コロナが徐々に終息している中で、世の中がどのように変わっていくのか。その中でICTの利活用はどのように本質的な構造を変えるのか話していく。まずコロナが起きた2年間での経済環境の構造変化について。ここでは(1)コロナの感染状況に関する不確実性(2)AI・デジタル技術の一層の進展(3)オンライン・テレワークの拡大(4)SDGs、環境問題、社会課題への関心の高まり(5)地政学的な不安定性の拡大が挙げられる。
結論をまず申し上げるが、こういう時代において、デジタル化・ICTの更なる利活用がどの産業においても決定的に重要になってくることだ。不確実性の時代でデジタル活用が進んでいる中で、ICTの更なる利活用というのが大きなポイントになる。
いろいろな側面がデジタル技術によって変わり、リモートワーク、オンラインを活用することで、時間と場所にとらわれない働き方が可能になったと実感した。また、単なる働き方だけではなく、家事や育児、社会貢献活動などに幅が広がってくる。
一方、「場所」に焦点を当てると、リモートワーク、ワーケーションが多地域居住・多地域就労を現実のものにした。このことは、地方創生のさまざまな取組に向けて可能性を大きく広げるのではといわれている。
ひとつの技術がひろがっていくことで、我々の働き方、生活の仕方、あるいは居住の仕方、それらが地方と都市の関係を変え、うねりとなってくることが予想される。
一方、ICTの利活用というと、技術ばかりに目が行きがちだが、基本的大前提として、法制度、行政のサービスを対応させていくことが重要。
今後ますます人手不足が懸念されるなか、行政の効率化(デジタル化)をいかに進めていくかが、各自治体の大きな課題となってくるだろう。
ICTを利活用した町づくりというと、技術先行型になりがちになるが、技術やICTの利活用はあくまでも手段。手段であるデジタル化、ICTの利活用が目的化してしまうと、住民にとって逆に使いづらくなってしまうこともある。ICTの利活用も大事だが、町づくりの場合は、まずは、住民側のニーズをいかにくみ取るか、何に困っていて、何を解消してほしいのか、何を必要としているのかをしっかり把握して、技術や新しいサービスを利用して実現させていくというステップで考えていく必要がある。目標設定をしっかりやってこそ、ICTを利活用した町づくりがしっかりしたものになっていく。目標設定のためにデジタルを活用し、データの収集、ニーズの収集を行いそれを、町づくりのデジタル化・ICTの利活用につなげていく、このつなげていく作業を人間がしっかりやっていかなければいけない。
講演会終了後には、聴講者から受け付けた質問に対し、柳川教授から御回答をいただきました。
2番目の質問になるが、取り残されない方々を作っていくというのも重要なところだが、大事なポイントは、それを理由に「デジタル化しない」とならないこと。せっかく享受できる技術革新のメリットを誰もが手に入れられなくなってしまう。デジタル化やICT活用をしつつも、そこで困る人たちに対してもしっかりとしたサポートをしていくという組み合わせを考えることだと思う。高齢者の方がどう操作したら良いかわからないという実態は、デジタル技術サービスの未熟さだと思っている。デジタル技術は、もっとユーザーフレンドリーであるべきで、誰でも当たり前のように使えることこそ本当のデジタル技術と考える。そういう方向で技術革新を期待したいところだが、まだ十分でない以上、しっかりリアルに人がサービスを提供していくということが大事だと思う。
本講演会を聴講された方からは、「非常に興味深い話題を丁寧で分かりやすかった。日本でデジタル化が進まないといったお話など、ホンネの部分についても大変参考になりました。」「建設業ですと、ICT利活用ができるケースが少ないのが現状です。現場はどうしてもアナログなため、部分的なICT利活用になってしまいます。ビジョン⇒ニーズ⇒ソリューションのお話しは、参考になりました。」他、多くの感想が寄せられました。
総務省関東総合通信局では、引き続き、関東情報通信協力会との共催による講演会やセミナーなどの企画を行って参ります。