九州総合通信局は、令和6年10月28日(月)、一般社団法人九州テレコム振興センター(KIAI)との共催により、会場及びYouTubeLiveによるオンライン配信のハイブリッドにて、「九州ICTセミナー2024」を開催し、全国から200名を超える皆様にご参加いただきました。
本セミナーでは、「DXがもたらすサステナブルな社会」をテーマに、AI、IoT及びDXによる地域課題の解決方策、セキュリティの最先端である量子暗号通信の最新動向及び光電融合技術の研究開発などを紹介しました。
はじめに共催者を代表し、中西悦子九州総合通信局長が挨拶を行いました。
本セミナーはICTに関する最新トレンド等をテーマに毎年開催しており、今後、サステナブルな観点からDXを推進する上でのヒントを得ていただくとともに、重要情報を扱う分野での安心・安全な通信を可能とする量子暗号技術や、生成AIの普及等によって増え続ける電力消費の問題に対する光電融合技術の最新動向を紹介し、DXの推進に役立てていただくよう呼びかけました。
【講演内容】
(1)研究・教育機関講話(50分)
「サステナブルな地域社会のDXとは?」
講師:青森大学 ソフトウェア情報学部 教授 下條 真司 氏
はじめに、消滅可能性自治体など地域の衰退が問題となっており、四年制大学への進学率などで地方を中心に二極化が進んでいるが、これには新しい資本(=データ)も関わっていて、現状は、GAFAなどのプラットフォーマーが、提供するサービス以上のデータを利用者から搾取し蓄積する一方、利用者はデータ労働をさせられるという「デジタル封建制」の状況にあり、生成AIの普及でGAFAの利益はより大きくなっていると説明がありました。
そのうえで、これを解消するためには、地域情報共有基盤を構築してデータのフェデレーションにより、市民がデータをハンドリングできる「新しい市民民主制」が必要であると紹介されました。
また、大阪広域データ連携基盤では、DXにより民間と行政のデータの連携を進め、市民のニーズに応じた行政やAIによる公共工事の円滑化などに取り組まれていることが紹介され、最後に、そうしたデータ連携による価値を創造し、地域で出来た情報を地域でうまく消費する「情報の地産地消」を進めることで豊かな地域社会を実現し、次の社会の発展につながることが期待されるとお話しがありました。
(2) 研究事例紹介(50分)
「我が国における安心・安全をもたらす量子暗号技術の開発動向」
講師:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 量子ICT協創センター 研究センター長 藤原 幹生 氏
はじめに、量子とは量を計る最小単位であり、量子状態とは粒子の性質と波の性質の双方が発現する状態であることなど量子の基礎について説明されました。
次に、量子鍵配送(QKD)・量子暗号について、情報を光のエネルギーの最小単位である光子に変換し暗号鍵共有を行うことで分割して情報を盗み出すことを防ぎ、どんな盗聴も確実に検知し情報漏えいを完全に防止する仕組みなどの説明がありました。
また、我が国の量子鍵配送装置が鍵共有速度や最大距離の観点及び暗号鍵生成量の装置コストにおいて諸外国と比較し優位であることや、NICT小金井本部を中核に構築されたTokyo QKD NetworkによるQKD装置の技術・サービスの検証の取組などが紹介されました。
続いて、電子カルテやゲノムデータ、金融分野などへの量子暗号・量子セキュアクラウドの社会実装計画、さらには大陸間での量子鍵配送を可能とする衛星量子鍵配送の開発状況などが紹介され、最後に、国際規格の認証を取得した量子暗号装置を世界に先駆けて市場投入することやグローバルネットワーク化の将来展望などが示されました。
<国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 藤原氏>
(3) 民間企業事例紹介(50分)
「AI時代を見据えたIOWNの取組み」
講師:日本電信電話株式会社(NTT)研究開発マーケティング本部
研究企画部門IOWN推進室 担当部長 古賀 一也 氏
はじめに、近年のインターネットの情報流通量及びIT機器消費電力量の急増と、世界のデータセンタ(DC)のデータ量・消費電力の増加が加速し、DCの新規建設を一時停止する国が現れている状況などが問題提起されました。
続いて、NTTにおける光電融合技術の研究開発状況が説明され、GPUなどPCのアクセラレータを、CPUを介さず光で直接つなげるIOWNコンピューティングの構造や、ネットワークの全区間を光でつなぎ高速大容量、低遅延、低消費電力を実現するALL-Photonics Network(APN)の技術開発ロードマップなどが紹介されました。また、APNによって分散型DCが可能となり、再生エネルギーの地産地消を実現できることや、遠隔での手術や建設重機の操作なども実現可能となることも紹介されました。
最後に、生成AIによる大規模言語モデル(LLM)が大規模化すると膨大な電力が必要となることから、AI自体を低消費電力化することや、APNにより遠隔地のDCを利用して発電所近くでのLLM学習環境を実現するなど、将来のAI/LLMの連携基盤としてのIOWNの活用、社会課題解決の実現に向けた取組が紹介されました。
九州総合通信局では、引き続き、九州テレコム振興センター(KIAI)ほか関係機関と連携して、ICTの利活用やDXを推進する取組を支援してまいります。
共催の九州テレコム振興センター(KIAI)による九州ICTセミナー2024の開催報告及び本セミナーの一部講演資料は、
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お問合せ先:情報通信連携推進課 096-326-7314