第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応

6 財政マネジメントの強化

地方公共団体や公営企業が、中長期的な見通しに基づく持続可能な財政運営・経営を行うためには、自らの財政・経営状況、ストック情報等を的確に把握することが重要であり、地方公会計の推進、地方財政の「見える化」や公営企業の経営改革等に取り組む必要がある。

(1)地方公会計の整備・活用及び地方財政の「見える化」の推進

発生主義・複式簿記を採用している地方公会計は、現金主義・単式簿記では見えにくいストック情報の総体や減価償却費・退職手当引当金といった発生主義特有の行政コストなどの把握を可能とするものであり、把握した情報を資産管理や予算編成等に積極的に活用していくことが重要である。

令和6年度末時点において、令和5年度末時点の状況を反映した固定資産台帳については全団体の96.1%に当たる1,718団体が整備済みとなり、令和5年度決算に係る財務書類については、全団体の95.3%に当たる1,704団体が作成済みとなっている。

令和7年3月には、「今後の地方公会計のあり方に関する研究会」報告書(令和6年12月)を踏まえ、財務書類の情報充実や固定資産台帳の整理・精緻化等を図るために統一的な基準を改訂したところであり、この新たな基準に基づく財務書類等の作成・更新は、令和8年度決算を対象とする財務書類等の整備までに実施することが求められる。

また、地方財政の「見える化」については、「地方財政白書」、「決算状況調」、「財政状況資料集」等により積極的な情報開示を行ってきた。

財政状況資料集においては、各地方公共団体の性質別・目的別の住民一人当たりのコストや、ストックに関する情報について比較可能な形で公表するとともに、基金の使途・増減理由・今後の方針等について公表している。

地方公共団体においては、住民等に対する説明責任をより適切に果たし、住民サービスの向上や財政マネジメントの強化を図る観点から、住民等へのより分かりやすい財政情報の開示に取り組むとともに、公表内容の充実を図っていくことが求められる。

(2)公営企業の経営改革

公営企業は、料金収入をもって経営を行う独立採算制を基本原則としながら、住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供する役割を果たしている。急速な人口減少等に伴うサービス需要の減少や施設の老朽化に伴う更新需要の増大、職員の確保が困難になってきていることに加え、近年は、職員給与費の増加や物価高騰等により、公営企業を取り巻く経営環境がさらに厳しさを増している。これらを踏まえ、各公営企業が将来にわたりこうした役割を果たしていくためには、経営戦略の策定・改定や抜本的な改革等の取組を通じ、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図るとともに、公営企業会計の適用拡大や経営比較分析表*1の活用による「見える化」を推進することが求められる。

ア 公営企業の更なる経営改革の推進

(ア)経営戦略の改定の推進

経営戦略については、令和6年度末までに98.3%の事業が策定を完了している。

今後は、策定済みの経営戦略について、経営環境の変化を踏まえ、人口減少等を加味した料金収入の反映やストックマネジメント等の取組の充実により、中長期の収支見通し等の精緻化を図るとともに、料金改定や抜本的な改革を含め、収支均衡を図る具体的な取組の検討を行い、経営戦略の改定に反映させることで、実効性のある経営戦略となるよう取り組むことが求められる。

(イ)抜本的な改革の検討の推進

各公営企業が不断の経営健全化等に取り組むに当たっては、事業ごとの特性に応じて、民営化・民間譲渡、広域化等及び民間活用といった抜本的な改革等に取り組むことが求められる。令和6年度においては、第41表のとおり、広域化等80件、包括的民間委託48件などの取組が実施されている。

(ウ)公営企業会計の適用拡大等による「見える化」の推進

「公営企業会計の適用の更なる推進について」(令和6年1月22日付け総務省自治財政局長通知)において、地方公営企業法の財務規定等を適用していない公営企業のうち、下水道事業及び簡易水道事業については、特に公営企業会計を適用する必要性が高いことから、早急な適用を求めるとともに、その他の事業についてはできる限り公営企業会計を適用することを要請している。令和7年4月1日時点で、下水道事業については99.1%、簡易水道事業については97.7%の事業で適用された。

(エ)公営企業経営改善特例債の創設

今後も人口減少が続くことを前提に、これまで公営企業が提供してきた住民生活に必要なサービスを地域において持続的に提供していくためには、上下水道の広域化等をはじめとする公営企業の経営改善の取組を進めることが重要である。

しかしながら、これらの取組に伴い公営企業に係る特別会計の廃止等を行う際、不要な施設の撤去費など一般会計において一時的に多額の経費支出が必要となる場合がある。

地方公共団体が、こうした一般会計の負担を平準化し、必要な経営改善の取組を円滑に進めることができるよう、当分の間、公営企業経営改善特例債を発行できることとし、当該地方債を創設するため、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第221回特別国会に提出している。

対象経費は、施設及び設備の撤去並びに原状回復に要する経費、地方債の繰上償還に要する経費、一時借入金の償還に要する経費、退職手当の支給に要する経費、国又は地方公共団体から交付された補助金、負担金等の返還に要する経費、公営企業型地方独立行政法人の設立に際して必要となる資金等に要する経費としている。

なお、地方公共団体は、その起債に当たっては、総務大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならず、また、当該許可の申請をしようとするときは、あらかじめ、議会の議決を要することとしている。

イ 水道・下水道事業における広域化等の推進

水道・下水道事業の広域化等については、令和5年度末までに全ての都道府県において計画等が策定されたところであり、都道府県のリーダーシップの下、計画を着実に実施することにより、中長期の経営見通しに基づく経営基盤の強化を進めることが重要である。このため、広域化等に伴う施設の整備費等に対する地方財政措置を講じている。

ウ 公立病院経営強化の推進

公立病院は、地域における基幹的な公的医療機関として、へき地医療、救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算医療や高度・先進医療を提供する重要な役割を担っているが、医師不足や人口減少等により、厳しい状況が続いている。

このため、「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(令和4年3月29日付け総務省自治財政局長通知)を踏まえて策定した「公立病院経営強化プラン」に基づき、経営強化の取組を推進するとともに、各公立病院を取り巻く経営環境の変化を踏まえ、必要に応じプランの改定を行うよう要請している。

令和8年度においては、近年の物価高騰や人件費の増加等の厳しい経営環境の中、公立病院が地域に必要な救急医療などを引き続き提供できるよう、病院事業に対する繰出金として、令和8年度の地方財政計画に対前年度比476億円増の8,353億円を計上し、地方交付税措置を拡充するとともに、周辺人口が少ない等の不採算地域において、二次救急など地域医療の中核的な役割を担う不採算地区中核病院がその機能を維持できるよう、不採算地区病院と同様に、特別交付税措置の基準額を引き上げることとしている。

また、病院事業債の公立病院等に係る新設・建替等事業における建築単価の上限を引き上げることとし、令和7年度事業債から新単価を適用することとしている。

(3)経営・財務マネジメントの強化

地方公共団体の経営・財務マネジメントを強化し、財政運営の質の向上を図るために、地方公共団体の要請に応じてアドバイザーを派遣する経営・財務マネジメント強化事業(地方公共団体金融機構との共同事業)については、令和8年度も引き続き実施することとしている。



*1 各公営企業の経営及び施設の状況を主要な経営指標やその経年の推移、類似団体との比較により表し、分析を行ったもの

ページトップへ戻る