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【関東総通】e−コムフォKANTO

平成30年1月26日
関東総合通信局

「戦略的情報通信研究開発セミナー2018」を開催

 関東総合通信局は、平成29年12月21日(木曜日)、東京都港区の機械振興会館において、電子情報通信学会東京支部との共催により、「戦略的情報通信研究開発セミナー2018《SCOPE成果の更なる展開に向けて》」を開催しました。
 セミナーでは、特別講演、SCOPEの地域ICT振興型研究開発を終了した研究者による成果発表、総務省からSCOPE及びI-Challenge!の公募概要説明、国立研究開発法人情報通信研究機構からJGN/NICT総合テストベッドとSCOPEでの活用について説明を行いました。
 参加した大学や民間企業の研究者等は、熱心に聴講していました。
 
主催者挨拶をする関 関東総合通信局長(左)と、伊丹 電子情報通信学会東京支部長(右)
主催者挨拶をする関 関東総合通信局長(左)と、伊丹 電子情報通信学会東京支部長(右)

《特別講演》

 本セミナーでは、はじめに「チャットボットはビッグデータの夢を見るか?」と題し、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) ユニバーサルコミュニケーション研究所(UCRI) データ駆動知能システム研究センター(DIRECT) センター長 鳥澤 健太郎(とりさわ けんたろう)氏から特別講演がありました。
 鳥澤氏は、現在のチャットボットが実際に可能な対話は、非常に限定的であり、プログラマーが作り込む世界であること、チャットボットは膨大なテキストデータ、つまり、ビッグデータを理解して使いこなすことができなければならないと述べました。
 また、NICTが取り組んでいる次世代音声対話システム「WEKDA(ウェクダ)」(WEb-based Knowledge Disseminating dialog Agent)については、WEKDAは、NICTが一般に試験公開している大規模Web情報分析システムWISDOM Xを用いて、40億件以上のWebページの情報をベースに、先端技術から日常生活の話題までユーザの幅広い音声入力に応答し、知識を提供する音声対話システムであること、その特徴として、ユーザが興味を持ちそうな知識を尋ねる質問を自動的に生成し、Web40億ページから抽出されたその質問の回答をつかって応答を行うので、あらかじめ対話のルールを教える必要がないシステムであることを、実際の対話事例を紹介しながら説明されました。
 また、今後の課題として、ユーザのことをよく知った上で、ユーザに寄り添い、目的を持って有益な雑談等を行える擬似的な人格を持った、例えば、教育用や高齢者向けの対話エージェントの開発、大量の学習データの構築や基礎的なテキスト解析の精度向上も必須であることを説明されました。
 そして、WEKDAを支える技術の1つとして、対災害SNS情報分析システム(DISAANA)について、熊本地震、九州北部豪雨の災害時の使用例を挙げて説明されました。
 最後に、まとめとして、チャットボットの人格、目的といった哲学的な概念をどう実装するのかという本質的問題は未解決であること、深層学習でテキストのビッグデータの処理や対話は大きく進歩しつつあるが、高精度が実現できない場合も多々あるということ、基本的に学習データは人が作らなければならないことを述べ、講演を終了しました。
鳥澤 健太郎 氏
NICT ユニバーサルコミュニケーション研究所 データ駆動知能システム研究センター
センター長 鳥澤 健太郎 氏

《平成28年度終了「SCOPE地域ICT振興型研究開発(関東総合通信局管内)」研究成果発表1》

 続いて、国立大学法人宇都宮大学 工学研究科 客員教授 渡辺 裕(わたなべ ゆう)氏から、「観光客の満足度向上のための情報提供技術の研究開発」の研究成果発表がありました。
 渡辺氏の研究は、世界遺産である「日光」の観光による地域活性化のため、情報の量ではなくその場にフィットした観光客の興味を引き期待を高める情報をBLE(Bluetooth Low Energy) ビーコンを活用して提供する仕組みを構築し、新たな日光旅の創出によるリピータの増加、また、簡易な操作法によりスマートフォンの楽しみを広げ、日本のモバイルサービスを海外からの観光客を通じて世界にアピールするものです。
 具体的な仕組みについては、BLEビーコンを東武日光駅から日光東照宮の間に約30個設置し、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンでBLEビーコンの近くを通ると、最寄りの名所案内、店舗情報をプッシュ表示する仕組みを構築した旨を説明しました。
 開発にあたり、BLEビーコンの到達範囲・動作時間などを調査して、その設置場所を決め、また、本研究開発のアプリを念頭においた旅行者に対するアンケート調査を実施し、観光に必要な要素を精査する作業を実施した旨を説明しました。
 また、旅行者の心理モデルに着目し、Zeigarnik Effect(不完全な部分があると、それを完全なものにしたくなり、それに関する記憶が長続きするという心理的効果)を利用したクイズが有効であることを確認し、旅の記憶の定着化が強まったことを説明しました。
 最後に、今後の展開として、太陽電池の利用により保守性を向上したBLEソーラービーコンを戦場ヶ原まで拡大して設置し、ハイキングに特化したアプリケーションを開発すること、文化的差異に対応したレストラン情報のビーコンを利用した提供サービスの開発、災害時に観光客に対して緊急時支援情報を多言語等で提供するための拡張機能の開発等について述べ、発表を終了しました。
 
国立大学法人宇都宮大学 工学研究科 客員教授 渡辺 裕氏
国立大学法人宇都宮大学 工学研究科 客員教授 渡辺裕 氏

《平成28年度追跡評価実施「SCOPE地域ICT振興型研究開発(関東総合通信局管内)」研究成果発表2》

 続いて、公立大学法人山梨県立大学 国際政策学部 国際コミュニケーション学科 教授 八代 一浩(やつしろ かずひろ)氏から、「公共交通機関が未発達な地域における高臨場感遠隔学習支援システムの研究開発(委託研究開発期間:平成24から25年度)」について、委託期間終了後のSCOPE成果の更なる展開についての成果発表がありました。
 当初の研究では、地方の小学校で生徒数が減少する中、子供の教育においては他の生徒との対話が不可欠であることに鑑み、学校間を接続して小学生が高臨場感の中で遠隔学習が行えるシステム(edutab)を開発したこと、本システムと併用して、教師と生徒の間で教材のやりとりや添削をリアルタイムで実現するため、生徒が一人一台タブレット端末を活用したことなどを説明しました。
 開発するにあたり、八代氏は、edutabを実現する上で(1)学校間をシームレスに接続する技術、(2)遠隔機器制御技術、(3)臨場感を感じるインターフェイス技術の3つの技術課題を設定し、実際に山梨県立大学と外国人日本語学校を結び実施した日本語遠隔教育の様子や、山梨県北杜市の高根北小学校と岩手県山田町の山田北小学校を結び実施した遠隔授業の様子を交えながら、各課題を解決する機能をedutabに実装したことを説明されました。
 また、SCOPEの委託期間終了後も、八代氏は、文部科学省の「地(知)の拠点整備事業(COC)」により、サーバ機能を小型PC(Raspberry Pi)に実装し、無線LAN AP機能を有したedutab boxを開発したこと、同じく同省の「少子化・人口減少社会に対応した活力ある学校教育推進事業」により、複数の学校(実証では甲州市の3校)をネットワーク接続して遠隔協調学習を行い、甲州市の他の地域でも同様の取組が始まっていることを説明されました。
 更に、上越教育大学との共同研究でedutabでの活動を記録・閲覧する仕組みとしてedulogを開発して教師の授業記録や学習者の相互評価などの授業実践を行っていること、長岡技術科学大学・東京高等専門学校との共同研究で、edutab boxを活用して、アクティブ・ラーニング中の学習者の行動を定量化・可視化し、それをAIを用いて分析し、教師への支援に役立てる方法について研究を行っていることを説明されました。
 最後に、商用化・シェアウェア・授業手法とのパッケージ等による普及と、商用化のビジネスモデルが課題となっていることについて述べ、発表を終了しました。
公立大学法人山梨県立大学 国際政策学部 国際コミュニケーション学科 教授 八代 一浩氏
公立大学法人山梨県立大学 国際政策学部 国際コミュニケーション学科 教授 八代一浩 氏

《総務省施策説明について》

 総務省施策説明は、「SCOPEの公募概要」について、総務省 国際戦略局 技術政策課 技術企画調整官 岩間 司(いわま つかさ)が、「I-Challenge!の公募概要」について、同 係長 高橋 雄偉(たかはし ゆうい)が、それぞれ説明を行いました。

《国立研究開発法人情報通信研究機構施策説明について》

 国立研究開発法人情報通信研究機構施策説明は、「JGN/NICT総合テストベッドとSCOPEでの活用」について、国立研究開発法人情報通信研究機構 ソーシャルイノベーションユニット 総合テストベッド研究開発推進センター テストベッド連携企画室 専門調査員 鷹取 耕治(たかとり こうじ)が説明を行いました。
 
国立研究開発法人情報通信研究機構施策説明の様子
岩間調整官 (左)、高橋係長(中央)、 鷹取専門調査員(右)


※戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)
Strategic Information Communications R&D Promotion Programme

連絡先
総務省 関東総合通信局
情報通信部情報通信連携推進課
担当:道祖土、田村
電話:03-6238-1680

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