令和8年3月5日(木曜日)、北海道総合通信局は、北海道地域情報セキュリティ連絡会(以下HAISL ※)との共催により、道内企業や団体等のサイバーセキュリティレベル向上を目的に「サイバーセキュリティフォーラム北海道2026」を札幌市内の会場とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催。計96名に参加いただきました。
※HAISLとは、平成26年9月に設置された北海道における地域セキュリティコミュニティ(地域SECUNITY)。総務省北海道総合通信局、経済産業省北海道経済産業局、北海道警察本部が共同事務局を務め、情報セキュリティについての情報共有や啓発活動等を通じ、道内の個人・企業・団体・行政・教育機関等の情報セキュリティ意識を高めるとともに、情報セキュリティ人材育成に向けた環境整備を促進することにより、情報セキュリティ向上に資することを目的に活動しています。会長は、北海道情報大学 経営情報学部 システム情報学科 中島 潤 教授(令和7年7月〜)

主催者挨拶 和久屋局長
本フォーラムは「サイバーセキュリティ月間 ※※」関連イベントの一環として、4名の講師をお招きし、サイバーセキュリティに関する国の政策動向から人材育成、企業のリスク対策、警察の視点まで、今必要なテーマを幅広く網羅し、講演いただきました。
※※政府が毎年2月1日から3月18日までを「サイバーセキュリティ月間」と定め、産学官民の様々な主体が連携してサイバーセキュリティに関する普及啓発活動を集中的に実施しています。
講演(1) 総務省におけるサイバーセキュリティ政策の最新動向
総務省サイバーセキュリティ統括官室 企画官 梅城 崇師 氏
総務省 梅城企画官
サイバー攻撃から暮らしを守る―総務省の最新政策動向を紹介
私たちの暮らしを支えるインターネット。しかし今、サイバー攻撃の脅威が増大しており、攻撃関連通信は10年で10倍になり、国家を背景とした高度な攻撃も多く発生し、国民生活にも影響が出ています。サイバー安全保障分野の対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるため、2025年5月「サイバー対処能力強化法」が成立・公布。基幹インフラ事業者に対してインシデント報告等を義務付けつつ、国から分析情報等を提供する官民連携が開始されます。こうした中で総務省では、自宅のルーターなどIoT機器の脆弱性を調査し、脆弱な機器が見つかった場合、プロバイダを通じて注意喚起を行う「NOTICE」プロジェクトを実施。また、なりすましメール対策として、「DMARC」技術の導入を推進。さらに将来の量子コンピュータ時代に備えた暗号技術への移行も進めており、安心・安全なデジタル社会の実現に向け、官民一体で取り組んでいます。
講演(2) 北海道で語る、組織の未来のためにいまできること
− 国の研究機関による実践的サイバーセキュリティ人材育成の取組 −
国立研究開発法人情報通信研究機構サイバーセキュリティ研究所
ナショナルサイバートレーニングセンター
サイバートレーニング研究室 室長 花田 智洋 氏
NICT花田室長
サイバー攻撃から組織を守るために―継続的な学びが鍵
「13秒に1回、攻撃を受けている」―NICTのサイバー攻撃観測システム「NICTER」が示す現実です。特に深刻なのが医療機関へのランサムウェア攻撃であり、2021年以降、VPN装置の脆弱性を狙った同じ手口による被害が繰り返されています。ある病院の報告書には「過去の事例に十分学んでいなかった」との反省が記されています。
サイバー攻撃は突然発生します。「忙しい」「人が足りない」そんな日常の中でも、過去の事例から学び、対策を迅速に適用することが重要です。NICTでは実践的サイバー防御演習「CYDER」を全国で開催。初級から準上級まで選べるコースで、これまで3万人超が受講しました。継続的な教育で、組織の未来を守りましょう。
講演(3) サイバーリスクの経済学
― リスクベース対策アプローチとサイバーセキュリティ保険のグローバルトレンド
東京海上ホールディングス株式会社 IT企画部
Distinguished Cyber Security Architect
総務省サイバーセキュリティエキスパート 石川 朝久 氏
東京海上ホールディングス株式会社 石川氏
セキュリティ・システムは常勝を義務づけられ、攻撃者は一度勝つだけで良い
サイバー攻撃において、防御側は圧倒的に不利な状況にあります。最近では攻撃者もAIを積極的に活用し、攻撃の高速化・大量化が顕著になりつつある中、どう対策したらいいのでしょうか。カギとなるのは、「リスクの移転」です。リスク移転を行うサイバー保険加入は、リスクマネジメントの有効な手段として注目されています。今後は、リスクをゼロにするのは難しいという前提に基づき、想定される被害に応じた対策が必須となります。最優先すべきは何か、今一度立ち止まってみましょう。
講演(4)「北海道のサイバーセキュリティ情勢について」
北海道警察サイバーセキュリティ対策本部 対策・官民連携班長 佐々木 祐伴 氏
北海道警察 佐々木班長
あなたは大丈夫? ―道民の半数以上が「サイバー対策なし」
「自分は大丈夫」と思っていませんか?道警の調査によると、道民の55%が「特に対策をしていない」、36%が「不安を感じていない」ことが分かりました。その裏で不正アクセスの相談件数は急増しており、令和7年は1,657件と3年前の約2.3倍に達しています。
「被害に遭っていない」と答えた78%の方も、実は気付いていないだけかもしれません。最近、迷惑メールが減ったと感じる方もいるでしょう。これはDMARCという認証技術が効果を発揮しているためです。ところが今、多要素認証やパスキーといった新しいセキュリティ技術の導入が全国で進む中、道民は「セキュリティの波に乗り遅れている」可能性があります。完璧でなくても構いません。小さな一歩から対策を始めましょう。パスワードの変更、パスキーの設定など、今日からできることがあります。
また、会場後方ではNICTが開発したサイバー攻撃観測システム「NICTER」や、実践的防御演習「CYDER」の展示ブースを開設し、最新技術を“見て知る”機会としていただきました。
NICTの展示ブース
NICTERの展示
閉会挨拶 HAISL中島会長
参加者からは「道民のセキュリティ意識の低さには危機感を覚えた。今後はこれを意識し、社内の啓発活動を強化したい」との声もありました。
サイバー攻撃は年々巧妙化し、地域の企業・自治体にとっても他人事ではありません。今後も当局では、道内の企業・自治体等におけるサイバーセキュリティレベル向上に向けて、取り組んでまいります。
<参考>
・「サイバーセキュリティフォーラム北海道2026」の開催(令和8年2月16日報道発表)
https://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/2026/0216b.html
・北海道地域情報セキュリティ連絡会(HAISL)
https://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/D/haisl.html
・NCOサイバーセキュリティ月間2026(内閣官房国家サイバー統括室)
https://security-portal.cyber.go.jp/cybersecuritymonth/2026/