第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応
2 地域未来戦略の推進
平成26年に「地方創生」を開始して以降、全国各地で地方創生に向けた様々な取組が行われてきたが、人口減少や東京一極集中の流れを変えるまでには至っていない。また、地方部では人口減少が急速に進んでおり、消費の減少を通じて地域経済全体の縮小につながることが懸念されている。そのため、「地域未来戦略」を推進し、地方が持つ伸び代をいかすことで、国民の暮らしと安全を守り、地方に活力を取り戻すことを目指すこととしている。
(1)地域未来戦略の推進
令和7年11月に、内閣総理大臣を本部長、関係大臣を本部員とする「地域未来戦略本部」が設置された。同年12月には、これまでの地方創生の取組をフォローアップするとともに、地方創生施策の推進戦略を取りまとめた「地方創生に関する総合戦略」(令和7年12月23日閣議決定)が策定された。同総合戦略で整理された施策を基盤に、「強い経済」の実現に力点を置いた施策を追加し、令和8年夏を目途に「地域未来戦略」を取りまとめることとされている。
令和7年度補正予算(第1号)において、「地域未来交付金」が創設され、1,000億円が計上された。令和8年度予算案においても、1,600億円が計上され、地方の大きな伸び代と地域特性を最大限に活かし、地場産業の付加価値向上等を通じて、地方の暮らしの安定を実現し、「強い経済」を構築するため、各地方公共団体による産業クラスター計画や地場産業の成長戦略が、真に地方の活力を最大化することに繋がるような地域の独自の取組を後押しすることとされている。
また、「地域未来戦略」を踏まえ、地域ごとの産業クラスターを全国各地に形成するとともに、地場産業の付加価値向上と販路開拓を推進し、地方から日本を成長軌道に押し上げるため、都道府県が基金を設置することを想定し、令和8年度に限り、地方財政計画の歳出に新たに「地域未来基金費」4,000億円を計上した上で、その全額を道府県分の基準財政需要額に算入することとしている。
(2)持続可能な地域社会の実現に向けた地方創生の取組
地方は、人口減少や深刻な担い手不足などによる日常生活の持続可能性の低下など、様々な課題に直面している。これらの課題を解決するため、地方への人の流れの創出・拡大、地域経済の好循環による付加価値の創造等の取組を進め、持続可能な地域社会を構築していく必要がある。
ア 地方への人の流れの創出・拡大
過度な東京一極集中の進展は、特に少子高齢化・過疎化が進む地方における地域社会の担い手不足や、地域コミュニティの衰退、生活に必要なサービスの維持やインフラ管理の困難などの観点から大きな問題であるところ、その是正は我が国全体にとって喫緊の課題であり、地方への人の流れや関係人口の創出・拡大に向けた取組を行う必要がある。
そこで、関係人口に着目し、住所地以外の地域に継続的に関わる方々を登録し、地域の担い手確保や地域経済の活性化等につなげる仕組みとして、令和8年度中に「ふるさと住民登録制度」を創設することとしている。また、制度の創設に伴い、関係人口の充実・拡大等に向けた地方公共団体による幅広い取組を支援するため、制度の推進に要する経費について、新たに特別交付税措置を講じることとしている。
地域おこし協力隊について、現役隊員数を1万人とする目標の達成に向けて、戦略的な情報発信を行うとともに、任期延長特例の導入など、地場産業等の担い手の確保に向けた支援を強化することとしている。また、都市部企業の社員や退職したシニア層を即戦力として活用する「地域活性化起業人」について、令和7年11月からマッチングプラットフォームの運用を開始し、更なる推進を図っていくこととしている。
イ 地域経済の好循環による付加価値の創造等
人口減少・少子高齢化の進行が著しい地方において、地域力の維持・強化を図るためには、良質な雇用の確保が特に重要な課題となっている。
このことから、産官学金の連携により地域の資源と資金を活用した地域密着型事業の立ち上げを支援する「ローカル10,000プロジェクト」をはじめとした地方公共団体のローカルスタートアップの取組の加速化などにより、地域経済の好循環による付加価値の創造を図ることとしている。なお、「ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)」については、令和8年度から公費助成の上限額の引上げなど所要の見直しを行うこととしている。
また、地域人口の急減に直面する地域において地域産業の担い手を確保するための特定地域づくり事業協同組合制度については、関係市町村等への派遣に係る員外利用規制の緩和等を内容とする「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第15号)が令和7年3月に成立したところであり、引き続き組合の取組を支援することとしている。
ウ 過疎対策の推進
過疎地域は、国民の生活に豊かさと潤いを与え、国土の多様性を支える重要な役割を果たしている一方で、人口減少・少子高齢化等の厳しい社会経済情勢が長期にわたり継続し、地域社会を担う人材の確保、地域経済の活性化、交通機能や医療提供体制の確保、集落の維持等が喫緊の課題となっていることから、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」(令和3年法律第19号)に基づき、過疎対策事業債や国庫補助率の嵩上げ等の特例措置が講じられている。
令和8年度においては、過疎対策事業債について、過疎地域の持続的発展に資する事業を計画的に実施できるよう、地方債計画に対前年度比200億円増の6,100億円を計上するとともに、過疎地域における人材の育成や、ICT等技術を活用した取組等を支援する「過疎地域持続的発展支援交付金」について、前年度同額の8.0億円を予算計上している。
