総務省では安全な電波利用の一層の徹底を図るため、 関係法令(注)により、無線局の開設者に電波の強さに対する安全施設を設けることを義務づけています。 これにより、安全で安心できる電波利用環境が整備されています。
(注) 電波法第30条及び施行規則第21条の3
制度の概要
電波の強さに対する安全施設
人が通常出入りする場所で無線局から発射される電波の強さが基準値を超える場所がある場合には、無線局の開設者が柵などを施設し、一般の人々が容易に出入りできないようにする必要があります。なお、適用が除外される無線設備として以下のものが挙げられます。
- 平均電力が20mW以下の無線局の無線設備
- 移動する無線局の無線設備
- 地震や台風などの非常事態が発生、または発生するおそれがある場合において臨時に開設する無線局の無線設備。
電波防護の基準値とは
電波の人体に与える影響について
これまで50年以上の研究により、人体が強い電波にさらされると体温が上昇する作用や、周波数が低い場合には体内に起こされた電流が神経を刺激する作用があること、また、電波の強さによる人間の健康への影響が明らかにされています。このような科学的な知見に基づき、十分な安全率を考慮した基準値(電波防護指針)が策定され、我が国のみならず世界各国で活用されています。この電波防護指針値を満たせば人間の健康への安全性が確保されるというのが国際的な考えとなっています。
わが国の電波防護指針値
わが国の指針については総務大臣の諮問機関である電気通信技術審議会(平成13年1月6日からは情報通信審議会)から答申が出されています。この答申では、動物実験等の結果に基づき、影響が生じる閾値(いきち)に約50倍の安全率をみて、一般の人々の指針値(一般環境)を定めています。
わが国を含む世界60カ国が参加しているWHO(世界保健機関)国際電磁界プロジェクト
WHOは、電波の発生源が多様化・拡大する中で、電波が健康に及ぼす影響に対する公衆の高い関心に応えるため、1996年に国際電磁界プロジェクトを発足させました。現在、国際がん研究機関(IARC)や国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの国際機関および、わが国をはじめとする60カ国がこのプロジェクトに参加しています。
安全で安心な電波の利用に向けた取組み
総務省では、電波による健康への影響について評価を行い、電波防護指針の根拠となる科学的データの信頼性向上を図るため、平成9年度より10年間、生体電磁環境推進委員会を開催しました。その結果、携帯電話基地局及び携帯電話からの電波が人体に影響を及ぼさないなど、現時点では、電波防護指針値を超えない強さの電波により、非熱効果を含めて健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められないと考える。などを内容とする報告書が平成19年4月に公表されました。また平成20年6月に生体電磁環境に関する検討会を設置し、電波の安全性に関する研究を推進するための提言や、電波防護指針の評価・検証等を行っております。平成27年6月に公表した報告書では、電波の人体への影響について長期的影響の存在を示す確かな科学的証拠は発見されていない等とされています。
なお、電波の安全性に対し正しい情報を提供するため各総合通信局(沖縄総合通信事務所)において、電波の安全性に関する講演会を開催しています。
無線局を開設するみなさんへ
本制度導入により、無線局の開設者は、免許申請時に基準値への適合を確認するとともに、次のことに注意する必要があります。
1.わが国の電波防護指針値
人が通常出入りする場所における電波の強さが、表1及び表2に示した基準値以下であることを確認し、その結果、基準値を超えるおそれがある場合は安全施設を設けることとした上で、工事設計書の「その他の工事設計」欄に電波法第3章に規定する条件に合致している旨を記載して下さい。
免許申請時には、原則として、検討資料や施設の図面を提出する必要はありませんが、総務省での審査に際し必要があると認めるときは資料の提出を求められることがあります。
表1 電波の強さ(6分間平均値)の基準値(一般環境)
周波数
(f) |
電界強度の 実効値
(E[V/m]) |
磁界強度の 実効値
(H[A/m]) |
電力束密度
(S[mW/cm2]) |
100kHz-3MHz |
275 |
2.18/f |
- |
3MHz-30MHz |
824/f |
2.18/f |
- |
30MHz-300MHz |
27.5 |
0.0728 |
0.2 |
300MHz-1.5GHz |
1.585√f |
√f/237.8 |
f/1500 |
1.5GHz-300GHz |
61.4 |
0.163 |
1 |
注1 fはMHzを単位とする周波数(例:900MHzなら900、1.5GHzなら1500の数値)
2 人体が電波に不均一にばく露される場合その他総務大臣がこの表によることが不合理であると認める場合は、総務大臣が別に告示するところによるものとする。
3 同一場所若しくはその周辺の複数の無線局が電波を発射する場合又は一の無線局が複数の電波を発射する場合は、電界強度及び磁界強度については各周波数の表中の値に対する割合の自乗和の値、また電力束密度については各周波数の表中の値に対する割合の和の値がそれぞれ1を超えてはならない。
表2 電波の強さ(瞬時値)の基準値(一般環境)
周波数
(f) |
電界強度の 実効値
(E[V/m]) |
磁界強度の 実効値
(H[A/m]) |
磁束密度の実効値
([T]) |
10kHzを超え
10MHz以下 |
83 |
21 |
2.7×10-5 |
注1 人体が電波に不均一にばく露される場合その他総務大臣がこの表によることが不合理であると認める場合は、総務大臣が別に
告示するところによるものとする。
2 同一場所若しくはその周辺の複数の無線局が電波を発射する場合又は一の無線局が複数の電波を発射する場合は、電界強度、磁界強度及び磁束密度については表中の値に対する割合の和の値、又は国際規格等で定められる合理的な方法により算出された値がそれぞれ1を超えてはならない。
2.
無線局の検査時
検査の際には、基準値に適合していることの確認が行われます。 また、落成後の検査が省略されている無線局についても、基準値に適合していることの確認のため、免許後に臨時検査が行われる場合があります。
基準値への適合の確認方法は?
基準値への適合を確認する方法については、 総務省の告示で示されています。この基準への適合確認方法等については、
「電波防護のための基準への適合確認の手引き」を作成しています。
基本的な考え方は次の通りです。
無線設備から発射される電波の強さの基準値への適合を確認する方法は、基本的には十分 に過大側の値が得られる算出によることとし、算出結果が基準値を超える場合には測定により確認することができます。
強い反射を生じさせる物体がある場合で、算出した結果が基準値から6dB低い値を超える場合には、測定により確認を行うことができます。
アンテナ入力電力P[W]、最大輻射方向のアンテナの絶対利得をGとすると、距離R[m]の位置での電力束密度S[mW/cm2]はS=PG/40πR2 ・Kで示され、これを基本算出式とします。
(注) Kは大地面等の反射を考慮した係数。
電力束密度S[mW/cm2]、電界強度E[V/m]及び磁界強度H[A/m]は、次式により相互に換算します。
S=E2/3700=37.7H2