世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

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電子政府政策

電子政府政策

(2024年1月調査)

名称 政府監督機関 発表時期 主要政策概要
米国 第4代連邦最高情報責任者(連邦CIO)の任命 大統領府 2018年1月 オバマ大統領(当時)は、2009年3月、行政予算管理局電子政府局の局長を連邦最高情報責任者(CIO)とし、ビベック・クンドラ氏を指名した。連邦CIOは、連邦政府内システムの相互運用性や情報共有の確保、情報セキュリティとプライバシー確保のため、エンタープライズ・アーキテクチャの構築、監督も行う。
トニー・スコット氏が政権交代に伴い辞任した後、1年間空席が続いていたが、2018年1月にスゼット・ケント氏が第4代連邦CIOに指名されたものの、2020年7月に辞任した。政権交代後、バイデン大統領は、2021年3月にクレア・マルトラマ氏を連邦CIOに任命した。クレア・マルトラマ氏は、2022年6月、連邦IT運用計画を発表した。電子政府法制定20周年を迎える中、今現在もなお直面する諸課題の解決に向けて、情報技術監督改革(ITOR)口座、技術近代化基金(TMF)、連邦市民サービス基金(FCSF)の資金を基に、サイバーセキュリティ、IT現代化、デジタルファーストのサービス体験、データの戦略資産的活用の4つの分野を優先事項とした資金配分を行う。
中国 「インターネットプラス行政サービス」の一層の深化・行政サービス「ワンネット、ワンドア、ワンス」改革推進の実施方案 国務院 2018年6月 ワンネットは「一つのネットで手続完了」、ワンドアは「一つのドアだけを開けばよい」、ワンスは「足を運ぶのは最大1回」をそれぞれ意味し、行政手続を「ネットショッピング」のように簡便に実現することを目指す。2019年末までの目標では、重点分野と利用頻度の高い事項は、「ワンネット、ワンドア、ワンス」を基本的に実現する。「ワンネット」について、省級行政サービスのオンライン手続可能率を90%以上、市・県級行政サービスの同比率を70%以上とする。「ワンドア」については、場所に特殊な要請がある項目以外は、総合実体行政ロビーへの編入を基本的に実現、70%以上の行政サービスについて「ワン窓口」受付を実現する。「ワンス」については、窓口手続に必要な資料を60%以上削減し、省・市・県各級において利用頻度の高い100項目で「ワンス」を実現する。
デジタル政府建設の強化に関する指導意見 国務院 2022年6月 2022年6月に国務院によって公表された、デジタル政府建設の強化に関する指導意見では、2025年までに、政府による職責履行のデジタル化、インテリジェント化レベルが著しく向上し、公共サービスの効率化は重要な進展を遂げ、2035年までには、効率的、正確、透明かつ公平なデジタル政府が概ね構築される、との目標が示された。実現に向けての重点任務として、効率の高い政府のデジタル化構築、デジタル政府の安全保障システムの構築、科学的に規範化されたデジタル政府構築の制度・規則体系の構築、オープン共有のデータ資源システムの構築、プラットフォーム・システムの構築、デジタル政府の構築によるデジタル化の発展等7項目が挙げられている。この国務院指導意見を踏まえ、9月に民政部実施計画が策定され、「インターネット+監督」の推進等や各種社会サービスの利便性向上、デジタル改革による政府機能の変革の促進等が掲げられた。
韓国 デジタル・プラットフォーム政府 行政安全部 2022年9月 2022年9月、すべてのデータが一つにつながるデジタル・プラットフォーム上で、国民・企業・政府が共に社会問題を解決し、新たな価値を創出する「デジタル・プラットフォーム政府」実現に向けて、大統領直属の官民有識者で構成するデジタル・プラットフォーム政府委員会が立ち上げられた。2023年4月には委員会立ち上げ後の初の報告会が実施され、本施策での最初の取り組みとして、IDひとつで関連サービスを全て確認できるよう、税金・年金関係の情報を統合すると発表された。また2026年までに現存の1500以上の行政サービスの連携・統合を終了させるとしている。さらに、中央省庁で提供する1000件以上もの各種サービスや特典について、個々人の状況に合わせ受けられる各種サービスをAIが教える「特典アラート」サービスを開始する。
EU デジタル単一市場戦略 欧州委員会 2015年5月 「デジタル単一市場戦略」では、重要アクションの一つに電子政府のアクションが挙げられており、2016年4月には前アクションの後継となる「電子政府アクションプラン2016~2020」が欧州委員会によって公表され、各種プロジェクトが実行されている。2019年には公的オンライン・サービスのセキュリティと透明性の強化、国境を越えた利用可能性の増大が今後の主要課題とされ、各国政府は社会的・経済的に有用な公的データに誰もが無料でアクセスし、マシンで読み込める形式で入手可能とする高価値データベースを設定すべきとされた。
デジタルの10年 欧州委員会 2021年3月 欧州委員会は、2021年3月、2030年までのデジタル経済の発展と欧州企業の変革に向けた「デジタルの10年」政策プログラムを発表した。電子政府に関連する内容として、公共サービスのデジタル化について、①主要公共サービスの100%デジタル化、②医療記録の100%オンラインアクセス化、③デジタルID100%付与、という定量的な目標が掲げられた。欧州議会は2022年11月14日に、EU理事会も2022年12月8日に同プログラムを承認し、成立した。2023年9月、「デジタルの10年」の進捗状況に関する第1次報告が行われた。
英国 政府デジタルサービス戦略 内閣府 2021年5月 政府全体のデジタル・サービス改革推進の推進役である内閣府Government Digital Service(GDS)は、2021年5月、2021年から2024年にかけての戦略を発表し、①公共部門の情報ウェブサイト「GOV.UK」の強化、②複数の部門を横断するサービス連携、③誰もが使えるシンプルなデジタルIDの実現、④共通ツールと専門家サービスの提供、⑤部門を超えたデータの統合の提供という五つの目的を掲げた。2023年6月には、GOV.UKの成長戦略が発表され、GOV.UKアプリの開発、新規技術の試験的導入、ソーシャルチャンネルの強化など、2025年までに実施する優先事項が掲げられた。
デジタルの未来に向けた変革:デジタルとデータに関する政府の2022年から25年までのロードマップ 内閣府 2022年6月 2022年6月、内閣府は、デジタル・データ変革のロードマップである「デジタルの未来に向けた変革」を発表した。より効率的な電子政府を2025年までに実現すべく、①公共サービスの変革、②GOV.UKOneLogin、③意思決定を後押しするためのデータ改善、④効果的・安全・持続可能なテクノロジー、⑤デジタルスキルの拡大、⑥DXを実現するシステム、という6つの政府横断的なミッションの達成を目標に掲げる。進捗状況は6カ月ごとに報告される。2023年2月には、それまでの主な活動実績が報告された。2023年10月には、ロードマップのミッションの更新が報告された。
ドイツ デジタル覚醒への道標:新デジタル戦略 連邦デジタル・交通省 2022年8月 2022年8月、連邦政府は、デジタル覚醒への道標として、ドイツをデジタルで発展させることを目的とした新たなデジタル戦略を発表した。この戦略では、2030年までのデジタル技術による進歩の目標像を提示している。EUの計画(「欧州のデジタル10年:2030年のデジタル目標」)に沿って3分野(「ネットワーク化されたデジタル主権社会」「革新的な経済、労働、科学と研究」「学習者、デジタル国家」)での目標が設定されている。デジタル戦略の進捗については、連邦デジタル・交通省(BMDV)を中心にモニタリングしていくこととしている。2022年11月、BMDVは、モニタリングのために、ビジネス、科学、市民社会からの代表者19名で構成されるドイツ・デジタル戦略諮問委員会の設置等を発表した。
フランス 国家デジタル化計画 首相府 2015年6月 2015年6月の「国家デジタル化計画」では、「デジタル・サービス提供モデルとしての国家」が主目標の一つに挙げられた。2016年10月の「デジタル共和国法」発効後、公共データの公開が進み、2022年現在、首相府の司るオープン・プラットフォーム「https://www.data.gouv.fr」上で、11の行政分野に関する各種政府データの閲覧が可能になっている。
フランスデジタル共同 首相府 2023年5月 デジタル移行および電気通信担当大臣のジャン=ノエル・バロー氏は、2023年5月、フランスのデジタルインクルージョンに関する新たなロードマップ「フランスデジタル共同」を発表した。ロードマップでは①デジタルインクルージョン政策の地域化、②デジタルスキルの育成、③専門分野の構造化と教育の改善、④ワンスオンリーに基づくデータ共有と政策適応の4点が主要な軸に設定される。2024年6月までにロードマップの正式化が見込まれる。
日本 デジタル社会の実現に向けた重点計画 デジタル庁 2023年6月 2023年6月、デジタル庁発足に伴い、デジタル社会実現に向けた羅針盤としての重点計画がまとめられた。重点計画では行政サービスのオンライン化実施の3原則として、①デジタルファースト、②ワンスオンリー、③コネクテッド・ワンストップの実現を目指す。デジタルファースト原則では、スマートフォンで行政手続が完結する形のペーパーレス化を目指す。