AI
AI
(2025年1月調査)
名称 | 政府監督機関 | 発表時期 | 主要政策概要 | |
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米国 | 人工知能の未来に備えて | 大統領府 | 2016年10月 | 2023年7月には、大統領府によって、アマゾン(Amazon)、アンソロピック(Anthropic)、グーグル(Google)、インフレクションAI(Inflection)、メタ(Meta)、マイクロソフト(Microsoft)、オープンAI(OpenAI)ら7社が、AIの安全性、信頼性、セキュリティの三つの原則に関して、八つの取組を自主的に履践することを約束するとの発表がなされた。2023年10月にバイデン大統領(当時)は、AIの安心、安全、信頼できる開発及び利用に関する大統領命令(第14110号)に署名した。同命令は、AIの安心、安全、信頼できる開発を推進し、AIの安全性とセキュリティに関する新たな基準確立や新たな監視手段を導入すること等を目的とし、複数の連邦政府機関に対して幅広い措置の実施を指示している。その大きな柱は、AIの安全・安心のための新基準、米国民のプライバシー保護、公平性と公民権の推進、消費者・患者・学生の支援、労働者の支援、イノベーションと競争の促進、世界での米国のリーダーシップの推進、政府による責任ある効果的なAI利用の確保、の8点となる。しかし、この命令は、2025年1月に就任したトランプ大統領によって撤回され、トランプ大統領は新たに「米国のAIイノベーションに対する障壁除去」に関する大統領命令に署名した。 |
中国 | 新世代AIの発展規画 | 国務院 | 2017年7月 | 2030年までの戦略目標、重点的な取組み、支援措置等が明記された。3段階に分かれる戦略目標では、まず、2020年までに、AIの技術と利用は世界先端水準に達し、AI産業が経済成長の新しい原動力になり、AIの利用が民生改善の新しい手段になること、次に、2025年までに、AIの基礎理論が大きなブレークスルーを遂げ、AIは中国の産業アップグレードと経済構造転換のけん引力になること、更に、2030年までに、AIの理論、技術、利用のいずれも世界先端水準に達し、中国が世界の主要なAIイノベーション・センターになること、としている。2023年8月、生成AI技術を活用して、中国の公衆にテキスト、画像、音声、動画、その他のコンテンツを生成するサービス(生成AIサービス)を提供することに関しての順守事項等を定めた生成型人工知能サービス管理暫定弁法が施行された。また、同年10月、国家インターネット情報弁公室(CAC)は、すべての国がAIガバナンスにおける情報交換及び技術協力を強化し、共同でリスクを防止し、広く合意されたAIガバナンスの枠組み及び基準を形成し、AI技術の安全性、信頼性、制御可能性及び公平性を継続的に改善すべきであるとして、「グローバルAIガバナンス・イニシアティブ」を公表した。 |
韓国 | 国家AI戦略政策方向 | 科学技術情報通信部 | 2024年9月 | AIトップ3国家入りを掲げ、国家AIコンピューティングセンター構築、国家AI研究拠点構築、国家AI戦略策定等の施策が盛り込まれた。 |
人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法(AI基本法) | 科学技術情報通信部 | 2025年1月制定 | AI関連産業育成支援とAIの安全性確保の根拠を盛り込んだ法律であり、EUに次いで世界で二番目の包括的なAI法の制定となった。2026年1月に施行される。 | |
EU | デジタル欧州プログラム | 欧州委員会 | 2019年4月 | デジタル分野の欧州単一市場戦略の一環として、デジタル社会化の主要技術の発展と人材育成を目標とする2021~2027年の支援計画。AI分野には約25億EURの予算の割当てが予定されている。また、欧州委員会は、2024年1月に「AIイノベーションパッケージ」を公表し、スーパーコンピューターの活用や生成AI開発、スタートアップ企業への支援を表明した。 |
欧州AI規則 | 欧州委員会 | 2024年8月施行 | 欧州委員会は2021年4月、欧州AI規則案を発表した。AIに関する世界初の法的枠組であり、AIに関する国際基準の設定において欧州の主導的立場を強化する狙いがあるとした。同規則は、2024年5月にEU理事会の採択をもって成立のうえ、同年8月に施行された。本規則は2020年2月に公表した「AI白書」における、リスクに応じたAIシステムの分類を受け継ぐ内容となっている。また、2022年9月には、「AI責任指令(AI Liability Directive)」案を公表している。 | |
英国 | 国家AI戦略 | デジタル・文化・メディア・スポーツ省(現科学・イノベーション・技術省) | 2021年9月 | 明確なルール、倫理原則、イノベーションを促進する規制環境により、AIを使って生活し、仕事をするのに英国を最適な場所とすることを目的に、10年間のビジョンを掲げる。「国がAIの長期的な成長に投資すること」「AIが経済のすべての部門や地域に恩恵をもたらすこと」「イノベーションや投資を促進し、国民や国の基本的な価値を保護する適切なルールによって効果的に管理されること」を三つの柱とする。2022年7月、国家AI戦略の進捗状況が公共部門の情報ウェブサイト「GOV.UK」にて公開された。当ウェブサイトでは、政府や関連機関のAIに関する取組みが、上記の三つの柱の内容に沿って説明されている。 |
AI機会行動計画 | 科学・イノベーション・技術省 | 2025年1月 | 今後10年間でAIにより国家を再生させるため、三つの目標(①AIを可能にするインフラの構築、②AI導入による生活変革、③自国で開発したAIによる未来の確保)と50の推奨事項が提示された。 | |
ドイツ | AI戦略 | 連邦経済エネルギー省(現連邦経済・気候保護省)、連邦教育研究省、連邦労働社会省 | 2018年11月 | AI戦略の基本方針として、以下の目標を掲げている。
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フランス | 国家AI戦略 | 首相府等 | 2018年 | 2018~2022年には、第1段階として、AI関連人材育成と官民協力基盤策定等に15億EURの予算が投資された。2021年11月、第2段階(2022~2025年)には、官民が2対1の割合で20億EURの投資を予定していることが発表された。2025年までの支援対象は、AI関連ソフトウェア・アプリケーション開発、中小企業のAI関連ソリューション導入支援、関連ベンチャー数を3倍にするための起業支援、AI技術を用いた気候変動対策、国の関連機関によるR&D活動、国内の教育機関での人材育成である。また、2024年3月に有識者による調査委員会が、AI関連企業のエコシステム形成のための基金に100億EURを投資、国家計画としてのスーパーコンピューター開発、個人情報・知的財産権にかかわるデータへのアクセス権に関する手続きの簡略化、公的機関での研究テーマに「AI枠」を設置、国際的なAI振興基金の設立等の提言を行った。 |
日本 | AI戦略2022 | 内閣府 | 2022年5月 | 2019年6月に発表された「AI戦略2019」において、基本方針として、①人間尊重、②多様性、③持続可能の三つの基本理念に基づき、「人材」「産業競争力」「技術体系」「国際」の四つの戦略目標が設定された。2021年6月にフォローアップとして「AI戦略2021」が発表され、「人・産業・地域・政府全てにAI」を目指し、取組みが継続・推進されている。2022年5月に発表された「AI戦略2022」では、①「差し迫った危機への対処」と②「社会実装の推進」が2大目標に掲げられた。2023年5月にはAI戦略会議による「AIに関する暫定的な論点整理」が発表され、2024年6月には「統合イノベーション戦略2024」が閣議決定され、リスクへの対応、AIの利活用促進、AI開発力の強化等の政策が進められている。また2025年2月にはAI安全性の知見のハブとして「AIセーフティ・インスティテュート」が設立された。 |