恩給制度は、明治8年4月、佐賀の乱、台湾出兵等を背景に、陸軍軍人を対象として発足し、以来149年の歴史を有する我が国で最も古い年金制度である。主な変遷は次のとおりである。
(1)明治8年(1875年) | 陸軍(4月)及び海軍(8月)について、それぞれ恩給制度発足 |
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(2)明治17年(1884年) | 文官の恩給制度発足 |
(3)大正12年(1923年) | 現行「恩給法」制定(10月1日施行)。公務員種別による個別の恩給制度を整理・統合 |
(4)昭和8年(1933年) | 緊縮財政を背景とする大改正(最短恩給年限の延長等) |
(5)昭和21年(1946年) | 連合国最高司令官の指令により、重症者に係る傷病恩給を除き、旧軍人の恩給廃止(勅令第68号) |
(6)昭和28年(1953年) | 旧軍人の恩給復活(法律第155号) |
(7)昭和34年(1959年) | 国家公務員共済組合法施行。公務員の年金制度は恩給制度から共済年金制度に移行(公共企業体職員は昭和31年、地方公務員は昭和37年に移行) |
※ その他詳細については、別添【恩給年表】参照。
恩給は、公務員が公務のために死亡した場合、公務による傷病のために退職した場合、相当年限忠実に勤務して退職した場合において、国家に身体、生命を捧げて尽くすべき関係にあった、これらの者及びその遺族の生活の支えとして給付される国家補償を基本とする年金制度である。
現在恩給を受けているのは、「共済年金制度移行前に退職した一般文官」及び「旧軍人」並びに「その遺族」となっている。令和5年3月末現在における受給者のうち98.4%は、旧軍人関係である。
恩給の対象となる公務員は、次のとおりである。
扶助料(遺族恩給)が支給される遺族は、公務員の死亡当時、公務員によって生計を維持し又はこれと生計を共にしていた次の者である。この順序で先順位者から後順位者へと受給権が受け継がれる。
恩給は、公務員が一定の年数以上在職して退職した場合に支給される。この一定の年数のことを「最短恩給年限」と呼んでいる。各公務員の最短恩給年限は、次のとおりである。
在職年数は、実際に勤務した年数である「実在職年」と割増し年数である「加算年」を合計したものである。
「加算年」とは、戦地での勤務など、公務員が在職中特殊な勤務に服した場合、その期間の実在職年を割増しして評価するための仮想の在職年である。例えば、戦地での勤務の場合、1月につき最高3月が加算される。
なお、公務のために死亡した場合又は公務による傷病のために死亡した場合には、最短恩給年限に達していなくとも、恩給が支給される。
本人に対する給付 | 受給者数 (千人) |
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普通恩給 | 最短恩給年限以上在職して退職した者
最低保障額
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1 | |
傷病恩給 | 増加恩給 | 公務傷病により、重度の障害を有する者(項症者)
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0.1 |
傷病年金 | 公務傷病により、増加恩給の程度には達しないが、一定程度以上の障害を有する者(款症者)
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0.2 | |
特例傷病恩給 |
昭和16.12.8以後、本邦等で職務に関連する傷病により障害を有する旧軍人等
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0.02 |
遺族に対する給付 | 受給者数 (千人) |
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普通扶助料 | 普通恩給受給者の遺族
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80 |
公務扶助料 | 公務傷病により死亡した者の遺族(戦没者の遺族がその代表例)
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3 |
増加非公死扶助料 | 公務傷病以外の事由により死亡(平病死)した増加恩給受給者の遺族
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4 |
特例扶助料 | 昭和16.12.8以後、本邦等で職務に関連する傷病により死亡した旧軍人等の遺族
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0.2 |
傷病者遺族特別年金 | 平病死した傷病年金又は特例傷病恩給の受給者の遺族
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4 |
受給者数は令和6年度予算人員である。
恩給年額は、原則として、在職年と退職当時の俸給年額の組み合わせで算出される。遺族への給付額は、公務員への給付額の2分の1が原則である。ただし、その算出額が最低保障額に達しない場合には、最低保障額が支給される。
また、増加恩給等の傷病恩給については、障害の程度に応じて一定額が支給される。
上記のほか、加算や加給が付されることがある。
在職年は、実際に勤務した年数である「実在職年」と割増し年数である「加算年」を合計したものである。
「加算年」とは、戦地での勤務など、公務員が在職中特殊な勤務に服した場合、その間の実在職年を割増しして評価するための仮想の在職年である。例えば、戦地での勤務の場合、1月につき最高3月が加算される。(再掲)
恩給年額は、退職当時の俸給年額を基礎として計算するのが基本であるが、退職後の経済変動に対応して恩給の実質価値の維持を図るため、俸給年額を適切に増額している。この増額した俸給年額を「仮定俸給年額」といい、恩給年額計算の基礎としている。
恩給年額が最低保障額に達しない場合には、最低保障額が支給される。これは、社会保障的観点から昭和41年以降順次導入されたものであり、傷病恩給及び傷病者遺族特別年金以外の恩給に適用される。令和5年3月末現在における最低保障額の適用率は、約96%となっている。
恩給年額については、毎年度、国民年金の改定率により改定されることとなっている。ただし、国民年金が引き下げられる場合であっても、恩給は国家補償の性格を尊重する趣旨から引き下げられない仕組みとなっている。
※ 恩給年額の詳細については、別添【恩給年額一覧表(令和6年度)】参照。
恩給の請求は、原則として退職当時の本属庁(公務員の身分、進退に関する行政庁)を経由して、裁定庁(総務省)に必要な請求書類を提出することとなっている。本属庁には履歴書等の勤務に関する原本が備えられているので、請求者が提出した履歴書等の証拠書類に誤りがないかを調査し、証明をしてもらうためである。
履歴書等を添える必要のない扶助料(遺族恩給)の請求は、本属庁を経由せず、直接、裁定庁に請求書類を提出することとなっている。
恩給を受ける権利は、公務員としての一定の勤務期間と退職、死亡、障害などの条件が整うと発生するが、実際に恩給を受けるためには、その権利について総務大臣の確認を受けることが必要となる。この確認をする行為を「恩給の裁定」という。
年金である恩給は、毎年4月、7月、10月及び12月の4期分に分けて、その月の前月分までの分(12月は同月分までの分)を支給している。
なお、各支給月の前月に住民基本台帳ネットワークシステムを利用して受給者の生存確認を行っている。
※ 恩給事務の詳細については、別添【恩給事務の流れ】参照。