第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応
4 地域におけるDX・GXの推進
地域社会全体のデジタル変革を加速させ、活力ある地方を創るためには、デジタル技術を活用して地方の社会課題解決や魅力向上を図るとともに、地方公共団体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進していく必要がある。
また、「地球温暖化対策計画」(令和7年2月18日閣議決定)を踏まえ、温室効果ガスの「2050年ネット・ゼロ」の実現に向け、地域脱炭素を加速化していく必要がある。
(1)マイナンバー制度及びマイナンバーカードの取得支援・利用の推進
マイナンバー制度は、行政の効率化、国民の利便性の向上及び公平・公正な社会を実現するデジタル社会の基盤である。今後、各地方公共団体のDX等を進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバー制度を積極的に利活用していくことが不可欠である。
マイナンバーカードについては、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和7年6月13日閣議決定)等に基づき、交付事務を担う市町村においては、カードや電子証明書の更新需要の増加を踏まえ、土日・夜間開庁や臨時交付窓口等の窓口体制の増強を図ることとされている。また、高齢者等のカードの取得に課題のある方に対する環境整備として、福祉施設等における出張申請受付を推進するとともに、住民が身近な場所でカードの更新等の手続をできるよう郵便局窓口の活用を推進することとされ、国はこれらの取組に対する財政支援を通じて、住民が円滑にカードを取得・更新できる環境の整備を進めている。今後も、マイナンバーカードと在留カードとの一体化や、カードへの振り仮名記載などの取組も進めていくこととされている。
加えて、本人の所得・地方税、行政機関からのお知らせなど、必要な情報をいつでも確認できる行政手続のオンライン窓口である「マイナポータル」においては、オンラインでの出生届の提出に併せて新生児のマイナンバーカード交付申請が可能となるなど、オンラインで完結される手続が順次、拡大してきている。
(2)自治体DXの推進
今後急速な人口減少が見込まれる中、地方公共団体が持続可能な形で行政サービスを提供していくために、フロントヤード改革(住民との接点の多様化・充実化、窓口事務の効率化等)とバックヤード改革(情報システムの標準化・共通化や、eLTAXを活用した地方税・公金の電子納付等)を進め、住民サービスの利便性向上や行政事務の効率化を目指すことが重要である。
ア 自治体DX推進計画等
総務省では、国の取組と歩調を合わせた地方公共団体の取組を強力に推進するため、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第5.1版】」(令和8年1月30日。以下「自治体DX推進計画」という。)等を策定しており、引き続き、国の取組の進捗等を踏まえて見直しを行っていくこととしている。
自治体DX推進計画では、DXの取組を着実に実施するための前提となるDX推進体制の構築やデジタル人材の確保・育成について示した上で、自治体フロントヤード改革の推進や地方公共団体情報システムの標準化等、8つの事項を地方公共団体が重点的に取り組むべき「重点取組事項」として定め、その具体的内容や国の主な支援策等を示している。
イ 都道府県と市町村が連携したDX推進体制の構築に向けたデジタル人材の確保・育成
都道府県と市町村が連携したDX推進体制の中で、市町村が求めるDX支援のための人材プール機能の確保を進めることとしている。都道府県が一定のスキル・経験を有し、市町村支援業務を行うデジタル人材(自治体DXアクセラレータ)を任用する場合の人件費等について、地方交付税措置を講じている。
加えて、市町村がCIO補佐官等として外部人材の任用等を行うための経費や、地方公共団体におけるデジタル化の取組の中核を担う職員(DX推進リーダー)の育成に要する経費について、特別交付税措置を講じている。
また、令和7年度補正予算(第1号)において、DX推進体制活用・強化に取り組む都道府県に対するノウハウの提供や、都道府県が確保した人材に対する行政実務研修等を行う「自治体デジタル人材確保支援事業」を実施することとしている。
ウ 自治体フロントヤード改革
自治体フロントヤード改革については、マイナンバーカードやデジタルツールを活用し、対面・非対面の手続を適切に組み合わせて住民との接点を多様化・充実化することや、データ対応の徹底、さらにバックヤード改革に繋げることで、住民の利便性向上と行政事務の効率化を実現することを目指している。
このため、デジタル庁において実施しているガバメントクラウド上での「窓口DXSaaS」の提供や「窓口BPRアドバイザー」の派遣等による「書かないワンストップ窓口」の推進に加え、令和7年度補正予算(第1号)において総務省で実施している自治体フロントヤード改革推進に係る事業を通じて、住民の利便性向上・行政事務の効率化に関する効果を示しつつ、円滑なデジタル実装が可能となるような手順書により取組の横展開を図るとともに、取組状況の見える化を行うことにより、地方公共団体の自主的な改革を促進することとしている。
エ 地方公共団体の情報システムの標準化
地方公共団体の情報システムの標準化については、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、基幹業務システムを利用する全ての地方公共団体が、同法第5条に基づく基本方針の下で所管省庁が作成する標準化基準に適合した標準準拠システムへ円滑かつ安全に移行することができるよう、その環境を整備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進めることとされている。
「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12月25日閣議決定)では、国、地方を通じたデジタル化を今後5年間で進めることとされており、これを踏まえ、同基本方針において標準化の目標は令和7年度とされ、各地方公共団体がシステムの移行の際に必要となる準備経費や移行経費の支援を行うデジタル基盤改革支援基金(地方公共団体情報システム機構に設置)の設置年限についても同年度末とされていた。しかしながら、事業者の人員不足のほか、指定都市などにおいては現行システムが複雑で移行の難易度が極めて高いシステムがあることなどの事情により、令和8年度以降の移行とならざるを得ないシステムが全体の約6.3%(令和6年10月末時点)となっていた(令和7年10月末時点では約14.5%)。
こうした状況や、地方公共団体からの意見も踏まえ、令和6年12月に同基本方針を改定して、国は、標準準拠システムへの移行が令和8年度以降とならざるを得ないシステムを特定移行支援システムとして、概ね5年以内(令和12年度末まで)に移行できるよう支援することとされ、同基金の設置年限は、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和7年法律第35号)の成立により、令和12年度末まで延長されている。
また、令和7年度補正予算(第1号)において、同基金の積立てに要する経費として559億円を追加し、累計で7,742億円を計上しており、当該基金を活用し、国が必要な財政支援を行うこととしている。
なお、標準準拠システム・ガバメントクラウド移行後のシステム運用経費については、令和7年度補正予算(第1号)において、一時的に増加している運用経費を計画的に抑制・適正化し、運用の最適化を図るための国庫補助事業が創設され、その地方負担について令和7年度の地方交付税の増額交付の中で対応するとともに、人件費・物価の増加等の外的要因等による恒常的な経費の増加分に対し、普通交付税において標準準拠システムへの移行状況に応じた措置を講じることとしている。
(3)地域社会DXの推進
地域社会DXを加速させ、強い地方経済の実現などにも貢献するため、令和7年度補正予算(第1号)において、デジタル人材/体制の確保支援、AI・自動運転等の先進的ソリューションや先進的通信システムの実証支援、地域の通信インフラ等整備の補助等の総合的な施策を行う地域社会DX推進パッケージ事業を実施することとしている。
また、「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第4.1版】」(令和7年12月26日)について、各地方公共団体の新たな取組状況を踏まえつつ、導入・実施が比較的容易な事例や、費用対効果が大きいと考えられる事例、関係人口の創出に関する事例を中心に内容の拡充を予定しており、更なる横展開を図ることとしている。
(4)デジタル活用推進事業費の拡充
担い手不足が急速に深刻化するおそれがある中、デジタル技術を活用した行政運営の効率化・地域の課題解決等に向けた取組をしていくため、地方財政計画の一般行政経費(単独)において、令和7年度に「デジタル活用推進事業費」を創設し、地方財政法の特例を設けて地方債の発行を可能としている。
対象事業は、デジタル活用推進計画に位置付けて実施する地方単独事業等であり、具体的には、「自治体DXの推進」として、住民サービスの提供に必要なシステム・情報通信機器等の整備や共同調達によるシステムの導入、「地域社会DXの推進」として、日常生活に不可欠なサービスの確保や地域産業の生産性向上等に資するシステム・情報通信機器等の整備を対象としている。
令和8年度には、複雑化・巧妙化するサイバー攻撃により地方公共団体のシステムに被害が生じるリスクが高まっていることを踏まえ、サイバーセキュリティ対策の強化に必要なシステム(業務端末やシステムへの不正アクセスを常時監視するシステム)の整備を対象事業に追加した上で、事業費全体としては地方財政計画に1,500億円(対前年度比500億円増加)を計上している。
(5)地域におけるGXの推進
地域におけるGXの推進については、「地球温暖化対策計画」において、「2026年度以降2030年度までの5年間を新たに実行集中期間として位置付け、必要な施策の実行に取り組む」こととされた。
これを踏まえ、地方公共団体が、公共施設等の脱炭素化のための地方単独事業を積極的に実施できるよう、「脱炭素化推進事業費」について、事業期間を令和12年度まで延長するとともに、令和8年度の地方財政計画に1,000億円(前年度同額)を計上している。対象事業については、再生可能エネルギー設備等の整備について発電電力を地域内で消費するための売電を主目的として地方公共団体が整備するものを対象に追加するほか、省エネルギー改修について建物全体が基準を満たす場合に加え、空調等の各設備が個別に省エネルギー基準を満たす場合を対象に追加し、電動車等の導入についてハイブリッド車を導入する場合も対象に追加している。
そのほか、国庫補助を活用して地方公共団体が公共施設等にペロブスカイト太陽電池を導入する事業についても、新たに地方財政措置を講じることとしている。
