緊急通報の機能

 電気通信事業者は、緊急通報(110,118,119)を扱う際には次の機能を持つことを義務付けられています。

  • 管轄の緊急通報受理機関(警察、海上保安庁、消防)へ接続する機能
  • 発信者の位置情報等を通知する機能
  • 回線を保留または呼び返し等を行う機能

制度化までの経緯

 緊急通報時の位置情報等通知機能等については、NTTのアナログ電話等では従来から実施されていましたが、携帯電話やIP電話においても、普及が進むにつれて同様な機能の実現が求められるようになりました。
 このため総務省では、平成15年頃から位置情報等通知機能等の導入に関して検討を開始し、平成16年には携帯電話について、平成17年にはIP電話についての導入方針を決定し、平成19年4月1日から位置情報等通知機能等を義務化しています。

〜経緯詳細〜

  • 平成15年7月1日 電気通信事業における重要通信確保の在り方に関する研究会報告書
      「携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報表示機能について円滑な導入に向けて取り組むことが必要」と提言
  • 平成15年8月8日 IT戦略本部決定「e-Japan計画 2003」
      「2003年度中に(略)携帯電話からの緊急通報者の位置特定の方策とIP電話からの緊急通報への対応を検討」することを明記
  • 平成15年11月27日 情報通信審議会(情報通信技術分科会 緊急通報機能等高度化委員会)
      「電気通信事業における緊急通報機能等の高度化方策」について諮問
  • 平成16年6月30日 情報通信審議会(情報通信技術分科会 緊急通報機能等高度化委員会)
      「携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に係る技術的条件」について一部答申
  • 平成17年3月30日 情報通信審議会(情報通信技術分科会 緊急通報機能等高度化委員会)
      「IPネットワークにおける緊急通報等重要通信の確保方策」について一部答申
  • 平成18年1月5日 事業用電気通信設備規則 公布
  • 平成19年4月1日 事業用電気通信設備規則 施行

位置情報等通知機能の概要

 事件・事故等に迅速に対応するには、緊急通報における通報者の発信位置の特定が重要です。そのため、発信者の位置情報を緊急通報受理機関(受付台等)へ送信する機能が、緊急通報には備えられています。
 アナログ電話・IP電話の場合、位置情報として契約者等の住所が、電話番号及び契約者名とともに受付台等へ送信されます。
 携帯電話の場合、位置情報として、GPS位置情報通知対応端末でGPSを利用可能な場合はGPS測位による位置情報が、それ以外の場合は基地局の場所等から算出される位置情報が、電話番号とともに受付台等に送信されます。携帯電話からの緊急通報は、移動中や外出先からの通報が想定され、通報者が現在地がわからない場合も多くあるため、自動的な位置情報通知は緊急通報でも重要な機能となっています。
 なお、GPSの受信状況や携帯電話の電波状況によっては、正確な位置を通知できない可能性もありますので、緊急通報の際には、口頭でも現在地や目標物等を伝えるようにしてください。

システム構成図

 位置情報等通知に係るシステムの代表的な構成例は次のとおりです。
位置情報通知システム
 位置情報は、利用者が特別な操作をしなくても、各電気通信事業者内の位置情報通知サーバから、緊急通報の音声とは別の専用ネットワーク(IP-VPN網等)経由で、受付台等へ送信されます。

参考リンク

よくある質問(FAQ)

問:位置情報等の通知には特別な操作等が必要ですか?

 利用者が緊急通報時に特別な操作を行ったり、電気通信事業者と特別な契約を結んだりする必要はありません。

問:緊急通報時に位置情報を通知しないことはできますか?

 184を頭に付けて発信すれば、緊急通報時であっても、電話番号や位置情報等は通知されません。(「電気通信事業における個人情報保護ガイドライン」に基づき、利用者の意思を尊重し、選択できるようにするものです。)

 ただし、緊急通報受理機関が人の生命等に差し迫った危険があると判断した場合には、発信者の位置情報を取得する場合があります。

問:位置情報の精度はどのくらいですか?

 固定電話の場合は、契約者等の住所が通知されますので、精度は関係ありません。

 携帯電話の場合は、GPS測位方式の場合、電波状況が良ければ数十メートル以下の精度で、基地局による位置情報の場合、基地局の配置状況にもよりますが数百メートルから10キロメートル程度の精度で、位置情報が通知されます。

問:位置情報を受信できない緊急通報受理機関はありますか?

 海上保安庁は全国で対応していますが、一部地域の警察及び消防機関では位置情報を受け取ることができません。詳細については、関係機関へお問い合わせください。

問:携帯電話にGPS搭載が義務付けられたのですか?

 携帯電話へのGPS搭載の義務付けは行っていません。

 法令上は、第三世代携帯電話に対して、発信場所または基地局の位置情報を通知することが義務化されており、発信場所以外にも基地局の位置情報通知を認めています。

 また総務省(情報通信審議会答申)では、発信場所の特定方法として、精度が高いGPS測位方式を基本方式と位置づけていますが、これはGPS測位方式に限定するものではなく、同等の測位精度等を有する他の衛星測位方式等も想定しています。

問:全てのGPS搭載携帯電話からGPSによる位置情報通知ができるのですか?

 一部のGPS搭載携帯電話は、緊急通報時のGPSによる位置情報通知に対応していません。(緊急通報時にGPS機能を自動起動する仕組みが装備されていない等のためです。詳細は、ご利用の電気通信事業者に確認ください。)

 なお、第三世代携帯電話加入者数のうち、約49%(平成22年3月末)がGPSによる位置情報等通知機能に対応しています。

関係法令

事業用電気通信設備規則(昭和60年郵政省令第30号)

 (緊急通報を扱う事業用電気通信設備)【編注:アナログ電話用設備】
第三十五条の二の四 電気通信番号規則別表第十二号に掲げる緊急通報番号を使用した警察機関、海上保安機関又は消防機関(以下「警察機関等」という。)への通報(以下「緊急通報」という。)を扱う事業用電気通信設備は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
一 緊急通報を、その発信に係る端末設備等の場所を管轄する警察機関等に接続すること。
二 緊急通報を発信した端末設備等に係る電気通信番号その他当該発信に係る情報として総務大臣が別に告示する情報を、当該緊急通報に係る警察機関等の端末設備に送信する機能を有すること。ただし、他の方法により同等の機能を実現できる場合は、この限りでない。
三 緊急通報を受信した端末設備から終話信号が送出されない限りその通話を継続する機能又は警察機関等に送信した電気通信番号による呼び返し若しくはこれに準ずる機能を有すること。
四 メタルインターネットプロトコル電話用設備に関する前号の呼び返しを行う場合にあつては、次に掲げる機能を有すること。
イ 緊急通報を発信した端末設備等に当該緊急通報に係る電気通信番号規則別表第十二号に掲げる緊急通報番号を送信する機能
ロ 緊急通報を発信した端末設備等が、当該端末設備等に係る着信を他の端末設備等に転送する機能を有する場合にあつては、当該機能を解除する機能
ハ 緊急通報を発信した端末設備等が、特定の電気通信番号を有する端末設備等からの着信を拒否する機能を有する場合にあつては、当該機能を解除する機能
ニ 緊急通報を発信した端末設備等からの発信(緊急通報に係るものを除く。)及び当該端末設備等への着信(呼び返しに係るものを除く。)を当該端末設備等からの当該緊急通報に係る終話信号の送出後一定の時間制限する機能
ホ 呼び返しに係る通信を次条に規定する災害時優先通信として取り扱う機能
 
 (緊急通報を扱う事業用電気通信設備)【編注:ISDN用設備】
第三十五条の六 緊急通報を扱う事業用電気通信設備は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
一 緊急通報を、その発信に係る端末設備等の場所を管轄する警察機関等に接続すること。
二 緊急通報を発信した端末設備等に係る電気通信番号その他当該発信に係る情報として、総務大臣が別に告示する情報を、当該緊急通報に係る警察機関等の端末設備に送信する機能を有すること。ただし、他の方法により同等の機能を実現できる場合は、この限りでない。
三 緊急通報を受信した端末設備から通信の終了を表す信号が送出されない限りその通話を継続する機能又は警察機関等に送信した電気通信番号による呼び返し若しくはこれに準ずる機能を有すること。
四 インターネットプロトコルを用いた総合デジタル通信用設備に関する前号の呼び返しを行う場合にあつては、次に掲げる機能を有すること。
イ 緊急通報を発信した端末設備等に当該緊急通報に係る電気通信番号規則別表第十二号に掲げる緊急通報番号を送信する機能
ロ 緊急通報を発信した端末設備等が、当該端末設備等に係る着信を他の端末設備等に転送する機能を有する場合にあつては、当該機能を解除する機能
ハ 緊急通報を発信した端末設備等が、特定の電気通信番号を有する端末設備等からの着信を拒否する機能を有する場合にあつては、当該機能を解除する機能
ニ 緊急通報を発信した端末設備等からの発信(緊急通報に係るものを除く。)及び当該端末設備等への着信(呼び返しに係るものを除く。)を当該端末設備等からの当該緊急通報に係る通信の終了を表す信号の送出後一定の時間制限する機能
ホ 呼び返しに係る通信を次条に規定する災害時優先通信として取り扱う機能
 
 (緊急通報を扱う事業用電気通信設備)【編注:0AB〜J IP電話用設備】
第三十五条の十四 第三十五条の六の規定は、緊急通報を扱う事業用電気通信設備について準用する。この場合において、同条第四号中「インターネットプロトコルを用いた総合デジタル通信用設備に関する前号の呼び返し」とあるのは「前号の呼び返し(アナログ電話用設備(メタルインターネットプロトコル電話用設備及びワイヤレス固定電話用設備を除く。)又は総合デジタル通信用設備(インターネットプロトコルを用いた総合デジタル通信用設備を除く。)を介するものを除く。)」と読み替えるものとする。
 
 (緊急通報を扱う事業用電気通信設備)【編注:携帯電話・PHS用設備】
第三十五条の二十 緊急通報を扱う事業用電気通信設備は、その発信に係る端末設備等に接続する基地局の設置場所等に応じ、適当な警察機関等に接続しなければならない。
2 第三十五条の六第二号及び第三号の規定は、前項の事業用電気通信設備について準用する。
 
 (緊急通報を扱う事業用電気通信設備)【編注:その他音声用設備】
第三十六条の六 緊急通報を扱う事業用電気通信設備は、その発信に係る端末設備等の場所を管轄する警察機関等に接続しなければならない。ただし、端末設備等との接続において電波を使用するものは、基地局の設置場所等に応じ、適当な警察機関等に接続することとする。
2 第三十五条の六第二号及び第三号の規定は、前項の事業用電気通信設備に準用する。

事業用電気通信設備規則の細目を定める件(昭和60年郵政省告示第228号)

(警察機関等の端末設備に送信する情報)
第四条 規則第三十五条の二の四第二号(第四十五条の八第三項において読み替えて準用する場合並びに第四十四条の二第二項及び第五十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定による緊急通報の発信に係る情報は、次のとおりとする。
一 緊急通報を発信した端末設備等に係る電気通信番号
二 発信に係る住所
三 電気通信回線の契約者名
2 規則第三十五条の六第二号(第三十五条の十四、第四十四条の二第五項、第四十五条の八第七項及び第五十四条第二項において読み替えて準用する場合並びに第三十五条の二十第二項、第三十六条の六第二項、第四十五条の八第五項、第五十三条第二項及び第五十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による緊急通報の発信に係る情報は、次の各号に掲げる電気通信設備ごとに、当該各号に規定する情報とする。
一 総合デジタル通信用設備
イ 緊急通報を発信した端末設備等に係る電気通信番号
ロ 発信に係る住所
ハ 電気通信回線の契約者名
二 インターネットプロトコル電話用設備(電気通信番号規則(令和元年総務省令第四号)別表第一号に掲げる固定電話番号を使用して電気通信役務を提供するインターネットプロトコル電話用設備及び同表第六号に掲げる特定IP電話番号を使用して電気通信役務を提供するインターネットプロトコル電話用設備であつて端末設備等との接続において電波を使用しないものに限る。)
イ 緊急通報を発信した端末設備等に係る電気通信番号
ロ 発信に係る位置情報(住所コード及び住所)
ハ 当該設備を用いた役務の契約者名
三 携帯電話用設備、特定携帯電話用設備及びPHS用設備
イ 緊急通報を発信した端末設備等に係る電気通信番号
ロ 発信に係る位置情報又は発信を受けた基地局に係る位置情報(緯度、経度及び精度情報)
3 前項第二号ロの住所コードは、JIS規格で定める都道府県及び市区町村ごとの数字のコード並びに公益財団法人国土地理協会(昭和二十六年四月二十八日に財団法人国土地理協会という名称で設立された法人をいう。)及び地方公共団体情報システム機構(地方公共団体情報システム機構法(平成二十五年法律第二十九号)に規定する地方公共団体情報システム機構をいう。)で付与された大字・通称及び丁目ごとの英数字のコードとする。
4 第二項第三号ロの位置情報については、緯度及び経度の単位は度表記で小数点以下五位とし、精度情報の単位は、メートルとする。

電気通信番号規則(令和元年総務省令第4号)

別表 電気通信番号の種別(第五条第二項関係)
一〜十一 [略]
十二 緊急通報番号
十三〜十五 [略]
備考 この表における次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるとおりとする。
一〜十一 [略]
十二 緊急通報番号 電気通信番号計画に事業者設備等識別番号として定める緊急通報番号
十三〜十五 [略]

電気通信番号計画(令和元年総務省告示第6号)

第3 利用者設備識別番号に関する事項
電気通信番号 [略] 電気通信番号の使用に関する条件
電気通信番号の種別 電気通信番号の構成
固定電話番号 □ABCDEFGHJ[略] [略]
第1 重要通信の取扱いについては、次のとおりとする。
1 利用者が緊急通報を行うことが可能であること。ただし、固定電話番号を使用して提供する電気通信役務が、特定の業務の用に供する通信に用途が限定されているものであって、緊急通報を代替して提供するための措置を講じている場合その他の総務大臣が特に認める場合を除く。
2 [略]
第2〜第4 [略]
[略] [略] [略] [略]
音声伝送携帯電話番号 □70CDEFGHJK、□80CDEFGHJK及び□90CDEFGHJK[略] [略]
第1 重要通信の取扱いについては、次のとおりとする。
 利用者が緊急通報を行うことが可能であること。ただし、音声伝送携帯電話番号をデータ 伝送役務及びショートメッセージサービスのみの用に供する場合その他の総務大臣が特に認 める場合を除く。
第2・第3 [略]
[略] [略] [略] [略]
 :
第4 事業者設備等識別番号(プレフィックスを除く。)に関する事項
電気通信番号 電気通信番号により識別する電気通信設備又は提供すべき電気通信役務の種類若しくは内容 電気通信番号の使用に関する条件[抄]
電気通信番号の種別 電気通信番号の構成
[略] [略] [略] [略]
緊急通報番号 110 警察機関への緊急通報を行う機能の提供に係る電気通信役務
1 緊急通報番号により識別する電気通信役務の提供範囲を管轄する警察機関に接続すること。
118 海上保安機関への緊急通報を行う機能の提供に係る電気通信役務
1 緊急通報番号により識別する電気通信役務の提供範囲を管轄する海上保安機関に接続すること。
119 消防機関への緊急通報を行う機能の提供に係る電気通信役務
1 緊急通報番号により識別する電気通信役務の提供範囲を管轄する消防機関に接続すること。
[略] [略] [略] [略]

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