポリスとかオフィス・アルカディアと続いてきましたが、所期の目標を達成できなかった政策のほうが多い状況になっています。今回、新たに構想しておられる政策は、大規模なコンビナートの開発から規模が小さくなったとか、同じような産業を全国一律に計画するという発想から、地域の特性に合わせた内容にするという変化はありますが、依然として国が基準を作って、地方自治体が応募をして審査を受けるという方式です。現在、地方分権とか地方自立という方向へ社会を変えようというときに、こういう方法しかないのかという疑問が第1点です。
 2点目は、ソーシャルビジネス、コミュニティービジネスに関して、経済産業省の政策としては、経済的な発展とか新しい産業をつくり出すことが目標になっていますが、「いろどり」の説明で言われたように、一番重要なことは参加する人々が生きがいを感じるようになったことだと思います。
 寝たきり老人が2人しかいないという上勝町の例がありますが、同時に医療費が大幅に減ったようです。これまで社会の役に立たないと思っていた人たちにとって、仕事ができるということは生きがいを感じることで、その効果で元気になったという側面があります。コミュニティービジネスやソーシャルビジネスの目標としては、黒字経営は前提として、むしろ住民が生きがいを感じるように誘導していくことが重要ではないかと思います。
 もう一点は流通です。例えば、高知県馬路村でユズ製品を販売して40億円ほどの売り上げになったビジネスがありますが、当初は商社に流通を依頼しようとしたところ、中間マージンが大きくなり過ぎることが分かり、結局、ファクシミリやインターネットの通信販売にしたということです。「いろどり」も成功しているのは、インターネット通販で流通させています。
 逆に苦労している例としては、妙高市が植物工場で生産しているシソの葉です。大阪の流通業者に販売を依存していたのですが、そこが経営難になった途端に苦しい状態になっています。経済産業省は流通も所管としておられるので、農商工連携とともに流通についても支援されることが重要ではないかと思います。

【能瀬様】  まず1点目、企業立地促進法についてのご指摘だと思います。地域の自主性を重んじてやっていくというのは、前段、非常に厳しいご指摘もございましたけれども、そういう面も否定はできないと思います。いろいろ白紙的なあり方というのはいろいろなあり方があろうと思います。
 ただ、企業立地促進法はこういうたてつけになってございますけれども、私どもとしては、地域の方々が企業立地を考えるためのきっかけづくりと申しますか、場づくりをしているつもりでございます。法律上、国の同意が必要であるということになっていまして、同意させていただいており、このご時世にどうなんだというところもございますが、1点だけご理解いただきたいのは、こういう計画はだめだよとか、そういった運用はしているつもりはございません。地域の広い主体の方々が産業集積について話し合っていただくというきっかけづくりをしている、そういう運用をしているつもりでございますし、そういった運用を今後も心がけていきたいと思っています。
 ちょっと話は変わりますけれども、地域の自主性について、産業面について特色を出すのは、そもそも私どもが力を入れるのがいいのかどうかという議論があるかもしれませんけれども、地域の特性が必ずしも十分に出ていないなという部分もあるのは事実だと思っています。例えば、産業クラスター計画を見ますと、全国18計画ありますけれども、言葉遣いが悪いのかもしれませんが、どこも「バイオ」、「ものづくり」「IT」なんです。「ものづくり」と言えば、何でも「ものづくり」になってしまいますので、言葉が悪いような気もいたしますけれども、産業クラスター計画にしても、国からのお仕着せになっていないかとか、どこを切っても地域画一の金太郎あめではないかという問題意識は、正直、担当として持ってございます。やはりこういった新しい制度づくりも含めて、あるいは現行法令の運用も含めまして、地域の自主性……、自主性というと上から目線で、あまりそういう言葉は好きではないんですけれども、地域の方々に真剣に考えていただくのが前提だと思っていますので、そういったことを引き続きやっていきたいという気持ちはございます。
 2点目の流通の関係でございます。いろいろな施策をここで申し上げることはいたしませんが、問題意識は2つあります。
 1つは、いろいろな流通もそうでございますけれども、流通はもっと多様化していかなければいけないというのが問題意識としてございます。どの流通がよくて、どの流通が悪いということもございませんけれども、流通が多様化し、消費者ニーズがダイレクトにサプライチェーンをさかのぼる形で生産者に伝わっていく。そして、伝わっていくだけではなくて、生産者の方がプロダクトアウトではなくて、マーケットインで消費者にどういうものが売れるかを考えて製品をつくらなければいけないのに、現状はそうなっていないと思っております。そういった面からも流通を多様化するというのは、一つの大きな施策の方向性としてあるんだろうと思っています。
 もう一つは、農商工連携で私どもが心がけているところでございますけれども、販路拡大の支援というのは地道でございますが、やっているつもりでございます。例えば、つくったものを百貨店に置いてもらったり、模擬商談会みたいなことをやってもらったりという地道なこともやっておりますけれども、根本はマーケットインの発想を持っていただくことが出発点にあると思いますので、私どもができることは限界がございますけれども、そういったところもいろいろな手段でお手伝いをしていきたいと考えてございます。
 以上でございます。

【月尾座長】  ありがとうございました。
  次に、環境省環境計画課長の正田様よりご説明をいただきたいと思います。

【正田様】  環境省環境計画課の正田でございます。
 本日、私ども環境省の取り組みにつきまして、ご説明する機会をいただきまして、大変感謝しています。ありがとうございます。
 早速でございますが、お手元に用意させていただきました資料に基づいてご説明させていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
 資料はA4横長のものと、パンフレットを3つほどお配りしております。ご確認いただければと思います。
 まず、A4横長の資料をめくっていただきまして、目次として、ご依頼をいただきました3点を記載しております。
 第1点が、「環境(エコ)の取組を通じた地域政策について」でございます。このお題をいただきまして悩みまして、非常に広範にわたる話題となるため、本日、何をご披露したらよろしいのかと悩みましたが、用意いたしましたのは環境基本計画、これは政府全体の環境施策の大綱と位置づけているものでございますが、その中に1つの重点分野といたしまして、環境保全の人づくり、地域づくりの推進を掲げてございますので、この分野に関連する施策、特に当省の取り組みをご説明申し上げたいと思っております。
 また、第2点のエコツーリズムでございますが、この点につきましてはご承知のとおりかと思いますが、昨年、エコツーリズム推進法が施行されましたので、こういったことをめぐる最近の取り組み状況をご説明申し上げたいと思います。
 また、3点目の地球温暖化対策でございますが、現政権におきまして、一定の条件下で温室効果ガスを1990年比25%削減するという目標が掲げられました。現在、その実現に向けて政府レベルでもさまざまな議論が行われていますが、その中で地域の皆様と共同で取り組んでいくような、そういった主な施策をご説明させていただきたいと思います。
 以上が資料の概略でございます。早速でございますが、A4横長の資料、1ページでございます。
 環境(エコ)の取組を通じた地域政策についてでございまして、1ページは環境基本計画のご紹介をさせていただいております。
 左上にございますように、環境基本法に基づき環境基本計画を策定しております。この計画は、「環境の保全に関する基本的な計画」であり、政府全体の環境保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱というものでございます。
 右側にございますように、その沿革でございますが、平成6年に第1次計画、平成12年第2次計画、現在、平成18年に策定されました第3次計画に基づきまして施策を進め、また、毎年度点検をしているところでございます。
 その下に「環境政策の全体の体系〜重点分野政策プログラム〜」とございます。左側が地球温暖化問題、循環型社会の構築をはじめ、縦割りというんでしょうか、事象別の重点分野でございます。
 右側に、各分野に横断的なものといたしまして、4分野を掲げております。この中の一つに環境保全の人づくり・地域づくりの推進を横断的な分野として掲げているところでございます。
 2ページでございますが、環境保全の人づくり、地域づくりの推進の施策の基本的な方向を掲げております。いずれも基本計画の中で位置づけておるものでございますが、1つは、環境保全のために行動する人づくりでございます。書いてございますとおり、多くの人が、環境が暮らしを支えていることに気づき、意識をしていただいて、持続可能な地域づくりに参画することが重要という観点から施策を進めていこうというものでございます。
 第2点が、環境保全の組織・ネットワークづくり。人づくりとあわせまして、地方組織、NPO、事業者等、多様な主体による取組が重要でございます。多様な主体が個々ではなくて、ネットワークをつくり、それぞれどういったことを行動していくかという役割・責任を明確にしながら、また、お互いの信頼関係を構築して活動することが重要と掲げております。
 第3点が、各地域において、それぞれの持つ資源や特徴をいかした地域づくりが必要ということでございます。ここにございますように、環境負荷の少ない、豊かな社会生活ができる地域づくりを目指していこうということでございます。その際には、環境面に加えまして、経済的に地域が自立し、社会面も統合的に向上する、こういった取組を推進していきたいということでございます。
 この大きな基本的方向のもとに、3ページに私ども環境省の主な関連施策を掲げてございます。人づくりといたしましては、各地域で小さいころから、子どもさんの環境教育を行ってまいりますが、そういった活動の支援でございますとか、地域における環境教育なり、環境活動をリードしていくような指導者を育成しようという取組をしております。
 また、組織ネットワークづくりは、その拠点をつくっていこうということでございまして、東京に地球環境パートナーシッププラザを置きまして、各ブロックごとでございますが、地方環境パートナーシップオフィスをつくり、ネットワークをつくっているところでございます。
 第3点の地域づくりでございます。後ほどご紹介いたします温暖化対策とも絡んでまいりますが、低炭素地域づくりということで、各地域で協議会をつくり、そういった取組を進めていこうというものでございますとか、SATOYAMAイニシアティブとして、まさに身近な自然としての里山を保全していく取組を促進していこう、こういったことを掲げて取り組んでいるところでございます。
 4ページでございます。子ども環境教育という面からでございます。こどもエコクラブ事業、これは平成7年から取組をしているものでございます。お子さん方の地域での自主的な環境保全活動を支援する事業でございます。地方公共団体と連携して子ども2名以上と大人のサポーターから成るクラブをこどもエコクラブということで登録いただきまして、登録された子どもさん方にニュースレター等による情報提供や全国フェスティバル等のイベント開催を通じて、環境を学んでいただこうという取組をしているところでございます。
 具体的には、資料の左側に丸い絵がかいてあるかと思いますが、今申し上げましたような環境教育プログラムの提供、ニュースレターでの情報提供、活動支援のプログラムを提供する、もしくはホームページでそれぞれのクラブから情報が上がってくれば、これを紹介する。これは、例えば、地域の清掃活動をした、どこか海とか川に出かけて自然と触れ合ったとか、非常に小さな話でございますが、そういったものを紹介して、こういった取組の情報発信をしております。
 また、左側に「他省庁との連携」とございまして、身近な自然であれば水辺、川ということで「子どもの水辺」再発見プロジェクト、国交省との連携でございます。さらに、外務省や文科省との連携という形でのプログラム提供にも取り組んでいるところでございます。
 また、全国フェスティバルが年1回、毎年3月に実施しておりますが、取組状況の報告をさせていただくなり、さらには企業や地域からの支援を呼びかけている状況でございます。
 平成7年度から取組を始めておりますが、右側にメンバー推移のグラフ、平成10年以降でございます。平成20年、昨年ですが、メンバー数は約18万5,000人でございまして、ここ10年間でほぼ3倍となり、クラブ数で4,000強を登録いただいております。
 先ほどございましたように、公共団体との連携ということで、登録の窓口を各自治体の環境部局にお願いしてまいりました。そういったことで、それなりに各地域でこういった取組が浸透してきて、メンバー数の増加という形に結びついてきているのかなと受けとめているところでございます。
 5ページでございます。リーダーを育てていこうという環境教育指導者育成事業でございます。平成15年からこのような取組を進めてございます。ここに書いてございますように、学校の先生方、もしくは地域の活動のリーダー、NPOの方々という環境に関心の高い方々に基本的知識の習得と体験学習を重視した研修のプログラムを提供いたしまして、そういった方々を通じて学校に通われているお子さん方でありますとか、地域の方々に対する環境教育・環境意識の推進を図ってまいりたいということでございます。
 文科省、特に各地域の教育委員会に協力をいただきまして、学校の先生方の参加を募るとともに、場合によっては研修講師としての派遣を呼びかけているものでございます。
 実施主体といたしましては各地域の活動でございまして、現在、7ブロックでございますが、各地域に地方環境事務所を設置いたしております。この環境事務所が主体となりまして、ブロックの中で、毎年、各県をめぐりながら、研修を実施しているところでございます。環境事務所が実施主体となりまして、参加対象者といたしましては小中高それぞれの先生方ですとか、地域で関心を持っている方々に呼びかけているところでございます。
 また、研修内容につきましても各地域の特性や主体性を重視し、特色を生かしたいということで、全国一律のプログラムではございませんで、各地域の特色に応じたプログラムをそれぞれつくっていただいているということでございます。
 地域によっては1泊2日ないし2泊3日、泊まりがけの研修も行っていると聞いております。先ほど申し上げましたように、平成15年からの開始でございまして、実績といたしまして1,700名強の方々に今までご参加いただいて、こういった育成事業を展開してきていると聞いております。
 6ページ、7ページが地域のネットワークづくりということで、地球環境パートナーシッププラザ・地方環境パートナーシップオフィスを設置してございます。それぞれ組織、ネットワークづくりの拠点としてこういったものを位置づけております。
 まず、地球環境パートナーシッププラザでございますが、平成8年に国連大学と環境省が共同で設立したところでございます。青山にございます国連大学の近くに設置されております。
 具体的にやっております活動は、ここにございますような環境関連の問題・活動に関して、各主体間のネットワーク形成ですとか、パートナーシップに関する情報の収集、提供等を推進しております。
 背景といたしましては、1992年の国連環境開発会議の中のアジェンダ21で採択された宣言の中で、さまざまな主体の参加とパートナーシップを促進ということが位置づけられたところでございまして、これを受けて設置したものでございます。その後、3・5・7と標語的に書いておりますが、人づくり・仕組みづくり・情報共有のデザインという3つの方針のもとに5つの事業を掲げてございます。
 地域づくり。地域の課題は地域で解決するということを主体といたしまして、このために多様な主体が参画するようなフォーラムや、現地見学会を企画しておりますし、みんなでつくる環境政策。行政だけではなくて、NPOなり地域で活動されている方との対話の場づくりですとか、企業と他セクター。特に企業とNPOの方々との出会いの場を提供する話でございますとか、情報共有とコミュニケーションといたしましては、情報収集したものをライブラリーという形で運営をしております。さらには地方のパートナーシップオフィスとのネットワークということで作業を進めておるところでございます。
 さらに全国7カ所に設置されたオフィスでございまして、7ページの(2)でございます。地方環境パートナーシップオフィスでございまして、地域での環境パートナーシップづくりの拠点といたしまして、平成16年度から3年間かけまして、下の図にございますように全国の7ブロックに設置したものでございます。各地域において環境関連のセミナーの開催ですとか情報や資料の提供、さらには地域で活動されているNPOの方々への活動のスペースを提供する、このような取組をしています。
 8ページ、9ページが地域づくりの関連の施策でございます。温暖化対策とも絡んでまいりますが、低炭素地域づくり面的対策推進事業。内容はここに書いてございますように、各地域におけるそれぞれの課題をとらえて、自動車交通需要の抑制、公共交通の利便性を向上、さらには未利用エネルギーや自然資本の活用というさまざまな取組が促進されるよう支援を行うことを通じて、都市構造なり社会資本などの既存の「まちのかたち」そのものを低炭素型に変えていこうというモデルづくりの事業でございます。
 事業の仕組みといたしましては、各地域において協議会をつくっていただく。主体となるのは各地域の行政、市町村等でございますが、さらには交通関係の事業者、大規模な施設を持っている事業者、地域の住民の方々に協議会を設置していただきまして、各地域の課題に応じた課題を抽出し、その課題をどういうふうに取り込んでこれを乗り越えていくかという計画づくりの支援が第1点でございます。
 さらには、この計画に位置づけられた具体的な対策。例えば、自動車交通を抑制しようという話ですと、コミュニティーサイクル事業を支援していこうとか、カーシェアリングを進めていこうというものでございますが、そういった事業に対しまして一定の支援を行うというものでございます。
 特に関連が深いということで、国土交通省と省レベル、さらには地方機関レベルで連携を進めまして、助言、支援をしながらこの協議会の運動を中心に取組を進めているところでございます。そういった計画策定のプロセスを大切にしている事業ということで受けとめていただければと思います。
 実施状況は9ページにお示ししております。
 平成20年度から開始した取組でございまして、ピンクの丸がついておりますのが、平成20年度の計画づくりということで25地域でございますが、計画づくりの支援をしております。
 また、本年度でございますが、計画づくりを15地区、さらに実際に計画に位置づけられた、先ほど申し上げたコミュニティーサイクルでございますとか、そういった具体的な事業への支援を7地区で行っております。全国的にいろいろ展開をして、それぞれの課題はあるにせよ、全国的なモデルになるような取組を進めていきたいということでございます。
 10ページ、SATOYAMAイニシアティブ推進事業でございまして、昨年から取組を開始したものでございます。
 来年10月、名古屋市で生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が開催されることになっております。COP10に向けての提言等の準備もあわせて、こういった事業を今進めているところでございます。
 中身といたしましては、黄色の枠で書いてございますように、未来に引き継ぎたい里地里山の調査を行う。さらには、そういった中でバイオマスや環境教育など地域の資源の新たな利活用、ここに多様な主体の参加促進をしていこうと。その中で全国的な里地里山の保全・活用を促していきたいという目的を持っております。
 現在、国内外の調査を行っているところでございます。特に未来に引き継ぎたい里地里山ということで、昨年、自治体ですとか、有識者の方々にアンケートを行いまして、事例としては約600事例が挙がってまいりました。その中で、他地域で参考になるということで60地区を抽出いたしまして、ホームページ等で紹介しているところでございます。
 また、あわせまして自然資源の管理・利活用方策の検討でございます。ここに書いてございますように、生物多様性という視点がございますが、里地里山資源の伝統的な利用の促進、さらには新たな利活用方策の調査・検討ということで、昨年、あらかたの調査を行いまして、引き続き本年度、詳細な分析等を行っておるところでございます。
 さらには世界における事例調査。昨年はアジアを中心に行ったと聞いております。本年度、アジア以外の地区において、こういった自然資源の利用の調査をいたしまして、COP10に向けての提言の準備もあわせて進めていきたいと思います。
 こういった調査を受けまして、今後、生かしていく方向といたしましては、1つは未来に引き継ぎたい里地里山への技術的な支援をどう行っていくかということで、これは今後の検討課題でございます。さらには、多様な主体の参加促進という促進策をどういうふうにしていくのか。これを検討いたしまして、来年の秋を目指していると聞いております。全国里地里山行動計画といったいろいろな検討をもとに、里地里山の保全、再生を全国的に展開していくための行動計画を策定していきたいということで、今、調査を行い、さらに並行して検討を進めているところでございます。
 また、右側にございますように、こういった国内外の事例をもとに、持続可能な自然資源の管理・利用の考え方(原則)でございますとか、地域特性に応じて適応するための調査・計画のための指針の整理をあわせて行っていきたいと思っております。
 こういったことを通じまして、身近な自然でございます里地里山の保全、さらには再生に結びつけていきたいという取組を進めておるところでございます。
 続きまして、11ページからエコツーリズムの関係でございます。11ページにいろいろ書いてございますが、施策の全体、施策の概要、取組の概要でございます。例えば、人づくりですとか組織づくり、地域づくりが一体として推進されている一つの代表例と思っております。
 エコツーリズムにつきましては、1980年代に世界的な潮流がございまして、特に国内においては90年代と聞いておりますが、小笠原、知床で先進的な事例が見られました。自然環境の保全とともに環境保全の取組を地域振興、観光振興とあわせながら、ある意味では資金の管理を目指していこうという取組と聞いております。
 環境省におきましては、資料11ページの右上にございますように、エコツーリズム推進会議を平成15年に設置いたしまして、5つの方策ということでここにエコツーリズム憲章以下5つございますが、こういったものを作成いたしました。エコツーリズム憲章ですとかエコツアー総覧、エコツーリズム大賞という普及啓発や情報提供を主に主眼とした取組でありますとか、エコツーリズムの基本的な手法やポイントをまとめた推進マニュアル。さらに全国から13地区を抽出いたしまして、モデル事業を実施いたしました。
 モデル事業のイメージは、12ページをごらんください。
 エコツーリズムのタイプとして大きく3つぐらいの類型があるのかなということで、そういったものに応じて13地区を抽出したものでございます。
 1つは豊かな自然の中での取り組み。いわゆる典型的なエコツーリズム。ルールづくりとあわせて、適正化を図っていこうというものでございます。写真にございますのは、左側は屋久島です。右側が小笠原でのホエールウォッチングです。これらを含めまして、全体で4地区のモデル事業を行いました。
 2つ目の類型でございますが、多くの来訪者が訪れる観光地での取り組みでございまして、たくさんの方々が訪れるマスツーリズムのエコ化を図っていこうというものでございます。写真に載っております左側は富士山の北麓、右側が佐世保の西海地区です。こういった事例でモデル事業を実施したところでございます。
 3つ目は、より身近なもの、里地里山の身近な自然、地域の産業や生活文化を生かした取り組み、こういった事例を取り上げております。左側の事例が地域の資源を生かした飯能地区、右側は滋賀県の湖西地区です。そういったところを取り上げてモデル事業をしました。
 さらに、昨年度にエコツーリズム推進法が施行されました。お配りしております、「さあ、はじめよう、エコツーリズム!」というパンフレットをごらんいただければと思います。こちらはエコツーリズム推進法の概要をご紹介させていただいております。
 表紙をめくっていただきまして、1つはエコツーリズム推進法の成立の背景。今申し上げたような話がございます。エコツーリズムについて、これは何かということで法律の中で定義しております。観光旅行者が自然観光資源について知識を有する者、具体的に申し上げるとガイドさんですが、から案内または助言を受け、そういった中で、当該自然観光資源の保護に配慮しつつ、自然観光資源と触れ合い、これに関する知識及び理解を深める活動と、定義をしております。
 ページをめくっていただきまして、推進法の概要でございます。
 目的としてはここに書いてあるとおりでございます。地域で取り組むエコツーリズムに関する総合的な枠組みを定めた法律でございます。
 右側に基本理念と書いてございます。主に4点ございます。第1点として自然環境の保全。第2点として観光振興、第3点として地域振興、第4点として環境教育。これを基本理念としてエコツーリズムを推進していこうということでございます。
 めくっていただきまして、法律の大きな枠組みでございます。後ほどパンフレットでご紹介いたしますが、先ほど申し上げた4つの基本理念をもとに国がエコツーリズムに関する基本的な方針を定める形になっております。さらにこれを実際に動かしていくのは地域のイニシアチブでございまして、「市町村の役割」と書いてございますが、地域ぐるみの推進体制をつくっていこうということでございまして、市町村が主体となりまして、地域の事業者、NPO、専門家、土地の所有者、さらには関係行政機関から成るエコツーリズム推進協議会を組織できる形になってございます。
 この協議会におきまして、当該地域におきますエコツーリズムの推進全体構想を作成する仕組みができております。さらに全体構想につきまして、主務大臣の認定を求めることができるということでございます。認定の効果といたしまして、右側にございますが、「全体構想が認定されることでできるようになること」として、大きく3点ございます。
 1点は地域資源の保護でございます。今まで法的な措置から漏れてきた自然観光資源を特定自然観光資源に指定することで、汚損でありますとか損傷除去という迷惑行為を禁止する法措置を講じることができます。さらには立ち入りの規制ということで、立ち入り人数の制限等が可能になる。また、認定されたものにつきましては、国が認定地域の取り組みを全国にPRしていこうという形での支援策が位置づけられているところでございます。
 今、申し上げた国の方針につきましては、もう1冊お配りしておりますパンフレット「エコツーリズム推進基本方針」が策定しております推進基本方針の概要でございます。中身は昨年6月に決定しております。
 1ページ、2ページはご紹介でございまして、3ページからが中身でございます。
 3、4ページが第1章でございますが、エコツーリズムの推進に関する基本的方向でございます。エコツーリズムを推進する意義として3つの効果。「自然環境の保全と自然体験による効果」、「地域固有の魅力を見直す効果」、「活力ある持続的な地域づくりの効果」の3点でございます。
 その上で基本的な視点といたしまして、3つの視点を基本にしております。「楽しみながら」、「大切にしながら」、「地域が主体」。これを基本的な視点としております。さらにエコツーリズムに取り組む上での配慮事項といたしまして、「順応的な管理」、事前にルールなどを決めてエコツアーをしていこう、モニタリング、さらには評価をしていく。このルールを活動に反映させようということでございます。さらには「継続性かつ計画性を持った取組」を進めていく。いろいろな主体がございますので「有機的連携」、さらには「他の法令や計画などとの整合・連携」を配慮事項として挙げております。
 5ページ、6ページには先ほど申し上げました各地域で市町村が組織いたしますエコツーリズム推進協議会に関する基本的事項といたしまして、1つは幅広い主体の参加を求めていこうと。その中でも市町村が中心的な役割を担うことが求められますということでございます。さらに右側に、透明性の確保といたしまして、設置された協議会につきましては、原則公開でやっていこうということをはじめといたしまして、運営に係る透明性を確保していこうという話でございますとか、幅広く主体の参画を求めていく上で、シンポジウムや説明会の開催を基本的な事項として定めているところでございます。
 7ページは協議会が策定することになるエコツーリズム推進全体構想の作成に関する基本的事項でございまして、4点ございます。
 1つはルールでございます。「ルール」には、自然観光資源が損なわれることを防ぐためのルールづくり。さらにガイダンス及びプログラムでございまして、ガイドが直接案内・解説することが基本ということで、これをガイダンスとしております。また、プログラムの企画・実施については表面的な情報や知識を伝えるだけでなく、その背景にある歴史や文化、そういったものを伝えて、いろいろなことに気づいていただく取り組みを基本にしようということでございます。
 さらにはモニタリング及び評価という形でございまして、継続的な取り組みを進めて評価していく。その他必要な事項ということで、関連産業との連携・調和を定めているところでございます。
 8ページにつきましては、エコツーリズム推進全体構想の認定に関する基本事項。これは申請を受けて、認定するということで、基本的事項として、認定に伴うメリットについては、一定の規制措置でございますとか、広報の効果があるということでございます。
 さらに、認定の基準といたしまして、協議会の参加者や運営方法、その他各種手続など全体構想が基本方針に適合すること、プログラムの実施主体やモニタリングの役割分担など、全体構想の内容が確実かつ効果的に実施される見込みがあることといった基準を明示しています。
 9ページはその他の重要な事項といたしまして、生物多様性の確保ですとか、さらには子どもの視点に立った継続的な取組の推進。将来、地域を愛してもらう潜在的なニーズは子どもにあることから、その視点を取り上げ、そういった興味を持っていただくような取組を進めていこうということを定めています。これがエコツーリズム推進法に基づく基本方針の概要でございます。
 横長の資料に戻っていただきまして、そういったエコツーリズム推進の枠組みが整備されたことも踏まえまして、従来の施策とあわせまして、資料11ページの下のほうでございます。平成21年度の施策と書いてございます。まずは、啓発事業でございます。イベントとして、エコツーリズムフォーラムという形で年に1回開催しております。エコツアー総覧も従来から継続しております。最近ですと400ぐらいのエコツアーが登録されていたかと思います。また、ノウハウ確立事業でございまして、全国セミナーですとかエコツーリズム大賞を進めております。
 さらに推進法の中でガイドというもののガイダンスが非常に重要な位置づけになっており、そういった面の推進を図るための新たな取り組みといたしまして、エコインストラクター人材育成事業を進めてございます。ガイドの質の向上を目指すものでございます。研修等を行っておりまして、今のところ、実績といたしましては150人程度の方に参加いただいたと聞いております。
 さらに私どもが管理しております国立公園も、一つの重要な舞台でございます。ここにございますような支援事業を展開しています。
 もう一点、ご紹介したいのが、エコーツーリズム大賞でございます。藤色の第4回エコツーリズム大賞というパンフレットがございます。
 昨年は67件の応募をいただきまして、2ページにございますように、大賞が1件、優秀賞が3件、特別賞6件を表彰しております。大賞になりました飯能市でございますが、先ほどご紹介したモデル事業でも取り上げたところでございます。
 さらに、飯能市は本年9月でございますが、エコツーリズム推進法に基づく協議会が策定する全体構想の認定の第1号になっております。
 市のホームページを見ますと、地方の特色を生かした取り組み、こんにゃくづくりで焼き芋体験といろいろなプログラムが紹介されておりました。なかなか楽しそうでございますので、ぜひ、機会がございましたら、訪ねていただければと思っております。
 こちらがエコツーリズム大賞でございます。
 続きまして、資料に戻っていただきまして、13ページでございます。地球温暖化対策でございます。これも、今、非常にホットな話題としてさまざまな議論が行われております。その中で地域の方々の力を生かしていこうという事例として、私どもが取り組んでいます主な事例として3点ほどご説明させていただければと思っております。
 第1点は、地球温暖化対策の推進に関する法律の改正による地方公共団体実行計画の拡充でございます。
 中身でございますが、具体的には、それぞれの実行計画は、従来は各公共団体などがみずからの事務事業に伴いまして、どういうふうに温室効果ガス、二酸化炭素を削減していくかということで定めていたわけでございますが、さらにこれを拡充いたしまして、その地域においてどういった施策を講じていくかを位置づけたものでございます。
 資料の右側でございます。みずからが行うものにプラスして、区域の中において自然エネルギー導入の促進ですとか、事業者の排出抑制の推進、公共交通機関、緑地その他の地域環境の整備を位置づけまして、まさに計画を各地域で策定いただいておるところでございます。
 対象といたしまして、都道府県政令市、中核市、特例市でございますが、それぞれでこういった計画の策定作業を進めていただいております。特に地域づくりに関係がございます都市計画ですとか、農業振興地域整備計画などの施策と連携を図っていただこうということでございます。
 そのために、地方公共団体実行計画協議会ということで、ここにございます関係行政機関、もしくは地域の事業者、住民等がこぞって参画する協議会をつくっていただき、そういったものを一つの媒介として、この計画づくりを進めているところでございます。
 14ページはご紹介だけにとどめますが、実行計画で位置づけられたことを踏まえまして、本年度の補正予算でございますが、その第一歩を支援していこうということで、地域グリーンニューディール基金を創設いたしまして、温暖化対策以外にも廃棄物処理ですとか、海岸漂着ごみの対策等がありますが、地域温暖化対策につきましても、ここにございますような省エネ住宅の推進、環境負担の少ない交通エネルギーインフラ等の整備を支援する予算措置を講じたところでございます。
 15ページ、16ページですが、カーボン・オフセットでございます。これはオフセット・クレジットを発行いたしまして、国内の排出削減・吸収量をカーボン・オフセットに用いることのできる信頼性の高いクレジットとして認証する仕組みでございます。この仕組みによりまして、クレジットの購入資金がそれぞれ地域で活動している、例えば林業ですとか、地場の地域産業等への還流が可能となることで、地球温暖化対策に加え、地域活性化に寄与するものと考えております。
 具体的には、そういった各地域での取り組みについて、認証委員会を設けており、ここに申請いたしまして、認証を得て、クレジットの発行を受けた上で、その取引を行っていこうというものでございます。
 クレジットを購入する側も、削減努力をすることが前提なのですが、みずからの努力だけではなかなか削減は難しいところに、このクレジットを購入することによって埋め合わせをするものでございます。
 16ページに具体の事例を示してございます。実際にクレジットの事例としては、右側にございます木質バイオマスを活用した事例でございまして、高知県で間伐材を利用して化石燃料の代替とするということで削減を図り、そのクレジットを、新宿等にビルがございますが、ルミネという会社が購入をしました。これによって社員の通勤に伴う排出量の削減に充てたという事例でございます。
 左側にございますのは、クレジットを介しておりませんで、伊那市と新宿で相対といいましょうか、特定者間でのオフセットという形の取り組みがございます。
 先ほど申し上げた高知県の事例がクレジットの第1号でございます。5年間、試行的に取り組んでいますが、早ければ年内に複数件、そういったクレジットの発行があるのではなかろうかというふうに事務局から聞いております。
 17ページは、温暖化対策「一村一品」事業でございます。時間の関係もございますのでページごとの説明は割愛させていただきますが、全国47都道府県がございます。その中で各地域の取り組みを生かした温暖化対策への取り組みとして、まず地域の予選会を開いていただき、その中で各都道府県代表を決め、18ページに流れがございますが、各都道府県代表が、今年度の場合は来年2月でございますが、全国大会をします。その中で最優秀のものを決定していこうという甲子園みたいなものでございますが、そういった取り組みをしてございます。
 19ページにございますように、これまで1,000チーム強の参加をいただいているところでございます。
 21ページに、第2回大会の最優秀賞と金賞をご紹介しておりますが、最優秀賞が京都の中学校での取り組み事例でございます。まきストーブの活用ということで灯油ゼロを達成したという取り組みでございます。また、金賞は新潟県の小千谷市でございます。冬の雪で夏に冷房をする家ということで、雪室をつくり、そういったものを使いながら夏の冷房を賄っていった取り組みです。それぞれ、地域の特色というんでしょうか。東京に住んでいたのではなかなかわいてこない地域の特色を生かしたアイデアと取り組みが47県、来年2月には各県代表として上がってきて、全国大会が開催されます。こういった取り組みを実施しているところでございます。
 駆け足になりまして、申しわけございませんでした。焦点が絞れていない説明になったかと思いますが、私どもからの説明は以上とさせていただきたいと思います。

【月尾座長】  ありがとうございました。

【江尻委員】  取り組みの中で、小さいことだとおっしゃっていらっしゃいましたこどもエコクラブのことについて、少しお話しさせていただければと思います。
 実は、私、こどもエコクラブに関しましては、六、七年かかわって、まさに地域の中にかかわりを持たせていただいております。各自治体の関係基本計画の中にこどもエコクラブがどのくらい、例えば10とか5とか、目指すという数が出ている中で、どこも頑張ってエコクラブの創設をしていこうというのは計画の上ではあるようなんですけれども、最近思いますのは、先ほどおっしゃいました都道府県とか市町村の職員の資質が全然上がっていかない。
 実は、エコクラブに関しましては、多くの人たちが知っていることであり、とてもいい取り組みだということは、特にNPOで環境にかかわりを持っている人たちは思っている部分はあるんです。
 1つはリーダーの負担が大きいということ、もう一つは、市町村、都道府県も含めて考えていただいていいと思うのですが、担当がかわっていくということから、継続性がうまくいかないということをいろいろなところから聞きます。
 今、数が増えているというお話がありましたが、継続をしているエコクラブがどのぐらいあるのかというところを、ぜひ、見ていただきたいと思っております。
 それから、学校のクラス単位で参加しているということで、先生が非常に熱心であれば、そこにかかわりを持つけれども、その先生がかわってしまえばおしまいになってしまうという流れが非常に大きいと聞いています。そのあたりを、ぜひ、今後、自治体の職員の研修なども含めて、エコクラブに関しては力を入れていただきたいと思っています。
 含めまして、環境省の仕事といいますか、施策は先を見据えた施策であるべきだと思っています。廃棄物の問題にかかわってきたんですけれども、今、目の前にあるごみを片づけることと同時に、ごみを出さないためにはどうすればいいか。ですから、先の人たち、子どもたちが何年後かに大人になったときにはどういう社会にしていくかを、ぜひ、多くの視点の一つとして考えていただきたいと思っています。
 最後に、今のエコツーリズムのお話も一つだけ申し上げておきたいんですけれども、多くのNPOや環境の団体、年齢の高い人なども含めて、地域の方々がいろいろなかかわり方をして、まさにまちおこしのようにしてかかわりを持っていて、とてもいい視点だと思っていますが、ここに次の世代の子どもたちを、まさにガイドにしていくような研修を既にしていただきたい。これが、エコクラブなどとうまい連携の仕方をすることによって、特に自然環境をたくさん持っているような地域の地域おこしになっていき、地域の中での力が生まれていくのではないかと思っておりますので、特に環境省さんの場合には、子どもを見据えたことに力を入れていただきたいと思っております。意見として申し上げます。

【月尾座長】  ご意見ということですが、もし何かあればお願いします。

【正田様】  今日、承ったことを持ち帰りまして、担当課に伝えれば、大変喜ぶと思います。力づけられると思います。
 まさにおっしゃるとおりだと思っております。地域の職員の話になると、私どもがどうこうという話でもないのですが、いろいろな機会を通じてかかわりを持っていくことは大事なことだと思いますし、特に言われた、子どもの視点は大事なんだろうと思っています。
 大変貴重な意見をいただいたと思っております。担当課も勇気づけられると思いますので、どうもありがとうございます。

【まくどなるど委員】  以前、エコツーリズム審議会のときにメンバーとしてかかわっていて、当時は加藤登紀子とかC.W.ニコル、JTBのメンバーも入ったりしていて、非常に多様性のある、幅広い議論をしてきました。
 エコツーリズムについての意見、質問でもありますが、当時でも議論になっていたのが、エコツーリズムの定義です。特に、今日の話を伺っていて、自然と触れ合う活動を重視していることは何よりだと思うんですけれども、気になるのが、マスツーリズムとの区別が見えてこないところがあります。エコロジカル・フットプリントを図ったり、より多くの人たちではなくて、そこの一定の地域のキャリング・キャパシティーを計算した上でエコロジカル・フットプリントの計算もあった上で限定した人数をそこの自然界に受け入れるとか、そういった姿勢が見えてこない。エコツーリズムとよくあるマスツーリズムがどのように違うのか。低炭素地域づくりとか、温暖化ストップのような政策も同時進行で行っている中でカーボン・ニュートラル・ツーリズムはイコール、エコツーリズムであるべきだと思うんですけれども、それが見えてこないのはなぜでしょうか。単なる私の勉強不足という面もあるかもしれないんですけれども。
 他国でのエコツーリズムを見たりすると、TKといいますか、先住民主導を優先している国は少なくはないと思うんです。
 コスタリカからカナダ……、私はカナダ出身ですが、カナダもそういった色合いを持っているんですけれども、日本での里山里地の部分もあるかと思うんですが、北海道のアイヌが主導になってエコツーリズムの地域をやっていくようなものがこのパンフレットの中で見えてこないので、生活文化も大事なんですけれども、TKを優先にしたものもエコツーリズム、そのエコツーリズムとほかのツーリズムとの、カーボン・ニュートリアル・ツーリズムといったマスツーリズムとの区別、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム、いろいろなツーリズムがある中で環境省ならではのエコツーリズムの姿が気になるところがあります。

【正田様】  どうもありがとうございます。審議会の委員としてお世話になったと承知しております。私は直接担当しているわけではないので、必ずしも的確なお答えはできないと思っておりますので、ご質問があった点は伝えておきたいと思います。
 エコツーリズムは、先ほど定義の中でありましたように、一つはガイダンスがつくというのが大きな違いだろうと思っています。そのもとで、基本方針の中にルールをつくっていこうということであろうかと思います。ルールの中で自然保護ですとか、さらには全体で認定された場合には一定の規制効果も出るということでございます。そういう意味では、まだ第1号が出たところです。特に、第1号の飯能地区については、大自然というわけではなくて、むしろ身近なところを生かしたものです。おそらくイメージされているエコツーリズムの典型的なものとはちょっと違った印象をもたれるかもしれません。ある程度人の手が入った文化を重視した取り組みだろうと思っていますので、その辺はイメージされたものと違ってきているのだろうと思います。
 ただ、お話があった点につきましては、担当部署には伝えておきたいと思いますが、それが明確な違いかどうかは別として、ガイドがついて一定のルールを定めていきましょうという基本方針をつくり、その取り組みを始めているというところはご理解を賜わればと思います。
 カーボン・ニュートラルの話につきましても、私は詳細を承知しているわけではないのですが、最近はオフセットのツアーも出てきております。先ほど紹介したのはクレジットの例ですが、そうではなくて、一定の形でオフセットしたツアーという企画商品も出てきているのだろうと承知しております。そういったものをエコツーリズムの定義の中に入れていくかどうかとなりますと、エコツーリズムはエコツーリズムの定義がございまして、そちらにのっかってくるのかという問題もあろうかと思いますけれども、一つの課題として受けとめさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

【堂垣委員】  私はNHKで番組をつくっている者なのですが、今年9月に間伐に関する番組をつくりまして、その中で取材実感といいますか、ほんとうに思ったことは、日本の場合は緑が多いものですから、森林はたくさんあるのではないかと思っているところがすごくあったのですが、実態は木自体すごく細くて、森自体がやせていて、土砂災害の危険性がすごくあることが取材を通じてすごくわかったんです。
 そのときに思ったことと関係があることで、意見として2つほど申し上げたいんですが、1つはエコツーリズムに関してです。
 そのときに出ていただいた先生が、やせた森に連れていくことで学生がすごく変わるとおっしゃっていたんです。ですから、エコツーリズムでいいもの、残った豊かなものを見せるという発想だけではなくて、いかに今の日本の自然が危ういかを見せるようなことを積極的にやっていただいたほうが、もしかすると次の世代に向けていいのかなと思っておりますので、そのことを考えていただけたらというのが1点です。
 もう1点は、間伐、今、温暖化対策と森林保全の観点で国として間伐を進めようとしているのですが、間伐材がなかなか使い切れていないというか、切り捨て間伐みたいな形で、山の中に切ったものをそのまま置いておくという状況が非常にたくさんあるんです。これはなぜかというと、間伐材を切っても使ってくれないという使う保証がないので、道をつけて紙をつくるところまで持っていくようなことができていないところが圧倒的に多いんです。そういう意味では、環境省がパンフレットをつくるときに間伐材を使うことを義務づけるといいますか、そういったことを先進的にやっていくと、環境省がパンフレットをつくること自体が日本の環境とか森林保全につながっていくというアピールもできると思います。費用の面ではプラスアルファになりますから、若干逆行する部分はあるんですが、官公庁の中で、環境省ぐらいそういったことをスタンスとして、自分たちがつくるパンフレットと環境保全を結びつけるようなことを積極的にやっていただいてはいかがかと思います。

【正田様】  ありがとうございます。森林については、いろいろ問題があると思っています。特に、言われたとおり、どういうふうに管理していくかについては、私は詳しいわけではないのですが、後継者不足という林業そのものの管理体制として、従前はそれぞれの地域地域で、みずからの山というんでしょうか、共有地という意識で管理されてきたものが、今、そういったコミュニティーが非常に弱ってきているということが大きく背景にあるのだろうと思っています。そうしたところを山林の管理をどういうふうに取り上げていくか、業として見るのか、国土保全として見ていくのかという考え方があるんだろうと思います。これは全く所管を外れた話なんですが、そういう課題意識を持っていかないと、国としての国土保全をどうしていくかという観点からは非常に重要な課題となると思っています。
 間伐材につきまして、パンフレットの話がございました。これも、私が今どうこうお話しできるものでもないのですが、グリーン調達法という中で再生紙の利用があるかと思います。あと、間伐材の利用としては、低炭素の地域づくりの中で燃料として使っていこうという動きがかなりございます。先ほど、オフセット・クレジットの形でお話しした高知県がかなりそういった取り組みを進められております。それも一つの方策だろうと思っています。そういった燃料を使っていくというのは一つの大きなアイデアでございますし、それを生かせる地域はあると思っています。都会というよりも、中山間地での温室効果ガス削減の有力な方法だろうと思っています。ただ、それが実際に事業化できるかどうか、ほんとうに事業として回っていくのであれば、それは市場原理に任せておけばいいだろうと思いますが、それがなかなか、コストの話なのか、技術なのか、人の話なのか、いろいろ要因があるかと思っています。そういう中で、私どもの取り組みの中では、モデル事業的なもので課題抽出をしていこうという取り組みもございます。
 今、お話があったことを受けとめさせていただきまして、また担当部局と話をしてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

【月尾座長】  ありがとうございました。
 間伐材については、堂垣さんが調べておられるかもしれませんが、岩手県岩泉町の森林組合の活動もあり、そのような活動に役所などが参加されればいいのではないかと思います。
 私の個人的な見解ですが、エコツーリズムというのは、自然に慣れていない方や年配の方が参加されるのには悪くない仕組だと思いますが、多くの人が、そのようなツアーに参加すると、飼いならされた人間が増えて、冒険心のある人間が日本から減っていくという心配があるし、ガイドが説明してくれるので、新しい発見も少ないと思いますので、そこそこにしてほしいと思います。国民がエコツーリズムでしか自然と接しないというのは悲惨な状態だという気もします。逆に、多くの人が冒険心や探究心を持って自然の中に行くような政策も推進していただけるといいと思います。
 時間になりましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。

【正田様】  どうもありがとうございました。

【月尾座長】  それでは、次回以降について、お願いします。

【地域政策課長】  次回についてでございますが、あともう一度、関係府省のヒアリングをお願いしたいと考えております。日程詳細等につきましては、決まり次第、ご連絡いたします。お忙しいところを申しわけございませんが、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

【月尾座長】  どうもありがとうございました。

―― 了 ――

速記担当:(株)大和速記情報センター 田中 陽子

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