世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

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国家ブロードバンド政策

国家ブロードバンド政策

(2024年1月調査)

名称 政府監督機関 発表時期 主要政策概要
米国 Internet for all 国家電気通信情報庁 2022年5月 バイデン政権は、すべての米国民を安価で信頼できる高速インターネットにつなげる目標の達成に向けた「Internet for all」という取組みを推進している。2021年11月に成立した「インフラ投資・雇用法」は、同目標を達成するために650億USDの資金を提供した。このうち、国家電気通信情報庁(NTIA)には482億USDが割り当てられ、六つのブロードバンド・プログラムが新設された。2023年6月には、その中でも最大規模のプログラムである「ブロードバンド衡平性・アクセス・配備(Broadband Equity Access and Deployment:BEAD)プログラム」が発表された。同プログラムでは、サービス未提供地域でブロードバンド・インフラの展開と導入を計画、支援する各州のプロジェクトに合計424億5,000万USDが配分される。2023年12月、ルイジアナ州がNTIAの承認を受けたことで、BEADプログラムが初めて実行段階に移行した。
中国 ダブル・ギガビット網の共同発展行動計画(2021~2023年) 工業・情報化部 2021年3月 ダブル・ギガビット網とは光ファイバ網と5G網の二つを意味する。主な目標では、2021年末までに、ギガビット級光ファイバ及び 10G-PON 以上のシステムによるカバー世帯数をそれぞれ、2億500 万以上に増やし、ギガビット級光ファイバ網への加入世帯数の 1,000万突破を目指す。5Gでは、県レベル以上の行政エリアをすべてカバーし、基地局の新設数を60万か所以上とする。2023年末までには、ギガビット級光ファイバ及び10G-PON以上のシステムによるカバー世帯数をそれぞれ、4 億1,000万以上に増やし、ギガビット級光ファイバ網への加入世帯数の3,000万突破を目指す。5Gは郷・鎮レベルの行政単位を基本的にすべてカバーする。また、5G基地局や10G-PONの整備状況等を指数とした「ギガビット都市」の整備が進められており、MIITは2022年末、110都市が基準に達したと発表した。2023年7月には、MIITと国家衛生健康委員会が、農村におけるスマート医療等の取組の創出等に向け、「ブロードバンド+健康郷村」のパイロットプロジェクトの募集を開始した。
ブロードバンド・フロンティア 工業・情報化部 2023年12月 工業・情報化部は、2023年12月、国境地域のブロードバンド網の供給とサービス能力を向上させる「ブロードバンド・フロンティア」の建設を加速させる通達を発表した。国境地域の都市と農村部分において、移動体通信網と固定ブロードバンド網の普及率を向上し、5Gとギガビット光ファイバ網へのアップグレードを加速する。2025年末までに5Gとギガビット光ファイバ網が国境地域の群や町で利用可能になり、2027年末までに国境地域の行政村、国境管理、貿易機関の95%が5G網に接続される予定である。5Gネットワークは陸地だけでなく、内海、領海、その他の海域でも達成される見込みである。具体的な政策として、①郡ブロードバンドネットワークのアップグレードの加速化、②農村ブロードバンドネットワークの建設強化、③道路モバイルネットワークの普及促進、④国境管理機関と国境貿易地域のネットワーク保護能力の強化、⑤島嶼海域におけるブロードバンドネットワークのカバー範囲の強化、⑥ネットワーク保守サービスの強化、⑦国境地域におけるデジタル開発の実現が掲げられている。
韓国 10ギガビット級ブロードバンド商用サービス化促進※KR1 科学技術情報通信部 2018年12月 韓国では他国に先駆けてxDSLとケーブルモデムによるブロードバンド基盤が政府主導で拡充された。現在はギガビット級高速ブロードバンドのサービス競争が進展している。KTとSKブロードバンドは、2018年末から10Gbps級ブロードバンドの商用サービスを提供している。2023年9月末時点、固定網ブロードバンド加入総数は約2,398万であり、加入者による市場シェアはKT、SKブロードバンド(SKテレコムの再販を含む)、LGU+の順番である。
K-network 2030 科学技術情報通信部 2023年2月 科学技術情報通信部(MSIT)は、2023年2月、次世代ネットワーク開発戦略である「K-network 2030」を発表した。次世代ネットワークへの積極的な投資と官民協力による産業基盤の構築のため、①世界最高の6G 技術力の確保、②ソフトウェアベースのネットワーク革新、③ネットワークサプライチェーンの確保という3 つの目標を見据えた政策課題を実行する。基幹ネットワークについては、将来のトラフィック増加に積極的に対応するために、伝送速度を2026年までに2倍、2030年までに4倍にするとしている。
EU Connectivity for a Competitive Digital Single Market - Towards a European Gigabit Society等 欧州委員会 2016年9月 2025年までのブロードバンド普及戦略として以下の目標を掲げ、Connecting Europe Broadband Fund(CEBF)等の支援基金から、主にルーラル地域の接続環境向上に対する各種プロジェクトへの助成を実施している。
  • 社会・経済上重要な地域に1Gbps級のネットワークを敷設
  • 都市部、主要交通路、鉄道で通信が途切れない5Gサービスを提供
  • 域内のすべての世帯が最大速度100Mbps以上のブロードバンド接続
また、2021年3月に、2030年までのEUのデジタル・トランスフォーメーション(DX)にかかる具体的施策事項を示した「デジタル・コンパス2030」を発表し、EUの全世帯にギガビット網を接続し、すべての人口密集地を5G網でカバーするという目標を示している。EU全体およびEU加盟各国の接続状況は年度ごとにデジタル経済社会指数レポートとしてインターネット上で報告されており、現時点で2022年までのデータが公開されている。また、欧州市民のブロードバンド接続環境向上のためのR&D支援計画であるConnecting Europe Facility(CEF)は2021年から2027年までの関連プロジェクト助成予算として30億EURの出資を予定しており、2023年10月、CEFプログラム第3弾の募集が開始された。
英国 プロジェクト・ギガビット デジタル・文化・メディア・スポーツ省(現科学・イノベーション・技術省) 2021年3月 50億£の公的資金を投入、提供最困難地域にある100万以上の世帯や企業を接続。2025年までに最低85%のギガビット対応カバレッジが目標。全土の地域に超高速ブロードバンドを提供、公共サービスを活性化、パンデミックからの回復を目指す。2億1,000万£相当のブロードバンド・バウチャー制度の拡張、1億1,000万£の最大7,000の地方の開業医院、図書館、学校の接続、衛星や5G技術を使って電波の届きにくい地域を接続。2023年には、5億3000万£以上の資金提供により、33万以上の到達困難な家庭や企業に対し、高速なブロードバンドの普及を約束。2023年12月時点で英国施設の79%以上がギガビット対応ブロードバンドへの接続を達成。
ドイツ ギガビット戦略 連邦デジタル・交通省 2022年7月 2025年末までに光ファイバ接続を3倍にして、家庭や企業の半数は光ファイバ接続されていることを目標とする。また、できれば2026年までに、全国で音声やデータ通信ができる状態にする。次いで、2030年までに、光ファイバを家庭に、人々が生活し、働き、移動するあらゆる場所で、最新のモバイル通信規格を導入する。政府は投資の円滑化のために許認可の迅速化や協力体制の構築等の支援を行う。また、連邦デジタル・交通省は、2023年4月から、通信事業者の民間進出において、キャッチアップと新調達の必要性が高い分野に資金を投入する「ギガビットファンディング2.0」プログラムを開始しており、同プログラムを通じて光ファイバーインフラの全国的な普及を支援している。2023年12月には、2023年半ばの時点で、ドイツの世帯の約96%が少なくとも50Mbit/sのブロードバンド接続、約75%の世帯がギガビット接続を達成していることが報告された。
フランス 超高速ブロードバンド計画 電子通信・郵便・出版流通規制機関(ARCEP)等 2013年2月 2013年2月、「2022年までに全国の世帯を光ファイバに接続可能にする」という目標の下に、超高速ブロードバンド助成の予算計画が組み直された。現行の計画では、2022年までの中央政府助成金総額は30億EUR、助成対象は地方自治体の主導するプロジェクトとされ、公募によるプロジェクト審査と助成金の交付が進められている。ARCEPは事業者等の投資促進を図る目的で、3か月ごとに国内のFTTH網整備状況を報告するほか、光ファイバ網の整備計画を発表した地域を「ファイバ地域」に認定、加入者回線の光ファイバへの変換を優先的に実施している。無線網からのブロードバンド接続については、移動体通信事業者にはTD-LTE網の構築また固定網の加入者のLTE網接続の受入れが求められている。2023年12月には、2023年9月末までのブロードバンド市場のデータが公開された。同報告では、光ファイバー契約数の伸びが鈍化したことが指摘されている。
日本 デジタル田園都市国家インフラ整備計画 総務省 2022年3月 光ファイバ、5G、データセンター/海底ケーブル等の整備に向けて一体的かつ効果的な対策を推進する目的で策定され、目標では、2027年度末までに光ファイバの世帯カバレッジ99.9%、2023年度末に5Gの人口カバレッジ全国95%、全市区町村に5G基地局整備、2025年度末に全国97%、各都道府県90%程度以上、2030年度末に全国・各都道府県99%を目指す。また、10数か所のデータセンターの地方拠点を5年程度で整備するとともに、海底ケーブルで日本を周回する「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を2025年度末までに完成させる。2023年4月には同計画の改定が行われ、固定ブロードバンド、ワイヤレス・IoTインフラ、データセンター/海底ケーブル、非地上系ネットワーク、Beyond 5G(6G)に対し、インフラ整備等に関する取組みの強化が盛り込まれた。
  • ※KR1
    固有名称の計画名はない。