世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

United States of America 米国のBeyond 5G/6G取り組み動向(最終更新:令和5年度)

政策

米国では、政府が基礎研究や先端技術に投資し、そこで実現される技術を民間企業が市場で展開していくという民間主導のアプローチが6G技術開発でも継続。
その他、政府は、民間企業の活動を促進するため、さらなる周波数の開放、周波数割当ての国際的な協調、標準化手続きへの関与、研究開発の国際連携強化といった取組みに従事。
FCCでは、技術的なアドバイスを行うTechnological Advisory Council(TAC)において、2023年8月、6Gにおける新たな周波数割当の必要性について言及。また、2023年11月には、国家周波数戦略と米国の周波数帯政策の近代化と国家周波数帯戦略の確立に関する大統領覚書を公表。次世代通信(6G)に係る周波数を特定するとしており、NTIA(国家電気通信情報管理庁)は2年以内に該当の周波数の研究を完了することを計画している。

研究開発

米国標準研究所(NIST)は従来から、テラヘルツ帯等での伝搬モデル開発やアンテナシステムの計測研究、ミリ波帯での周波数共用テストベッド構築等の活動を行っている。
全米科学財団(NSF)は、2016年から、1億ドル以上を投資して4つの都市規模テストベッドを産学連携で構築する「先端ワイヤレス研究プラットフォーム(Platforms for Advanced Wireless Research:PAWR)」プログラムを運営。動的周波数共用、プログラム可能なネットワークアーキテクチャの開発、ミリ波帯の活用、画期的な広帯域ワイヤレス・バックホールの活用、ネットワーク測定機能の強化といった研究をサポートしている。
また、NSFは、2021年4月から、NIST、国防総省、民間9社(Apple、Ericsson、Google、IBM、Intel、Microsoft、Nokia、Qualcomm、VMware)と共同で研究プログラムをサポートする「レジリエントかつインテリジェントな次世代システム(Resilient and Intelligent Next-Generation Systems;RINGS)」プログラムを開始。2022年4月には研究テーマ37件を選定、総額4,350万ドルを投資すると発表した。
国防総省は、国内12か所以上の軍事施設16地点で、世界最大規模となるデュアルユース・アプリケーション向け5G実験とテスト及び高度プロトタイピングを行っている。2020年10月には5か所の基地で総額6億ドルの契約を交付。軍産官学で、動的周波数共用、AR/VR訓練、スマート倉庫といった機能向上に取り組んでいる。
また、国防総省は、2022年9月にノースイースタン大学ワイヤレスIoT研究所が立ち上げた、6Gに焦点を当てる産学協力センター「Open6G」も支援している。
その他、AT&T等がテキサス大学と協力する「6G@UT」といった産学連携の取組みも活発。

市場形成

米国標準化団体の電気通信産業ソリューションズ連合(ATIS)主導で2020年10月に立ち上げられた「Next G Alliance」には、オペレーター、機器ベンダー、テクノロジー企業、学術機関、政府、研究機関等の80者以上から600名以上の専門家が参加。6Gロードマップ作成や、政策及び政府研究投資の国家的優先事項策定、次世代技術の迅速な商用化を促進する戦略策定等を行っている。2023年1月~12月の1年間で15本のホワイトペーパーをリリースしている。

また、米国とEUの貿易技術評議会(U.S.-E.U. Trade and Technology Council(TTC))における6Gの研究開発に係る両国の協力についてコミットメントを受け、2024年1月に、NGAと欧州のSmart Networks and Services Joint Undertaking(SNS JU)/6G-IAが共同で、「EU-US Beyond 5G/6G Roadmap」を公開。