世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

French Republic フランスのLocal 5G(最終更新:令和2年度)

1. L5G制度の現状

フランスでは2020年末に5Gの商用化を開始し、大手通信事業者4社のBouygues Telecom、Free Mobile、Orange及びSFRは、既存周波数(700MHz、2.1GHz)及び新規で割り当てられた周波数(3.6MHz帯)を活用し5Gの展開を進めている。
ローカル5Gについては、①通信事業者に割り当てられた3.6MHz帯、②26GHz帯の5G実証プラットフォーム、③企業向けの2.6GHz帯TDD周波数(プライベート4G・5G)により、ローカル5G、すなわち産業向け5Gの環境が整備されている。

  • 2020年に行われた3.6GHz帯の5G周波数オークションに際して、フランス政府は規制当局のARCEPを通じて、オークションの目標を明確し、通信事業者はバーティカル産業のニーズ(機関)に対して金銭的・営業上に適した5Gサービスを提供するべきであるとしている1
  • 26GHz帯では、2019年から5G実証プラットフォームによる実験が行われており、実証試験から生み出されたユースケースをもとに、ローカル5Gに相当するバーティカル産業が構築されることが期待されている。2019年1月、フランス政府とARCEPは26GHz帯のオープン5G実証プラットフォームの構成を呼びかけ、同年10月に11プロジェクトが選定された。実証は、従来の通信事業者の他、バーティカル産業の事業者及びコンソーシアムが参加し、実証期間は最大3年間までとされる。選定された機関は2021年1月1日までに5G実験ネットワークの運用開始を義務付けられる。
  • フランスでは、2,57〜2.62GHz帯(2.6GHz帯TDD)がバーティカル産業用途に指定されている。既存の産業用途モバイル・ネットワークは低速の2Gがメインである。2.6GHz帯TDDの利用により、4G及び5Gの超高速接続が可能になり、効率性や競争力向上が期待される。

2. L5Gの実装状況

(1) 現在の市場規模、将来の予測される市場規模

26GHz帯5G実証プラットフォームに参加する機関は次の二種類に分類される。

  • 26GHz帯を利用し、実験用のオープンプラットフォーム(小規模に展開された5Gネットワーク)を設置し、これらのプラットフォームを第三者に開放
  • 周波数を問わず新たなユースケース実証に活用(スタートアップ及ぶバーティカル企業等)

フランスにおける26GHz帯5G実証プラットフォームの現状は、以下の表のとおりである。プラットフォーム提供者には、移動体通信事業者、メーカー、教育機関、自治体、政府機関、放送局、鉄道会社、ユーティリティ等を含む。

図表* フランスにおける26GHz帯を使用するオープン5G実験プラットフォーム2
実験場所 実験者 周波数帯
(MHz)
内容
科学産業博物館
  • ユニバーサイエンス
  • ノキア
26500-27300 展示会用のソリューションを試験するもので、5G実験プラットフォームをスタートアップにも開放。
モンティニールブレトヌー国立競輪場
  • サンカンタンアンイブリーヌ
  • ノキア
  • クアルコム
  • フランステレビ
26500-26900 オリンピックの開催に向けて、拡張現実による競技の放送、メディア端末(固定・モバイル)進化の対応、スポーツのメディアへAIの導入等のシナリオの実証。
レンヌ駅
  • オランジュ
  • SNCF
26500-27500 コンシューマー向け5Gホットスポット、ビジネス向けアプリケーション(拡張現実でのトレーニング、リモートメンテナンス、列車制御データの大量処理)の開発。
シャティヨン
  • オランジュ
26500-27500 特定のモビリティ状況でのマルチメディアエクスペリエンスの向上(高解像度4K / 8Kビデオストリーミング、360°拡張現実、仮想現実または複合現実、5Gによるビデオ制作、クラウドでのネットワークゲーム、eスポーツトーナメントなど)。本プラットフォームは消費者向けの用途を開発したい企業や新興企業に開放。
ノザイ
  • アルカテルルーセントインターナショナル
26500-27500 自動ドローンや、コンサート中にユニークな音響体験を生かすソリューション等を実験。
ピュトー
  • パリラデファンス
26500-27300 主要ビジネス地区の非常に密集した都市環境で新しい用途を実験。
リヨンパールデュー駅
  • ブイグテレコム
  • SNCF
26500-26900 旅行者や乗客向けの拡張現実または複合現実におけるビデオチャット、SNCF情報システム(プラットフォームでの列車からの大量の技術データの抽出)等を実験。
サンプリースト
  • ブイグテレコム
26500-26900 光ファイバーインターネットアクセスに加えて、市内の工業地帯の多くの企業を対象とした「B to B」の使用をテスト。VSEおよびSMEの接続性向上で、企業のデジタル化と業界におけるブロードバンドIoTの出現をサポート。
ヴェリジー
  • ブイグテレコム
26500-26900 屋内と屋外の両方で実験ネットワークを導入。5G実験プラットフォームは、サービスを提供またはテストできる第三者に開放。第三者の選択はブイググループの「SmartX 5G」インキュベーターの枠組みの中で実施。
ボルドー
  • ボルドーメトロポール
  • ブイグテレコム
26500-26900 ボルドーメトロポールによって計画された5G実験プラットフォームは、新しいインフラストラクチャを展開する目的で公共照明ネットワークを促進。
ルアーブル
  • グランドポートマリタイムデュアーブル
  • シーメンス
  • EDF
  • ノキア
26500-27300 スマートシーポートプロジェクトとして、ルアーブル港で、港湾および地域産業での5Gアプリケーションを開発・テストできる5G実験プラットフォーム。「スマートグリッド」の管理や電気自動車の充電など、エネルギー分野での用途の他、港湾地域でのロジスティクス業務(コンテナターミナルの業務等)を対象。
アングレーム
  • IP Directions
26500-27300 農村地域に関連する経済モデルを構築する目的で、農村環境で26 GHzサービスをテスト。プラットフォームの開放性を確保するため、サービスプレーヤー(市庁舎、健康、安全、道路インフラプレーヤーなど)は、5G技術により実現可能なリモートサービスを可能な限り展開。
フランコンビル
  • Syrtem
  • オランジュ
  • UNICE
  • SDRF
  • Eurecom
  • TCL
26500-26600 都市環境でのホットスポットや、農村部での固定アクセスなどのための実験プラットフォームで、5Gのさまざまなアプリケーションやユースケースで実験することを目的としたパートナーシップの枠組みの中で、第三者に公開。
ピュトー
  • Icade
  • オランジュ
  • シスコ
26500-26700 屋内モバイル接続と5Gサービスの提供を可能とするための不動産分野における革新的なサービス開発が目的。ビル管理、クリニック向けの遠隔医療サービス、VIP会議室向けのハイエンドサービスなどのために、5Gプラットフォームを第三者に開放。

(2) L5G振興に係る政府施策

ARCEPは、5G実証プラットフォームは第三者に開放することで、主に以下のメリットがあるとしている。

  • 26GHz帯の使用が最大3年間認められる。
  • 規制サンドボックスにより、通常の規制の枠組みが一部緩和され、実証事業参加機関は革新的なサービスを実証できる。

規制サンドボックスは、具体的にフランスデジタル共和国法を根拠として2016年に導入された(CPCEの第L.42-1条IV項及び第44条IV項)。制度活用企業には最大2年間、周波数・番号の利用及びネットワーク・オペレータのステータスに関連する義務が全てまたは一部免除される。免除は、商用サービスの実証にも適用されるが、サービスのユーザー数及び売上高について次の制限がある。

  • 半年間の売上が税抜き50万ユーロ未満
  • 技術及びサービスのユーザー数が5千人未満3

ARCEPは上述の規制サンドボックスに加え、2018年に開始した3.4〜3.8GHz、26GHz帯の5Gパイロット・デスク(実証)及びFrench Tech Centralのインキュベーター・ステーションStation Fにおけるスタートアップ企業等への案内を通じて、5G導入に向けた準備を並行している。

(3) L5Gサービス提供主体

フランス大手通信事業者による法人向け(BtoB)5Gサービスのユースケースは現時点ではまだ把握できるものが無い。参考として、2.6GHz帯TDDにおけるARCEPからの免許付与は、下記の手順で行われる。
周波数を利用したい事業者は、ARCEPに関心表明書を送る。受領後ARCEPは、ホームページにリクエストの主な情報を含む要約シートを2か月間公開し、この期間内に同エリアにおいて同帯域の周波数を利用したい他事業者がある場合、当該事業者はARCEPに関心表明書を送る必要がある。最初の関心表明書の開示の2か月後、ARCEPは受領した全ての関心表明書に基づき、要求された周波数量を評価する。

  • 全ての当該エリアにおいて、要求された周波数が利用可能な周波数量を下回る場合、ARCEPは非適合性がないことを関係者に通知し、結果が発表されてから1か月内に周波数割当のリクエストをARCEPに送ることが可能。
  • 当該エリアの少なくとも1か所において、要求された周波数が利用可能な周波数量を上回る場合、ARCEPは非適合性を関係者に通知し、当該事業者が要求する周波数量やエリアの広さを再検討できるように、3か月(最長6か月)の検討時間を設ける。

再検討後、要求された周波数が利用可能な周波数量を下回れば、ARCEPは周波数を割り当て、結果を発表する。又は、ARCEPは郵便・電子通信法典(CPCE)L.42-2条に基づき、新しい選考のプロセスを実施する4

(4) L5Gサービス導入主体(ユーザー企業)、導入主体数

ARCEPのホームページによると、2.6GHz帯TDDの利用が承認されたリクエストは以下のとおり5。(2021年4月現在)

場所 事業者 免許期間(年) 帯域幅(MHz) 用途
ノザイ アルカテルルーセントインターナショナル 4 40 企業エコシステムの統合及び試験ネットワーク展開
サン・デニ SNCF Reseaux 10 20 鉄道の安全性及び整備・監視関連サービス
イシー・レ・ムリノー Transdev Group Innovation 4 20 自動運転サービス商用化に向けた4G LTE TDD実証事業継続
シャルルドゴール国際空港
オルリー空港
ル・ブールジェ空港
Hub One 10
  • 40 (シャルルドゴール、オルリー)
  • 20(ル・ブールジェ)
空港専用モバイル・ネットワーク

(5) システム件数や契約件数等のユーザーのL5Gの利用状況・普及状況

現在4事業者が2,6GHz帯TDDの企業向け専用周波数を割り当てられているが、その中には実証用途も含まれている。Hub Oneの空港専用モバイル・ネットワークは12万人からの利用が想定されている。また、申請が処理段階の企業数は5社である。

(6) L5Gを活用した主なサービス・アプリケーションの例や主な提供事業者

① スマート工場

2020年11月からオランジュと電子機器メーカーLacroixがスマート工場の5G実証事業を進めている6。ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏にある同工場では試験用周波数である2.6GHz帯を利用して、屋内5Gネットワークを構築し、モジュラー生産、予知管理、エネルギー向上管理など様々なユースケースのテスト実施を計画している。 オランジュは、同工場のプライベート網に、エリクソン製の屋内用Radio Dotシステム及び仮想化コアネットワークを採用し、工業用アプリケーションの中でも特に、航空分野の電子カードなどの部品製造にとって重要となる、温度や液体比重のモニター用のセンサー接続において5Gが威力を発揮するとしている。オランジュは同プロジェクトを「未来の工場への窓」と称し、法人顧客に対してLacroix工場への視察を歓迎するとしている。同工場の正式な操業開始は2021年後半になる見込みである。

② スマート空港

2020年7月にエリクソンは、空港運営会社ADPグループおよび企業向けデジタルサービス子会社Hub One、そしてエールフランス航空から、パリ地域の3空港、シャルルドゴール国際空港、オルリー空港、ル・ブールジェ空港をカバーするプライベートモバイル網構築事業を受注したことを発表した。Hub Oneは、ARCEPから2.6GHz帯TDDの10年間の4/5G免許を付与され、エリクソンはこのスマート・エアポート・プロジェクトに関して実験段階から参加。パリ地域の3空港で、毎日勤務する12万人以上のための業務用エコシステムを同4/5Gネットワークは支えることとなる。ADPグループとエールフランスに代わって同ネットワークの運用管理を担当するのはHub Oneで、エリクソンは、フランスの国家情報システムセキュリテイ庁(ANSSI)による新たなセキュリティ要件を満たすための技術をHub Oneに提供する。空港の屋外スペースでの5Gモバイル網の運用は2020年末から開始し、公共スペースおよびスタッフ専用エリアなどの屋内スペースについては2021年末から利用可能となる見込みである。

(7) L5G普及促進に向けた主体の有無

フランスにおける5G全体の促進は、政府及びARCEP、またはスタートアップ企業向けのFrench Tech Centralによって行われている。

(8) L5Gシステムの導入価格(NW設備・構築、L5Gアプリケーション費用など)

現在、L5Gシステムの導入価格に関する公開情報は見当たらない。