世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

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IoT関連政策

IoT関連政策

(2024年1月調査)

名称 政府監督機関 発表時期 主要政策概要
米国 グローバル・シティ・チーム・チャレンジ 米国標準・技術研究所 2015年11月 2013年12月には、大統領技術革新フェロー・プログラムにおいて「Smart America Challenge」を開始、IoTにかかる24の産学連携プロジェクトを展開。2014年9月からはNISTの主導で後継プログラム「Global City Teams Challenge(GCTC)」がスタート。GCTCの第1フェーズでは、大学や民間企業等の募集及びマッチングが行われ、2015年11月以降の第2フェーズを「Smart and Secure Cities and Com-munities Challenge(SC3)」とし、個別の都市プロジェクトの計画や運用が行われている。現在もGCTCのプログラムは継続しており、2024年1月には、2024年から2026年の3年間をカバーする戦略計画が公開された。同計画では、①スマートシティインフラプログラムとGCTCのための研究ベースの科学的基盤を確立する、②スマートシティの範囲とアジェンダを拡大し、現在の課題に対処し、コミュニティの住民、企業、組織に対する成果の公平な分配を実現する、③GCTCを、先進技術の開発、試験、統合に専念する、国内外の公私パートナーシップとして引き続き推進する、という三つの目標が掲げられた。
工学研究センター 米国国立科学財団 2022年8月 2022年8月、米国国立科学財団(NSF)は四つの「工学研究センター(Engineering Research Center)」を新たに立ち上げ、5年間で1億400万USDを投資することを発表。これらセンターは農業、製造、健康、都市計画に影響を与える持続可能なソリューションのために技術を変革することを目標とするもので、スマートシティに関する工学研究センター「Center for Smart Street scapes」は、道路とその周囲のリアルタイムなハイパーローカル技術を通じ、住みやすく安全で包括的なコミュニティの形成を目指すとしており、コロンビア大学、フロリダ・アトランティック大学、ラトガース大学等、五つの機関が参加している。
中国 IoT基盤構築の3年間(2021~2023年)アクションプラン 工業・情報化部等8政府機関 2021年9月 関連技術のイノベーション能力を高め、ハイエンド・センサやIoT用チップ、IoT用システムといった分野の技術力と市場競争力を大きく引き上げる。5G+IoT、AI+IoT、ブロックチェーン+IoT、ビッグデータ+IoT等の融合製品やサービスの産業化も進める。目標では、2023年までに売上規模が100億元以上のIoT企業を10社育成し、IoTユーザ総数を20億以上に引き上げ、農村部のデジタル化、スマート交通、スマート・エネルギー、スマート農業、スマート製造、スマート建設、スマート環境保全、スマート・ホーム等12の分野での応用拡大を推進。また、工業・情報化部(MIIT)は産業応用、社会ガバナンス、国民生活消費の3領域12分野でのIoTアプリケーションの典型的な事例の収集を毎年実施する。
韓国 -(現在はIoTに特化した政策はない) 科学技術情報通信部 2017年12月 政府のIoT促進基本戦略として過去には「IoT基本計画」(2014年5月)、「IoT拡散戦略」(2015年12月)等の個別戦略があったが、近年はIoTが総合的な融合政策の中で扱われる。2017年までに医療、エネルギー、都市等6分野におけるIoT事業が重点的に進められ、規制緩和も進められた。規制緩和を追い風に、通信事業者は早期にLPWA(Low Power Wide Area)全国ネットワークを整備した。尹錫悦政権期になってからは2022年11月に発表された「デジタル産業活力向上規制革新方案」で、IoT活性化のためスマートフォンへのUWB機能搭載等に向けた規制改善が盛り込まれた。また、2023年11月には、将来の技術における韓国のリーダーシップのための「デジタル技術標準化戦略」が策定され、IoTがデジタルインフラ重要技術の一つに定められた。
EU デジタル欧州プログラム 欧州委員会 2019年4月 欧州委員会はデジタル単一市場戦略の一環として、デジタル社会化の主要技術及び人材育成に関する2021~2027年の支援計画「デジタル欧州プログラム」を提案した。2020年12月に同プログラムについての3者間合意が成立し、2021年から同プログラムが開始。年間400万の雇用と6年間で4,150億EURの経済成長の達成を主目的としており、7年間での総予算額は75億EURである。IoTと関連が深いAI開発や各種デジタル技術の普及に合計約40億EURの予算が割り当てられる予定である。2023年12月、欧州委員会はデジタル移行とサイバーセキュリティを目的として7億6,000万EUR以上の投資を採択した。
英国 消費者向けIoTセキュリティに関する行動規範 ビジネス・エネルギー・産業戦略省(現科学・イノベーション・技術省) 2018年9月 イノベーション推進機関Innovate UKの下、デジタル・カタパルト(Digital Catapult)や未来都市カタパルト(Future Cities Catapult)が中心となり、IoT分野における英国のグローバルなリーダーシップの発揮を目指すとともに、企業・公的部門による高品質のIoT技術・サービスの開発を支援する。また、科学・イノベーション・技術省は、2023年4月、今後10年の無線インフラ関連の展望を取りまとめた「英国無線インフラ戦略」を発表した。同戦略は、IoTが5Gや6Gなどの先進的な無線通信技術が可能にする変革的な用途の一つであると言及している。
ドイツ インダストリー4.0 連邦経済エネルギー省(現連邦経済・気候保護省)、連邦教育研究省 2011年11月 連邦政府が産官学の総力を結集し製造業のデジタル化を目指す国家戦略プロジェクトの1つで「デジタル・アジェンダ」「新ハイテク戦略」「デジタル戦略2025」といった政府が推進するICT戦略の中核に位置づけられている。2021年3月、インダストリー4.0が持続可能性に貢献できる分野や項目をまとめた報告が発表され、その中で、IoTがインダストリー4.0において重要な要素であり、持続可能性においても、エネルギーや資源の最適化に貢献できることが指摘されている。なお、2021年5月施行のITセキュリティ改正法(ITセキュリティ法2.0)では電気通信および重要インフラにおけるセキュリティ基準強化が掲げられており、IoT分野もその対象となっている。
Manufacturing-X 連邦経済エネルギー省(現連邦経済・気候保護省)、連邦教育研究省 2022年8月 2022年8月に発表された連邦政府のデジタル戦略の中で、デジタルネットワーク産業への変革を全面的に実現する目標の下、サプライチューンのデジタル化を推進する「Manufacturing-X」が提言された。2022年11月、Manufacturing-Xは連邦予算に組み込まれ、連邦政府からの長期的な支援が確保された。2023年1月、キックオフがベルリンで100名を超えるコミュニティ参加者とともに開催され、このイニシアチブの目標と活動が発表された。2023年2月には、運営委員会Manufacturing-X(SC4MX)が設立された。
フランス FrenchTech他 経済・財務・産業・デジタル主権省 他 2016年 French Techが九つの重点的育成産業項目の一つとして、16都市を拠点とする起業・エコシステム形成支援を行う。また、首相府下の独立規制機関「戦略フランス(FRANCESTRATÉGIE)」が2021年5月この技術の経済的影響に関する調査を開始、2022年2月にその結果を発表し、IoT産業発展のための戦略策定、国際協力、利用に関する倫理基準、認証、使用データの安全性の確保等に関する30の提言を行った。同機関の予測では2020年から2030年の間にIot関連の機器は倍増し、内フランス製のものが占める割合は3%になるとされている。また、2023年4月、フランスの成長に向けて80億ユーロ以上を投資する「フランス 2030」計画に沿って、主要な社会的課題に対応する新興企業を支援する「French Tech 2030」プログラムが開始された。2023年6月、本支援プログラムの受賞者が発表された。
日本 IoT総合戦略 総務省 2017年1月 2015年9月に、IoTのための通信基盤の整備などの政策のあり方を検討する「IoT政策委員会」が総務省・情報通信審議会の下に設置された。2017年1月、同委員会により、IoT政策に関する施策目標、検討・実施の主体、スケジュールを明確化したうえで整理した「IoT総合戦略」が取りまとめられ、あらゆる社会経済活動を再設計し、社会の抱える課題解決を図るSociety5.0を目指すとした基本的枠組が示された。2017年11月には、総務省・情報通信審議会の下に「IoT新時代の未来づくり検討委員会」が設置された。同委員会は、2018年8月に「未来をつかむTECH戦略」を取りまとめ公表した。なお、IoTに係る情報セキュリティ対策については2020年7月に「IoT・5Gセキュリティ総合対策2020」が公表されている。2023年8月には、サイバー攻撃の複雑化・巧妙化や脆弱性の拡大などの動向に対応したサイバーセキュリティに係る課題の整理や、情報通信分野において講ずべき対策や既存の取組の改善等の検討結果をまとめた「ICTサイバーセキュリティ総合対策2023」が公表された。
ICTサイバーセキュリティ総合対策2023 総務省 2023年8月 2023年8月、サイバー攻撃の複雑化・巧妙化や脆弱性の拡大などの動向に対応したサイバーセキュリティに係る課題の整理や、情報通信分野において講ずべき対策や既存の取組の改善等の検討結果をまとめた「ICTサイバーセキュリティ総合対策2023」が公表された。今後、重点的に取り組むべき施策については、「情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保」「サイバー攻撃への自律的な対処能力の向上」「国際連携の推進」「普及啓発の推進」の4点を柱に具体的な対策を示している。特にIoTに関係する情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保については、サイバー攻撃の複雑化・巧妙化も踏まえるとともに、情報通信ネットワークの機能に支障を生じさせるような大規模サイバー攻撃に対応するため、攻撃インフラの拡大を防ぐIoT機器側の対策、総合的なIoTボットネット対策の必要性を指摘している。クラウドサービスや5Gサービスのセキュリティ確保、スマートシティのセキュリティ確保、放送設備のセキュリティの確保に加えて、これらを横断する課題であるサプライチェーンリスク対策などの取り組み強化などを求める。