第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応
1 物価高等への対応
物価高が継続する中、地方公共団体から民間への請負契約等の官公需は、地域経済において重要な役割を果たしているため、適切な価格転嫁を通じて、地域における賃上げを促進し、経済の好循環に繋げる必要がある。加えて、物価高の影響を受けた生活者や事業者への支援や、地方公共団体の給与改定等への対応が必要となっており、国においても財政措置を講じてきた。
(1)物価高・官公需の価格転嫁への対応
ア 補正予算等の対応
「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」(令和7年4月25日米国の関税措置に関する総合対策本部決定)の一環として、令和7年5月27日に令和7年度一般会計予備費(3,881億円)の使用が閣議決定され、地域の実情に応じ、生活者・事業者に対し消費・事業継続の下支え等を支援するために、「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」の推奨事業メニュー分が1,000億円、増額措置された。
また、令和7年11月21日には、「「強い経済」を実現する総合経済対策〜日本と日本人の底力で不安を希望に変える〜」が閣議決定され、国民の暮らしを守り抜くため、物価高の影響を地域の実情に応じてきめ細かく緩和する対策を講じるとともに、家計・事業者のエネルギーコスト負担の軽減策を実施し、国民生活と企業活動の両面を下支えすることとし、令和7年度補正予算(第1号)において、「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」2兆円(うち食料品の物価高騰に対する特別加算4,000億円)が計上された。
加えて、令和7年度補正予算(第1号)による地方交付税の増額においては、物価高の中で地方公共団体が適切に価格転嫁に取り組めるよう、委託料、維持補修費等について2,000億円増額交付することとした。
イ 当初予算の対応
令和8年度の地方財政計画においては、ごみ収集や学校給食などサービス・施設管理の委託料、道路や河川等の維持補修費、道路や施設の改修等に係る投資的経費など、様々な分野における地方公共団体のコストの増加にきめ細かに対応することとし、一般行政経費(単独)に1,600億円(委託料:800億円、民間事業者への補助等:800億円)、維持補修費に750億円、投資的経費(単独)に3,000億円、公営企業繰出金に500億円を増額計上している。
ウ 物価上昇を踏まえた地方公共団体の発注における価格転嫁の徹底
物価上昇を上回る賃上げを実現するためには、企業数の99%以上、従業者数の70%近くを占める中小企業を中心として、労務費や原材料費等が円滑に価格転嫁できる環境を整備することが重要である。
とりわけ、GDP全体の約1/4を占める公的需要は、地方部ほどその割合が高くなる傾向にあることから、地域経済の活性化等の観点からも適切な価格転嫁が必要であり、地方公共団体には、「適正な価格で契約を行う」ことに対する意識の確立が求められている。
このため、各地方公共団体においては、
- 実勢価格を踏まえた適切な予定価格の作成
- 最低賃金の改定など契約期間中の状況の変化に応じた契約変更
- 適正な価格での契約を担保するための低入札価格調査制度・最低制限価格制度の原則導入
などの取組を行う必要がある。
なお、こうした価格転嫁の取組状況については、令和8年度から、普通交付税の算定費目「地域の元気創造事業費」において、新たに価格転嫁分(1,000億円程度)を創設し、算定に反映することとしている。
(2)地方公務員の給与改定
令和7年人事院勧告において、民間企業の賃上げの状況等を反映して、月例給は令和6年を上回る高水準のベースアップとなり、全体では平均3.62%引上げ、若年層に重点を置きつつ、中堅層以上の職員には、令和6年を大幅に上回る引上げ改定を行うこととなった。また、特別給は0.05月分引上げとなった。
地方公務員の給与改定については、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(令和7年11月11日閣議決定)において、地方公務員法の趣旨に沿って適切に対応することとされた。これを踏まえ、地方公務員の給与改定に要する経費の地方負担分として、令和7年度の給与改定所要額7,011億円について、令和7年度の地方財政計画の給与改善費、追加財政需要額の一部及び令和7年度補正予算(第1号)による地方交付税の増額交付の中で対応することとした。また、令和8年度の地方財政計画においては、令和8年度における令和7年人事委員会勧告に伴う給与改定所要額6,790億円を計上するとともに、年度途中の給与改定に対応できるよう、給与改善費を2,000億円増額し、4,000億円を計上している。
