昭和63年版 通信白書(資料編)

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

6-7 各種通信システム

(1)ファクシミリ通信

 ファクシミリ通信については,端末〜端末間で会話形通信を行う一般のファクシミリ通信に加えて,一度ネットワークにファクシミリ信号を蓄積して通信を行うファクシミリ通信網システムが構築されている。この蓄積形通信により,同報通信,再呼等の多彩な機能の提供が可能となるとともに,メディア変換によりコンピューターファクシミリ間の通信も可能となった。
 ファクシミリの標準通信方式に関しては,CCITTがG1,G2,G3,G4機に関する勧告を定めており,郵政省では,CCITT勧告に対応し,G2(54年10月),G3(56年12月),G4(60年3月)機に関する推奨通信方式を告示している。
 なお,CCITTにおいては,テレマティクスに広く適用できるNIC(ニューイメージコミュニケーション)として,カラー化に関する検討が行われている。

 

<3>-6-28表 ファクシミリ装置の分類

 

(2)ビデオテックス通信

 ビデオテックス通信システムは,電気通信回線を利用して文字図形等による豊富な情報を提供するシステムである。

(3)テレテックス通信

 テレテックス通信は,文書作成・編集機能及び通信機能を有する端末装置相互間の文書通信であり,ワードプロセッサに通信機能を付加して行う通信といえる。
 テレックスに比べた主な特徴は,次のとおりである。
[1] 情報の伝送速度が速い(電話網で2,400b/s又は4,800b/s,テレックスは50b/s)。
[2] 使用できる文字数が多い(約7千字)。
[3] 文書体裁が優れている(伝送する文書がページ単位)。

 

<3>-6-29表 ビデオテックス通信方式の種類

 

 郵政省では,58年11月に,CCITTが定めた欧文テレテックスの勧告を基に,日本語文書をも取り扱える日本語テレテックス装置に関する推奨通信方式を告示している。
 さらに,60年3月に,文書情報と画像情報の混在した文書の伝送が可能なミクストモード通信について,CCITT勧告に準拠した推奨通信方式を告示した。

(4)テレライティング

 テレライティングは,電話回線を用い,通話しながら同時に手書きの任意の文字・図形を伝送する新しい通信サービスである。
 テレライティングの特徴は,次のとおりである。
[1] ファクシミリ,テレテックスに比べ,その操作が容易である。
[2] 装置の構成が簡易であり低価格化が期待できる。
[3] 伝送路として加入電話回線が使用できる。
 我が国で発表されている主なテレライティングには,行政用オーディオグラフィー(郵政省),スケッチホン(NTT),レターホン(KDD)があり,このほか,電子黒板のような大型のものも開発されている。郵政省では,60年4月に,テレライティング装置の標準通信方式案を取りまとめている。

(5)電子メール通信

 電子メール通信は,通信網の蓄積,転送機能を利用して,データ,文書,画像等のメッセージ情報を伝達,配布するものであり,しかも同報通信,時刻指定通信,メディア変換等高度な通信処理をも可能とするものである。
 国際的には,CCITTでメッセージ通信システム(MHS)として検討が行われている。
 郵政省では,59年度から電子メール通信方式に関する検討を行っており,60年度10月に,電気通信技術審議会において,CCITTのMHS勧告を基に,パーソナル・コンピュータ用の電子メール通信方式が取りまとめられた。この通信方式は,網経由のメッセージの自動配送に加え,網内のメールボックスの利用も可能なものであり,現在NTTPCコミュニケーションズ等によりサービスが行われている。さらに,電子メール通信網の網間接続のための通信方式及び端末アクセス通信方式が,62年5月に,電気通信技術審議会においてとりまとめられ,同年11月に推奨通信方式として告示された。

(6)パーソナル・コンピュータ通信

 パーソナル・コンピュータは,これまでその多くが単体として使用されてきたが,最近では電気通信網を介して通信端末として利用しようとする動きがある。
 このため,郵政省はパーソナル・コンピュータ通信について検討を行い,59年度に,パーソナル・コンピュータ通信装置推奨通信方式を告示した。
 この通信方式は,OSI(開放型システム相互接続)の概念に準拠してレイヤ5までを規定したものであり,パーソナル・コンピュータ間の通信のみならず,ファクシミリや日本語テレテックス装置,さらに大型コンピュータとの整合性も考慮したものであり,異機種パーソナル・コンピュータ間の通信も可能とした汎用性の高いものである。
 郵政省では,パーソナル・コンピュータ通信の普及,発展を図るため,60年5月に,パーソナル・コンピュータ通信装置の相互接続試験を実施し,参加12社の装置間で相互通信が可能なことを確認した。

(7)画像応答システム(VRS)

 画像応答システム(VRS)は,プッシュホン又はキーパッドから画像センタを呼び出し,広帯域伝送路を介してセンタに蓄積されている各種情報を音声付カラー静止画又は動画でテレビジョン受像機に映し出す画像情報システムである。VRSは,必要な時に必要とする情報を画像センタから得ることができるのが特徴であり,患者に対する食事療法の指導教育など医療分野で実験的に利用されている。

 

<3>-6-30表 画像応答システムの概要

 

(8)テレビ電話

 現在,ISDN時代の有力な新サービスとして,各種機能の充実,経済化等システム全般にわたる技術開発,検討が行われており,64Kb/sで動画と音声を伝送する方式の開発が進められている。

(9)テレビ会議

 テレビ会議は,双方向の映像,音声,ファクシミリ,書画カメラ等の通信手段を利用して,遠隔地間での会議や打合せ等を行うものである。CCITTにおいては,今研究会期(1984-1988年)から,テレコンファレンスの名称で研究が行われている。映像信号の符号化方式については,現在6.3Mb/s,1.5Mb/sのものが実用化されているが,さらに符号圧縮を行う384kb/s,56〜64kb/sのものについても研究開発,国際標準化作業が行われている。
 郵政省では,昭和61年度に,「テレコンファレンスシステムに関する調査研究」を実施し,今後のテレコンファレンスシステムのイメージ,システム構築のための技術開発課題をとりまとめるとともに,これらの成果も踏まえて,CCITTの国際標準化活動に積極的に寄与を行っている。

(10)ディレクトリシステム

 ディレクトリは,「住所氏名録」と一般に訳される。通信分野におけるディレクトリシステムとは,通信対象(人,システム,プログラム,サービス等)に関する情報(通信に関連する各種属性)を蓄積・管理し,対象に関する名前等によりそれらを検策することのできるシステムである。ディレクトリシステムは,名前指定による自動接続,通信相手の認証,同報通信,転送電話,自動メディア変換等に利用することが考えられ,将来のインテリジェントな通信網の構築の基盤となるものである。ディレクトリシステムについては,1988年の勧告化に向けて,CCITTにおいてモデル,認証,サービスの定義,プロトコル等の標準化の作業が行われている。
 郵政省では,ディレクトリシステムの標準化動向及び関連技術・サービスの動向の調査,システム形態,利用イメージの明確化を目的に,62年度から「ディレクトリシステムに関する調査研究会」を開催し,利用形態やシステムの開発導入の課題等について検討を行っている。

(11)ホームバスシステム

 ホームバスシステムは,家庭内に現在ある,または今後導入されるであろう各種情報通信機器〔電話機,家電機器,AV(Audio Visual)機器,セキュリティ関連機器等を含む〕を共通の伝送路に接続して機器相互間を有機的に結びつけ,単に家庭内にとどまることなく,進展する社会の様々な機能と融合して,家庭をネットワークの一部と位置づけて,家庭内外のあらゆる情報をどこからでも,いつでも,だれでもが自由に選択できるシステムである。

 

<3>-6-31図 ホームバスシステムの概念図

 

6-6 データ通信システム に戻る 6-8 その他の技術 に進む