主な変更点及び利用上の注意

1.平成12年(2000年)産業連関表における変更点 

ア 「介護」部門の新設

平成12年4月からの介護保険制度の導入に伴い,「介護(居宅)」及び「介護(施設)」部門を新設した。
介護部門は,原則として平成12年4月に開始された介護保険制度におけるサービスの活動を範囲としている。ただし,産業連関表の概念により平成12年1年 間の活動として計上する必要があるため,制度開始前である平成12年1〜3月分は推計値を使用している。また,居宅サービスの一部である福祉用具購入費と 住宅改修費については当該部門では計上せず,福祉用具についてはそれぞれ各種財,住宅改修については建設補修を経由して住宅賃貸料(帰属家賃)で計上して いる。

イ 「再生資源回収・加工処理」部門の新設

近年の環境問題を考慮して,「再生資源回収・加工処理」部門を新設した。
当該部門には,古紙,鉄屑及び非鉄金属屑などの従来から屑・副産物扱いしていた財に加え,新たに近年増加傾向にあるPETボトルやプラスチックトレイなどのプラスチック屑について,回収・加工等に要する経費を計上している。

ウ 93SNAへの対応

1968年の第15回国際連合統計委員会で採択された国民経済計算体系(System of National Accounts)は,1993年に開催された第27回国際連合統計委員会においてその改訂案(93SNA)が採択され,経済社会理事会において各国がこ れを実施するよう勧告された。
改訂の内容は多岐にわたるものであるが,これを踏まえて平成7年表において勧告の趣旨を取り入れることとし,一部対応を図った。
今回の平成12年表においても,93SNAへの更なる対応を図るため,以下の点について概念を変更した。

(ア)ソフトウェア・プロダクトの固定資本形成への計上

従来,家計で使用するものを除き,全額中間消費扱いしていたソフトウェア・プロダクトについて,固定資本形成に該当するもの(耐用年数が1年以上で購入者価格の単価が10万円以上)は固定資本形成に産出した。

(イ)社会資本に係る資本減耗引当の計上

従来,資本減耗計算を行っていなかった道路・ダム等の社会資本に関しても資本減耗の計算を行い,その費用を一般政府消費支出に産出した。

(ウ)消費概念の2元化への対応

平成7年表から,従来家計消費支出に産出していた移転支出(政府あるいは医療保険負担分の医療費及び教科書用図書の現物給付)を政府個別的消費支出に産出しているが,平成12年表において新設された介護部門等の移転支出についても同様の扱いとした。
具体的には,介護保険給付額として「介護(居宅)」及び「介護(施設)」から「中央政府個別的消費支出」に産出したほか,前述のとおり,福祉用具購入費に ついてはそれぞれの財から,住宅改修費については建設補修迂回で「住宅賃貸料(帰属家賃)」から「中央政府個別的消費支出」に産出した。
なお,「住宅賃貸料(帰属家賃)」については,原則,全額家計消費支出に産出することとなっているが,介護保険の扱いから「消費の2元化」の対応を優先している。

2.注意点

(1)「再生資源回収・加工処理」部門新設による国内生産額の拡大

平成7年表までの「屑・副産物」については,原則として「マイナス投入方式」により取り扱ってきており,投入と発生が相殺されるため「屑・副産物」 の生産額は計上されなかった。しかし,平成12年表においては、「再生資源回収・加工処理」部門を新設したため,「屑・副産物」は,すべて「再生資源回 収・加工処理」部門へ産出され,さらに「再生資源回収・加工処理」部門を迂回して各投入部門へ産出されることとなる。このため,屑・副産物の投入に回収及 び加工に係る経費を加えたものを生産額として計上した。

(2)社会資本等減耗分を計上する資本減耗引当,政府消費支出

平成12年表においては,道路・ダム等の社会資本減耗が新たに計上されており,これらは粗付加価値部門である資本減耗引当(社会資本減耗分を含む),最終需要部門である政府消費支出(社会資本減耗分を含む)のみならず,国内生産額にも大きな影響を与えている。
ただし,これらの社会資本減耗の一部は,平成7年表以前でも既に計上済みであることから,7年表以前と12年表とで新たに計上された「社会資本減耗」のみを除外した係数の比較はできず,この点には注意を要する。

(3)携帯電話機の取引に係る家計外消費支出(行)(列)

平成12年表においては,「無線電気通信機器」から,「携帯電話機」が分割・特掲して計上されている。この「携帯電話機」は,移動通信事業者の介在もあり複雑な価格体系により販売されていることから,携帯電話機の生産者価格と購入段階の価格に大きな差が生じている。
このため,産業連関表では,その価格差を移動電気通信部門の直接経費とみなし,家計外消費支出(行)として計上し,また,携帯電話機部門から家計外消費支出(列)に同額が計上されている。

(4)各種計数の表示について

各種計数については,100万円単位の計数に基づいて算出し,各表章の単位で四捨五入していることから,内訳は必ずしも合計とは一致しない。

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