波平 三雄 様
株式会社HFシステム 執行役員 沖縄支店長
38年間、沖縄県庁に勤め、防災行政無線網の整備を3回経験した。その経験を振り返ってみたい。
沖縄県防災行政無線網の整備は、郵政省(当時)が沖縄県復帰記念事業として実施した電波伝搬調査が始まりと聞く。
第1世代の構築は、私が沖縄県庁に入職したばかりの頃で、パソコンも普及してなく、アナログの時代であった。
ネットワークは、当時の防災行政用無線局の免許方針に則った回線構成で構築され、久米島と宮古島間を結ぶ見通し外通信や県庁と南大東間を短波帯で結ぶなど特徴的な回線構成もあった。
このネットワークでは、アナログ回線でデータ伝送の可能性を探った。長距離海上伝搬でフェージング等の影響を受け易い無線回線ではあったが、ホストコンピューターのプログラム変更などにより、何とか伝送可能であることを確認した。この経験が次世代のネットワークづくりへと引き継がれていくことになった。
第2世代構築では、整備基本計画の大幅な見直しなど、「The防災無線」から有線系や衛星系も組合せ、行政全般に利活用可能な「総合行政情報通信ネットワーク」へと大きく変わる転換期でもあった。組織的にも消防防災課無線係から情報システム課高度情報担当へ業務移管した頃であり、情報と通信を融合させたネットワークづくりとして取り組むことができた。
このネットワークでは、回線容量の増速やATM伝送技術の採用など、設備面の強化を図り、防災機能はもとより、県庁WANやLGWAN、住基ネット、防災情報システムなど行政情報システムの伝送路として活用する機能を増強した。
第3世代構築では、第2世代の高度化事業として取り組んだ。
このネットワークでは、オールIP化、大容量化された光回線と多重無線回線による自動迂回機能によりネットワークの強靭化を図り、映像情報システムの充実、消防・救急無線との共同利用等、沖縄県の基幹ネットワークとして更なる高度化を実現することができた。
第1世代から第3世代まで関わり、その進化を見届けることができたのは幸運であった。振り返ってみると、多くの仲間と一緒に取り組んだ経験は、私にとって貴重な財産となっている。今後は、このネットワークが様々な行政活動に利活用され、沖縄県の情報化推進に寄与することを期待したい。
久米中継局OH回線パラボラアンテナ(久米島)