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【関東総通】e-コムフォKANTO

令和8年1月7日
関東総合通信局

ICTコラボレーションセミナー2025
『「伝統知×テクノロジー」で安らぎと活力に満ちた社会の実現へ』 を開催

 総務省関東総合通信局(局長:内藤 茂雄(ないとう しげお))は、関東情報通信協力会(会長:引馬 章裕(ひくま あきひろ)株式会社NTTドコモ 執行役員 ネットワーク本部長)との共催により、令和7年12月5日(金曜日)に京都大学 人と社会の未来研究院 副研究院長・教授 熊谷 誠慈氏をお迎えし、ICTコラボレーションセミナー2025 「伝統知×テクノロジー」で安らぎと活力に満ちた社会の実現へを開催しました。
 本セミナーはICTに関連する知識の普及、利用の発展を図ることを目的としてタイムリーなテーマを取り上げて開催しているものであり、関東情報通信協力会会員の他一般参加者を対象にオンラインで実施しました。

演題:「伝統知×テクノロジー」で安らぎと活力に満ちた社会の実現へ
講師:京都大学 人と社会の未来研究院 副研究院長・教授 熊谷 誠慈 氏

 熊谷先生講演の様子

 熊谷先生

 主催者挨拶の後、講師の熊谷氏から、仏教経典を学習させ開発した仏教対話AI「ブッダボット」を含む「思想AI技術」について御紹介いただき、歴史やアイデンティティ、知恵の保全等の観点から、現代社会における「伝統知テクノロジー」の可能性について御講演をいただきました。概要は次のとおりです。

 私は浄土真宗の住職であり、古文書の研究者として、「紙と鉛筆」のみで行う研究から2500年前の仏教の知恵と最新テクノロジーの融合に挑んでおります。発端は「いつでもどこでもブッダに相談できたら」という素朴な願いがあり、2021年に仏教対話AI「ブッダボット」を公開しました。その後「親鸞ボット」「世親ボット」へと多様化させ、テキストだけでなくARを用いた視覚・聴覚・一部触覚のマルチモーダル対話にもすそ野を広げました。日本の仏教界からの公式要請はまだございませんが、他国においてはすでにブータン政府からの強い要望があったことで同国への導入を開始しており、宗教界・教育界での活用に向けた議論やモニター利用を進めています。

 開発した「ブッダボット」の初期版は非生成系AIにより構築されており、経典のQ&Aをベクトル化して関連度の高い文を抽出することで、不自然な日本語や出典不明の回答を避けることに取り組みました。その中で、世の中で生成AIが発展したことを受け、2023年には、高精度の文章出力・説明が可能である当時のGPT4を組み合わせて「ブッダボット+」を公開しました。構造としては、まず経典原文を提示し、次に補足説明を置くという二段構えとしており、これによりハルシネーションの影響を最小化しています。また、ELSI(倫理・法・社会)の観点では出典の透明性と著作権に最大限配慮し、学習データは私どもの自前翻訳を中心に整備しました。
  宗教とAIの関係では、AIが信仰対象化するリスクや、僧侶の役割変容を直視し、悪用防止とガイドライン整備を並行して進めています。また、テキスト対話からさらに発展して、寺院のデジタルツインや聖者アバターを構築する「テラバース構想」を掲げています。これは寺院が減少している昨今において、宗教空間の体験の再設計に寄与しうるものであり、手法としては社会実装しやすいARに軸足を置き、現実空間に重ねるかたちで体験価値を拡張することを趣旨としています。
  今後、仏教外の分野についても思想AIを応用し、仏教以外の宗教思想への拡大(※)に加え、経営理念・人材支援・介護・エンタメなどで分身AIや企画支援を提供するべく、株式会社テラバースを創業し、市場そのものの創出にも取り組んでおります。

  このような「伝統知×テクノロジー」の流れは宗教の刷新にとどまらず、地域のDXとAI化に人文学的分析を重ねることで、失われつつあるローカルなアイデンティティを正確に収集・解釈・継承する力になると考えます。
  重要なのは「失われる前に回収すること」、そして「誤解なく使える形へ整えること」です。私は、倫理・著作権・誤信誘導のリスク管理を徹底しつつ、仏教AIや思想AIの社会実装を段階的に進め、誰もが安らぎと活力を得られる社会の実現に微力ながら貢献したいと考えております。本講演の話題提供が、その議論の土台となれば幸いです。

 講演終了の後、ブッダボットの実演、講師と参加者との質疑応答が行われました。

 ブッダボットの実演においては、参加者から「利益や成長への執着は事業を誤った方向に導くでしょうか」等の相談があり、『仏教の教えによれば、利益や成長への過度の執着は、道徳や倫理を無視した行動を引き起こす可能性がある。』というブッダボットの回答に合わせ、講師から「これは『スッタニパータ』という教典の文言を引用しており、利益や成長への執着が道徳・倫理を無視する場合、事業は誤った方向に進み得る一方で、善い目的に根ざした欲求や努力であれば、利益や成長は従業員・株主・社会への還元につながり、事業を良い方向へ導くということが示唆されています。結論として、何をするにも、明確なフィロソフィーと倫理観を軸にして取り組むことが、持続可能で調和の取れた成長を可能にするという趣旨と解釈できます。」と御解説をいただきました。

  質疑応答においては、参加者から「伝統知のデジタル化・公開において、文化的真正性・機微な情報、教典における聖域的な部分の取り扱いへの配慮、現代的な文脈から読み取られる際の、儀礼の切り出しや文脈の欠落による誤解のリスク等、原典と照合した際の真正性とのバランスの担保等、特に留意したポイントがあれば御教示ください。」等の質問があり、講師からは、「宗教としての仏教の尊厳と価値を毀損しないことを最優先にし、安易な一般公開を避けて段階的に進めている。ボット化した知識は誤解を招き得ることについて、利用者向けの周知をするとともに、学識の高い僧侶による出力の逐一確認・改善を実施の上、問題が生じた場合は開発者と宗教側(中央総院)が責任を持つガバナンス体制を整えている。文化的真正性と現代的利用可能性のバランスを担保しながら、品質向上を継続していきたい。」と御回答をいただきました。

 参加者からは、「AIのおもしろい使い方だと思い視聴しました。マネタイズが難しいとは思いますが、本件に限らず「伝統」全般に言えることだとも思います。」「仏教という伝統的な文化とAIという一見組み合わせられないと思われるような事柄を組み合わせている所が興味深かった。」他、多くの感想が寄せられました。

 関東総合通信局では、引き続き、関東情報通信協力会との共催により、ICTに関連した様々なテーマによる講演会やセミナー等の企画を行って参ります。

(※)新たにキリスト教に軸足を置いたAIボットの開発を発表。(2025年12月17日付) 別ウィンドウで開きます

連絡先
総務省関東総合通信局
総務部企画課
担当:尾之上、杉田
電話:03-6238-1631

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