九州総合通信局は、一般社団法人九州テレコム振興センターとの共催により、平成31年2月7日(木)、鹿児島県市町村自治会館(鹿児島市)において、「平成30年度地域ICT/IoT実装推進セミナーin鹿児島」を開催し、各団体、企業等から64名の参加がありました。
このセミナーは、地域におけるICTの利活用やIoTの実装にあたって、先進事例等を紹介することにより、地域の課題解決や活性化に役立てていただくことを目的に毎年開催しているもので、セミナーでは、総務省の施策及び九州におけるIoT実装推進の取組について説明するとともに、総務省地域情報化アドバイザーによる講演と、防災分野における2件の取組事例の紹介、パネルディスカッションを行いました。
【開会挨拶】 九州総合通信局長 森 孝
<森局長>
【総務省説明1】「ICT/IoT/AI/RPA実装に向けた総務省の取組」
総務省情報流通行政局 地方情報化推進室長 松田 昇剛
地方では18歳から19歳の若者が東京などに転出し東京だけ子供が増加している。西暦2042年には高齢者人口が約4,000万人のピークを迎えるであろうとの説明に続き、Society5.0の実現に向けた取組のほか、地域IoT実装推進に係る各種支援策、情報化アドバイザーの紹介など、総務省の各種取組についての話がありました。また、平成29年度末時点における都道府県・市区町村に対するICT/IoT活用の有無等に関するアンケート調査結果の紹介があり、国に期待する役割として補助事業等による財政支援が最多であるとの説明がありました。
<情報流通行政局 松田室長>
【総務省説明2】「九州におけるIoT実装の推進」
九州総合通信局 情報通信振興課長 松下 邦裕
地域IoT実装推進に向けた九州地区の「斜めの糸」の取組として設置した「九州IoT実装ワーキンググループ」の活動状況や、管内におけるIoTサービス創出支援事業の実施状況及び九州管内で採択された事業についての紹介のほか、実装推進に係る各種支援事業について説明しました。
<松下課長>
【講演】「防災減災とオープンデータ」
株式会社ローカルメディアラボ 代表取締役 牛島 清豪 氏(総務省地域情報化アドバイザー)
オープンデータとはどのようなものか、オープンデータの意義についてのお話をはじめ、特に災害時に必要となる医療機関、公衆トイレ、指定緊急避難場所や公共施設の一覧を含む「推奨データ」について、自治体や企業が保有している情報の集約の必要性を説明されました。また、データは「組み合わせる(マッシュアップする)ことで価値を生み出す」という観点から、具体的な事例を紹介しながら説明されました。
<牛島氏>
【事例紹介1】「災害対応工程管理システム”BOSS”の概要と今後の展開について」
熊本県危機管理防災課 課長補佐 大村 克行 氏
熊本県における先進事例として、総務省の平成29年度地域IoT実装推進事業により整備された「災害対応工程管理システム”BOSS”」の概要と今後の展開について紹介いただきました。
システム開発の背景には、平成28年熊本地震での対応で、マニュアル等の不徹底が課題として顕在化したこと、膨大な県地域防災計画から必要とする情報を素早く把握することが困難であったことの反省があり、システム開発までの流れや今後の事業展開について紹介されました。平成31年度には、熊本県内の85%にあたる36市町村で”BOSS”の導入が予定されています。
<熊本県 大村課長補佐>
【事例紹介2】「平常時においても利活用可能なIoT×G空間情報防災支援システムの構築事業」
糸島市総務部危機管理課主事 田中 良一 氏
平成29年度地域IoT実装推進事業により導入した「IoT×G空間情報防災支援システム」について紹介いただきました。
このシステムは「情報収集システム」と「防災業務支援システム」から構成されており、災害対策本部・現場・避難所それぞれの職員が、リアルタイムで更新される情報を確認しながら担当業務をスムーズに行うことを可能にしたものです。平成30年7月豪雨をはじめ、防災訓練においても活用されました。災害時だけでなく、平常時においても街路灯管理や交通事故発生箇所の表示に活用されています。
今後の課題として、システム操作担当職員の育成や市職員以外の災害対応関係者(消防・警察・自主防災組織等)とのシステム共有、平常時のシステム利用促進に向けた庁内でのPRを挙げられました。
<糸島市 田中主事>
【パネルディスカッション】
はじめに、ショートプレゼンテーションとして、地域情報化アドバイザーである鹿児島大学学術情報基盤センターの升屋教授から、「九州におけるICT基盤整備〜防災の観点から〜」をテーマにお話をいただきました。情報通信基盤は防災・減災に不可欠なものであるが、災害が起こるとその基盤も被災することから、災害を想定した情報通信基盤整備の必要性を説明されました。
<鹿児島大学 升屋教授>
その後、「地域における防災・減災につながるICTの利活用」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。
コーディネーター:総務省情報流通行政局 松田 昇剛
パネラー :鹿児島大学 升屋 正人 氏
株式会社ローカルメディアラボ 牛島 清豪 氏
熊本県 大村 克行 氏
糸島市 田中 良一 氏
パネルディスカッションでは、「slido」というシステムを使い、スマートフォンやタブレットから参加者が入力した質問がリアルタイムで登壇者や他の参加者に共有され、出された質問に対するコーディネーターやパネラーのコメントに並行して、コーディネーターから出される「お題」に対する答えを各パネラーがそれぞれスケッチブックに書き込み発表しました。
ディスカッションでは、コーディネーターから『災害時の防災情報共有を阻む壁は何か』との問いに対し、パネリストから災害発生時の庁内業務に関して、「市町村の共有システム不統一による情報収集の難しさ」や「縦割りや前例にとらわれることの弊害、フォーマットが不統一で散在している」との発言や、情報基盤や情報格差の課題に関して、「情報通信基盤整備やツール、人材など様々な格差がある現状」や「世代間の情報交換不足」などの問題提起がありました。
その後、その「壁」を乗り越える手段として、パネリストから「協働をキーワードとした地域住民と役所とのコラボ」や「産学民のフラットな組織による人手を介さないデータの構造化」、「システムの多重化、日頃からの訓練の重要性」などの提言がありました。
最後に、コーディネーターがまとめを行い、「今回紹介された災害運用工程管理システム(BOSS)やG空間情報防災支援システムは、災害発生時の様々な場面で状況判断に役立つものである。事業継続に係る人材育成の取組や各種オープンデータの組み合わせにより新たな価値を生み出していくことが重要である。」ことを強調されパネルディスカッションは終了しました。
<セミナーの様子>
九州総合通信局では、様々な地域課題を解決するため、地域における効率的で効果的なICTの利活用やIoTの実装を推進してまいります。
お問合せ先:情報通信振興課 096-326-7825