第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応
7 地方行政をめぐる動向と地方分権改革の推進
(1)地方自治制度の見直し
我が国の人口は平成23年以降一貫して減少しており、今後も、2050年には1億468万人、2070年には8,700万人へと大幅な人口減少が予想されている。他方で、生産年齢人口は、ピーク時からこれまでに約1,100万人減少するなど、生産年齢人口の減少や東京一極集中の大きな流れにより、地方公共団体では専門人材の不足等の課題が既に現実のものとなっている。現在、そして将来にわたり、どのようにして地域における行政サービスを維持し続けることができるかが問われている。
総務省では、このような問題意識から、令和6年11月に「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」を立ち上げ、各行政分野(介護保険、国民健康保険、老人福祉施設、保育、小中学校教育、道路、上下水道、鳥獣被害対策、地球温暖化対策、消費生活相談の10分野)における個別の事務の処理に関する課題に着目し、対応方策のあり方について検討を行った。令和7年6月に取りまとめられた同研究会報告書では、地方公共団体が抱える課題に応じた対応方策について、「検討の視点」が示され、都道府県が、地域の状況を踏まえ、市町村における検討を支援していくことが重要であるとされ、総務省において、都道府県・市町村における課題解決に向けた検討を促してきたところである。
さらには、地方における検討状況も踏まえつつ、国・都道府県・市町村の役割分担の見直しを含めた議論の必要性が指摘されている中、令和8年1月19日に政府の地方制度調査会が約2年ぶりに発足し、人口減少により深刻化する人材の不足や偏在、デジタル技術の進展等の課題に対応し、将来にわたり、地域の特性に応じて、持続可能かつ最適な形で行政サービスを提供していくため、国・都道府県・市町村間の役割分担や大都市地域における行政体制のあり方について、内閣総理大臣の諮問が行われた。
総務省としても必要な検討を進めるとともに、市町村間の広域連携や都道府県による補完、自治体DXなどの取組を進めていく。
(2)地方公共団体相互間の連携・協力及び公共私の連携
前述のように、地方公共団体の経営資源が制約される中で、持続可能な形で行政サービスを提供し住民の暮らしを支えていくためには、行政需要や経営資源に関する長期的・客観的な変化・課題を見通し、住民等と議論を重ね、将来のビジョンを共有することが求められる。加えて、地域や組織の枠を越えて資源を融通し合い、他の地方公共団体や地域の多様な主体と連携・協働していく取組を深化する必要がある。
このため、地域の行政需要や経営資源に関する長期的・客観的な変化・課題の見通しを客観的なデータを基に整理した「地域の未来予測」の複数の地方公共団体による作成及びこれを踏まえた「目指す未来像」の議論が進むよう、特別交付税措置を講じている。また、少子高齢化・人口減少の局面に的確に対応していくための連携の枠組みである連携中枢都市圏や定住自立圏において合意形成が容易ではない課題への対応も含め取組が進むよう、地方交付税措置を講じている。さらに、複数の地方公共団体が公共施設の集約化や専門人材の確保・育成に連携して取り組むことができるよう、公共施設の集約化等に向けた調査検討経費等に対して特別交付税措置を講じるほか、(3)アにあるように、都道府県等が市町村に専門人材を派遣する際の経費に対して特別交付税措置を講じている。
また、人口減少下においても活力ある地域を作るためには、個々の地方公共団体の取組だけでなく、都道府県域を超えて施策に取り組むことが重要であり、地域の成長につながる施策を、多様な主体の連携により、面的に展開する「広域リージョン連携」の取組を引き続き推進する必要がある。
各地域において、順次、広域リージョン連携宣言が実施され、具体のプロジェクトの検討が進められている。国は、各府省で連携した財政的支援等を行い、「広域リージョン連携」に基づくプロジェクトの実施を積極的に後押しすることとしている。
公共私の連携については、地域の多様な主体が連携・協働し、生活サービスを提供しやすい環境整備が進められるよう、地域運営組織以外の地域の活動主体が指定地域共同活動団体に指定された場合の市町村による設立運営支援等に要する経費について、地域運営組織と同様の地方交付税措置を講じている。
(3)地方公務員行政に係る取組
ア 地方公共団体の人材確保・育成
地方公共団体において、少子高齢化、デジタル社会の進展等により複雑・多様化する行政課題に対応する上で、人材確保・育成の重要性が高まっており、第33次地方制度調査会「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」においても、都道府県等が市町村と連携して専門人材の確保・育成に取り組む視点の重要性が指摘されている。このような状況を踏まえ、総務省では、令和5年12月に、各地方公共団体が人材育成基本方針を改正等する際の指針として、「人材育成・確保基本方針策定指針」を策定するとともに、令和7年3月には「地方公共団体における人材育成・確保推進のための参考事例集」を公表したところであり、地方公共団体に対して、指針及び事例集を参考として、各地方公共団体において策定されている基本方針の改正等を含め、着実に取組を推進するよう要請している。
こうした中、人材確保については、小規模市町村を中心として、専門性を有する人材の配置が困難な状況がみられることから、技術職員やデジタル人材の確保に対する地方交付税措置に加え、都道府県等が、市町村と連携協約を締結した上で、保健師、保育士、税務職員など、当該市町村が必要とする専門性を有する人材を確保し派遣する場合の募集経費及び人件費について、特別交付税措置を講じている。
また、人材育成については、各地方公共団体が、改正後の人材育成基本方針において、特に重点的に取り組むとして明示した新たな政策課題に関する自団体職員向けの研修経費及び都道府県等が市町村職員を含めて開催する広域的な研修経費について、地方交付税措置を講じている。
イ 会計年度任用職員制度
令和2年度に導入された会計年度任用職員制度に係る任用や給与決定などの施行状況については、任用根拠の明確化や勤務条件の改善など、概ね、制度の趣旨に沿った運用が図られているが、一部にまだ対応が十分でない地方公共団体もあり、こうした団体においては、適正化を図る必要がある。
「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)等において、会計年度任用職員の能力実証を経た常勤化について記載されたことも踏まえ、総務省では、令和7年9月に、会計年度任用職員の職務経験を有する者が受験可能な中途採用試験を実施する取組等についてとりまとめた事例集を公表し、取組の普及促進を図っている。
なお、会計年度任用職員の給与等については、令和8年度の地方財政計画において、一般行政経費(単独)から給与関係経費に移し替えている。
(4)地方税制の動向
地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりを進めていくためには、その基盤となる地方税財源の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進めることが重要である。
令和8年度税制改正については、令和7年11月21日に、地方財政審議会から、「令和8年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」、「地方税制のあり方に関する検討会報告書 -地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差に係る原因・課題の分析等-」等が提出されるとともに、同年12月26日に「令和8年度税制改正の大綱」が閣議決定された。
「令和8年度税制改正の大綱」では、地方税制において主に以下の事項について税制改正を行うものとされており、そのうち、地方税関係法律の改正については、第221回特別国会に「地方税法等の一部を改正する法律案」を提出している。
ア 個人住民税
物価上昇局面における対応として、所得税の給与所得控除の引上げと同様に、個人住民税についても、65万円の最低保障額を69万円に引き上げるとともに、令和9年度分及び令和10年度分の個人住民税に係る給与所得控除の最低保障額について、69万円への引上げに加え、5万円引き上げる。また、ひとり親控除について、控除額を33万円(現行:30万円)に引き上げる。
個人住民税における都道府県又は市区町村に対する寄附金に係る寄附金税額控除(ふるさと納税)について、特例控除額に定額上限(193万円:給与収入1億円相当)を設け、控除限度額を個人住民税所得割額の2割と定額上限とのいずれか低い金額(現行:個人住民税所得割額の2割)とする等の見直しを行う。
そのほか、インターネット銀行等の利用拡大を踏まえ、金融機関が口座所在地の都道府県に税を納入する現行の仕組みは維持しつつ、道府県民税利子割に清算制度を導入することとし、都道府県は、当該都道府県に納入された利子割額から徴収取扱費に相当する額を控除した額を、各都道府県ごとの清算基準額に応じて按分し、当該按分した額のうち他の都道府県に係る額を他の都道府県に対し、それぞれ支払うことで税収帰属を適正化する等の措置を講じる。
イ 自動車関係諸税
自動車税環境性能割及び軽自動車税環境性能割は、令和8年3月31日をもって廃止する。これに伴い、現行の自動車税種別割を自動車税とし、現行の軽自動車税種別割を軽自動車税とするなど、所要の措置を講じる。環境性能割の廃止に伴う地方税の減収分については、安定財源を確保するための具体的な方策を検討し、それまでの間、国の責任で手当する旨を「地方税法等の一部を改正する法律案」において規定している。
軽油引取税の当分の間税率を令和8年4月1日に廃止するほか、所要の措置を講じる。なお、軽油引取税等の当分の間税率の廃止のための地方の安定財源の確保については、「租税特別措置法及び東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第81号)において、法人税関係特別措置の見直し等の税制措置による地方の増収額を活用するほか、具体的な方策を引き続き検討し、速やかに結論を得るとともに、その際、安定財源の確保の完成までの間において、地方の財政運営に支障が生じないよう、地方財政措置において適切に対応する旨が規定されている。
令和8年度地方財政計画においては、環境性能割の廃止及び軽油引取税等の当分の間税率の廃止に伴う令和8年度の減収について、地方特例交付金によって全額を補塡することとされている。
(5)地方分権改革の推進
地方分権改革については、平成26年から、それまでの成果を基盤とし、地方の発意に根ざした新たな取組を推進するため、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定)により、「提案募集方式」を導入している。これまで、累次にわたる、いわゆる地方分権一括法*2により、地方公共団体への事務・権限の移譲、義務付け・枠付けの見直し等を行うなど、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革が推進されている。
令和7年においては、355件の提案について調整がなされ、このうち312件について実現・対応できることとなり、同年12月23日に「令和7年の地方からの提案等に関する対応方針」が閣議決定された。
本方針に盛り込まれた事項等のうち、主なものは第82図のとおりであり、地方財政関係では地方債のデジタル証券方式での発行を可能にすることや地方公共団体の財政状況等の公表回数を年2回以上から1回以上にすることが盛り込まれた。また、法律の改正により措置すべき事項については、所要の地方分権一括法案を第221回特別国会に提出することを基本とし、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとされている。
今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進めていくこととされている。

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Excel]
また、計画策定等による地方公共団体の事務負担の増大への対応については、「計画策定等における地方分権改革の推進について〜効率的・効果的な計画行政に向けたナビゲーション・ガイド〜」(令和5年3月31日閣議決定)を着実に運用し、国・地方を通じた効率的・効果的な計画行政を推進することとされている。
*2 提案募集方式の導入以降、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成27年法律第50号。いわゆる「第5次地方分権一括法」。)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和7年法律第35号。いわゆる「第15次地方分権一括法」。)までの地方分権一括法が成立している。
