第2部 令和7年度及び令和8年度の地方財政

2 令和8年度の地方財政

令和8年度の地方財政計画においては、物価高の中で官公需の価格転嫁への対応に必要な経費や、社会保障関係費、人件費、いわゆる教育無償化に係る地方負担の増等を歳出に計上した。

その上で、地方公共団体が、様々な行政課題に対応しつつ、行政サービスを安定的に提供できるよう、地方税・地方交付税等の一般財源総額について、水準超経費を除く交付団体ベースで令和7年度を大幅に上回る3.7兆円を増額確保し、地方財政計画(通常収支分)の規模は初めて100兆円を超えた。

併せて、堅調な税収動向を反映し、地方税や地方交付税の法定率分の増加が見込まれる中で、臨時財政対策債の新規発行額を、令和7年度に引き続きゼロとした上で、地方財政計画としては初めて「臨時財政対策債償還基金費」を創設したほか、交付税特別会計の借入金残高を縮減し、地方財政の健全化にも取り組んでいる。

(1)地方財政計画

令和8年度においては、通常収支分について、累積した巨額の債務残高を抱えるなど引き続き厳しい地方財政の状況等を踏まえ、歳出面においては、物価高の中での官公需の価格転嫁やいわゆる教育無償化への対応等に必要な経費を計上するとともに、地方公共団体が住民のニーズに的確に応えつつ、行政サービスを安定的に提供できるよう、物価高、社会保障関係費や人件費の増加を適切に反映した計上等を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととする。また、歳入面においては、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)等を踏まえ、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、経済・物価動向等を適切に反映し、令和7年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することとする。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとする。

なお、地方財政審議会からは、令和7年5月23日に「『地方創生2.0』の推進と持続可能な地方行財政の確立のための地方税財政改革についての意見」及び同年12月8日に「今後目指すべき地方財政の姿と令和8年度の地方財政への対応等についての意見」が提出された。

以上を踏まえ、次の方針に基づき令和8年度の地方財政計画を策定している。

ア 通常収支分

(ア)地方税制については、令和8年度地方税制改正では、個人住民税について給与所得控除の見直しなどの措置を講じるほか、道府県民税利子割に係る清算制度の導入やふるさと納税制度の見直し、軽油引取税の当分の間税率並びに自動車税及び軽自動車税の環境性能割の廃止などの税制上の措置を講じることとしている。

(イ)軽油引取税及び地方揮発油税の当分の間税率並びに自動車税及び軽自動車税の環境性能割の廃止に伴う令和8年度の減収について、地方特例交付金によって全額を補塡することとしている。

(ウ)令和8年度の地方交付税については、20兆1,848億円(前年度比1兆2,274億円、6.5%増)を確保することとし、次の措置を講じるとともに、所要の法律改正を行う。

a 令和8年度の地方財源不足見込額1兆254億円については、次の措置を講じる。

(a)建設地方債(財源対策債)を7,600億円増発する。

(b)地方交付税については、国の一般会計加算(地方交付税法附則第4条の2第1項の加算)により154億円増額する。

また、交付税特別会計剰余金500億円を活用するとともに、地方公共団体金融機構法附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金2,000億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

b 交付税特別会計借入金については、一般会計への債務承継分7,000億円を含め2兆2,000億円を前倒し、2兆9,000億円の残高縮減を実施する。

(エ)臨時財政対策債の償還のための基金の積立てに要する経費として、臨時財政対策債償還基金費を8,376億円計上する。

(オ)地方債については、物価高が継続する中、地方公共団体の官公需における適切な価格転嫁の取組の推進が求められていることを踏まえ、道路や施設の改修等に係る投資的経費の確保への対応をするとともに、地方公共団体が緊急に実施する防災・減災対策、公共施設等の適正管理、地域の脱炭素化、こども・子育て支援、自治体DX・地域社会DXの推進、地域の実情に応じた高校教育改革、地域の活性化への取組等を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

この結果、地方債計画(通常収支分)の規模は、9兆4,738億円(普通会計分6兆1,448億円、公営企業会計等分3兆3,290億円)とする。

(カ)給与関係経費については、令和7年人事委員会勧告に伴う給与改定に要する経費等について所要額を計上するとともに、会計年度任用職員の給与等を一般行政経費から移し替えて計上する。

(キ)物価高やいわゆる教育無償化への対応、自治体DX・地域社会DXや地方創生の推進、地域社会の維持・再生、こども・子育て政策の強化、社会保障施策の充実、住民に身近な社会資本の整備、消防力の充実、防災・減災、国土強靱化の推進、過疎地域の持続的発展等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 物価高の中で、ごみ収集や学校給食などサービス・施設管理等の委託料、道路や河川等の維持補修費、道路や施設の改修等に係る投資的経費など、様々な分野における地方公共団体のコストの増加にきめ細かく対応することとし、5,850億円を増額計上する。

b いわゆる教育無償化に係る地方負担について、地方財政計画の歳出に全額計上する。

c 都道府県における産業クラスターの形成・拡大や地場産業の付加価値向上を推進するため、「地域未来基金費」を4,000億円計上する。

d 「地域デジタル社会推進費」について、事業期間を令和11年度まで延長し、1,500億円計上する。

e 「地方創生推進費」については1兆円(前年度同額)、「地域社会再生事業費」については4,200億円(前年度同額)計上する。

f 「こども未来戦略」に掲げる「こども・子育て支援加速化プラン」における地方負担について所要の財政措置を講じる。

g 「人づくり革命」として、幼児教育・保育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

h 社会保障・税一体改革による「社会保障の充実」として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革等に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

i 投資的経費に係る地方単独事業費については、物価高への対応のほか、地方公共団体が地域の実情に応じて公立高校等における今後の社会・経済の発展を支える人材育成に向けた取組を進められるよう、新たに「高等学校教育改革等推進事業費」を1,000億円計上することとし、全体で前年度に比し6.3%増額するとともに、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

j 一般行政経費に係る地方単独事業費については、委託料等の増加のほか、社会保障関係費の増加に要する経費等を適切に反映した計上を行うとともに、年度途中における給与改定に対応できるよう給与改善費を計上することにより、財源の重点的配分を図るほか、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

k 消防力の充実、防災・減災、国土強靱化の推進、治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策に対し所要の財政措置を講じる。

l 過疎地域の持続的発展のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(ク)公営企業の経営基盤の強化を図るとともに、水道、下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(ケ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、行政のデジタル化、適正な定員管理、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、補助事業に係る地方負担分等を措置するため、539億円を確保する。また、一般財源充当分として63億円を計上する。

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

この結果、地方債計画(東日本大震災分)における復旧・復興事業の規模は、16億円(普通会計分10億円、公営企業会計等分6億円)とする。

c 補助事業費、地方税法等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出、地方自治法に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費等について所要の事業費2,217億円を計上する。

(イ)全国防災事業

全国防災事業については、一般財源充当分として180億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した令和8年度の地方財政計画は、第40表のとおりとなっており、その規模は、通常収支分は102兆4,427億円で、前年度*1と比べると5兆3,783億円増(5.5%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が2,217億円で、前年度と比べると487億円減(18.0%減)、全国防災事業が181億円で、前年度と比べると37億円減(17.0%減)となっている。

また、令和8年度の地方債計画の規模は、通常収支分が9兆4,738億円で、前年度と比べると3,835億円増(4.2%増)となっている。東日本大震災分は、復旧・復興事業が16億円で、前年度と比べると1億円増(6.7%増)となっている。

(2)公営企業等に関する財政措置

ア 公営企業

(ア)通常収支分

公営企業については、上記(1)ア(ク)の公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金として、地方財政計画において2兆3,545億円(前年度2兆2,787億円)を計上する。

公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分3兆3,290億円(前年度3兆1,283億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは、以下のとおりである。

a これまで公営企業が提供してきた住民生活に必要なサービスを地域において持続的に提供していくためには、公営企業の経営改善の取組を進めることが重要であることから、これらの取組に伴い公営企業に係る特別会計の廃止等を行う際、一般会計において一時的に必要となる多額の経費負担を平準化するため、公営企業経営改善特例債を創設することとしている。

b 公営企業の脱炭素化の取組については、公営企業債(脱炭素化推進事業)の事業期間を令和12年度まで延長するとともに、空調等の各設備が個別に省エネルギー基準を満たす場合の省エネルギー改修等を対象に追加する。

c 埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故等を踏まえ、上下水道管路の老朽化対策を推進するため、下水道管路に係る全国特別重点調査への対応、水道管路耐震化事業「重点対策分」及びDX技術を活用した上下水道管路の点検・調査への措置を拡充する。

d 厳しい経営環境に直面している病院事業について、経営改善実行計画を策定し収支改善に取り組む公立病院の資金繰りを支援し、経営改善を促進するため、引き続き病院事業債(経営改善推進事業)を充当できることとしている。

また、公立病院が地域に必要な救急医療などを引き続き提供できるよう、地方交付税単価を引き上げることとしている。

さらに、不採算地区病院等については、特別交付税措置の基準額引上げ措置を継続するとともに、周辺人口が少ない等の不採算地域において、不採算地区中核病院がその機能を維持できるよう、不採算地区病院と同様の特別交付税措置の基準額を引き上げる措置を実施する。

加えて、資材価格の高騰等による建設事業費の上昇等を踏まえ、公立病院の新設・建替に対する地方交付税措置の対象となる建築単価の上限を引き上げる。

(イ)東日本大震災分

公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において0.01億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分6億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険事業については、厳しい財政状況に配意し、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)都道府県が、都道府県内の市町村の財政の状況その他の事情に応じた財政調整を行うため、「国民健康保険法」(昭和33年法律第192号)第72条の2に基づき、一般会計から当該都道府県国保に繰り入れられる都道府県繰入金(給付費等の9%分)については、その所要額(5,850億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者のうち低所得者に係る保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,567億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)国保被保険者のうち未就学児に係る保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(42億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)国保被保険者のうち子育て世代の負担軽減、次世代育成支援及び負担能力に応じた負担とする観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が産前産後期間の保険料免除相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(8億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(1,382億円)について地方交付税措置を講じる。

(カ)高額医療費負担金(3,623億円)については、都道府県国保に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、都道府県国保1/2)を負担することとし、地方負担(906億円)について地方交付税措置を講じる。

(キ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(ク)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国保被保険者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(396億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、都道府県国保1/3)を負担することとし、地方負担(132億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である後期高齢者医療広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和(均等割2割・5割・7割軽減)を図るため、都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。)が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(4,272億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)高額医療費負担金(5,352億円)については、後期高齢者医療広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、後期高齢者医療広域連合1/2)を負担することとし、地方負担(1,338億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(225億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、後期高齢者医療広域連合1/3)を負担することとし、地方負担(75億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)後期高齢者医療広域連合に対する市町村分担金、市町村(一部事務組合等を除く。)の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。



*1 前年度の額は、令和7年度政府予算案等の国会修正を反映している。以下このページにおいて同じ。

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