第1部 令和6年度の地方財政の状況
2 地方財政の概況
地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動等に係るものがある。
このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門とそれ以外の部門(水道、交通、病院等の公営企業(*)や国民健康保険等の部門)に分け、前者を「普通会計」、後者を「公営事業会計」として区分している。
普通会計決算については、平成23年度から、「通常収支分」(全体の決算額から東日本大震災分を除いたもの)と「東日本大震災分」(東日本大震災に係る復旧・復興事業及び全国防災事業に係るもの)とを区分して整理しており、その概要は以下のとおりである。
(1)令和6年度決算のポイント
令和6年度の地方財政は、物価高や人件費の増、金利の上昇などによる歳出の増加傾向が鮮明になっている。近年の堅調な税収動向等を背景に、地方の債務残高は減少傾向にあるが、社会保障関係費や人件費の増加、物価の上昇による歳出に対する増加圧力の高まりに留意が必要である。
主なポイントとしては、下記のとおりである。
- 人件費(職員給)は、近年の給与改定の影響により、令和5年度、6年度において大きく増加している。(→ア 人件費参照)
- 物価高の影響等により、物件費(*)が増加傾向にある。(→ア 物件費参照)
- 高齢化の進行やこども・子育て政策の強化等の影響により、民生費が増加傾向にある。(→第30図 民生費の性質別内訳の状況(令和6年度)、第31図 民生費の推移参照)
- 地方債で緊急防災・減災事業債や公共施設等適正管理推進事業債等の活用が増加しており、各地方公共団体は防災・減災対策や老朽化対策等の取組を進めている。(→ア 普通建設事業費参照)
- 近年の低金利の影響により、地方債利子は大きく減少してきたが、足下の金利上昇に伴い令和6年度の地方債利子は増加に転じた。(→ウ 公債費参照)
- 企業収益の増等により、法人関係二税などが増加し、地方税収は増加傾向にある。(→(ア)道府県税の収入状況、(イ)市町村税の収入状況参照)
- 健全化判断比率(*)は低下傾向にあり、普通会計が負担すべき借入金残高は減少傾向にあるものの、依然として高い水準にある。(→イ 実質公債費比率、ア 地方債現在高、イ 債務負担行為額、ウ 積立金現在高、エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担、オ 普通会計が負担すべき借入金残高、カ 将来負担比率参照)
(2)決算規模
令和6年度の地方公共団体(47都道府県、1,718市町村、23特別区(*)、1,129一部事務組合(*)、113広域連合(*)(以下一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。)、計3,030団体)の普通会計の純計決算額(*)の状況は、第1表のとおり、歳入120兆2,491億円(前年度116兆6,936億円)、歳出115兆9,823億円(同112兆4,220億円)となっており、前年度と比べると、地方公務員の給与改定や物価高等の影響により歳入・歳出いずれも増加している。
歳入については、国庫支出金(*)が減少したものの、地方税や地方交付税(*)の増加等により、前年度と比べると3.0%増となっている。歳出については、人件費や扶助費(*)の増加等により、前年度と比べると3.2%増となっている。
また、決算規模の推移は第5図のとおりであり、令和2年度において、新型コロナウイルス感染症対策関連経費等の影響により歳入及び歳出は大幅に増加し、令和3年度以降は減少傾向にあったが、令和6年度は地方公務員の給与改定や物価高等の影響により増加に転じた。
決算額の状況を団体区分別にみると、第2表のとおりである。都道府県の歳入及び歳出、市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下第1部及び第2部において同じ。)の歳入及び歳出は、いずれも前年度と比べると増加している。
(3)決算収支
ア 実質収支
実質収支(*)の状況は、第3表のとおりである。
令和6年度の実質収支は2兆7,567億円の黒字であり、昭和31年度以降黒字となっている。
団体区分別にみると、都道府県においては9,241億円の黒字であり、平成12年度以降黒字となっている。市町村においては1兆8,326億円の黒字であり、昭和31年度以降黒字となっている。
実質収支が赤字である団体は、一部事務組合で1団体となっている。
なお、実質収支の推移は第6図のとおりである。
イ 単年度収支及び実質単年度収支
単年度収支(*)及び実質単年度収支(*)の状況は第4表のとおりであり、令和6年度の単年度収支は582億円の黒字、実質単年度収支は2,281億円の黒字となっている。
(4)歳入
歳入純計決算額は120兆2,491億円で、前年度と比べると3.0%増となっている。
歳入純計決算額の主な内訳の状況は、第5表のとおりである。
地方税は、企業収益の増等による法人関係二税(住民税(法人分)及び事業税(法人分))の増加等により、前年度と比べると3.7%増となっている。
地方譲与税は、企業収益の増等による特別法人事業譲与税の増加等により、前年度と比べると11.6%増となっている。
地方特例交付金等は、個人住民税における定額減税の実施に伴う地方公共団体の減収を補塡するための定額減税減収補塡特例交付金の創設等により、前年度と比べると422.5%増となっている。
地方交付税は、国税収入の決算等に伴う増加等により、前年度と比べると4.9%増となっている。
その結果、一般財源は、前年度と比べると5.7%増となっている。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額は4.9%増となっている。
国庫支出金は、特例的な財政措置の終了による新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金等の減少等により、前年度と比べると4.4%減となっている。
地方債は、臨時財政対策債が減少したものの、災害復旧事業債や緊急防災・減災事業債、教育・福祉施設等整備事業債の増加等により、前年度と比べると2.4%増となっている。
歳入純計決算額の構成比の推移は、第7図のとおりである。
地方税の構成比は、上昇の傾向にあったが、令和2年度に国庫支出金の増加等により大きく低下し、その後は令和元年度以前の水準に戻る方向へ推移している。
地方交付税の構成比は、地方税の増加等により低下の傾向にあったが、令和2年度に大きく低下し、その後は令和元年度以前の水準に戻る方向へ推移している。
国庫支出金の構成比は、15%前後で推移していたが、令和2年度に新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の増加等により大きく上昇し、その後は令和元年度以前の水準に戻る方向へ推移している。
一般財源の構成比は、上昇の傾向であったが、令和2年度に大きく低下し、その後は令和元年度以前の水準に戻る方向へ推移している。
歳入決算額の構成比を団体区分別にみると、第8図のとおりである。
(5)歳出
歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、以下のとおりである。
ア 目的別歳出
(ア)目的別歳出
地方公共団体の経費は、その行政目的によって、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、公債費(*)等に大別することができる。歳出純計決算額は115兆9,823億円で、前年度と比べると3.2%増となっている。
歳出純計決算額の主な目的別内訳の状況は、第6表のとおりである。
教育費は、地方公務員の給与改定や定年引上げに伴う退職手当の増加等により、前年度と比べると9.1%増となっている。
民生費は、認定こども園等を対象とした財政支援(施設型給付)における人件費の単価改定や児童手当制度の拡充による児童福祉費の増加等により、前年度と比べると4.5%増となっている。
総務費は、地方公務員の給与改定や定年引上げに伴う退職手当の増加等により、前年度と比べると9.3%増となっている。
商工費は、制度融資の減少等により、前年度と比べると10.9%減となっている。
目的別歳出純計決算額の構成比の推移は、第7表のとおりである。社会保障関係費の増加を背景に、全区分の中で民生費が最も大きな割合を占めている。
目的別歳出決算額の構成比を団体区分別にみると、第9図のとおりである。
都道府県においては、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により、教育費が最も大きな割合を占め、以下、民生費、公債費、土木費の順となっている。
市町村においては、児童福祉、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により、民生費が最も大きな割合を占め、以下、総務費、教育費、土木費の順となっている。
(イ)一般財源の充当状況
一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。
目的別歳出純計決算額の構成比(第6表参照)と比べると、公債費、教育費、総務費等は一般財源充当額の構成比が大きく、商工費、土木費、農林水産業費等は一般財源充当額の構成比が小さくなっている。
一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第10図のとおりである。
イ 性質別歳出
(ア)性質別歳出
地方公共団体の経費は、その経済的性質によって、義務的経費(*)、投資的経費(*)及びその他の経費に大別することができる。
歳出純計決算額の主な性質別内訳の状況は、第9表のとおりである。
義務的経費は、地方公務員の給与改定や定年引上げに伴う退職手当の増加等による人件費の増加、認定こども園等を対象とした財政支援(施設型給付)における人件費の単価改定や児童手当制度の拡充などによる扶助費の増加等により、前年度と比べると5.1%増となっている。
投資的経費は、教育費や土木費に係る単独事業費の増加等による普通建設事業費の増加等により、前年度と比べると5.4%増となっている。
性質別歳出純計決算額の構成比の推移は、第11図のとおりである。
義務的経費の構成比は、50%前後で推移していたが、令和2年度にその他の経費の構成比が上昇したことにより大きく低下し、その後は令和元年度以前の水準に戻る方向へ推移している。
その他の経費の構成比は、35%前後で推移していたが、令和2年度に新型コロナウイルス感染症対策に係る補助費等の増加等により大きく上昇し、その後は令和元年度以前の水準に戻る方向へ推移している。
性質別歳出決算額の構成比の状況を団体区分別にみると、第12図のとおりである。
(イ)一般財源の充当状況
一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。
性質別歳出純計決算額の構成比(第9表参照)と比べると、義務的経費は一般財源充当額の構成比が大きくなっており、投資的経費は一般財源充当額の構成比が小さくなっている。
一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第13図のとおりである。
(6)財政構造の弾力性
ア 経常収支比率
地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つが、経常収支比率(*)である。
団体区分別の経常収支比率の推移は第14図のとおりであり、令和6年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、地方公務員の給与改定や定年引上げに伴う退職手当の増加等による人件費の増加などにより、経常経費充当一般財源が増加したことなどから、前年度と比べると0.2ポイント上昇の93.0%となっている。
経常収支比率の段階別分布状況(団体数)は、第11表のとおりである。
イ 実質公債費比率
地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費に係る負担の度合いを判断するための指標に、実質公債費比率(*)がある。
団体区分別の実質公債費比率の推移は第15図のとおりであり、令和6年度の実質公債費比率(一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と同率の7.7%となっている。
また、実質公債費比率の段階別分布状況は、第16図のとおりである。
(7)将来の財政負担
地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみならず、地方債、債務負担行為(*)等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金(*)等の積立金のように将来の財政運営に資する財源を留保するものの状況についても、併せて把握する必要がある。これらの状況は、以下のとおりである。
ア 地方債現在高
地方公共団体における地方債現在高の状況は第12表のとおりであり、令和6年度末における地方債現在高は137兆991億円で、臨時財政対策債の現在高の減少等により、前年度末と比べると1.8%減となっている。また、臨時財政対策債を除いた地方債現在高は91兆3,796億円で、災害復旧事業債や緊急防災・減災事業債、教育・福祉施設等整備事業債等の発行額が増加したことにより、前年度末と比べると0.9%増となっている。
なお、地方財政状況調査においては、満期一括償還地方債の元金償還に充てるための減債基金(*)への積立額は歳出の公債費に計上するとともに、地方債現在高に当該積立額相当分を含まない扱いとしているが、これを含む場合の地方債現在高は151兆964億円となっている。
イ 債務負担行為額
地方公共団体は、翌年度以降の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。
この債務負担行為に基づく翌年度以降の支出予定額の状況は、第13表のとおりである。
ウ 積立金現在高
地方公共団体の積立金現在高の状況は第14表のとおりであり、令和6年度末における積立金現在高は29兆4,802億円で、前年度末と比べると2.1%増となっており、これは主として、地方税が当初見込みから増加したことを踏まえ、各地方公共団体が、将来の普通交付税の減額精算のための備えとして積み立てたもの、令和6年度補正予算(第1号)により「臨時財政対策債償還基金費」として普通交付税が増額交付されたことにより、制度的に基金残高の増加が想定されているもの等によるものである。
その内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると2.8%増、地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金(満期一括償還地方債に係るものを除く。)は3.4%増、公共施設の整備など将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金(*)は1.5%増となっている。
エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担
地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降の支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第17図のとおりである。令和6年度末においては、地方債現在高は1.8%減、債務負担行為額は8.8%増、積立金現在高は2.1%増となったことにより、地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は130兆8,140億円で、前年度末と比べると1.0%減となっている。
団体区分別にみると、都道府県においては79兆4,468億円、市町村においては51兆3,672億円で、前年度末と比べると、それぞれ2.3%減、1.1%増となっている。
オ 普通会計が負担すべき借入金残高
普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金や、公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。
この観点から、地方債現在高に交付税特別会計借入金残高と企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第18図のとおりである。近年は減少傾向にあるものの、依然として170兆円を超える高い水準にあり、令和6年度末における普通会計が負担すべき借入金残高は179兆5,246億円で、地方債現在高の減少等により、前年度末と比べると1.7%減となっている。
カ 将来負担比率
地方公共団体の一般会計等(*)の借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標が将来負担比率(*)である。
団体区分別の将来負担比率の推移は第19図のとおりであり、令和6年度の将来負担比率(加重平均)は、都道府県が前年度と比べると4.6ポイント低下の144.1%、市町村(一部事務組合等を除く。)が0.1ポイント低下の6.2%となっている。
また、将来負担比率の段階別分布状況は、第20図のとおりである。






























