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安い費用で早く解決できますか?

ちょうせい第4号(平成8年2月)より

わかりやすい公害紛争処理制度 ‐第4回 迅速な解決と安い費用

1 はじめに

 公害紛争処理制度は、公害紛争を迅速かつ適正に解決することを目的とし、そのため、様々な工夫がなされています。今回は、その一例として、迅速性、手続の簡便さ、費用の低廉さについて紹介します。

2 迅速な解決

(1) 苦情の解決
 公害紛争は、地域に密着した問題であり、その多くが初期の段階で公害苦情として申立てられており、地域の実情に通じた都道府県の保健所や市区町村がその処理に当たっています。住民の皆さんから公害の苦情が寄せられると、公害苦情相談委員等の職員は現地調査を実施したり、苦情の原因者への助言、指導を行うなどして苦情の解決に努めています。公害紛争の簡易、迅速な解決を図るためには、苦情の段階での適切な処理が肝要です。そこで、苦情の申立てから処理までに要した期間をみてみると40日前後となっており、これをさらに細かくみていくと、1週間以内にほぼ半数が、1か月以内に約4分の3が処理されています。

(2) 紛争の解決
 公害についての紛争の処理は、国の公害等調整委員会(以下「公調委」という。)と、都道府県に設置されている公害審査会が行っています。平成6年度までに公調委では701件の事件が終結し、平均すると、約1年で終結しています。公害審査会では637件の事件が終結し、平均すると、約1年3か月で終結しています。参考までに、私ども公調委事務局で昭和58年から平成4年までの10年間に刊行物に搭載された環境に関する民事裁判130件について調べたところ、判決が出るまで平均4年強かかっていました。

3 手続きの簡便さ

 公害苦情の処理は、都道府県の保健所や市区町村といった身近な行政機関が行っており、特に定められた手続はなく、これらの機関に公害苦情を申し立てることにより、手軽に制度を利用することができます。また、公害紛争処理制度による紛争の解決も、その基本的な手続は法律で定められていますが、紛争を迅速に解決することを目的としているため、手続の厳格性は緩和されています。以下、具体例を挙げながら、公害紛争処理制度の調停(以下「調停」という。)を中心に、その手続の簡便さについて説明します。

(1) 申請について
 民事裁判は、判決という形で当事者に強制的な解決を強いるため、厳格な手続によって運営されています。そのため、裁判所に求める判決の内容を具体的に記載し、どのような権利主張を行っているのか請求事項を明確にしなければならないなど、訴状の記載事項は厳格なものとなっています。一方、「調停」は当事者の互譲の精神に基づく合意により紛争を迅速かつ適正に解決することに重点を置いているため、申請書には民事裁判の訴状のような厳格性、精確性はあまり必要とはされておらず、最小限、紛争を特定し、どのような論点で調停を進めていくかを明らかにすれば足ります。例えば、「適切な騒音防止対策の実施を求める」、「振動を原因とする家屋の被害に対して相当額の損害賠償金の支払いを求める」といった請求事項であっても、差し支えありません。 また、「調停」は当事者の合意に基づき紛争解決を図る手続であり、手続の進行に応じ当事者の請求内容や論点が変化することが十分考えられます。この場合、調停委員会は、当初の請求事項に拘束されずに、柔軟に話合いを進めることにより、迅速に双方が納得のいく解決方法を見いだすことに努めています。

(2) 証拠資料について
 「調停」では、当事者間の話合いに重点が置かれますので、民事裁判のように証拠により事実関係を立証することは必ずしも必要ありません。ただ、事実関係を明らかにすることが紛争解決に結びつくことが多く、また、調停内容を適正妥当なものとするためにも、手続を進めていく上で必要な資料や証拠の提出が求められることは否めません。なお、調停委員会は必要に応じて自ら証拠資料の収集を行い、被害者の立証能力を補完することで、公正で適正な解決の実現を側面から支援します。

(3) 代理人について
 民事裁判では、代理人は原則として弁護士でなければなりません(民事訴訟法第79条第1項)。一方、公害紛争処理制度は簡易、柔軟に手続を進めており、弁護士以外の者でも代理人とすることができます。その場合、代理人とする者には特別な資格は必要ではありませんが、調停委員会の承認が必要です。さらに、当事者が多数である場合には、効率的に手続を進められるよう、当事者の中から代表者を選定することができます。この場合は調停委員会の承認は不要です。

4 安い費用

 公害紛争処理制度を利用する場合の費用を低く設定し、当事者の金銭的負担を軽減することで、さらに制度を利用しやすいものとしています。
 具体的には、「調停」の申請には調停を求める事項の価額に応じた手数料が必要ですが、これを民事裁判や民事調停と比較すると、民事裁判の10〜15%、民事調停の20〜35%と、低額に抑えられています。さらに、民事裁判や民事調停においては、証人や鑑定人に対する旅費、日当又は鑑定料は原則として当事者の負担ですが、公害紛争処理制度では、参考人や鑑定人に対するこれらの費用は国や都道府県が負担することとなっています。
 なお、公害苦情の申立ては、無料となっています。

公害等調整委員会事務局

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