本調査の実施の背景とねらい

 近年、統計の精度を維持するという視点から、報告者の負担に対する関心が高まってきている。例えば、平成7年に答申された統計審議会の「統計行政の新中・長期構想」において、以下のような記述がある。

 「統計の作成にあたり、報告者は、統計の内容を形成する「資源」であるデータの源泉であることから、統計調査の円滑な実施および統計の精度の維持・向上を図るうえで、その統計調査に対する協力の確保が必要不可欠の条件である。しかしながら、近年、社会・経済の変化に伴う情報ニーズの増大に対応するため関係統計の整備が進むにつれ、結果として報告者負担が増加し、これが上記協力の低下を招いており、報告者負担の軽減を図ることが重要な課題となっている。」

 新中・長期構想においては、さらに具体的に、報告者負担を量的に把握するものとして報告に要する時間についても検討を求めている。

 今回の「統計調査等の報告負担に関する調査」も、以上のような目的意識に即して実施したものである。報告者負担の実態を捉える調査の例は少ないが、過去に類似の調査が実施されている。ひとつは昭和57年に実施されたものであり、もう一つは平成6年に実施され、新中・長期構想の提言に利用されたものである。昭和57年調査は、大企業・事業所へのアンケート調査と中小企業への聴き取り調査からなるものであった。平成6年調査は,より鮮明な問題意識の下で、今回の調査の原形となる調査が実施された。そこでの検討課題は、以下のような特性と報告負担がどのような関係にあるかを明らかにし、さらに負担軽減のための手段を探ろうとしたものであった。

 (1)国、地方、民間などの調査主体別に、どの程度の報告負担が発生しているか。
 (2)本社、支店・事業所で、どのような報告負担が発生しているか。
 (3)担当の部署がどのように設置されているか、また報告依頼に対する対応方式の違いと負担とはどのような関係にあるか。

 今回の調査は、過去5年間における社会・経済状況の変化、官庁統計を取り巻く環境の変化によって、企業、事業所の直面する報告負担がどのように変化したかを把握し、近い将来、報告負担の軽減と精度の高い統計の作成を同時に実現するための検討資料を得ようとするものである。

 具体的には、以下のような点を意識して調査を実施した。

 (1)企業の報告負担の内容として、統計調査と業務報告、民間からの調査の負担はどの程度か。また、規模・業種によってどのような違いがあるかを明らかにする。
 (2)報告負担の測定は困難なことから、今回は担当者が負担と感じるかどうかのみを調査することとし、負担感がどのような要因によって形成されるのかを探る。
 (3)負担が重いと感じられる統計調査に関して、問題点を明らかにする。

 なお、今回の調査では、以上のような点についての前回調査からの変化を知るために、調査対象の企業については前回の調査に協力が得られた企業を中心に選定し,パネルデータとしての比較可能性を実現するように工夫した。

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