政策
欧州委員会は、欧州が次世代通信に対応できるよう、6G産業協会(6G Smart Networks and Services Industry Association:6G-IA)、復興レジリエンス・ファシリティ(Recovery and Resilience Facility:RRF)及び国際連携を含むスマート・ネットワーク・サービス共同事業(Smart Networks and Services Joint Undertaking:SNS JU)を通じて、6Gの開発を支援している。欧州委員会は6Gへの移行を支援するため2021年にSNS JUを設立、2021年から2027年の間に9億ユーロのEU予算が拠出される。SNS JUの使命は、①研究・イノベーションの実施により、6Gにおける欧州の技術主権を促進し、②デジタル主導の市場を発展させ、経済・社会のデジタル化とグリーン化を実現し、欧州全体での5G展開を促進する、ことである。
研究開発
SNS JUは2024年10月、6G研究・イノベーションを推進するため、1億2,700万ユーロの資金援助を行う第3次提案募集において、16件のプロジェクトを採択した。当該プロジェクトは2025年1月より開始され、主なプロジェクトは以下のとおり。
持続可能性とマイクロエレクトロニクス:「SUSTAIN-6G」と「X-TREME 6G」は重要なSNSプロジェクトで、前者は環境、社会、経済の持続可能性を将来の通信システムに統合するためのプロジェクトで、後者は、6Gチップ設計を推進するためのオープンプラットフォームを構築・維持し、将来の6Gネットワークを支えるチップを開発するマイクロエレクトロニクス・イニシアチブ。
信頼性の高い6G向けAI:「6G-DALI」は、機械学習によるAI実験サービスとデータ管理の二つの柱からなるフレームワークにより、6GネットワークへのAI統合を先駆的に推進。
国際連携:「6G-MIRAI」と「6G-ARROW」は、日本と韓国と共同で推進する国際プロジェクト。前者は日本が参画し、開発段階からAIを活用した高度な無線通信システムを構築。後者は韓国が参画し、様々なデバイスやネットワークを円滑に連携させ、場所やデバイスの種類を問わず途切れることのない接続を実現。
市場形成
6G-IAは、次世代ネットワークとサービスに関する欧州の産業と研究を代表する団体で、主たる目的は、5G、5G進化及びSNS/6G研究における欧州リーダーシップに貢献することである。6G-IAは2024年7月に、次期欧州研究・イノベーション枠組み計画(the next European Framework Programme for Research and Innovation:FP10)に向けて、共同研究・開発・イノベーションを通じて欧州の将来の競争力強化のために投資する共同声明を発表した。また、同年12月、欧州鉄道インフラ管理者協会(European Rail Infrastructure Managers Association:EIM)は、デジタル統合を強化し、鉄道システムのイノベーションを推進するため、6G-IAとの覚書(MoU)に署名した。