世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

United States of America 米国のLocal 5G(最終更新:令和2年度)

1. L5G制度の現状

米国の周波数免許は公衆網でも自営網でも利用可能な地域免許として割り当てられるが、本稿では、日本のローカル5Gに類似する制度として市民ブロードバンド無線サービス(Citizens Broadband Radio Service:CBRS)を取り上げる。CBRSは既存免許人である政府(海軍レーダー)等が使用している3.5GHz帯(3.55-3.7GHz)を商業利用と共用可能な帯域として新たに配分したもので、企業等はこれをプライベートLTE/5G網の構築に利用することができる1
CBRS帯の利用優先権は、海軍等の既存ユーザー、優先アクセス免許(Priority Access License:PAL)取得者、周波数免許不要の一般権限(General Authorize Access:GAA)ユーザーの順に付与される。これら利用者間の周波数共用は周波数アクセスシステム(Spectrum Access System:SAS)によって実現される。SASは、FCCの商用免許人データベースや海軍レーダーを検知する電波環境検知機能(Environmental Sensing Capability:ESC)システムからの情報に基づいて、電波伝搬等を勘案した干渉計算を行い、海軍レーダーに干渉を与えないよう周波数を動的に割り当てる。2021年3月現在、FCCの認可を取得したSAS管理者は6社(Amdocs、CommScope、Federated Wireless、Google、Sony、Key Bridge)、ESC管理者は4社(CommScope、Federated Wireless、Google、Key Bridge)存在する。

2. L5Gの実装状況

(1) 現在の市場規模、将来の予測される市場規模

CBRS帯を用いたプライベート5G(以下、CBRS 5Gとする)の市場規模に関するデータは確認できなかった。
ただし、SNS Telecom&ITが2020年12月に発表した調査報告によれば、CBRS無線アクセスネットワーク(RAN)市場は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けずに順調に成長しており、2020年の年間投資額は3億USD超となった2。2020年のCBRS RAN市場の成長を牽引したのはCBRS LTEであったが、2021年以降はCBRS 5Gが本格的に展開すると予想される。また、Dell'Oro Groupが2021年2月に発表した予測調査によると、2020年から2025年までのCBRS RAN市場全体への累積投資額は20億USDに迫り、世界のRAN市場全体に対する累積投資額の約1%を占める見込みである3。CBRS RAN市場の総収入は2020年から2025年の間に3倍以上増加すると予測されている。

(2) L5G振興に係る政府施策

CBRS 5Gの実装や実用化に対して政府が直接資金提供をするような施策は存在しない。
ただし、5G全体を促進する政策は、トランプ前大統領が2018年10月に「米国の未来のための持続可能な周波数戦略の開発に関する大統領覚書(Presidential Memorandum on Developing a Sustainable Spectrum Strategy for America's Future)4」に署名したことで本格化した。同覚書は連邦省庁に対して未使用周波数を民間セクターに提供するための国家周波数戦略を策定するよう指示する内容で、トランプ前政権が当初検討していた国営5G網構築から民間主導での5G網構築へと舵を切ったことを印象付けるものだった。その後、2019年4月に「米国が5Gに係る世界的な競争で勝利する」ための行動計画が発表され、政府が、減税や規制緩和措置による5G投資促進、5G周波数の追加確保、効率的な周波数管理、通信セキュリティの確保、農村地域のデジタル化支援等に取り組んでいくことが明らかにされた5。5G競争で競合する中国や韓国が国主導の5G施策を展開するのに対し、米国では、民間主導の5G投資を原則としながら、適宜、国が支援措置を講じるという方針が示された。
トランプ前政権の行動計画を受け、電気通信分野における独立規制機関である連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)は同年同月、①インフラ政策の刷新、②規制の近代化、③5G周波数の追加確保を支柱とする「5Gファースト計画(Facilitate America's Superiority in 5G Technology Plan:5G FAST Plan)6」を発表した。また、農村部デジタル機会基金(Rural Digital Opportunity Fund:RDOF)や米国農村5G基金(5G Fund for Rural America)といった5G関連基金を創設する動きも進められた7。2020年2月に創設されたRDOFは、農村部で下り25Mbps/上り3Mbps以上のブロードバンドサービスを提供する事業者に総額204億USDを交付するもので、2段階のリバースオークションで補助金受給者を決定する。一方、米国農村5G基金は農村部の5G環境整備に最大90億USDを支給するもので、2020年10月に設立された。
2021年1月に発足したバイデン新政権は具体的な5G促進政策を発表していないが、商務省国家電気通信情報庁(National Telecommunications and Information Administration:NTIA)のエブリン・レマリー長官代行が3月に明らかにしたところによると、バイデン政権はトランプ前政権の5G政策を基盤としながら政策立案を進めているところであるという8。政策の柱の一つとなると予想されるのは科学技術分野への投資拡大で、大統領選挙中から「Innovate in America」と称して5Gを含む新技術・新産業の研究開発に4年間で総額3,000億USDを投じることを提案していたほか、2021年3月に開催された初の公式記者会見では、対GDP比0.7%にとどまっている科学技術研究開発費を2%程度に引き上げる方針が明らかされた9。また、記者会見の数日後に、科学技術研究開発に1,800億USDを投資する計画が発表されている10
他方、政府関係機関による主な5G実証試験プログラムとしては、全米科学財団(National Science Foundation:NSF)が5G研究開発のオープンテストベッドを提供する「高度無線研究プラットフォーム(Platforms for Advanced Wireless Research:PAWR)プログラム」がある。PAWRプログラムは複数の研究者が共用できる都市規模の無線通信テストベッドを構築する目的で開始されたもので、2021年3月現在、ユタ州ソルトレイクシティ、ニューヨーク州ニューヨークシティ、ノースキャロライナ州リサーチトライアングル地区の3か所にPAWRが建設されている11。4番目となる最後のPAWR候補としては、アイオワ州立大学と同州エイムス市が主導するARA(Agriculture and Rural Communities):Wireless Living Lab for Smart and Connected Rural Communitiesとネブラスカ大学リンカーン校とリンカーン市が主導するNEXTT(Nebraska Experimental Testbed of Things)の二つがあるが、2021年内にどちらかが選出される予定である。
また、米国の場合、国防総省が5G研究開発を進めている点も特筆される。同省は米軍基地内に軍・産業界・学術界が5G実験を共同実施するためのテストベッドを開設する取り組みを進めており、2019年10月に4基地(ワシントン州ルイス・マコード統合基地、ユタ州ヒル空軍基地、カリフォルニア州サンディエゴ海軍基地、ジョージア州アルバニー海兵隊兵站基地)、2020年5月に1基地(ネバダ州ネリス空軍基地)、2020年6月に7基地(バージニア州ノーフォーク海軍基地、ハワイ州パールハーバー・ヒッカム統合基地、テキサス州サンアントニオ統合基地、カリフォルニア州フォート・アーウィン国立トレーニングセンター、テキサス州フォート・フッド陸軍基地、カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン海兵隊基地、オクラホマ州ティンカー空軍基地)を5G実験施設に指定した。また、2020年10月には、「5G to Next-Gイニシアチブ12」として、5基地(ワシントン州ルイス・マコード統合基地、ユタ州ヒル空軍基地、カリフォルニア州サンディエゴ海軍基地、ジョージア州アルバニー海兵隊兵站基地、ネバダ州ネリス空軍基地)で実施する5G実験に6億USDを提供することを決定した。これらの米軍基地では、動的周波数共用(Dynamic Spectrum Sharing:DSS)技術、AR/VR、スマートウェアハウス等の実証実験が実施されている。このような取り組みは2020年5月に発表された「国防総省5G戦略(Department of Defense 5G Strategy)13」の一環として進められている。同戦略は「2020年度国防授権法(National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2020)」第254条を根拠に策定されたもので、5Gを地政学的な観点から積極的に開発すべき重要な戦略的技術と位置付けている。

(3) L5Gサービス提供主体

企業等がプライベート5G網を構築するためにCBRS帯を利用する場合、PALを取得するか、周波数免許不要のGAAユーザーとしてSASに登録する必要がある。GAAユーザーによるCBRS帯の商用展開は2020年1月に承認され、PALについては2020年7月23日から8月25日にかけてオークション(オークション番号105)が実施された14。2万625件のPALが合計228事業者によって落札され、オークション収益は45億8,566万3,345USDに達した。

主なPAL取得者(落札総額上位5社)
PAL取得者 落札総額
Verizon Wireless Network Procurement LP 18億9,379万1,991USD
Wetterhorn Wireless LLC 9億1,293万9,410 USD
Spectrum Wireless Holdings, LLC 4億6,425万1,209 USD
XF Wireless Investment, LLC 4億5,872万5,900 USD
Cox Communications, Inc. 2億1,280万5,412 USD
主なPAL取得者(取得免許総数上位5社)
PAL取得者 落札免許数
Wetterhorn Wireless LLC 5,492件
SAL Spectrum, LLC 1,569件
AMG Technology Investment Group, LLC 1,072件
Windstream Services LLC, Debtor-in-Possession 1,014件
XF Wireless Investment, LLC 830件

出所:FCC報道発表15

PAL取得者やGAAユーザーのうちCBRS 5Gを提供している、あるいは提供する可能性がある主体は以下のように整理される。

CBRS 5Gの提供・導入(見込み)事例
提供主体 導入主体 概要
Federated Wireless(通信事業者) 通信事業者兼SAS/ ESC管理者であるFederated Wirelessは、Microsoft Azure Marketplace上でCaaS(Connectivity as a Service)としてCBRS LTE/5Gを提供している。
Shentel(通信事業者) 262件のPALを保有する通信事業者Shentel は、バージニア州、ウェストバージニア州、オハイオ州の一部でCBRS帯と2.5GHz帯を組み合わせた5G対応固定無線アクセス(Fixed Wireless Access:FWA)サービス「Beam Internet」を提供している。サービスの利用には屋外アンテナの設置が必要で、最大2台までの屋内 Wi-Fi中継機が付属する。
Nextlink Internet(通信事業者) 1,072件のPALを保有する通信事業者Nextlink Internet は、CBRS帯とNokiaの「AirScale 4G LTE RAN」を使用してコロラド州、アイダホ州、イリノイ州を含む11州のルーラル地域でブロードバンドサービスを提供する計画である。AirScale 4G LTE RANは5Gにも対応している。
Geoverse(通信事業者) 1,569件のPALを保有する通信事業者Geoverseは、Communication Technology Serviceと連携してポータブル型CBRS LTE/5Gを提供しているほか、CBRS帯と600/700MHz帯を組み合わせて産業用プライベートLTE/5Gを提供している。
Geoverse(通信事業者) 7 Cedars Casino(宿泊・カジノ施設) 宿泊・カジノ施設である7 Cedars Casinoは、1,569件のPALを保有する通信事業者Geoverseが提供するCBRS LTEを施設内に導入しており、これをCBRS 5Gにアップグレートすることも視野に入れている。7 Cedars Casinoはワシントン州スクイム湾ふもとの盆地に立地し無線基地局よりも低地に位置するため、電波受信環境が悪く、ネットワーク接続が不安定な状態が続いていたことから、CBRS LTE導入を決めたという。
Boingo Wireless(無線LAN接続サービス事業者) ダラス・ラブフィールド空港 テキサス州のダラス・ラブフィールド空港は、無線LAN接続サービス事業者Boingo Wirelessが提供するCBRS LTEを港内に導入しており、これをCBRS 5Gにアップグレートすることも視野に入れている。同空港は、CBRS LTEによりネットワークの安全性や運用効率性が向上し、旅行者に安全でシームレスな体験を提供できるようになったとしている。
John Deere(農業機械メーカー) John Deere(農業機械メーカー) イリノイ州とアイオワ州の五つの郡でPALを保有する農業機器大手John Deereは、各郡に立地する同社工場にCBRS 5Gを導入する計画である。導入は2022会計年度中に完了する予定である。同社は、CBRS 5Gで工場をスマート化することで、製造プロセス改善や効率性向上が実現できるとしている。
JMA Wireless(通信技術プロバイダー) アリゾナ州ツーソン市 アリゾナ州ツーソン市は新型コロナ禍における遠隔教育とテレワークの支援、及びスマートシティ化の推進という二つの目的から、通信事業者JMA Wirelessが提供するCBRS LTEを導入しており、これをCBRS 5Gにアップグレートすることも視野に入れている。CBRS LTEは、まずはデジタルデバイドの影響を最も受けている5,000世帯にパブリックインターネットアクセスを提供するために利用され、その後サービス提供エリアを順次拡大して、IoTを含むスマートシティ技術に活用する予定である。
Crown Castle International(不動産投資信託) Rudin Management Company(不動産会社) 不動産投資信託Crown Castle InternationalがGAAユーザーとして、ニューヨーク市パークアベニューに立地するRudin Management Company所有の高層ビル内にCBRS 5Gを導入する予定である。CBRS 5Gはスマートビルディング管理(屋内空調、住民の出入り、エレベーターの監視等)に利用し、エネルギー効率の改善やフロア占有率のデータ管理を行う。
ネバダ州ラスベガス市 ネバダ州ラスベガス市 ネバダ州ラスベガス市はスマートシティ・プロジェクトの一環として自らCBRS 5Gを導入することを計画している。CBRS 5Gは、スマートシティ技術の試験サイトであるイノベーション地区(Innovation District)やスマートシティ関連企業のテクノロジーハブであるラスベガス国際イノベーションセンター(IIC@V)で実施されるプロジェクトや実証実験を支援するために利用される。
JBG SMITH(不動産投資信託) JBG SMITH(不動産投資信託) バージニア州アーリントン郡で4件のPAL、アレクサンドリア市で3件のPALを保有する不動産投資信託JBG SMITHは、Amazon.comの第2本社建設で再開発が進められているナショナル・ランディング地区にCBRS 5Gを導入する計画である。JBG SMITHは地区内に1,620万平方フィートのオフィススペースと2,850ユニットの集合住宅スペースを所有している。
バージニア工科大学 バージニア工科大学 メリーランド州モンゴメリー郡とバージニア州クレイグ郡でそれぞれ4件のPALを保有するバージニア工科大学は、キャンパス内にCBRS LTE/5Gを導入する予定である。大学はCBRS LTE/5Gが遠隔医療、スマート農業、公共安全といった分野の研究を支援するとしている。
United Parcel Service(貨物運送業者) United Parcel Service(貨物運送業者) 貨物運送大手United Parcel Serviceはモンタナ州ビリングスの配送センターにCBRS帯と900MHz帯を組み合わせたプライベートLTEを導入しており、これをプライベート5Gにアップグレートすることも視野に入れている。United Parcel ServiceはGAAユーザーとしてCBRS帯を利用している。
Ericsson(通信機器メーカー) Ericsson(通信機器メーカー) スウェーデンの通信機器大手Ericssonは北米本社があるテキサス州プラノで企業向け5G試験環境を提供しており、その一環としてエリクソン・ビレッジにCBRS 5Gを導入した。エリクソン・ビレッジの湖では、CBRS 5Gを利用したスマートボート実験が実施されている
Federated Wireless(通信事業者) US Ignite(ブロードバンド整備・活用を支援する官民パートナーシップ)、コロラド州フォートカーソン米軍基地 ブロードバンド整備・活用を支援する官民パートナーシップであるUS Igniteは、通信事業者兼SAS/ ESC管理者であるFederated Wirelessが提供するCBRS LTE/5Gをコロラド州フォートカーソン米軍基地に導入する計画である。これはUS Ignite が実施する400万USD規模の「Fort Carson Transportation Testbed」プロジェクトの一環であり、CBRS LTE/5G はIoT 研究専用網として利用される。CBRS LTE/5Gは、まずは施設内を周回する自動運転シャトル「Mountain Express」の車両データや走行ルートを監視カメラ映像からアップロードするために使用され、将来的にはより幅広いIoT研究に用いる予定であるという。なお、CBRS LTE/5G導入にあたっては、ネットワーク設計事業者Tilsonと通信技術プロバイダーJMA Wirelessもパートナーとして協力している。
Federated Wireless(通信事業者) ジョージア州アルバニー海兵隊兵站基地 ジョージア州アルバニー海兵隊兵站基地は、国防総省「5G to Next-Gイニシアチブ」の一環として、同基地にCBRS帯とミリ波帯を用いたプライベート5Gを導入した。同基地は国防総省が5Gテストベッドに指定している米軍基地のうちの一つで、プライベート5Gは倉庫ロボティクス、バーコードスキャン、ホログラム、AR/VRアプリケーションといったスマートウェアハウス開発に用いられる。プライベート5G のうちCBRS 5Gは、通信事業者兼SAS/ ESC管理者であるFederated Wirelessが提供している。

(4) L5Gサービス導入主体(ユーザー企業)、導入主体数

CBRS 5Gを導入している、あるいは導入する可能性がある主体は前項の表のように整理される。導入主体数を確認することはできなかったが、TECHanalysis Researchが2020年6月に米国を拠点とする中小企業(従業員数100〜999人)及び大企業(従業員数1,000人以上)のIT意思決定者607人を対象に実施した調査によれば、回答者の53%が CBRS 5Gを含むプライベート5Gの導入を計画している16。TECHanalysis Researchは、プライベート5GはWi-FiやプライベートLTEの代替ではなく、それらを強化するものとして捉えられていると分析している。

(5) システム件数や契約件数等のユーザーのL5Gの利用状況・普及状況

CBRS 5Gの利用状況や普及状況に関するデータは確認できなかった。同サービスの運用は開始されたばかりであり、現時点の普及は限定的であると考えられるが、様々なユースケースが考案されていることに鑑みると、その利用率や普及率は今後増加することが予想される。
例えば、ケーブル大手Charter Communicationsのトム・ラトレッジ会長兼CEOは2020年度第4四半期の投資家向けカンファレンスで、2025年頃までにCBRS帯がMVNOトラフィックの3分の1を伝送することになるとの予想を示した17。Charter Communicationsは2018年6月からVerizonのネットワークを使ってMVNOサービスを提供しているが、CBRS帯オークションで獲得した21件のPALを活用してトラフィックの大部分をCBRS帯に移動させれば、ネットワーク利用料を大幅に削減できるとしている。
また、米国エネルギー協会(U.S. Energy Association:USEA)は電力セクターにおけるプライベートLTE/5Gの導入に関心を示してい18 。プライベート網は送電網のセキュリティ向上や分散型エネルギー資源の統合に資すると考えられており、CBRS帯だけでなく、2.4GHz帯、600MHz帯、900MHz帯の活用も模索されているところである。

(6) L5Gを活用した主なサービス・アプリケーションの例や主な提供事業者

音声起動通信及び自動化ソリューションを開発する新興企業Orion Labsが通信事業者Geoverseと提携して、CBRS 5Gを活用した音声通信ソリューションを提供している19。具体的には、暗号化されたプッシュ・ツー・トーク、Webディスパッチ、屋内測位サービス、AIによる言語翻訳や安全性アラートを提供している。

(7) L5G普及促進に向けた主体の有無

CBRS帯での3GPP技術運用を促進することを目的に、移動通信事業者、ベンダー、サービスプロバイダー、SAS/ESC管理者等で構成される業界団体として、2016年にCBRS Allianceが創設された。2021年には、CBRS帯にとどまらない、より広範な周波数共用の促進に取り組んでいくとして、OnGo Allianceに改称された。同団体はCBRS機器及び認証プログラムのために「OnGo」ブランドを設立しており、2021年3月現在、183社が参画している。

(8) L5Gシステムの導入価格(NW設備・構築、L5Gアプリケーション費用など)

CBRS Alliance(現OnGo Alliance)が2018年6月に白書「The total cost of ownership for fixed OnGo in the 3.5 GHz CBRS band」を発表し、その中でFWAを利用した場合の導入コストを、WISP(加入契約モデル)、病院(施設モデル)、エンタープライズ(施設及び固定IoTモデル)のケースごとに示している20
また、2019年1月には、モバイルデータ分野の経営コンサルティング企業であるBesen GroupがCBRS導入にかかる総保有コスト(Total Cost of Ownership:TCO)を算出できるビジネスモデル設計ツールを発表した21。同ツールはバーティカル産業を対象としたもので、平均して1万平方フィートにつき屋外スモールセル1台が必要になると推計している。初期投資については以下のように見積もっている。

  • 屋内スモールセルは1台約500USD、屋外スモールセルは1台約2,000USD
  • 屋外スモールセル設置コストは約400USD
  • PoE(Power over Ethernet)とスイッチングにかかるコストは約100USD
  • 各ノードに必要なそのほか材料(materials)にかかるコストは約150USD
  • ネットワーク設計コストは約300USD

運用コストとしてはSAS利用料がある。SAS利用料はスモールセル設置台数等により異なる可能性があるが、SAS年間利用料は屋内スモールセル1台あたり約5USD、屋外スモールセル1台あたり約20USDと見積られている。